アオイちゃんを常時無表情にして五割増しに口下手にした結果wwwww 作:花極四季
最近嬉しかったことは、ラビリスタが20連で当たったことと、FGOで徐福ちゃんという股間のバーソロミューが【高貴なる海賊準男爵の咆吼】するキャラが出たこと。キアラリリィが実装されないのはこれで許した。
四話の投稿にあたって、誤字報告をしてくれた皆さまにはこの場で感謝を申し上げます。
報告者一覧(敬称略、順不同)
クーマン まつ楽 ryoto REXsaki 烏瑠 六四 サキク
「――なんなのだ、これは」
愕然とした様子で呟く少女――モニカの頬に、一筋の汗が伝う。
モニカの眼前にある、まるで災害が起こったかのように崩落した、かつて岩山だったものが粉々に散乱する光景。
その破片の中に隠れるようにして光る一本線を拾い上げ、観察する。
「やはり、傷ひとつついていない」
手に持つ鋭く伸びた銀色の弦のような物体を見て、納得と困惑が入り混じった感想が浮かぶ。
先の崩落は、この銀の弦に向けて全力の一撃を叩き込んだ結果の余波に過ぎない。
それ程の一撃をもってしても、この銀の弦に傷一つつけることが叶わなかった。
胸中に浮かぶは屈辱と歓喜。そして、これを手渡してきた謎の人物に対する困惑と恐怖だった。
モニカはその一見して子供と見間違えられるほどの幼い容姿と身長を持つ反面、その正体はさる国で【ヴァイスフリューゲル】という軍事組織に属している十七歳の軍人で、立派に大人だと言っても差し支えない経歴の持ち主である。
今はランドソルに単身潜入調査の任務で滞在している獅子身中の虫として、祖国の益になる情報を集める為に暗躍している。
暗躍と銘打ってはいるが、ランドソルのギルドシステムの関係上、戸籍なしで長期滞在するのは現実的ではない。
そのため友好国としての体裁を整えたうえで、互いに使者を送りその国の文化を知るため、公式な手続きのもとモニカは派遣されることとなったのである。
しかし、それ以上は踏み込ませまいと徹底した条約が結ばれたらしく、情報収集は思うようにいっていないのが現状である。
モニカは典型的な軍人気質であり、それ故に成果を出せない現状を重く見ていた。
下手に深入りをしてスパイ行為が表沙汰になれば、それを証拠に祖国に多大な不利益を被せることになる。
公式に派遣されているという証明としてギルド名も【ヴァイスフリューゲル ランドソル支部】と立場を明確にする名前を義務付けられたため、足が簡単についてしまう。
そしてそれは、そんな使命とは無縁な数合わせだけに揃えられた、祖国とは無関係なギルドメンバーにまで被害を広げる行為に他ならない。
国は違えどモニカの軍人としての気質は、民草を犠牲にすることを良しとしない。
派遣されたのがモニカだけというのもあり、軍人のみで構成されたギルドを立ち上げることができなかったが故の弊害。
或いは、現状を含めてすべてランドソル側の掌の上で転がされる前提での条約の締結だったとするならば。この決定を下した存在は非常に合理的で、自国民さえ盾にすることを厭わない人を人とも思わない冷血漢であるに違いない。
「モニカさ~ん!」
舌を巻くような独特のイントネーションで自らの名を呼ぶ声に振り返る。
そこには東洋の甲冑を身に纏う金髪の少女、ニノンが快活な笑顔と共にこちらへと小走りで向かってくる。
それに追従するように、三人の少女の姿が見えてくる。
肌に張り付く露出度の高い服装をした、妄想に耽って悦になっているクウカ、杖と一体となった鏡を見て恍惚の笑みを浮かべながら器用に歩くユキ、自前の槍を杖にして疲労困憊といった様子で必死に追従するアユミ。
彼女たちこそ、モニカ率いる【ヴァイスフリューゲル ランドソル支部】のメンバーであり、常日頃から騒動の種を蒔く問題児達の集まりである。
「お前達、どうしてここに?」
「ユキが教えてくれたデス!」
「ああ、そういえば留守を頼んだのだったな」
ここに訪れる以前、個人行動が目立つギルドにしては珍しくユキがギルドに滞在していたので、このまま滞在するのであればという条件で自分が出掛けていることを言伝するように頼んでいたのだった。
すぐにでも調べたい気持ちでいっぱいだったが、普段から規律に関して口を酸っぱくして語っている手前、ギルドマスターである自分が勝手な行動を取っては示しがつかないと、逸る気持ちを抑えての行動である。
「も、モニカさん。一体ここで何をしていたのでしょうか?こんな新しめの崩落の跡……ま、まさかモニカさんも遂にドSに目覚めたのですね!ぐふ、ぐふふ……」
「勘違いも甚だしいわ!これは実験の結果だ!」
そうしている間にも遅れてやってきた三人の内、クウカが開口一番に平常運転な頓珍漢なことを言い出す。
「ふうん。実験のことは聞いていたけど、ただの実験にしては穏やかな景観とは言い難いね」
「……まぁ、元より隠すことではない。とはいえ、口外しないという前提ではあるがな」
「ランドソルが見えないくらい離れた場所じゃないとできない実験ですか……それって、モニカさんの祖国に関係することですか?」
「そういうことだ」
アユミの鋭い指摘にすかさず頷く。
ギルド名の他にはない特殊性もあって、彼女達が名付けの起源を知りたいと考えるのは必然の流れだった。
元より自国の都合に巻き込んでしまったようなものでもあり、せめて気持ちだけでも真摯に向き合いたいと決意し、自分のことはギルド発足の理由から包み隠さずに話している。当然、自分が失敗すればどうなるかという可能性も含めて。
各々言い方こそ違えど、彼女達は例外なく『問題ない』と答えてくれた。
彼女達自身、我が強くて一般的なギルドとは噛み合わないことは自覚しており、ギルド勧誘そのものは幾度かされたことはあっても、その強烈な個性を前に誰もに逃げ出されたことは数知れず。
だからこそ、その個性を前にしても切り捨てることをせず、それでいて自らの境遇を免罪符に騙すことをせず真摯に向かい合ってくれたモニカには信頼を置いている、とのことだ。
彼女達の信頼は素直に嬉しいと思うと同時に、それでも万が一のことを考えると不安は尽きない。
信頼を置いてくれる相手に対する評価ではないかもしれないが、クウカはともかく他の三人は些か危機感に欠けているようにも感じられる。
そこは軍人と一般人の認識の差というべきか、どんなに言葉を尽くしたとしてそこに実感が宿ることはないのだから、当然ではあるのだが。
それを抜きにしても、彼女達は冒険者を名乗るには技量と経験が不足している。ポテンシャルの高さは目を見張るものがあれど、今のままではギルド活動そのものに支障が出ると判断したモニカは、事あるごとに軍隊仕込みの訓練を行っている。
中途半端な優しさはかえって彼女達を不幸に誘ってしまう。これ以上の愚を重ねるのは、軍人としても一人の人間としても許されることではない。
だからこそ訓練自体は甘やかすことなく厳しく取り組んではいるのだが、まるで幼稚園のような無法地帯になるのが恒例でままならないのが現状だ。
「それで、もしかしてそれが実験対象ですか?」
アユミの視線がモニカの手に握られた銀の弦に合わさると、他のメンバーの視線もそれに集中していく。
「おぉ~!ピカピカの糸デスね~」
「……ふぅん。まぁ、ボクには負けるけど綺麗じゃない?」
ニノンとユキは興味津々と言った様子でまじまじと銀の弦を観察する。
アユミとクウカはそれなりの関心はあれど、一歩引いた位置から観察する程度に留まっている。
「ただ綺麗なだけではない。私の本気の一撃を喰らってこの輝きと形状を保っている、超技術の結晶だ」
「……冗談、ではないようだね」
ユキの視線が砕け散った岩山に向き、納得した様子で呟く。
「モニカさんの本気はスサマジイの一言デス!」
「正直、諜報員とは思えないスペックだよね。頼む相手間違えたんじゃない?」
「そんなことはない。祖国において私の実力などまだまだ底辺レベルでしかない。上には上がいる」
「モニカさんよりも凄い一撃を出せる人がいっぱい……ああ、そんな!みんなで寄ってたかってクウカをいじめるつもりですね!あんな風やこんな風にィィ!」
「く、クウカさん!それは流石に失礼ですよ!」
「……いや、いい。クウカに関しては今更だ。だが、訓練内容を厳しくするのは今確定したがな」
妄想を糧に身をよじらせるクウカを見て、自然と溜息が漏れる。
対象は不特定多数の誰かでしかない妄想とはいえ、尊敬する祖国の軍人の方々で変な妄想をするのは流石に看過できない。個人的感情を抜きにしても、場所が場所なら普通に侮辱罪だ。
自分達のように冗談で済む間柄だからまだいいが、彼女の場合はそういう空気を読まずにどこまでも突き抜けていったところで何ら不思議ではないほどの被虐願望を持っている。
故にこうして冗談と流さずにキチンと締めておかないと、いつか取り返しがつかないことになりかねない。
たとえクウカが擁護不可能なレベルでの変態的な性的嗜好を持っていようとも、彼女は無辜の市民であり同じギルドの仲間。誤った道を歩まないように導くのは当然のことだ。
「ごほん!――それで、この素材だが、仮に『ドラート』と呼称する。このドラートだが、ただ強度が常軌を逸しているわけではなく、マナを込めると……こうなる」
指先で天に向かって直立していたドラートにマナが少しずつ浸透していくと、次第に糸のようにしなやかになり、気付けば大地へと頭を垂らしていた。
その光景を前に、誰もが閉口して食い入るようにドラートを見つめている。
「マナの供給を止めると、このへたれた形状で固定される。つまり、マナの扱い方次第であらゆる形状に自由自在に変形させられるんだ。……はっきりいって、これは世界を変えるものだ」
「そこまで?確かに硬くて形状も自由なら汎用性は高いと思うけど、所詮は針金の延長線じゃないか」
「確かに、これだけ見ればそう思うだろう。しかし、これ以上の質量が存在しないという保証がどこにある?いや、絶対にある。自然発生した物体にしては、これはあまりにも人工的過ぎる」
「それだと、これを作った人がいるってことですよね?もしかして、これを渡してくれた人が……?」
「わからん。そもそも、何故こんなものを私に渡したのかもさっぱりだ」
外套に覆われ性別も伺えなかった人物との出逢いは、あまりにも唐突だった。
何せ、文字通り目の前に現れたのだ。音もなく、その濃密な存在感さえ眼前に現れるまで気取られることなく、ソイツは悠然と立っていた。
視界に入った瞬間、軍人としての経験が目の前の存在に対して最大限の警戒と逃走を促す。
しかし、理性がその反射的な行動に必死でブレーキを掛ける。少しでも変な動きを見せれば、瞬きさえ許すことなく首と胴体が別たれていてもおかしくないと、本能が警鐘をひたすらに鳴らし続けていたから。
話は変わるが、ギルドメンバーのアユミは、類稀なる気配遮断の才を有している。
この任務に就くにあたり、他者の視線に対しての察知能力を磨き上げてきた自分が、アユミと出会った当初では気付くことができなかったのだ。
アユミとの出会いは偶然で、彼女がウェイトレスをしていたレストランに客として入っていたのだが、不埒な輩がアユミの気の弱さをいいことにセクハラをしようとしていたのを、文字通りその手を捻りそのまま御用となった。
見過ごせなかったとはいえ、モニカも暴れたことは事実だったので、迷惑料金込みで支払いをして早々に立ち去った。個人的感情からの逃亡ではなく、立場上下手に【王宮騎士団(NIGHTMARE)】と干渉する事態は避けたかったからであって、普段ならばこのような無責任な行動はしない。
そこまでは良かったのだが、それからアユミがずっと助けてくれた礼をしたいとストーキングしていたのに気付かず、アユミもアユミで声を掛けるタイミングを逸しての堂々巡り。聞いた話では一週間はそのような状態だったらしく、気付けたのは本当に奇跡に等しかったと言える。
そのような経緯からギルドメンバーにまでこじつけ今に至るわけだが、監視対策の訓練をされた自分でさえも欺くそのストーキング能力を利用しない手はないと、更なる技術向上に一役買ってもらった。
客観的事実からも、以前と比較して他者の目に敏感になり、今では気を抜いていようとも背後からのアユミの視線だろうと気付けるようになった。
そんなモニカの警戒を容易く掻い潜った時点で、最早何をしても無駄だと悟った。
だってそうだろう。こちらを殺したいのならば気取られることなく実行可能であるにも関わらず、明確な意思を持って目の前に現れたのだから、最早流れに従う以外に活路はないと判断せざるを得なかった。
「モニカさんに道を尋ねた際のお礼としてだっけ?」
「ああ。だが、そんなのは建前だろう。対価にしては不釣り合いに過ぎる」
たかが道案内に、こんな時代を動かしかねないほどの素材を提供するなどと、そんなことが有り得る訳がない。
あれ程の威圧感を持った存在がドラートの価値を理解していない筈はない。クウカの被虐性愛がなくなる方がまだ確率としては高いと断言できる。
「では、どうしてその人はモニカさんにドラートを渡したのでしょう」
「ハイハーイ!ユキに聞きました!その人はアユミ以上のステルスアビリティを持つ、ニンジャの中のニンジャ、スーパーニンジャだと!」
「……まぁ、間違ってはいない、のか?」
「スーパーなニンジャは、ランドソルに蔓延る悪のオンショーを人知れず成敗する必殺仕事人!ある日、国家間のバランスを崩すレベルの技術を独占しようとしていたことを突き止めたスーパーニンジャは、モニカさんがランドソルに訪れた別国のスパイと見抜き、証拠を渡すことで国家間のバランスをイーブンにしようとしたのではないデスカ!?」
「いや、ないでしょ」
「流石にそれは……」
「忍者……くのいち……ハッ!くのいちとして単身潜入任務を受けていたクウカは、あわや敵に捕まってしまい、拷問と言う名の辱めをかわるがわるの相手に休む間もなく攻め立てられ、クウカは……クウカはぁ……!!」
ニノンの鬼の首を取ったように自信満々に出た突っ込みどころ満載な答えに、三者三様の反応を示す。
そんな姦しい様子――特に自己投影にまで発展した妄想をするクウカを尻目に、ニノンの発言から整合性を探るべく思考を巡らせる。
要約すると、他国の密偵がランドソルの超技術を盗み取ったが自分が同類だと知っていた密偵が技術バランスを保つために託した、ということか。
そのような意図があったにしては渡し方が杜撰であるという点や、どのような理由があれど国家に所属する諜報員としては他国に塩を送るような行動を取るとは考えにくいなど、はっきり言って穴だらけの考察だが、細かい点に目を瞑ればあながち間違ってはいないように聞こえる。
事実、外套の者の行動には一貫性というか、理路整然としたものを感じられない。
それともまさか、これがランドソルの技術とは無関係の個人の所有物で、その価値も知らずに額面通りの意味で渡してきたとでも?
それこそ有り得ない話だ。まだニノンが次の日に標準語で喋るようになる可能性の方が高い。
「忍者かどうかはともかく、現状その者に不審な点が多いのは事実だ。真意を確かめるには、再度接触するのが確実だが……」
「モニカによると、緑色の外套に包まれて人相は全然わからなかったようだけど、そもそもそんな恰好をしてたら目立つよね」
「スーパーニンジャならば、市井に紛れることぐらいお茶の子サイサイだと思うデース!」
「忍者かどうかはともかく、モニカさんに特徴を開示させないために敢えてその時だけ被っていただけなら、外套を特徴に探すのは困難ですね……」
「ほ、他にそれらしい特徴とかはわかりませんでしたか?」
クウカの質問に暫し思考を巡らせる。話一応聞いていたんだな。
とはいえ、特徴と言われてもあの威圧感は体感以外で説明しようがないし、それ以外となると難しい。
「だが……」
「ん?なんかあったの?」
「一瞬だけ視線が交わったのだが……何というか、翡翠のように美しい瞳をしていた」
「――ふぅん?」
美しい、と発言した瞬間ユキの眼光が妖しく光る。
この時点で、先の解答が失言であると察する。
ユキは極度のナルシストで、自分が美しいという事実を公言して憚らないほどの自信家でもある。
単なる自意識過剰ではなくそれに見合う容姿をしているため、嫉妬ややっかみ以外で反論することは不可能に等しい。
そんな自他共に認める美しさを持ち、それに強烈な自負を抱いているユキにとって、他人の美しさというのはそれだけで関心に値するものなのだろう。それが、普段ユキという高いハードルを目にしているモニカの口から出たものならば猶更ということだ。
「言うに事欠いて、ボクの美しさを常日頃から焼き付けているモニカさんが他人の美しさを語るなんて、是非ともお目にかかりたいものだね」
「やめろ。気になるのも無理ないが、アレは興味本位で関わるべき手合いではない。火傷では済まないぞ。そもそも、美しいと表現はしたがベクトルがそもそも異なる。其方を世界で有数の宝石と形容するならば、その者は極限まで鍛え上げられた刀剣。立っている場所そのものが違うのだ」
「関係ないよ。ボクにとって美しさとは世界にあまねく真理そのもの。その刀剣の如き美しさも、いずれは辿り着くべき極致であり、決して交わらない道じゃないのさ。……ただ、モニカさんの評価が正当であるかはボクが見定めてこそ証明される理。興味以前に、見定める義務があるのさ」
「先に待つのがその稀有な美しさが無為に散らされるような結末であろうと、か?」
「それで散るならばボクの美はそこまでの価値だったってことさ。太鼓持ちにもてはやされるだけの美しさなど、ただの自己満足でしかない。たとえ危険であろうとも美しさのために行動し、世界中の生命を魅了してこそ、ボクの美しさが絶対であると証明できる。言うなれば、これはボクという国家による美しさを賭けた戦争なんだよ」
あまりにも壮大に馬鹿馬鹿しいことを言っているように見えるが、ユキが全身を使って表す本気を前に、愚かだと切って捨てるような発言は出てこない。
ユキの美に賭ける意識は常々あらゆる形で教え込まれていたが、ここまでとは思ってはいなかった。
その本気を前に敬服してしまいそうなほどに、彼女の生き様には『芯』がある。
他人にとっては無価値なことであろうとも、突き抜ければいずれ雲をも貫く塔のようにもなれる。
ある意味それは、モニカにも同じことが言えた。
軍人以前に、戦う者としての肉体的素養が限りなく欠如しているモニカは、幾度も嘲笑や同情の的として晒されてきた過去がある。
現状においても、知らない者からすれば子供として見られるのが常で、どれだけのデメリットを抱えているかは当人でなければ知り得ないぐらいに根深い問題としてモニカを悩ませている。
そんな他人の評価の一切を振り切り、軍人としてひたすらに鍛え上げ夢を叶えた経緯があるからこそ、ユキの生き様を否定できないでいる。
「……わかった。その決意を仕舞い込めとはもう言わん。だが!関わるならば絶対に私を同伴させろ。何があろうとも、私がユキを護ると約束しよう」
「いや、そこでモニカさんが出てくる道理は――」
「ある。私は【ヴァイスフリューゲル ランドソル支部】のギルドマスターであり、無辜の市民を護る軍人だ。だが、そんな義務感以上に、良き友人として危険な目に遭って欲しくないんだ。それこそ、この命を賭ける状況になれば、喜んで殿としての役割を果たそう」
「それじゃあ、モニカさんの任務が――」
「目の前に居る大切な存在さえ護れず、何が軍人だ。たとえ祖国の意向に背く判断となろうとも、私がこうして巻き込むように導いた手前、切り捨てるような真似は絶対にしない」
これは、偽らざる本音だ。
国に尽くすために軍人となり、その忠義に今も一切の陰りはない。
しかし、国に尽くすとは即ちそこに住む民に尽くすことでもある。
国の為に民があるのではなく、民のために国がある。民なき国など瓦礫の城と何ら違いは無い。
本来は住む国が違う間柄とはいえ、私にとってはかけがえのない民だ。
仮に戦争にまで発展したとして、民は被害者以上になり得ない以上、命を尊重するのは当然である。
ましてや、同じ屋根の下で生活してきた間柄ともなれば猶更と言える。
これが、私の軍人としての『芯』だ。
「――大切、か」
ポツリと呟くユキの表情は、どこかにやついた感じで頬も紅潮しているように見える。
普段の自尊心に塗れた得意げな表情とは一転した、少女然とした様子におもわず面食らってしまう。
「ねぇ、モニカさん」
「な、なんだ?」
ユキが一歩こちらに向かって足を踏み出すと、咄嗟に同じ歩幅で下がってしまう。
彼女の発する形容しがたい『圧』が、無意識にそうさせたのだ。
「どうしてもやめて欲しい?」
「それは、当然だ。いたずらに其方を危機に晒したくはない」
「んっふふ、そっか」
楽し気に声を弾ませ、更に一歩迫ってくる。
その一歩は、こちらの一歩よりも遥かに大きく、次第に距離が詰められていく。
「じゃあさ、ボクを満足させてよ」
「満足だと?」
「大したことじゃないよ。そうだね、手始めに――ボクの瞳とさっきの翡翠の瞳、どっちの方が美しかったのかを答えてくれるかな?」
「だから、先程も言ったがそもそもの土俵が」
「い・い・か・ら」
彼我の距離が吐息が届くほどにまで縮まる。
観念したように溜息を吐き、常々思っていたことを口にする。
「――あらゆる前提を無視してならば、断然ユキだ。其方の瞳は例えるならば紫水晶。薄月夜の下で照らされたようなそれは、その色合いもあって幾度視界に入れようとも飽きることのない安心感があり、それでいて決して一歩引いた立ち位置に留まらない力強さもあり、美であまねく者を魅了したいというユキにピッタリな瞳だ」
そもそも、あの鋭い翡翠の瞳は確かに美しくはあったが、あれを前にした瞬間の感情はただただ逃げ出したいの一心だった。
こうして思い返して初めて感想を抱けるようなものと、常日頃から見慣れていながらも常に進化し続ける宝石となら、断然後者に決まっている。
「……どうした?」
会話の途中から視線を逸らし続けているユキの身体を揺する。
「――ハッ!い、いやいや!そんな至極当然のことを言われた程度で、ボクの心が揺らぐなんてことはないんだからね!」
「あ、あぁ」
先程以上に真っ赤になって取り乱すユキを前に、生返事しか出てこなかった。
こんなこと、前にもあったな。同じような質問を色んな相手にしているのに、こちらの解答には今みたいな態度に変化する。
それなりに長い付き合いにはなったが、正直こういうところはさっぱり理解できん。
「ユキさん、羨ましい……」
「ムムム……」
「クウカも、あんな風に……」
ふと、三人の視線が奇行に走っているユキに集中していることに気付く。
何やら羨望の眼差しのようだが、果たして今の流れでそのような反応に至ることがあっただろうか。
それとも、アレか?護ってやる宣言はユキだけに向けられたものだと勘違いしたのか?ならば三人の反応もわからんでもない。
「よくわからんが、先程の話はユキに限った話ではないからな?お前達も当然護るべき対象であり、命を賭けるに値する存在だ。困ったことがあれば何でも相談してくれていいし、幾らでも力になると約束しよう」
「え、今なんでもって……」
「二言はない」
クウカの食い気味な反応に奇妙さを覚えつつも、重ねて告げる。
三人は互いに顔を見合わせ、無言で納得した風に頷く。
「で、ではクウカの瞳の色はどのように評価してくれますか?」
「ワタシのブルーアイの評価もお願いしマース!」
「わ、私のも……!!」
三人一斉にこちらに迫ってきたものだから、思わず尻もちをついてしまい、いつも以上に見上げた姿勢になってしまう。
先程のユキと同じぐらいに紅潮しており、どこか呼吸も不規則だ。
その鬼気迫るような三人の表情に俯瞰されている状況に、理解がおいつかないでいる。
「お、お前達落ち着け!後で幾らでも答えてやるから、そろそろ帰路につかないと日が暮れてしまうぞ!」
戦いにおいても、多勢に無勢となれば仕切り直しのための逃走は戦術として基本であり、それは現状においても同じことが言えた。
訳がわからなくなった時は、煙に巻いてリセット。個性の塊である彼女達を纏めるための逃げ口上にも慣れたものである。
「そ、そうでした!」
「気が付けばサンセットも近いデース!」
「これ以上留まれば、フルマラソンじゃないと間に合わなくなりますね……そ、それもいいかも」
取り敢えず気を逸らすことには成功したが、戻ったら再度追及されるだろうし、帰路の間に彼女達の満足のいく回答を用意しなければ。
しかし、何故そこまで瞳に関しての評価が気になるのだろうか。
特に三人は美意識に執着していないように見えたのだが、そこは秘めていただけで年相応だったということか。まだまだ彼女達のことを理解したとは言えんな。
「そら、帰るぞ!ユキもボサッとするな!」
「――もう、余韻に浸る余裕もないなんてね」
そう言葉を漏らしつつも、足取り軽くこちらに並走するユキ。この様子ならば多少スピードを上げても文句は言わないだろう。
それと、有耶無耶になりつつあったが、先程の解答はユキを満足させられるものだったのだろうか。その辺りもしっかり追及しなければ。
そして、あの翡翠の瞳を持つ者。
あやつとは再び会い、ドラートを渡してきた真意を知らねばならない。状況を明確にできない限り、祖国に情報を伝えることも叶わないのだから。
取り敢えずは、聞き込み調査からだな。なんでも獣人で構成されたギルド【自警団】には、探偵を名乗る人物がいるらしいし、まずはそこから始めよう。
AOIちゃんが入ってないやん、AOIちゃんが見たかったから閲覧したの!ってお兄さん許して!
というか、ヴァイスフリューゲルをこんな関係にする予定はなかったんや……。数日前に脳内に降りてきたからついやっちゃったんだ……。
騎士君は時系列的にまだ降臨していないので、モニカが騎士君が立てるフラグを前もって立てていくスタイル。語られていないだけでこうなるための布石はたくさんあったんだよ。そういうことにしておくんだ。