プリヤ、すごい人気ですね。もっと書く人がいたらいいなーー。
二話目はイリヤと凛と美遊とルヴィアとルビーとサファイア視点。
エミヤ出て来ないけど、こういう視点からの反応も書きたいんです。
「ちょっと!? 今の狙撃は一体何なのよ!」
「あの神秘の大きさからいって『宝具』クラスでしてよ!」
「『宝具』って美遊が使ってた『
順に凛・ルヴィア・イリヤの発言である。ちなみにルビーは魔力砲が不発に終わったため、拗ねモードで無言であった。
「あの大橋から発射されたってことは、私たち以外に誰かがこの空間に入り込んでいるってことよね」
凛が大橋を睨みながら言う。悔しいことに、狙撃者は地上から見えないところに引っ込んだようだ。
この空間に転移できるのは、カレイドステッキかこのカードの制作者または関係者のみ。そしてカレイドステッキ二機はこちらにある。つまり、大橋にいる奴はこのカードに関する事件の鍵を握っているかもしれない。
「イリヤ、ひとっ飛びしてあれを撃った奴を連れてきなさい!」
「ええっ!」
凛に指示され、ビビるイリヤ。
「またあの矢が飛んできたら、ルビーじゃ防げないよ!」
「すみませんねー。でもあれはさすがにルビーちゃんでも無理ですー」
まだ拗ねているのか、ツンツンしているルビー。
とそこへサファイアを連れた美遊が合流する。あの狙撃によってキャスターは撃墜され、ランサーのカードを使用せずに回収できたため、あまり疲労はしていないようだ。
「あの矢……自分から爆発しているように見えた」
「おそらく『宝具』を自壊させて、内包した神秘と魔力を爆発的に放出したようです」
上空であの爆発を間近に目撃している美遊の見解に、サファイアが補足と推測をたす。
「そ、それじゃあ、あの『宝具』はもう使えないってことだよね?」
イリヤが恐る恐る言う。何せその狙撃手を連れてくるのは、自分の役目なのだ。文字通り死活問題である。
「まあそうだけど。……英霊の半身でもある『宝具』を使い捨ての爆弾にするなんて、頭がおかしいとしか思えないわ」
凛が強い口調で言う。本来『宝具』とは唯一無二の物であり、それを自爆させてまで攻撃に使用するなど、正気の沙汰ではない。
「そんなに大事なものなんだ……」
普通の世界で育ったイリヤには理解しがたい話である。
「神秘の塊である『宝具』を研究しない魔術師なんていないわよ」
「ええ、全くその通りですわ。自爆させるなんて罰当たりな。それを知った英霊の報復が恐ろしいですわね」
「自爆はだめでも研究はいいんだ……」
どちらでも英霊さんは怒る気がするけどな~、というツッコミは我慢するイリヤであった。
「まあ、これでクラスカードはしばらく使えなくなっているはずですわ」
「えっカード?」
きょとんとするイリヤにルヴィアがやれやれ、と首を振って言う。
「カードで『宝具』を
「はぁ……」
あまりピンときていない顔で頷くイリヤ。実はこのとき、イリヤの中では嫌な予感が急速に膨らんでいた。
(カード、『宝具』、矢……狙撃。つまりアーチャー。そして私が今日失くしたカードは……!)
関連性に思い至ったイリヤは、顔から血の気が引くのをリアルに感じた。
「あの、凛さん。いえ凛様。実は言っていないことがあって……」
「ん? 何よ、こんな時に」
「えーと、その、実は、……えーっと」
目を泳がせるイリヤ。
更に挙動も怪しくなってきたイリヤに、しびれを切らしたのは、
「もー、じれったいですねー。早く言っちゃった方がいいですよー。
『アーチャーのカードを失くした』って」
拗ねモードを解除し、いじめっ子モードに入ったルビーだった。
「ちょっと、ルビー、ばらしちゃ――――」
イリヤの口封じは尻窄みに終わった。何故って? 背後でごごごという噴火音が聞こえてきたからである。
「な、なんですとーー!」
「あなた、なにしてくれてやがりますの!!」
凛が吼えた。ルヴィアが猛った。
「イリヤ! あんたそれ、どういうことか分かってる!? 悪用されれば町ひとつアボンできるシロモノなのよ! それを失くすって!」
「まったくその通りですわ! この責任は私たちがとらされるのですのよ。私の栄光への架け橋が根本からぶっ壊れますわ!」
「……いや、ルヴィア。それはあるけど今の問題はそこじゃあないし」
さすがの凛も、少々ずれたルヴィアの発言にツッコミを入れる。
イリヤは時計塔から派遣された魔術師二人に対し、頭を下げて精一杯の謝罪をした。
「ごめんなさい!」
イリヤも事の重大さを今さらながらに理解したのである。
夕方に失くしたことに気が付いたときは慌てたが、後で探せばいいと軽く考えていた。誰かに拾われて使用されるなど思いもよらなかった。
しかし現実には何者かの手に渡り使用され、そのカードの効力を目撃したのである。もし、現実世界で使用されれば被害はどれほどになるか。
「でも、カードは見つかった」
美遊がイリヤをフォローするように事実を指摘する。しかし、イリヤを見る目は厳しい。
「先ほどの狙撃に使用された『宝具』、形状は『矢』。よってアーチャーのものと思われます」
サファイアが分析を告げる。
「でも、昼間に
イリヤの疑問に、ルビーが答えを返す。
「一人の英霊が複数の『宝具』を持つことはよくあるんですよ~。アーチャーの『宝具』は弓とあの矢で対になっていて、対で
「それは私も実力不足だと言いたいのかしら? ルビー?」
間髪入れず、凛がぎりぎりとルビーを握りつぶすように圧をかけていく。
顔が怖い。
「ま、それはさておき。つまり犯したミスはまだやり直しができるってことよ。
さあイリヤ! 死ぬ気で取り返してきなさい!」
「はい!」
凛の発破を受けて飛び出すイリヤ。もちろん急いでだが、確実を期すためには慎重に向かうようだ。
「イリヤスフィールだけでは心配ですので、あなたも行ってくれます? 美遊」
「はい。そのつもりです」
ルヴィアの言葉に、美遊も魔力を固めた足場を展開しイリヤの後を追っていく。
キャスターのカードを回収した今、この鏡面界はいつ崩れてもおかしくない。
慎重に行動すべきではあるが、協力して早く狙撃手を捕えるのに越したことはないのである。
「大橋の狙撃手はあれから全く動きませんわね」
ルヴィアがイリヤと美遊を見守りつつ、声をかける。
「こちらの様子を伺っているのかも。さっきまでの魔術大戦の中ならまだしも、今のこの状況で転移した気配を見逃すはずが無い。もしかしたら動きたくても動けないのかもね」
「それはどういう意味ですの? 遠坂凛」
「あら、こんなことも分からないのかしら?」
ルヴィアと凛の間でバチバチと火花が散るが、こんなことをやってる場合ではないと凛の方が譲歩した。
「まあ、真面目な話、あのカードは魔術協会でも解析はうまくいっていなくて、私たちはカレイドステッキの膨大な魔力任せに使用しているのね。それをステッキ無しで
「つまり、弱体化している敵なら、あの子たちでも余裕で捕えられると?」
「ぶっちゃけ、カード無しなら、無限の魔力が供給されるカレイドステッキの前に、大抵の魔術師は撃退できるわよ。
……それより、やっぱりこの空間の崩落が遅すぎる気がしない?」
「ええ、何か他に原因が―――後ろ!!!」
ルヴィアの注意も間に合わず地に倒れ伏す、凛。
凛を襲った黒い影は、瞬く間に距離を詰めルヴィアも一閃の元、切り伏せる。
新たな強敵は次なる標的を見定め、行動を開始した。
原作のノリを参考にしつつ書いてます。あのツッコミやスーピーディな展開を見習いたいです。