プリヤ世界にエミヤ参戦   作:yamabiko

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えー、長くなったので前後に分けます。士郎&アーチャー編。
ホントは夜まで行くはずだったのに。ちょっと力尽きました。

あと「Fate/strange Fake」やっと読めました! すごい料理の仕方でしたね! 慢心しないAUOとか。ガチで渡り合える泥人形さんとか。序盤なのにすげー。


……春休みでいっぱい更新できるといいな(希望的観測)


【21】

 キーンコーン、カーンコーン――――

 

 耳慣れた鐘の音が、校舎から聞こえて来る。

 士郎は限界寸前の足を叱咤し、ダッシュをかけた。ホームルーム教室は玄関を入って2階に上がったすぐの部屋。担任の教諭がドアを開ける前に滑り込めば、セーフである。

 乱暴に下駄箱を開け、靴をはきかえる。階段で踏み外しそうになりながらも、士郎は何とか朝の予鈴が鳴り終わる前に教室に滑り込んだ。

「おはよう、衛宮殿。こんなギリギリに登校とは珍しいでござるな」

「まあっ、ちょっと寝坊を、してな。……昨日、見たのは時代劇か何かか?」

 テレビの影響を受けやすいクラスメイトからの挨拶を受けつつ、士郎は荒い息で席に座りこんだ。全力で走ったおかげで体中が火照っており、朝は何も食べてないせいで空腹感が胃を締め付けて来る。

 ショートホームルームが終わったら即、セラが用意してくれた朝食用の包みに手を伸ばそう、と士郎は決心した。やれやれといったアーチャーの気配はこの際、無視。

(しょうがないだろう。昨日の夜から今日の朝にかけて非常識すぎたんだ。……むしろ今日はよく起きたなって、感心されるほうだと思うぞ)

 

 

 

 イリヤを背負った士郎が自宅にたどり着いたのは、早朝の気が抜けきらぬ時間帯だった。普段であればもう少し惰眠をむさぼっている時間であり、当然誰もいないリビングをすり足で抜けていくことになると思っていたのだが――――扉を開けた瞬間、リズの赤い目とばっちり目が合った。

 どうやら徹夜態勢で士郎の帰りを待っていてくれたらしい。ソファーにはスナック菓子の空き袋とイリヤの部屋から借用したと思われる漫画が積まれていた。曰く、あくまで士郎の帰るまで待つといって聞かないセラを、朝食の準備があるとかなんとか説き伏せて、リズが代わりに寝ずの番をしていた、とのこと。

「イリヤもおかえり」

「……あんまり驚かないんだな」

 お泊りに出かけたはずのイリヤも、当然のように迎えるリズに疑問を零す士郎だったが

「イリヤに何かあった気がした。それだけ」

 他に何か? と真顔で言うリズに、何も言えなくなってしまった。

 いや、下手に突っ込んだらこっちに飛び火しかねないし。

(ホムンクルスってことが、関係してるのか……?)

 イリヤをひょいっと抱える姿は、どうみても普通の人間にしか見えないのだが。

 その後リズにイリヤを任せると、士郎は軽くシャワーを浴びて早々に自室のベッドにもぐりこんだ。気が抜けたせいか、棚上げされていた疲労が一気に押し寄せてきたのである。目を閉じると同時に士郎の意識は途切れたのだった。

 そしてその僅か数時間後。

(そろそろ起きんか、この未熟者!)

 まったく優しくない声で叩き起こされた。

 目を開け時刻を確認すれば、学校に間に合うかギリギリの時間である。慌てて身支度をし、階下に下りれば、セラが「あら起きましたか」と受話器を置いたところだった。リズから士郎の帰宅時間を聞き、睡眠時間を考慮に入れてギリギリまで学園に遅刻の連絡を入れるか、検討していたらしい。ちなみにリズはいま自室で爆睡中だ。

 士郎は慌ただしくリビングの机の上にあった物を鞄に押し込んだ。セラが午前の授業の合間に食べられるように、と用意してくれたサンドイッチと、昼食用の弁当、そして厳重に紙ナプキンでくるまれた甘い匂いのする小包。

「ああっ! リズ除けに隔離したシロウのクッキーが! まだ一枚しか食べてないのに!」

(すまんセラ、また作るから勘弁してくれ!)

 背後から聞こえる心からの悲鳴に、士郎は内心で謝りながらも家を出る。時間の余裕も無い。すぐさま学校をめざして自転車を漕ぎ出した。

 本当は早起きして、おかずを一品×二人分作らねばならなかったのだ。アーチャーが何をやらかしたのかは知らないが、機嫌の悪い虎は厄介であるし、また昨晩の外出の理由に柳洞寺を使わせてもらった手前、一成にも口止め兼お礼にと、昼食に色をつけようと思っていたのだが。

(いや、無理だって)

 昨夜から朝にかけてのなんやかんやを思い返してみれば、料理する隙間なんぞ、てんで見つけられない。ただでさえ睡眠時間は短いのである。あれでいつも通りの時間に起きれるやつは超人か変人の類だ。

 よって、昨夜イリヤのために焼いたクッキーの余りを代替品として進呈することを、机を見た瞬間決定を下したのである。

(見た目はちょっとアレだけど、味はアーチャーが色々と指示してくれたおかげで、胸を張れるレベルだし、たぶんいける筈)

 ただ冬木の虎の腹を満足させられるかどうかは怪しい。一応女性の枠に入っているから、甘味を無下にすることも無いだろうが。

 一成は寺育ちだが、和菓子に次いで洋菓子も普通に食べる。

「まあっ、何も無いよりはマシだろうっ!」

 士郎はやけくそ気味にペダルに力を込めた。

 通学の道に学生の姿は既にない。

 寝不足の上に、全身は筋肉痛。しかしせっかく布団と決別したのだから、遅刻は勘弁願いたい。よって士郎は全力を振り絞り、立ち漕ぎ走行で駆け抜けるしかなかった。

 万全とは言い難い体調で、しかもスタートダッシュも遅れる中、予鈴が鳴り終える前に教室に着けたのは称賛ものではないかと思う。

(俺だってやるときはやれるんだ)

 士郎はささやかながらに自信を持ったりもするのだが――――。

 所詮は平凡な日常生活を送ってきた高校生である。昨日、おとといと英霊やら魔術やらの非日常に巻き込まれて、精神的にも肉体的にも疲労はたまる一方。更に登校時のダッシュに続き、セラの気遣いにより小腹も満たされた今、午前の授業からコックリコックリとしてしまうのも――――まあ、仕方がないことなのだ。

 

(おい、衛宮士郎!)

 突然とんだアーチャー注意。だが、眠気に頭を垂れていた士郎に反応などできるはずも無く。

 バンッ! と鋭く弾ける音が鼓膜に突き刺さった。

 瞼を押し上げれば、机に叩き付けられた教科書が目に入る。士郎が恐る恐る腕の持ち主を辿り見上げると。

 無感動な目がこちらを見下ろしていた。

「衛宮。授業後に私の研究室まで来い。いいな」

「……はい」

 士郎がそう何とか返事をすると、彼は――――社会科の葛木教授は、何事も無かったかのように授業を再開した。

(やばいやばい)

 眠気など吹っ飛んだ士郎は、未だ鼓動の早い心臓を静めようと、真剣に授業に耳を傾ける。

(あー、何を言われるんだろう)

 葛木はまだ三十路には達していないはずなのだが、何故か悟りを開いたような近寄りがたい雰囲気を持つ教師であり、士郎は少々苦手としていた。いや、授業は淡々と進めるが意外とポイントを押さえたもので分かりやすく、授業自体は好きな方なのだが。

 背は高く体格もしっかりしている。しかし表情はほとんど変わることは無く、眼鏡の奥で何を考えているのか、さっぱり読めない。更に必要以上のことはしゃべらない寡黙な性格である。あれで何故先輩方に人気があるか疑問を抱いてしまうほどだ。

 悶々としている間にも授業は進み、終了の鐘が響いた。

 葛木はさっさと資料などをまとめると、目でついてくるようにと合図してくる。

 重い足取りで後を追い、少し歩いた先の社会科の研究室に足を踏み入れる。きちんと整理された資料が所狭しと並んでいる部屋の中、葛木は何やら自身の机のわきから何かを取り出した。

「先日の礼だ」

 ずいっと差し出されたのは甘く香ばしい匂いの漂う紙袋。

 は? と目を丸くして中身を確かめてみれば、地元商店街でも有名な大判焼きがそれなりの数で入っていた。

 士郎は必死でこれを渡される理由を考える。「先日の礼」と「葛木」というキーワードで記憶を検索。すると思いたる節が一件ヒット。

 先日というか、もう遥か昔のように思える一昨日の部活後。そろそろ帰るか、と駐輪場から自転車を出していたときに、葛木がちょうど通りかかり、それを借りれないかと声をかけてきたのだ。

 いつも通りの、何を考えているのか分からない表情だったが、なんとなく急いでいるようにも感じられたので、士郎はあっさり愛車を貸し出した。おかげでその日は少々帰宅が遅くなったのだが、特に問題は無く。昨日も元の場所に戻してあったので、貸したことすら忘れていたくらいだ。

「えっと、俺、葛木先生に自転車を貸しただけで。その、こんなにもらうわけには」

「いや、おかげで所用に間に合った。……少々買いすぎたようだが、衛宮なら捌けるだろう」

 確かにお裾分けにする相手は家族を含め、心当たりはたくさんあるのだが。

 士郎は恐縮しながらも、その紙袋を鞄に収めた。ここで受け取らなかったら葛木も困るだろうと思ってだ。それだけの量が入っていたのだ。士郎としては、本当に大したことをしていないのに、申し訳ないという気持ちでいっぱいである。

「それから、体調がすぐれないようなら保健室へ行くように。腕はともかくあの保健医の見立ては確かだ」

 さっきの授業態度を見かねてだろうが、特に叱責もせず、葛木はそんな言葉もかけてくれた。そんなにひどい顔をしていたのだろうか?

 だが個人的に苦手な先生ワースト1の折手死亜先生に厄介になるのも気が進まず、そこは言葉を濁して、大判焼きの礼だけ言うとさっと研究室から退室してしまった。

 葛木って意外といい先生なのか? と若干失礼なことを考えつつ、次の授業の教室へと向かう士郎に、今まで沈黙を貫いていたアーチャーの声がかかった。

(……葛木はカレン・オルテンシアと面識があるのか?)

(同じ学校に勤めているんだから、当然あるだろ? なんか気になることでもあったか?)

(――いや、彼ほど保健室と無縁な男はいない、と思ったまでだ。忘れてくれ)

 そう言われると余計気になるのだが。まあ葛木は病気で寝込むようなイメージは持ちにくい。寧ろ怪我した生徒の付き添いで訪れる方がよほどしっくりくる。……カレン・オルテンシアって折手死亜先生の名前を外国語っぽく言っただけだよな?

(にしても貴様の幸運値は侮れんな。これで柳洞一成と虎への憂慮も払拭することができただろう)

(そうだな。自分でも驚いてる。これも日頃の行いがいいおかげかな)

 軽く返事をしながら士郎は、今更だがアーチャーの雰囲気が緩んだことに気付いた。裏を返せば、葛木を前にしていた時は気を張っていたということだ。

(やっぱり葛木に対して何か思う所があったのか?)

 いやでも、アーチャーは仮にも英霊だし、葛木もちょっと体格のいい教師に過ぎない。接点などあるはずもない。

(……気のせいか?)

 

 昼休み。なんとか残りの午前の授業を乗り切った士郎は、職員室へと急いでいた。

 昨日の一成との約束もあり昼休みは生徒会室に向かわねばならないのだが、先に腹を空かせた虎に貢物を渡さねば、後から突撃して来そうな予感がしたのである。また自身の空腹を主張する腹をなだめるためにも弁当を食べる時間も確保したい。

「藤村先生はいますかー」

「あーっ、士郎! こっちこっち!」

 扉を開けた傍から冬木の虎こと藤村大河の招き声が職員室に響いた。

 いい年した大人が大声で生徒を呼ぶのもアレだが、周りの職員らは苦笑するだけで非難の目は無い。どうもこういう性格だと受け入れられているようだ。

 士郎は列をなす職員の机の隙間を縫い、自分を手招きする黄色と黒のボーダーシャツに緑のワンピースを重ねた女性の元へと、若干及び腰で近づいた。いつもと変わらない笑顔のはずなのだが、何故か威圧感というか、背後に虎が見えた気がした。

「それで今日のオカズはな~にかな? 人のこと、いかず後家呼ばわりしたんだから、相応のモノを持ってきているんでしょうね!」

(……おい、なんてこと言ったんだ。アーチャー)

 それは完全に地雷だ。よくも俺の身体でやってくれたな、この野郎。

(いや待て。私はそこまでは言っていないぞ! 彼女が話を盛っているだけだ!)

 必死に言い募る内側の同居人に、いつもの皮肉な色は見えず。

 むしろ話を大げさにするのは彼女の方であるのは、常日頃から痛感していることであり。

(……アレが私の失言なのは違いない。すまなかった、と伝えてもらえないか)

(わかった。随分と反省しているみたいだし、俺から言っとくよ)

 常時嫌味を言われる意趣返しにともおもったが、思ったより消沈する男にいつまでも居座られるのも面倒なので、士郎は素直に要望に応えてやった。

 まず彼女の正面で背筋を伸ばす。そして。

「あー、その、昨日のアレは悪かった。本当に(アーチャーは)反省してる。すまなかった」

 言いながら、きっちり頭を下げた。

 内側でアーチャーも頭を下げている気配がするから、なんだか可笑しな気分である。仮にも英霊のはずなのに、律儀というか、真面目というか。彼女の前では英雄様も形無しだ。

「うむ、よろしい。そこまでするなら許してあげようぞ。……で、オカズは?」

 どうやら冬木の虎も昨日はテレビで時代劇を見ていたらしい。やけに低い声でのたまうものだから、後半の台詞とのギャップが。

「そのおかずに関してだけどな。……悪い寝坊して作れなかった。だから、これで勘弁してくれ!」

 頭を下げたまま差し出したのは、小分けにした大判焼きの紙袋。

 大ぶりな大判焼きは二つも食べたら普通は満足するくらいの量となるのだが、念のため倍の四つほど入れ込んだ。健啖家の胃袋はデカイからな。これで満たされてくれるといいけど。

「ふむふむ、これはあの商店街の大判焼きね。いつもすぐ売り切れちゃうのに、やるじゃないの。……あとこの小袋は?」

「それは昨日ちょっと俺が焼いたクッキーなんだ。少ししかないけど、足しにはなるかと思って」

 士郎の手作り!と目を丸くする虎。早速、袋を開けて不恰好なソレを一つ摘まみ――

「うっわ、うっまーーーーーい!」

 歓喜の咆哮を放った。

 室内の注目の目を集めながらも、残りのクッキーに手を伸ばそうとするのを、士郎は待ったと制止の手をかざす。いや、昼前に菓子でお腹いっぱいになられてもな。

「ご満悦いただけたなら結構。これで許してくれるか?」

「許す許す! すごく美味しいわよ! これ! いつの間にこんなに上手く作れるようになったの? また今度焼いたらお裾分けよろしく!」

 あっという間に機嫌の直った相手に、本当に食べ物の力は偉大だと感謝する士郎。

 そのまま用事は済んだとばかり、退室しようと踵を返したところで、もう一つ用があったことを思い出した。

「あ、あとちょっと頼みたいことがあるんだけど、いいかな? 藤ねえ」

「うーん? 内容によるわよ?」

 あえての昔ながらの呼び名に、個人的な要件だろうと察した彼女は姿勢を正して士郎と相対する。ただし、紙袋は腕の中でがっちりホールドしていたが。

「前に住んでいた家の鍵を借りたいんだ。今は藤ねえの家の人たちが管理してくれているんだろう? しばらく道場とかで体を動かしたいんだ」

 真剣な面持ちで告げる士郎に、昔から家が隣同士ということで交流のあった近所のお姉さんは、

「あら、別にそんなかしこまらなくてもいいのよ~。元々は士郎の家なんだし、遠慮しないでどんどん使いなさいな」

 と、あっさり了承した。拍子抜けした士郎を前に、顔馴染の女性は首を傾げる。

「でも、いきなり道場を使いたいなんて、どんな心境の変化かな~。昔はちょっと相手にしてあげたら、びーびー泣いてたくせに」

「昔のことを持ち出さないでくれよ! それ小学生の頃の話だろう!」

 現在の住居に引っ越す前は士郎の家によく入り浸っていた彼女には、幼い頃の思い出も共有されてしまっている。竹刀を片手に追い回された古傷を刺激され、取り繕うことも出来ないまま顔を赤くした士郎は、追及の視線から目を逸らして押し黙った。

「……理由はまぁ、聞かないでおいてあげる。年頃の男の子なんてそんなもんでしょ。

 うちの人に連絡して今日からでも使えるようにしておくわ」

「――――ありがとう、藤ねえ」

 鍵はいつものところに置いておくわ、と手を振るかつての隣人に、士郎は一礼をして職員室を後にしたのだった。

 

 

(これで魔術の鍛錬場所は確保できたな。今日の夜にでも、よろしく頼む)

(ふん、授業中に居眠りするような軟弱者が、危険な鍛錬に耐えられるとでも?)

(午後に入っている体育は見学させてもらうつもりだし、残りの授業は座学だけだ。部活も今日は休みで、十分体力は回復できるさ。それに……お前と一緒にいられる時間はそう長くないんだろう?)

 

 以上が昼休み中に交わしたアーチャーと士郎の会話である。

 生徒会室で柳洞一成にお礼の品を渡したり、彼と葛木教授の意外な関係を知ったり、昨日頼まれていた備品の修理に手が回らず明日に延長したりと、残り少なくなった昼休みも休む間もなく消化した衛宮士郎だったが。

「ごめん、衛宮君。人数が足りなくて。今日の試合、助っ人として出てくれない?」

 午後一番目の授業の体育。内容は男女混合のバレーボール。

 頼みごとを断れないお人好しは、見学を名乗り出ることもせず試合に参加した。

 しかし、身体の調子が整わない中での球技は一瞬の油断が命とりだ。

 案の定、姿勢がふらついた衛宮士郎は受け止める腕の角度が甘くなり、打ち込まれたボールを自らの顎へとクリーンヒットさせた。

 一瞬にしてブラックアウトした視覚の情報に、アーチャーがやれやれと呆れの感情を零したのは本日何度目か。

(この調子では今晩から魔術修行を始めるにしても、魔術回路を暴走させるのがオチだな)

 そもそも今晩はバーサーカー戦への偵察をすると、昨夜宣言してしまっている手前、あまり無茶なことはさせられない。宝具の投影も二・三本はしておきたいところだ。

 だからこの際、気絶とはいえ衛宮士郎の身体を横にして休めるのは歓迎すべきことなのだが――――。

 

 突如、鼻孔に感じる強烈な刺激。

 アーチャーの魂に染みついた過去の経験は本能レベルの危機を訴えた。即座に意識を戦闘段階まで覚醒させる。バチリと目を見開き、その刺激物の根源を探すべく、視界を回した先に目に入ったのは――――。

 

 真っ赤に煮えたぎったナニカだった。

 

(なんでさ!)




最凶の対人宝具、出現。

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