日替わり能力   作:ココリンク

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能力

チャンスは一度切りだ!

 

行くぞ!

 

俺は手に炎を宿し、男に向かい走る。

 

男はホースィに集中していて俺には気付かない。

 

その隙に背中でも脇腹でも炎の拳を放ってやる!

 

「死んだか?

いや、反撃の機会を伺っているな?

だが、無駄だ!」

 

やべ、男はトドメを刺そうと倒れるホースィの腹へ殴ろうとしてやがる。

 

こいつ!慈悲ってもんはないのか!?

 

仕方ねえ、バレるだろうが止めなくては!

 

俺は炎を男の拳目掛けて発射する。

 

「熱ッ!なんだァ!?」

 

よし、怯んだ!

 

それにパンチに体重を乗せてたのか、バランスを崩してさっきよりも隙だらけだぞ!

 

行ける。

 

俺は再び拳に炎を宿し、男を殴った…………

 

はずだった。

 

「え?」

 

だが、確かに男の体に触れた筈の俺の拳は空を切ったかのように通り抜けた。

 

目の錯覚だとか、マジックのようなトリックでもない。

 

本当に通り抜けたんだ。

 

なんなんだ、コイツは……幽霊なのか……?

 

「おい、あんちゃん。」

 

ひっ……!?

 

男は不気味な笑顔で俺の肩に手を回した。

 

怖え!

 

それにすげえ臭い息が当たってるし、幽霊でもねえ!

 

ナニモノなんだ……!?

 

「若いねえ。

最高のヒーローショーを見てヒートアップしちゃうのは分かるんだ。

だがな、どっちがヒーローかってのを見誤っちゃうのはいけないなあ。

見る目ないんじゃねえの?」

 

「お前………誰と話してやがんだ……?

相手は私だ。関係ねえやつ巻き込んでんじゃねえよ……!」

 

おい、ホースィ!

 

起き上がるな!

 

それにまたこう挑発的な態度取って……!

 

力の差分かってるのか……!?

 

「お!ほら、あんちゃん。

ヒール役が目覚めたぜ。

俺は最近、人の細かいことを見るのにはまってんだ。

あんちゃん、あの田舎者が立ったとき、ムズムズしたろ。

ズバリ、今のお前はその炎の力で誰かをぶっ飛ばしたいって思ってんだ!

いやあ、また一つ賢くなったぜ!」

 

何言ってやがるんだこいつ……!?

 

体は震えたが、ムズムズなんかはしていないし、その逆だ。

 

立ち上がったことでホースィがやられねえか心配してドキドキしたんだ。

 

「じゃあ、あんちゃん!

一発だけやっていいよ、特別だ。

安心しろって、あの田舎者の目は俺が潰してあるからあんちゃんの姿はわからねえよ。」

 

そう言って、男は俺を離して、ホースィの前に立たせる。

 

最悪だこの男。

 

仮に俺がホースィを殴れば、俺も俺もと他のギャラリーがやってきて袋叩きになる。

 

逆に殴らずにいたら男は俺を押してホースィに更に近づけるだろう。

 

だとすると、目の前にいるのが俺だと気付いていないホースィは俺を刺す。

 

そして、その直後に男はホースィを殴り、英雄になり、ホースィは豚箱だ。

 

だから、やるしかない。

 

一回目の炎はやつの拳に直撃した。

 

二回目はすり抜けたと思ったが、多分何かしらの目の錯覚だろう。

 

やつはギャンブラーだ。

 

イカサマやらトリックならが得意なはず。

 

それを利用したんだろう。

 

だが、それを用意させる暇もなく、この右の拳をやつの顔面に

 

叩き付ける!!

 

そうできた、やつが反応する暇もなく、殴れた……のに。

 

「あんちゃん……。

いけないねえ。」

 

やっぱり、やつの顔面を通り抜け、空気を殴ったようにまるで手応えがなかった。

 

「特徴を捉えられないのはいけないねえ。

捉えられなかったとしても、学習しなきゃ。

学ばなきゃ生きていけないよ。

あんちゃん!」

 

「うぐっ!!」

 

男は腕で俺の体を薙ぎ払った。

 

すげえ痛え。

 

ホースィは、これくらったのにまだ戦うきでいるのかよ。

 

「あんちゃん。

俺は泣く子も黙るロデン・トレウス様だぞ!

俺のこの最強無敵の“能力”に敵うやつはいねえってのは常識ってもんだ!」

 

能力………。

 

そうだ!能力!!

 

忘れてた、能力を持ってるのは俺だけじゃないんだ。

 

あいつも、いや、もしかしてここにいるやつら全員、能力を持っているってことか……!?

 

「じゃあ、あんちゃん。そういうことだ。

もう二度とでしゃばるんじゃあねえぞ。」

 

だめだ。

 

敵わない。

 

能力どうこう以前の問題だ。

 

俺には戦う勇気がもう、残っていない。

 

「待たせたな。田舎者。

邪魔者が入った。

それともお前の仲間?」

 

「そんなわけ……ないだろ。

だいたい………私は貴様と言ったんだ…………。

仲間に貴様と………言うわけないだろ……。」

 

ホースィ。

 

ホースィは俺って分かってたのか?

 

いやもう、今はどうでもいい。

 

ホースィは俺を庇ってくれている。

 

声は所々裏返ってるし、体も震えているのに。

 

どうしてそこまで。

 

「………それもそうだな。

ただの一般人か。

残念だな!結局仲間はいなくてよお!!」

 

「はあ!」

 

ホースィのダガーと男の拳が向かい合う。

 

結果は変わらず、男が勝った。

 

それでもホースィは何度も立ち上がり、その都度男は自分の居場所を教えるように挑発した。

 

ホースィは何度も何度も飛び掛かり、男は返り討ちにした。

 

俺は、それを見ていることしかできなかった。

 

 

「しつけえんだよ!!」

 

「ゔ…………がはっ……。」

 

5回くらい繰り返し、ついに男は痺れを切らしたのか、今までより重く素早い一撃をホースィに与えた。

 

ホースィは弾丸のような勢いでギャラリーの間を抜け、商店の壁に激突する。

 

見ると、石造りの壁にヒビが入っていた。

 

「がは……。」

 

ホースィは口から血を吐き出すと、壁からゆっくり落下し、地面へ倒れた。

 

「ギルマドン民が……!

どうせ少額だろうが、貰っといてやるよ!

コイツもな!」

 

男はホースィを尻目にホースィのツギハギの袋と、もう一つ小さな袋を持ちながら去っていった。

 

ギャラリーは各々盛り上がりながら去っていく。

 

中には、道案内をしてくれた保安官の姿も見えた。

 

そして誰一人、ホースィに近寄るものはいなかった。

 

 

 

人が少なくなった後、俺はホースィを抱え、近くの路地裏に飛び込んだ。

 

ホースィはまだ息はあるが出血が酷かった。

 

血を吐いたことから内臓もやられたと思ったが、俺にはどうすることもできない。

 

薬を買おうとも、文字は読めないし、金も日本円だからそれも無理だった。

 

だからとりあえず、血を拭き、俺の上着をダガーで切ってそれで止血した。

 

しばらくして、体の出血は止まったが、それ以上なにもできることはなかった。

 

ホースィの息はどんどん弱々しくなっていく。

 

どうして俺は許され、この15,6歳の一人で頑張るホースィがこんな目にあわなくちゃいけないんだ。

 

できるなら、俺が代わってやりてえよ!

 

「おやまあ、こんなところに御人が。」

 

路地の方から老婆の声がした。

 

俺は無意識にホースィを庇うように立っていた。

 

「どうかされました?

その娘、酷く怪我をされているようですが。」

 

老婆は優しく俺に問う。

 

どうやらホースィがギルマドンの住人だと気付いていないみたいだ。

 

いや、気付いててもいい。

 

この老婆が、最後の希望だ。

 

「助けてください!

このこ、訳あって暴力を受けてしまって。

私はどうしたらいい分からず、途方に暮れていたところです。

お礼はなんでもします!

どうか、このこの命だけでも!!」

 

俺は土下座をして必死に頼んだ。

 

だが、老婆は

 

「そうか。」

 

と言うと、俺たちの横を通り、建物の裏口と思われるドアを開け中に入ってしまった。

 

やっぱりだめか。

 

ギルマドン民に、人権はないのか。

 

俺は気付くと涙が流れていた。

 

実力の差を痛感し、ホースィを助けてやれなかった。

 

あの場を楽しむギャラリーと同じ、俺もただの傍観者だった。

 

俺にもっと力が合って、この国のことをわかっていればと無力感に泣いた。

 

「ほれ、男の方。」

 

ドアから声がした。

 

見ると、さっきの老婆が液体が入った瓶を振り、ドアを開けながら俺たちを見ていた。

 

「なにをしている?

はやくその娘を入れてやんなさい。

見ての通り、回復薬を醸造してるから。」

 

俺はその言葉にどれほど救われたか。

 

目の前がパッと明るくなった気がした。

 

「ありがとうございます!!」

 

悔しさとは違う、別の涙を流しながら、俺はホースィを建物の中へ運んだ。

 

 

 

数時間後、もう夕日が射してきた頃。

 

「う…………ううん。」

 

「…………!ホースィ!!」

 

ベッドの上で寝てたホースィが目を覚ました!

 

俺は嬉しくて反射的にホースィへと寄っていた。

 

しかし、すげえな、あの老婆の回復薬っていうのを飲んだら、呼吸も正常に戻ったし、傷も癒えるし、意識も回復するんだからよ!

 

「なんだよ。あともう少し寝させろ。」

 

なんだ、寝起きのガキみたいなそのセリフは?

 

まあ、いいか。

 

起きてくれただけでも嬉しい。

 

「…………!貴様!な……なにをそこでしてんだ!!」

 

うわあ、いきなり立ち上がるな!

 

でも、痛がる様子はないし、本当に治っちまったんだな。

 

「なに黙って笑ってやがる!

って、おい!私の服はどうした!?さっきと違うじゃねえか!!

それにどこだここ!?

なんか私にやったのか!?やったとわかったら貴様を……………おい!ダガーはどこだ!?」

 

お、おい!

 

いっぺんに質問するな!

 

と、取りあえず俺は落着いていないとな。

 

えっと、なんだっけ?

 

服と場所とダガーか。

 

「服はこの家の持ち主が貸してくださったんですよ。

さっきのでしゅっけ…………いや、汚れが酷かったんで。」

 

危ねえ。

 

確か、ホースィは聞いたり文字で見ても吐いちゃうんだよな。

 

服を貸してもらった以上、嘔吐させるわけにはいかない。

 

「それとここは、ビビンニのとある商人?の部屋です。

持ち主は今、仕事があると出掛けています。

ダガーはそこの机の上です。」

 

とりあえずこれで全部だ。

 

ホースィは納得したかどうか分からないが、ベッドの上へあぐらをかいてふてぶてしく言った。

 

「そうならそうと先に言え。

鈍臭い。」

 

いや、ホースィが聞くのがはやいんだよ!

 

でも、それほど元気になれたってことなんだな。

 

よかったよかった。

 

「貴様。

さっきの男のこと、知ってるか?」

 

ホースィは机の上を指差しながら俺に聞いてきた。

 

ダガーを取れってことか?

 

「男………確か、ロデンなんとかって言ってたような。」

 

俺は渡しながら言う。

 

そういえば、どうしてアイツはホースィがギルマドンの住人ってわかったんだろうか。

 

それと体を通り抜けるあれはいったい?

 

「ああ、ロデン・トレウス。

名前と能力だけは聞いたことあった。

ギルマドンの間でも噂になっていたからな。」

 

能力………やっぱり、他の人にも能力はあるんだ。

 

ホースィの能力ってなんだろ?

 

放水とか………………言ったら怒られそう。

 

「おい、聞いてんのか?」

 

すみません。

 

いらん事考えてました。

 

「………アイツはどういうわけかビビンニに入ったギルマドン民を見付け、暴行を加える。

やられたやつは何十人と言われ、普通ならステータス剥奪ものだが、ビビンニ民からしては下等なギルマドンを追い出してくれる英雄として崇められているからな。」

 

「ひどい。」

 

本当にそれしか言えねえ。

 

暴力を振るうロデンもそうだが、それを良しとする住人もそうだ。

 

ギルマドン民の中でもホースィみたいないいヤツはいるのに。(口は悪いけど)

 

「そして、やつは誰にも止められない。

物理的にそうなんだ。

ヤツの能力………“透過”のせいでな。」

 

透過……。

 

やっぱり、あれはトリックだとか目の錯覚じゃなかったのか。

 

「あいつは負けなしだ。

ヤツだと分かっていれば、勝つことはできなくとも逃げることはできたのに。」

 

本当にそうか?

 

あのときすごくイライラしてたし、気が短いから戦ってたんじゃない?

 

「ヤツの能力の対処ができていれば………

っていうか貴様!

なぜ私の質問に答えなかった!

すぐにじゃなくても歓声にまぎれて言えただろう!?」

 

うぐっ…!

 

それは………

 

「す、すみません。」

 

謝ることしかできねえ。

 

結局俺も、ビビンニの住人と同じことしちまったんだ。

 

謝っても謝りきれねえ。

 

「………まあ、でも貴様がここまで運んでくれたんだろ。

他のギルマドンのやつは、堀に投げ捨てられたって言うし。

これでチャラにしてやるよ。」

 

や、優しい!

 

いい人すぎだろ!

 

ホースィ、本当は何歳なんだ?

 

「だが、立場は変わんねえからな。」

 

「はい!ホースィさん!!」

 

立場は変わらなくてもいいし、ツンツンしてくれてもいい。

 

一生ついて行きてえ!

 

あ、思わず涙が。

 

「おい、なに泣いてんだよ。

発言と行動が噛み合ってねえぞ。

それにもうホースィ呼びはいい。馴れ馴れしい。

これからはモニムだ。

いいな。」

 

「はい!モニムさん!」

 

「はあ。貴様、無口だと思っていたが、騒がしいやつだな。」

 

俺はこのとき、一生をかけてその人の役に立ちたいと思う人ができた気がする。

 

こんな15,6の生意気な女なのに。

 

俺はこの女の内なる優しさに惹かれていた。

 

 

 

 

「ふー。ただいま、元気になったか?」

 

夜が更けて、深夜。

 

もう日にちは変わったかな?

 

部屋に戻ってきた老婆の声で、俺は目を覚ました。

 

モニムを見ると、ベッドの上に座りながら壁に寄りかかり眠っている。

 

可愛い寝顔だ。

 

てか、ふつうに布団敷いて寝ればいいのに。

 

「おやまあ、ごめんなさいね。

起こしちゃった?」

 

「いえいえ。すみません。こんなに寛いでしまい。

おかげさまで、このこは元気になりました。」

 

「そうかい。それは良かった。」

 

老婆はとてもにこやかな笑顔を見せた。

 

とても素敵だ。

 

この笑顔を見るだけで、色んな負の感情がどこかに吹っ飛ぶような、そんな感じがする。

 

ロデンに見せてやりてえな。

 

「ううん……。

ママ……今日はフォワイがいい。」

 

ん?

 

ベッドの方からすげえかわいい声。

 

え!?今のモニムの声か!?

 

ぶりっ子の甲高い感じじゃなくて、なんか自然というか、ふわふわとした感じっていうか。

 

俺はベッドの方を見た。

 

モニムは目をこすってとても眠たそうにしていた。

 

今の寝ぼけてた?

 

「何見てんだよ?」

 

あ、いつものに戻った。

 

「フォワイか。

珍しい料理を好むね。

お姉ちゃん、シーフィルの出身かい?」

 

老婆は優しくそう言いながら、水をコップに入れて俺たちに渡した。

 

「ありがとうござ……………

 

「あーーー!!

あなた……!もしかして!!」

 

モニム、どうした?

 

俺がお礼言ってるのに、いきなり大きな声出して。

 

それにすごく驚いたような顔してるし、失礼だぞ。

 

そう思ってると、モニムはベッドから飛び降り、コップを机に置き、俺のサイフを取った。

 

え、ちょっ………なに?なんだ?いきなり。

 

「あなた。

ナライ・フォーさん………ですよね!

私、ホースィ・モニムと言います!

私は、あなたに会うためにビビンニに来ました。

この中の額全て払います!

ですから、占ってください!」

 

額全てって………これ、俺のサイフなんだが!

 

前言撤回するぞ!おい!

 

「おほほ。

そんなに慌てなさんなって。

私はどこへも逃げないよ。

それに、そのお金はあなたのではないでしょ。

返してあげなさい。」

 

モニムは釈然としない態度で、サイフを俺に返した。

 

なんか、また怒ってる気が。

 

ほんと、気が短いな。

 

「返しました!占ってください!」

 

「ちょっ、モニムさん。」

 

つい、声にだしちまった。

 

モニム、いくらなんでもがめつ過ぎるぞ。

 

なんか焦ってんのか。

 

「ですから。占いますよ。

でも、あなたより前に、その男の人の方を占いましょう。」

 

「え!?」 「俺!?」

 

なんで先に俺なんだ。

 

モニムが苛立ってダガーでも向けられたらどうすんだよ。

 

それに俺が占ってもらうことなんて……………

 

あるか、いや、むしろ俺の言っていることの真偽を確かめるのが目的だから、俺が先でも変わらないんじゃないか。

 

「どうしてこいつなんかが。

でも、どうせつまらないことだろうし。

ぱぱっと終わらせてくれるだろ。」

 

また、心の声聞こえてるぞ。

 

「さっさと終わらせろよ。

私の方が上なんだからな。」

 

モニムは威圧的に俺に言った。

 

これは相当苛立ってるな。

 

とりあえず、俺は一歩前に出た。

 

何を占ってもらおう。

 

目的の方はモニムが言ってくれるだろうからぱっぱと終わらせられる………。

 

もう無難に明日の運勢でいいか。

 

「じゃあ、お願いします。

俺が占ってほしいものは……………」

 

「それ以上言わなくてもいいです。

もうすでに占っています。」

 

え?

 

どういうこと?

 

読心術?

 

フォーさんは俺のことをじっと見たまま動かない。

 

なにか水晶使ったり変に手を動かしたりしないで、そのままじーっと俺を見るままだ。

 

なんか、怖い。

 

しばらくして、フォーさんは口を開いた。

 

「……………あなた、一回ステータスを開いて見てくださいな。」

 

「え?あ、はい。

わかりました。」

 

俺は言われるがままに指を動かし、ステータスを開く。

 

このステータス、よく見ると数字の羅列じゃなくて、この国の文字だったんだな。

 

通りで拒否反応しめすわけだ。

 

フォーさんは一通り見てから頷いた。

 

「ニホン………やはりそうですね。」

 

ニホン…!

 

ニホンを知ってるのか!?

 

よし、これで帰れる!

 

「カドワキタケルさん。

あなた、この世界とは別の世界からやってきましたね?」

 

「え?」

 

この世界って……どういう意味だ?

 

世界って、国?

 

なんで見たまんまのことをそんなに真剣そうに言うの?

 

「ピンとこないようですか。

言い方が悪かったみたいですね。

あなたは転移してきたのですよ。

あなたが元いた世界から、この世界まで。」

 

「ん?」

 

え?ホントどういうこと?

 

転移?

 

元いた世界?

 

全然ピンとこないんだが。

 

モニムなら分かるかと思って見たが、睨み返された。

 

呆れじゃなくて威圧っぽかったから多分モニムも分かってないな。

 

「まだピンと来ませんか。

言葉を変えましょう。

この地域、この大陸、この星、この宇宙に。

あなたの出身地であるニホンはないのです。」

 

え!?

 

ニホンが……ない!?

 

どういうこと?

 

消えたの?

 

「例としていうのなら、二つの並行した川があります。

その川は決して交わることなく、まっすぐ流れていますが、なにかの歪で、あなたという存在だけが、もう一つの川へ入ってしまった。

ということなんです。」

 

え、えっと、つまりもしかして、俺………。

 

もう帰れないの!?

 

「いや、淡々と説明されても困ります!

理解はできました!けど、頭が追い付きません!」

 

「おい、貴様、今の川がなんかで分かったのか!?」

 

モニムはまだわかってないのか!

 

いや、もうそんなことはどうでもいい!

 

「フォーさん!どうしてその………えっと………転移をしたとわかったんですか!?

それと、どうやって帰るんですか!?」

 

「帰る方法はわかりません。

私は導くだけです。その導きに、あなたの帰還は出ていませんでした。

わかった理由としては、あなたのステータス。

能力のところがハテナでした。」

 

導きってなんだよ!?

 

もう、分かんねえ!

 

てかあれ、まだハテナなの?

 

「ハテナなんですか?

昨日、炎の能力を遣いましたが。」

 

「いいえ、あなたの能力はハテナ………すなわち“不明”なんです。

これは別世界から来た転移者の能力です。

実態は各々により変化しますが、ハテナは共通します。」

 

「は、はあ。」

 

いや、説明聞いてもわからない。

 

てか、分からないことだらけだ。

 

そもそもなんで口頭で言語通じるんだ?

 

なんで、能力がない世界のやつが転移すると能力使えるんだ?

 

うーん。

 

「なんか、こう不思議ですね。

別世界から来たから、能力“無し”かと思いましたよ。」

 

「ほえ、能力なし。

あなた、来たばかりなのによくその存在を知っているね。」

 

「え?」

 

その存在……?

 

どういうこと?

 

「それはこの、モニムさんから……………」

 

ってうわ!

 

なんか、モニム、すげえ睨んで……いや、怯えてる?

 

俺、なんかやばいこと言った?

 

「そうですか。

では、カドワキタケルさん。

あなたの占いは一旦ここでストップしましよう。

大きな導きが晴れたので、ようやくホースィ・モニムさんの占いができます。」

 

え?終わり?

 

まあ、色々疑問が残るが、占いってのはそういうもんか。

 

次はモニムだが………

 

「アホンダラが、アホンダラが、アホンダラが、アホンダラが、」

 

なんか連呼して震えてる。

 

ホントに俺やばいこと言ったの?

 

「ホースィ・モニムさん。

怯えることはありません。

出会ったときから分かっていました。

私の導きは均等です。

あなたの願い、占ってあげましょう。」

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