ホースィ・モニムの願い
「モニムさん。どうしたんですか?」
俺は震えて蹲るモニムに声をかけた。
見る限り血はないし、吐き気を催したわけではなさそうだが。
占ってくれるって言ってんのに、本当にどうしたんだ?
「カドワキタケルさん。
ホースィ・モニムさんの説得は私がします。
あなたは離れてください。」
占い師のナライ・フォーは俺に諭す。
だが、そういうわけにはいかない。
心配なんだよ。
もう二度と、苦しむところは見たくねえ。
俺はモニムに体を寄せ、背中を撫でる。
相変わらずモニムは言葉を連呼しているが、何を言っているのか聞き取れない。
「いいから!離れなさい!
すぐにです!!」
「は、はい!」
フォーさんの焦りに満ちた声に、俺はビビり後ろに飛び退いた。
その瞬間だ。
「アホンダラがアァ!!」
モニムは俺に向かってダガーを一振りし、切ろうとしてきた。
危ねえ、フォーさんが注意してくれなきゃ、心臓や肺が真っ二つだった。
「モニムさん……!?
俺ですよ!門脇です!」
俺はモニムに説得するが、モニムはダガーを向け俺を睨んだままだ。
なんだろう。
モニムから感じる、冷たく人を寄せ付けないオーラは。
そのとき、俺は思った。
さっき俺がビビったのはフォーさんの声でなく、このオーラだと。
「貴様……!下手なことは言うなといったはずだ!!
世界がどうとか私には分からないが、無知な貴様がこれ以上ものを口にすんじゃねえ!!」
モニムは涙目で俺に捲し立てる。
なんで俺怒られてるの!?
理由を聞きたいが、モニムの殺気のようなオーラで声が発せない。
「ホースィ・モニムさん。
あなたが背負うものは導きが教えてくれました。
彼には悪気はありませんし、私もあなたに悪いことはしません。
どうか心を静めてください。」
フォーさんは優しくそう言いながら、モニムに近づく。
最初から、フォーさんに頼むべきだった……。
お願いします!フォーさん!
「近づくんじゃねえ!
導きがなんか知らねえが、お前に私の何が分かるっていうんだ!!」
だめだ、モニムはすごい興奮してある。
フォーさんにもダガーの切っ先を向けやがった。
「わかりません。
ただ私は、あなたの願いを叶えるためのお手伝いをしたいのですよ。」
刃を向けられても、フォーさんは歩みを止めず、安定した声で説得を続けている。
なんていう精神力だ。
だが、それでも危険だ!
モニムは脅しているだけだろうし、切っ先も寸止めしようとしているかもしれない。
フォーさんもきっとそうすると思ってる。
だが、モニムの今の精神じゃ皮膚を掻っ切ってしまいかねない!
どうする!?
あのダガーを燃やす?
いや、そんなピンポイントに炎を発射する力はまだ備わってねえ!
くそ!
あのダガーを離してくれたら!
何かの拍子に俺の手元へ来てくれたら!
俺は心の中で、そう強く念じた。
そして、無意識にダガーに手を伸ばしていた。
「な……なんだ!?」
「む…!」
するとなんと、モニムの手にガッチリ掴んであるダガーがガタガタ震えだした。
最初はモニムの極度の緊張かと思ったがそれは違った。
ダガーはモニムの手からすっぽ抜け、そして、
「うわ……!とっ!!」
俺の伸ばした手元へ飛んできた。
こ……こええ。
うまく掴まなきゃ、そのまま刺さって御陀仏だった。
「き………貴様!
なにをした!?
細工しやがったのか!私が脅すから!」
モニムは驚きと怒りが混じった表情で俺に言う。
ていうか、脅してた自覚は一応あったのか。
「いえ!細工なんてしてないですよ!」
本当にそうだ!
願うと勝手に……………ってあれ、こういうの前にもあったような……。
「これは、あなたの能力がやったことです。
カドワキタケルさん。」
「え?」 「なっ!?」
能力……?
俺の能力って炎じゃないの?
なに?俺が知らないだけで炎って磁力生み出す力あるとか?
「お前デタラメ言ってんじゃねえよ!
コイツの能力は私も見たし、まったく別の能力だった!
能力はふつう一人に一つのはずだぞ!」
お、モニム、俺の言いたいことを言ってくれた。
でもさっきより顔も耳も赤いし、涙目っていうか声も泣いてるような感じだったな。
もうオーラも感じないし。
「いいえ、あれはれっきとした彼の能力です。
彼は別の世界から来ました。なので、ふつうのセオリーから外れているんですよ。」
フォーさんは淡々とモニムに説明する。
モニムはしばらく呆然と立ち尽くすと、突然泣き出した。
声はださなかったが、涙を滝のように流している。
そんな泣くことねえだろ。
珍しい事なんだし、メンバーなんだから、誇ってほしいとこだ。
「カドワキタケルさん。
あなた、ホースィ・モニムさんの能力は知ってます?」
「え、いや。知りません。」
いきなりどうしたんだ?
モニムの能力なんて聞いて。
あの女、自分の能力のこと言わないよな。
戦闘でも使ってなかったし。
「言うんじゃねえ!」
涙声だが、しっかりとした発音でモニムが叫んだ。
そんなにいやなのか?
俺なら能力があるなら自慢したいんだがな。
「ホースィ・モニムさん。
彼にあなたの能力のことは告げるべきです。
彼とあなたはいずれ、大きな役割を果たす。
そう導きが教えてくれました。
ですから、告げるべきです。
そうしなければ、あなたはつらくなる一方ですよ。」
フォーさんは優しく言うが、モニムは顔を逸し、ずっと流れる涙を拭き続ける。
つらくなる……?
いったいどういうことだ?
「本当は彼女の口からがよいとの導きがありますが、仕方がありません。
私から告げましょう。
ホースィ・モニムさんの能力は……………」
なんだ?
モニムの能力!
かっこいいのか………それともプリティなやつ?
え、もしかしてあのぶりっ子な背伸びした色気?
「“無し”だよ。」
「え?」
「おや、まあ。」
フォーさんにかぶせるような形で、モニムが言った。
確かに言った。
“無し”だと。
「無し………無しってどういうことですか?」
俺は思わずモニムに聞いていた。
モニムは確かに“能力はふつう一人に一つ”と言っていた。
それなのに、無しって。
「貴様。本当に鈍臭いな。
無しって言ってんだ。
どうだ?幻滅したか?グループを解消したくなったか?」
「い、いえ、それは……。」
ホースィは自虐的に言った。
すぐにそれを否定しなくちゃいけないのは分かっている。
分かっているはずだが、頭の処理が追い付かないんだ。
「なんだよ。なんとか言えよ。
“それは”じゃ分かんねえよ。」
「え……えっと………その。」
やばい。なにか言わないと。
でもなにをいえばいいんだ。
能力無しだと知らないで、これ見よがしに複数の能力を使ったことを謝る?
どうして能力がないかと聞くとか?
あー!もう、それじゃ、ただモニムが惨めなだけじゃないか!
俺はかわいそうだとか、幻滅だとか思っちゃいねえ。
だってモニムは強えし、俺を守った強い精神力があるから。
だが、あんな深刻そうに言われちゃどうしようもできねえよ!
「そうか、もう口を効きたくねえか。」
モニムは侮蔑な目で俺を見ながら言った。
そのとき、俺の心にぽっかりと大きな穴が開いたきがした。
「ラナイ・フォーさん。
先程は無礼な口を効いてすみません。
占いは結構です。こんな私を泊めてくださり、ありがとうございます。」
モニムはフォーさんにお辞儀をすると、何も持たずにドアに手をかけようとした。
おい、今は深夜だぞ。
年頃の女が出るには危ねえよ。
「いいえ、占いはもうしてあります。
あなたのご両親のことですよね。」
フォーさんが告げると、外にでようとしたモニムは足を止めた。
両親?
そういえば、モニムは一人暮らしだったよな。
どうしてあんな田舎の村に一人でいたんだ?
「ホースィ・モニムさん。
あなたの願い、それは愛ですね。
それを叶えるため、あなたはご両親に会いたがっている。」
「…………。」
モニムは扉を閉じ、無言でその扉を見続けていた。
愛?
家族の愛ってことか?
そういえば、寝ぼけたときに家族のことを言ってたような。
「もう一度、愛が欲しい。
だけど、居場所がわからない。
だからここへ来たのですよね?」
「………………。
ママとパパは。
どこに、いるんですか?」
モニムは扉におでこをつけ、そういいながらまた泣いた。
そこまで両親に会いたいのか。
そうだよな。
大人びではいるが多分まだ子供なんだよな。
「ホースィ・モニムさんのご両親。
導きによると、この6地域の中央の地域、“セイン域”にいます。」
「セイン域………。
あの、セインに?」
ホースィは驚きを隠せない表情で言った。
セイン域?
6地域?
また分からない単語が……。
「セイン…………。」
モニムはそう呟くと、思いっきりドアを叩いた。
おい、人の家。
「無理だ。セインなんて。
私が行けるところじゃない。
なんだよ。………恥晒して、現実突きつけられて終わりかよ。」
「モニムさん……。」
多分また、心の声が漏れてんだろうな。
よく分かんねえが、セイン域ってのは危ねえとこなのか?
俺が手伝ってやりたいが、もうモニムの信頼はないに等しいもんな……。
「無理ではありませんよ。
ホースィ・モニムさん。」
「………気休めはいいです。
ありがとうございます。これで楽に………」
「いいえ。気休めではありません。
あなただけでは無理でもいるじゃないですか、あなたのメンバーが。」
フォーさんは俺の方を見た。
そうだ。俺はモニムの……ホースィ・モニムとグループを結んだんだ。
メンバーが悩んでいるのに、分からないから何もできないって言い訳みつけて、ほったらかすなんて、そんなのグループのリーダーじゃねえ!
「モニムさん。
あの、事情が分からずモニムさんを傷付けるやつな発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。
お詫びと言ってはなんですが、モニムさんの願いを叶えるのを手伝わさせてください。」
俺は心の思うまま、言葉を出し、土下座し頼んだ。
俺ができるのはこれくらいのことだけだ。
「……………ダガー。」
「え?」
「ダガー、返せよ。
なに、下手な真似はしねえよ。
コイツは形見なんだ。
それに貴様は鈍臭いから、ソイツがないと危ねえからな。」
モニムはいつの間にか涙を引っ込め、いつも通りの口調で俺に言った。
えっと、これって……………?
「ほら、早く返せよ!
貴様はホントに鈍臭えやつだな!」
「は、はい!」
俺は慌ててダガーをモニムに返した。
モニムはいつものように呆れた感じの表情で俺を見ながらダガーを受け取り、胸の鞘に納める。
本当にいつも通り、さっきのいざこざがなかったかのようだ。
「貴様………。」
「はい。」
「手伝うのは勝手だが。
足引っ張るんじゃねえよ。
私の方が立場は上なんだからな。」
この物言い!
このセリフ!
モニムは俺を許してくれたんだ!
素直に頼めないなんて、ツンデレだなー!
「おやまあ、あなたたち、いいグループになれそうですね。」
一部始終を見ていた、フォーさんが茶化すように言った。
モニムはどう思っているかは分からないが、俺はなんか嬉しかった。
「それにしても、あなたたちのグループ名はとてもユニークですね。」
「グループ名?」
そんなのあったのか。
どんなのつけたんだ。
「貴様、それも把握してなかったのか。
ホントに無知だな。」
いや、これはモニムが言ってないのが原因だろ!
ステータスに書いてたかもだけど読めないし。
でも気になるし、聞いてみよ。
「なんてつけたんですか?」
「ホーカドだ。」
「え?」
ホーカド……?
「聞こえなかったか?
ホーカドだ。いい名だろ?」
ホーカドそれって、もしかして。
“ホー”スィと、俺の“カド”ワキを取って、ホーカド?
「ぷ!」
やべえ、面白え!
この女、ネーミングセンスゼロじゃん!
思わず吹き出しちまった!
「おい!貴様!
今、笑ったな!どこに笑うとこがある!?」
お、おい!
さっそくダガーを向けるな!
「す、すみません。」
「あはは。
ほらお二人さん。もう夜が深いんだからもう寝なさい。
まだ導きが残っていますが、私眠くてだめでね。
早朝に告げますね。」
フォーさんはそう言うと、椅子に腰掛けこっくりこっくりと眠ってしまった。
寝付くのはやいな。
俺もこれくらい早く眠れたらな。
寝付き悪いんだよな。
「おい、貴様。」
って、うわ、モニム。
いつベッドに上がったんだよ。
「いつまで床にへばりついているんだよ?
奥にソファがあるから使わせてもらえ。」
へばりついているって………土下座知らない?
ジャパニーズ土下座。
まあ、いい。
今はとりあえず寝よう。
安心したら眠くなってきた。
おやすみ、モニム。
モニムの両親に会えるよう、お互い、頑張ろうな。
「貴様、起きろ。
おい。」
んん、なんだ。もう朝か?
なんか凄い変な夢見た気がするな。
能力が何とか。
そういえば、凄くかわいいけど口が悪い女の子がいたな。
「起きやがれ、この。
もう日が昇るぞ。」
そうそう、こんな感じで高圧的で……………ってん?
俺は目を開け、あたりをキョロキョロと確認した。
そこは間違いなく、夢のまま、占い師の家の中だった。
「起きたか。」
「あ、はい。」
モニムの言葉にとりあえず、テキトーに返事する。
やっぱこれ、現実?
そういえば、昨日一回ここで寝てんじゃん!
モニムが回復したのが嬉しくて夢か現実か確かめられなかったけど。
嘘だ………本当に異なる世界に迷い込んでるのかよ。
「なにボーッとしてんだよ。
貴様、寝起き悪いな。」
ショックを受ける俺に、モニムは呆れた様子で言う。
いや、モニムも寝起き悪いというか、寝ぼけてたじゃん。
っていうか、本当に眠い。
睡眠不足感が否めない。
今、何時だ?
窓から見える外も真っ暗だし。
「モニムさん。今、何時なんですか?」
「5時くらいだ。
深夜に一回起きたから少し遅れちまったな。」
「5時!?」
モニムは首にさげた懐中時計を見ながら言った。
え?5時?
そんな早く?
ってか遅れた?
モニムいつも何時に起きてんだよ!?
いや、待て俺の5時とモニム……っていうかこの世界の5時は違うかもしれない。
「なにを驚いている?
起こすの遅すぎたか?
悪いな。私も今、起きたとこだ。」
「いや、そうじゃなく。」
逆、早すぎる。
いつも起きるの7時くらいだぞ、俺。
いや、確証はないけど、なんとなく、そんくらいな気がする。
「あら、お二人さん。
早起きなのね。」
フォーさんが扉を開けて中に入ってきた。
早起きっていうことは、やっぱ5時はニホンと同じ、早朝って認識でいいのか?
「「おはようございます。」」
偶然にも同じタイミングで、俺とモニムが挨拶した。
すると、モニムは俺のことを睨みつけた。
「貴様、被せてくるんじゃねえよ。
私の方が上だからな。
貴様は私の後に言え。」
「は、はい。」
そこも拘るのかよ。
ホントにプライド高いな。
「おはよう、お二人さん。
これ、お口に合うか分かりませんが、よかったらどうぞ。」
フォーさんはそういうと料理が乗った皿を机の上に置いた。
湯気が立ってる。
いい香りだ。
「「あり」がとうございます。」
「ありがとうございます。」
俺たちは机のそばの椅子に座った。
なんだろう、この料理。
たくさんの見たことない野菜がたっぷり入ったシチューみたいだ。
「いただきます。」
「どうぞ、召し上がれ。」
俺はスプーンを取り、取りあえずスープをすすった。
そこらへんの食べ方は同じなんだな。
うーん、意外と甘い。
汁物なのにデザート食べてるみたいだ。
この世界はこういうのが好きなのか?
モニムはどうだ…………ってえ!?
「モニムさん?どうしました?」
泣いてる。
そんなにキライなのか、これ。
「うっせえ、こっちみんな。
それに、野菜とスープ一緒に食うもんだぞ。」
モニムは俺から目を逸して言った。
アドバイス、ありがとう……。
「さすが、ホースィ・モニムさん。
食べ方を分かっていますね。」
「当たり前です。
だって……………私の大好物なんですよ……。
何年経っても、忘れるわけないじゃないですか。」
モニムは涙声で感情的に言う。
大好物なのか、じゃあ何で泣いてたんだ?
ん?何年経っても?
何年も食べてなかったってことか?
ってことはこの料理って!
「すみません、フォーさん。
用意してくださったのは嬉しいです。
ですが、私、両親に会うまで食べないって決めてるんです。
この、フォワイは。」
やっぱり、寝ぼけてたときに言ってた料理だ。
これがフォワイか。
モニム、結構甘いの好きなんだな。
両親に会うまで食べないか………。
本当に会いたいんだな。
「そうですか。
わかりました。後ほどドウェスバッファの焼き肉を持ってきますね。
昨日から何も食べていないのですよね?」
え、あのドウェスバッファってあの化け物!?
あいつ食えるの?
そういえば、ギルマドンでモニムが回収お願いしますとか言ってたな。
「大丈夫です。私、能力無しなので、消費が少ないんですよ。」
そんなこと言ってないで貰えよ。
財布盗られてんだし、いくら消費が少なくてもしっかり食べないと両親が心配するぞ。
「そんなことより!
導きの続きを教えてください!
セインに入るには資格が必要なことは知っています!
その資格の内容ですよね!」
モニムは凄い勢いで机に手をついて前に乗り出す。
お、おい。衝撃でフォワイが少し溢れたぞ。
チャンスを掴みたいのはわかるが、少し落ち着けって。
「そんなに慌てないでくださいな。
それに導きはそんなに都合がよいものではありません。」
「え…?
じゃあ、わからないんですか?」
モニムはショックを受けたような顔をして、前のめりの体をもとに戻した。
早とちりだったが、ちょっとかわいそうだな。
「わからない……というわけではありません。
ホースィ・モニムさん。
あなたはビーウェス域の村や町はいくつあると思いますか?」
「え?
それは、ここの大都市ビビンニと、吹き溜まりの村のギルマドンの2つですよね。」
「そうですね。
ですが、私の導きにはもう一つ村があると出ました。」
「え!?」
モニムは驚いた顔をしている。
モニムが何年その………ビーウェス域?に住んでいるか分からないが、住民でも知らない隠された村があるってことか!
おおー!
なんかそういうの興奮してくる!
「村の名はゴルム。
ここより南東へくだった森の奥へあります。
そこの長に会えと、導きはそう教えてくれました。」
「ゴルム……。
そこに行けば、セインに……!」
モニムの体が震えている。
武者震いか?
顔もなんだか、希望に満ちあふれているし、年相応って感じだな。
「ホースィ・モニムさん、これであなたの占いは終わりです。
ご武運を祈ります。」
「はい!ありがとうございます!!」
モニムは不器用な笑顔で可愛らしく言った。
もしかしたら、これが本当の素のホースィ・モニムなんじゃないかな。
ホント、ずっとこうしてくれたらいいのにな。
「おい、貴様。」
って思ったそばからそうやって……。
でも声が嬉しそう。
「なんですか?」
「金だ。財布出せ。」
ああ、そうか………って言い方よ。
俺はモニムのATMじゃないんだから。
「いえいえ、お代は結構ですよ。
寧ろ、こんなおばばの気まぐれに付きってくださったのですからね。」
俺がポケットから財布を出そうとすると、フォーさんは優しい声で俺につげた。
本当に優しいな。この人。
人ができてる。
「それではカドワキタケルさん。
あなたの導きの続きもしましょう。」
「俺の?」
ああ、そういえば、俺もまだ途中だった。
モニムの正体ってか能力が驚き過ぎて忘れてたよ。
「まず、なぜこの世界に呼び出されたかですが、導きには何もでませんでした。」
「え?え、それじゃあ、理由もなしにポンと来たんですか?」
「そういうわけではありません。
導きが出る人と出ない人がいてあなたは出ない人だったようです。」
「はあ。ん?待ってください、出る人と出ない人と言いますと、俺以外にも別の世界から来た人がいるんですか?」
本当にそれに尽きる、なんか当然のように言われてスルーしそうになったが、同じような人がいるとすれば、帰れる方法がわかるかもじゃん!
「ええ、いますよ。」
よし!
「ですが、彼らのその後の動向は不明です。
私は導くだけの存在。その後どうするか知る権利はありません。」
うーん。それじゃ、だめか。
でも、少し希望があるかないかで違うな。
「おい、貴様!待て!」
いきなり難しい顔をして聞いていたモニムが俺に叫んだ。
「なんですか?」
「帰れるかって、さっき貴様聞いたよな?
もし、貴様が帰れる方法を私がセインに着く前に知ったら、貴様は帰っちまうのか?」
「え?」
なんで、そういう質問を?
それに“帰っちまうのか”って帰ってほしくないような言い方だけど。
いや、夜に願いを叶える協力するって俺が言ったんだから約束破るなって意味だよな。
別に“そういうやつ”じゃないよな。
「いいえ、約束を果たすまで俺はこの世界にいるつもりです。」
「………当たり前だ。何カッコつけている。」
モニムはそう言うと俺から顔をそらした。
照れ屋だなー。
ってまだ占いの途中じゃん。
「すみません、フォーさん。」
「いえいえ、仲が良くてなによりですよ。
グループの仲は良好が一番です。
では、次にあなたの能力ですね。」
「能力………。」
これが一番気になるんだ。
どうして能力は一人に一つなのに、俺は炎と………なんていうんだ、引き寄せ?念力?………なんだ?
「あなたの能力は深夜の際に告げたように不明。
これは転移者特有のものです。
この能力からは実に多種多様な導きが出ました。
そして、あなたの導きは“日替わり”です」
「…………日替わり?」
なんだ、日替わりって、ランチか?
「導きからはそれしか出ませんでした。
意味はご自身で考えてください。
カドワキタケルさん。これで、あなたの導きは以上になります。」
「はい………。ありがとうございます。」
なんか、呆気ないな。
釈然としない。
「あ、そうです。
お代は頂かないのですが、少しお財布の中身を確認してもよろしいですか?」
「え?あ、はい。
わかりました。」
財布?なんでだ?
くすねる気か………って思ったが、モニムのあの笑顔を見たら、全財産やってもいいかなって思うな。
いや、それだったら、モニムの財布盗られてるから俺たち一文なしになるじゃん、うん、いまの取り消し。
そう思いながら俺は財布を机の上に出して、中を開けた。
「なんだ?紙切ればっかりじゃないか?
ただじゃなかったら、貴様訴えられてたぞ。」
モニムが札を凝視しながら言う。
財布を勝手に使おうとしているやつがどの口を。
「ほお、これがニホン円ってものですね。
ここでは使えないので、両替をしておきましょう。」
「いいんですか、ありがとうございます。」
おお、危ない。
まあ、確かに一つ海を超えれば使えない金を別の世界で使えるわけないよな。
「貴様、硬貨こんくらいしか入ってねえよな。
ビンボーか?」
「…………。」
モニムがさっきじっと見ていた札は1万円だ。
だいたい10万は入ってるから、まあある方だと思うぞ………多分。
「私、硬貨のコレクションが趣味でしてね。
こうして異世界から来た方のお金を売ってもらっているのですよ。
ほれ、このくらいでよいかな?」
そう言ってフォーさんが出したのは巾着袋に硬貨がいっぱい入ったものだった。
フォーさんが中身を見せたとこ、モニムは目を光らせ飛びついた。
「金貨……!こんなにたくさん!
ナライ・フォーさん!いいんですか!?」
「ええ、大丈夫ですよ。
その財布の中身がどのくらいの価値かは分かりませんが、異世界からのレア物ですから。」
「さすが、ナライ・フォーさん!
ありがとうございます!」
そんな適当でいいのかよ!
確かにこの人、有名な人らしいけど、気前が良すぎる。
「これは私が預かる!
貴様はまだ物の価値が分からないからな!」
「は、はい。」
この女、金にがめついな。
まあでも、多分大金なんだろうな。
俺もドラマでよくあるアタッシュケースいっぱいの万札が目の前にあったら、こうするかもしれないし。
「フォーさん、ありがとうございます。」
「いえいえ、役に立ててくださいね。
この世界に来た以上、なにか使命があるはずです。
その使命を果たす手助けになれば私も嬉しいです。」
「はい。」
使命か………。
まだ分からないけど、俺は使命を果たすために来たのか。
ま、よく分からないし、取りあえずモニムの夢を叶えるのを協力するか。
この“日替わり”の能力でな。