真・エルフ転生TS ‐エルフチルドレン‐ 作:やきなすいため
あの人に、エルフさんに出会ったのは、今から数えて一年と半年くらい前のことだ。
あの日はとても寒くて、お母さんもベッドで寝込んでとてもつらそうにしていた。
お父さんはお母さんが元気なるように体にいいものを取ってくると言って狩りに出かけた。
僕も手伝いをしようと思ってついていくといったけれど、お母さんのそばでしっかりと看病しておくように言われて、ついていくことはできなかった。
じっとお母さんを見ていた。
顔が真っ赤になっていて、汗もいっぱいかいていて、暑そうにしているのに寒いっていっていて、とても、とてもつらそうにしていた。
僕はおかあさんの汗を拭いたり、お水を持ってきたり、いろいろした。
けど、お母さんはあまりよくならなかった。
お母さんは僕に少しだけ楽になったと言ってくれたりしたけど、嘘だってことは僕にもわかった。
誰が見てもしんどそうだった。
僕は、何もできないのが悔しくて、少しだけ泣いた。
本当に僕には何もできないのかなと思ったとき、昔お母さんに教えてもらったお話を思い出した。
森の中には妖精さんがいて、いいこにしているとどんな願いもかなえてくれて、わるいこは連れ去って食べてしまうんだってお話。
だからいいこにしないといけないんだよって、そんなお話をしてもらったのを思い出した。
森に行けば、妖精さんに会えるのかな。
僕は思った。
妖精さんにお母さんの病気を治してもらおうって。
自分がいいこかどうかはわからなかったけど、いっぱいお願いすれば妖精さんもお願いを聞いてくれると思ったから。
僕は家をこっそり抜け出して森の中へと入っていった。
この森は僕の遊び場でもあった。
あまり奥に入ったことはないけれど、多分大丈夫だと思った。
けれど、僕は道に迷ってしまった。
どこを探しても、妖精さんを見つけられなくて、どんどん夜になっていって、本当に帰れなくなっちゃうかもしれないと思った。
だから、帰ろうとした。
したんだけど、帰り道がわからなくなってしまった。
普段森に入るときには雪は降っていない。
止んだ後にしか入らなかった。
けれど、今日森に入ったときには、そしてこの時も、ずっと雪が降り続けていて、僕の足跡に雪が積もってしまって、どっちから来たのかもわからなくなってしまっていたんだ。
どうしよう。
そんな思いだけが頭にいっぱいになった。
お父さんに教えられたことを思い出した。
雪の降っている間に森に入ると帰れなくなるから絶対にいくなって言われていた。
なのに入ってしまった。
お父さんが言っていたことがどういうことなのかわかってしまった。
僕は、帰り道がわからないなりに歩き回った。
頭と肩に雪が降り積もっていく。
せめて洞窟とか木の洞でもあればそこで雪をしのげるのに。
そんなことを考えながら歩き続けた。
でも、どこまで歩いても森の木々が邪魔をして、降り積もった雪に足を取られてしまって、僕は森から出られなくなってしまっていた。
お父さんの言うことを聞かなかった僕はわるいこなんだ。
だから妖精さんが僕を捕まえてしまったんだ。
そんなことを考えてしまった。
けど、泣いたりはしなかった。
お父さんに男の子は泣いちゃだめだって言われていたから、それだけは言うことを守ろうと思ったから。
歩いて、歩いて、歩き続けて、もう限界かもしれないと、そう思ったときだった。
目の前から木が減って、目の前に小川が流れていたんだ。
村の近くにも、森から伸びている川があったのを思い出した。
この川のそばを歩けば帰れるかもしれない。
そう思って小川に近づいたけど、足がもつれて、倒れてしまった。
倒れた先に会ったのは、小屋だった。
村のどの家よりもぼろぼろで、誰かが住んでいるとは思えないほど、ぼろぼろだった。
けど、小屋の中からは生き物の気配がした。
地面を歩く、人の足音だ。
ぎぃ、と音を立てて、ぼろぼろの扉が開いた。
初めてあの人を目にしたとき、僕は妖精さんだと思った。
雲の間から少しだけ差し込んでくる月の光があの人の髪を照らしていて、夢か何かなんじゃないかと思うほど、あの人は、綺麗だった。
「……少年、こんな夜遅くにどうした。どこから来たんだ?」
あの人はそう訊ねてきた。
僕は答えた。
「ぼ、くは、その、トーマス……お母さんが、病気で、森に来れば、治る、かもって……近くの、村からきてて、その、迷って……」
うまく言葉がまとまらないなりに、あの人は僕が話すのをゆっくりと待ってくれていた。
「そっか。なるほど……うん、それじゃあ俺が君を、君の村まで送っていこう。ああでも今日はもう夜遅くだからここに泊まっていった方がいいかな。大丈夫、見た目はぼろぼろだけど、中は毛皮とか敷いていてそれほど寒くないから」
あの人は、そういって僕に小屋の中へ入るように誘っていた。
僕は、少しだけ怖かった。
目の前の人が、わるいこを森の奥に連れて行ってしまう妖精さんなんじゃないかって思ったから。
けど、僕はあの人に言われるまま小屋の中に入った。
怖かったのは本当だけど、それ以上にあの人が、エルフのお姉さんが僕に向けてくれた笑顔が、とても優しいものだったから、この人は僕に悪いことはしないと思った。
そうして、僕とおねえさんは小屋の中で眠ることにした。
おねえさんは本当に何もしてこなかった。
ただ、眠れないのか時々寝苦しそうに声を漏らしていたのが聞こえていた。
僕が、緊張して寝付くことが出来ないでいると、おねえさんは小屋の外へと出ようとしていた。
僕は訊ねた。どこへ行くのかと。
おねえさんは、真っ赤な顔をしていた。
お母さんと同じで、真っ赤な顔で汗をいっぱいかいていて、とてもつらそうにしているように見えた。
おねえさんはなんでもないよ、と言っていたけれどなんでもないわけないと思った。
おねえさんもお母さんと一緒で病気なんだと思った。
僕に何かできることはないのかなと思って、言った。
「おねえちゃん、びょうきなんだよね。ぼくが、おねえちゃんのびょうきをなおすてつだいをする」
するとおねえさんは、何かを我慢してたのをやめるように、僕に近づいてきて……キスをされた。
両方の頬におねえさんの白くて冷たい手が触れて、僕の顔を引き寄せられるように、キスをされてしまった。
お母さん以外の人からは、初めてのことだった。
そこからはそのままおねえさんにされるがままにされて、いつのまにか眠ってしまっていた。
そして朝目が覚めると、僕はおねえさんの背中に揺られていて、いつのまにか村の近くまでやってきていた。
そうして僕は村に帰ることが出来た。
その日から、僕の村には時々おねえさんが遊びに来てくれるようになった。
おねえさんはおかあさんの病気を治す薬をくれたり、遊んでくれたり、とてもいい人だった。
やっぱりおねえさんは妖精なんじゃないかと思って一度だけ聞いてみたことがある。
おねえさんは妖精なのかって。
そうするとおねえさんは少し困ったような、悩んだ顔をして答えてくれた。
「一応、人間だよ。妖精に近い種族なのかもしれないけどね。」と言っていた。
苦笑いを浮かべるおねえさんに僕は首をかしげてしまったけれど、頭を撫でてもらったからそれで気にならなくなってしまった。
そうやっておねえさんと遊んだりしていると、夜遅くになるとおねえさんはまたあの日の夜のように苦しそうにしたりするところを見かけてしまった。
実を言うと、あの時僕がおねえさんからされたことがどういうことなのかを、僕は知っていた。
お母さんから、僕はいつか村長になるから、いつかお嫁さんをもらったときにはこういうことをするんだ、ということを教えてもらっていた。
なんでかちょっと恥ずかしかったけれど、何をどうすればいいのか、とかは教えてもらっていたんだ。
だから、あの夜はどういうことだったのかわからなかったけど、この時にはおねえさんがどんな状態なのかもわかっていた。
そして、僕はおねえさんの気が済むまでおねえさんを助けていた。
本当は、お嫁さんをもらったときにしかしちゃだめなんだろうけど、つらそうにしているおねえさんを見ていられなかったし、何より僕は、遊んでくれたり、優しく笑ってくれるおねえさんが好きだったから。
いつかおねえさんが僕のお嫁さんになってくれるのなら、うれしいなって思うくらいに、僕はおねえさんのことが好きになっていた。
そのことをお母さんに相談したりもした。
いつかおねえさんと結婚したいって。
お母さんはいろいろと考えたり、悩んだりしていたけれど、僕が本気だってわかったら手伝ってくれるって言っていた。
そうしたら、お母さんはおねえさんとお話をして、僕が町の学校へ通うときにおねえさんが付き添ってくれるようにしてくれた。
元々お母さんが付き添ってくれるはずだったんだけど、それをおねえさんにお願いしたらしかった。
それと、おねえさんも僕のことが好きなんだって言っていた。
だからいつかおねえさんと結婚してもいいし、おねえさんに秘密にしてなさいって言われていたことをおかあさんになら秘密にしなくていいって言っていた。
おねえさんはいつかお嫁さんになるから、いっぱいしてもいいって言ってくれた。
少し恥ずかしかったけど、うれしかった。
そうして僕とおねえさんは二人で街に住むことになった。
僕は学校があるから休みの日以外は会えないけれど、休みの日はおねえさんが住んでいる家に帰って、いっぱい仲良く過ごした。
実を言うと学校では田舎者だからっていじめられたりしそうになったんだけど、いつのまにか僕のことをすごいやつだって言われるようになっていた。
どうしてそんなふうに呼ぶのかと聞いてみたら「あんな美人なおねえさんと……仲良くしているなんて、すごいやつだ」って言われた。
もしかしたら休みの日におねえさんと一緒にいるところを見られてしまったのかもしれない。
少し恥ずかしかったけれど、僕は言った。
「おねえさんは大人になったら僕のお嫁さんになるからあげたりしないよ」
みんなはやっぱりお前はすごいやつだって言って僕の背中を痛いくらいに叩いてきた。
いじめられた時にも痛いことはあったけど、この時の背中の痛みは、悪い気分にはならなかった。
そうやって一か月が過ぎ、二か月が過ぎ、三か月が過ぎて……季節は夏、火の季節になろうとしていた。
だんだんと日が照っている時間も長くなり汗をかくことが多くなった。
街には薄着の人も増えて、冒険者の人たちの中にはすごく、その、肌が出ている人もいたりして少しだけ恥ずかしかったりするけど、おねえさんと一緒に過ごしていることを考えれば、それほどでもなかったりする。
その日は週末だった。
僕はいつも通り学校が終わってからおねえさんが働いているお店へと向かおうとしていた。友達からは「今夜も頑張れよ!」なんて言われたりした。
少し恥ずかしかったけど笑って頷いていた。
週末だけしか会うことが出来ないというのはやはり何とも言えない気分だ。
全寮制だとそのあたりの融通が利かないのが問題だと思った。
僕が大きくなるまでにそこを変えたりできないのだろうかと考えたりもした。
そんなことを考えたりしているとおねえさんの働くお店「テムズのおおがらす亭」についた。
看板には店の名前通りにおおがらすが彫られている。
僕はこのマークのことを結構気に入っていたりする。
なんとなくかっこいいと思っていた。
扉を開けて、店の中に入る。
学校が終わってすぐだとやっぱりまだ人は少なくて、店の中にはおねえさんと店主のおじさん、お客さんが二、三人だけというのがいつもの風景だ。
僕は今日もまたいつも通りだな思いながら店の中を見回す。
「……あれ?」
違和感にはすぐに気が付いた。
おねえさんがいない。
首をかしげながら店主のおじさんに聞いてみた。
おじさんとはおねえさんを迎えに来た時に何度か話したこともあって顔見知りだった。
「おじさん!」
「あん? トーマスじゃねえか。どうした?」
「おねえさんは? いつもこれくらいに仕事、終わっていたよね? もしかして買い出しに言ったりしてるの?」
おじさんは首を傾げていた。
「エルフの姉ちゃんなら一時間くらい前に仕事を切り上げちまったぜ? なんかよう、急な客が来てしまったとかでよ。坊主、お前さん聞いてなかったのか?」
「……そんな話、聞いてない……ありがとう。家に行ってみる」
「おう、一度家に戻るって言ってたからもしかしたら家にいるかもな。気を付けて帰れよ!」
僕は頷くと勢いよく店を出た。だんだんと日が落ちてきて、辺りが暗くなってくる。
照りつける太陽がいなくなればこの辺りは暑さも引いて、少し肌寒くなるくらいだ。
だというのに、僕の額からは汗が流れ続けていた。
嫌な予感がする。胸騒ぎがする。
おねえさんが僕に黙ってどこかに行くなんてありえない。
うぬぼれかもしれないけれど、僕もおねえさんも、お互いのことが大好きで、いつかは結婚しようねって言い合ったりもしたくらいだった。
だから、僕に相談もなく何かするなんて、有り得ないんだって思っていた。
走って、走って、ようやく家に着いた。
扉を開ける前に気が付く。
家の中から人の気配がしない。
急いで扉を開くと、そこはいつもの、僕とおねえさんの家だった。
けれど、おねえさんは家のどこにもいなかった。
どこにも。
家の中に入って調べる。
どこかにおねえさんがいなくなった手掛かりが残されていないか、調べる。
すると、一通の手紙を見つけた。
おねえさんが僕に残した置手紙だ。
『トーマスへ。すぐに帰ってくるから心配しないで。私なら大丈夫だから。帰ってきたらいっぱい楽しもうね。エルフより。』
僕はその手紙をポケットにしまい込んで家から飛び出した。
おねえさんを探さないと。
少し不穏ですが、大丈夫です。NTRとかそういうのはないので安心してください。
ですが読者の皆様の期待添えられるかはわかりません。
考えている今後の展開的に受け入れてもらえるかはわからないと思えることもあります。しかしそれが私の性癖なのだと思って諦めてもらうことしかできません。
私は、私の性癖と欲望に従ってエルフさんを動かすだけです。
いつも誤字修正を手伝っていただきありがとうございます。助かっています。
感想を書いていただき、お気に入り登録をしていただけありがとうございます。
もしよろしければ感想を書いていただけると嬉しく思います。
読んでいただきありがとうございました。
2024/1/23 改行など若干加筆修正