真・エルフ転生TS ‐エルフチルドレン‐   作:やきなすいため

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第八話 エルフ日記7

 今更ではあるけれどこの日記の書き出しを「吾輩はエルフである。名前はまだない。」とかにすればもっと元現代日本人っぽさが出てよかったかもしれないと思う今日この頃。

 とはいえ今更書出しを変えることなんて出来ないし別に変える必要もないと思うしこのままでいいかなと思っている。

 

 それはそれとして。

 

 前回の日記から結構間が開いてしまった。

 日にちにすると、多分一か月と少しくらい。

 町へ行く前にダリアからいくらか町のことについてレクチャーしてもらったり、いろいろなことを教えてもらった。

 今回の日記は前回から今日までのことを覚えている範囲で一つずつ書いていこうと思う。

 

 まず一つ目。

 魔術について教えてもらった。

 実はこれが一番驚いたことだったりする。

 むしろなんで今まで考えたりしなかったんだと言われそうなことなんだけれど、日常的にいろいろと生死をかけたことが多かったりで忙しくてで考える余裕がなかったのだから仕方がない。

 

 この世界には元の世界でいうところのいかにもなファンタジーな世界観であり、当然魔術というか、呪文を唱えて物理法則を超えた不可思議な現象を起こす技術が存在した。

 そういう技術をこの世界の人々は魔術と呼んでおり、それを引き起こすための力を魔力と呼んでいるらしかった。

 いかにもそれらしい設定というか……いや、この世界の人たちからすればそれが常識なのだろうけれど。

 

 まあそういうわけで私はダリアから魔術についての説明、レクチャーを受けた。

 受けた……んだけれど、正直言っている内容がさっぱりわからなかった。

 いや、何を話しているのかはわかるんだけど内容が何のことを言っているのがわからないというか……ほら、聞きなれない固有名詞がたくさんあると何のことを言っているのかわからないってことはあると思うんだ。

 うん。そういうことです。

 

 けどこれは私の理解力が悪いというわけでないことはここに宣言したい。これは邪神のせいなのだ。

 以前からなんとなくそうなんだろうなと思っていたことではあるんだけれど、憎たらしいあの邪神野郎……女神だけど野郎でいいでしょ。

 私と同じで外見は女だけど中身というか人格は男かもしれないし。

 ともかくあの邪神が用意したというこの私の体には言語翻訳機能がついているのだ。

 

 私はこの世界に降り立ってからずっと日本語を喋っているつもりだし、ダリアやトーマスから聞こえてくる言葉も全て日本語として耳に入ってくる。

 初めてトーマスに会ったときはそれはびっくりしたものだ。

 こんな西洋系ないし北方系な見た目の超絶くそカワ美少年ショタが普通に日本語喋ってるんだもの。

 なんのドッキリかと思ったものだけどそもそもの状況がドッキリでは済まされない状態だったからすぐにそうじゃないと判断できた。

 

 要するに私の体には彼らが使う異世界語を日本語、というよりは私が聞きなれている言語に自動で翻訳してくれる機能が備わっていたのだ。

 これのおかげで村の人々と会話するということに限っては日常生活を送る上では特に問題が起こることはなかったのだけれど、この魔法のレクチャーを受けているときに問題が起きた。

 

 固有名詞、さっぱり意味が分からない。

 

 いや、ダリアからの説明の中で固有名詞が使われているんだなーということ自体はなんとなくわかってはいた。

 いたんだけど私の翻訳機能がそれらを無理に翻訳しようとした結果、こう、レベルの低いインターネット翻訳サイトが翻訳したような、ひとつの単語を無理矢理ぶつ切りにして別々の言葉で翻訳した感じの、割とヤバイ感じの状態にしか翻訳されず、説明を理解する事が出来なかったのだ。

 

 これ、私は悪くないと思う。

 悪くないよね?

 

 そういうわけでダリアから受けた魔術の講義で分かったことはあまりない。

 ただ最低限の知識として魔術は杖がないと使うことが出来ないということと、魔法陣のようなものを使うものもあることがわかった。

 あとそれに付け加えて魔術とは自分がしたいことを思いながら魔力を放出することだということも。

 

 ダリアにはこの説明が通じるまでかなり頭を悩ませることになってしまった。

 本当に申し訳ないと思っているけれどこれは私のせいではない。

 全てあの邪神が悪いから私のせいではないのだ。許してほしい。

 

 とはいえ、なにはともあれ私はダリアから魔術についての説明を受けて、どうにかこうにか僅かではあるけれど魔法を習得した。

 火を熾したり、風を吹かせたり、水を出したりとそんな感じ。

 土で物を作ったりもできるみたいだけど、作るもののイメージがかなり明確に出来ていないと難しいらしく私には向いていなかった。

 残念。

 

 ただこの魔法についてなのだけれど、ダリアには人前であまり使わないほうがいいと言われた。

 私もそう思う。

 何故かというと、私、魔法を使うときに杖も使ってなければ呪文も唱えていないからだ。

 なんか念じたら出来たって感じの状態で、どちらかというと私のこれは魔術というよりは超能力のようなものだと感じている。

 起こしている結果は同じだけれど過程が全く違う。

 場合によっては珍しいものだからと捕まえられて解剖コースかもしれないし、自分と違う存在だからと差別を受けるかもしれない。

 あるいは危険人物だと思われて捕まってしまうかもしれない。

 まあ、日本に住んでいた頃……の『俺』の記憶の中にあるファンタジーな世界観の小説でも稀によくある話だったし、それと同じだと思っておけばいいか。

 

 ダリアも初めは大きく目を見開いて驚いていたけれど、それはそれ、これはこれと切り替えの早い人らしく私の魔術がおかしいことも受け入れてくれて、忠告だけしてくれた。ダリアは本当にとてもいいひと。

 

 これがまず一つ目、私は魔術を覚えた、という話だ。

 

 

 

 

 これに関連する余談になるんだけど、私の血、あるじゃないですか。

 あれやっぱり危険物だと思う。

 

 私が魔術を使うときに不意に思いついて指先傷つけて血を出しながら魔術を使うと、普通に使うのと比較して有り得ない規模の結果が起きた。

 例えばマッチで火を熾す程度の火の魔術を使おうと思ったのに起こった結果は火炎放射器どころかキャンプファイヤーというか。

 端的にわかりやすく言い換えると「今のはメラゾーマではない、メラだ。」が実演できてしまったというわけだ。

 

 ……これ、ますますあの自称女神の邪神説が高まってしまった気がするんだけどあいつ的には大丈夫なんだろうか。

 いや、あいつのことなんて全くもって微塵も心配していないけれど。

 

 試しにダリアが魔術を使うときに私の血を飲んでから使ってみてもらうと、私が使ったときほどではないけれど魔法の規模が大きくなっていた。

 

 悪い人に狙われてしまう理由が増えたので滅多に使わないことにしよう。

 

 ちなみにこの世界に傷を癒す魔術はないらしい。

 ダリア曰く、そんな事が出来るのは時間を操ることのできる神様くらいだとのこと。

 

 そんな世界で一瞬で傷を治してしまう私の血はまさに万能薬。

 ……絶対に捕まったりしないようにしよう。

 

 

 

 

 まあ、そんなことを色々と考えてはいたのだけれど、結局私は人前で魔術を使ってしまった。

 

 あれはトーマスとともに村を出て、町へ向かっていた時のことだ。

 町までもうすぐだというところだったがもう日もだいぶ落ちてしまい、町に着くころには真っ暗になってしまうし今日は野宿することにしようとトーマスに持ち掛け、街道から外れた森の木陰で、その、こう、発情を迎えた私はトーマスをこう、襲ってみたり、トーマスから襲ってもらうための練習をしてもらったりといろいろとしていた。

 

 ……だって、こう、せっかくお許しが出たんだし……その、はい。

 公認なのでセーフだということにしてもらいたい。

 

 そうこうしているうちに私とトーマスはいつの間にか布一枚身にまとっていないまさに野生、まさに獣、みたいな格好になってしまっていた。

 だって汗だくだったし。冬が明けて水の季節になると少しだけ湿度が高まってて蒸し暑かったし。

 

 トーマスの若い精をたっぷり搾り取って吸い尽くした私は発情も治まり、結構体力使っちゃったしそろそろ寝ようかー、という話をトーマスとしているといつのまにやら辺りが騒がしくなっていた。

 

 私は木の陰から街道の方を見てみた。

 すると街道にはすごい速さで走っている荷馬車と、それを追いかけまわしている……おそらく野犬の群れと思われるものを目にした。

 荷馬車の御者が荷物を辺りへ巻き散らせば野犬たちがそれに釣られて足を止める。

 恐らく野犬たちはあの荷物が目当てなのだろう。

 一心不乱にかじりついているところを見ると彼らにとってはよっぽどのごちそうだったに違いない。

 

 この様子ならあの荷馬車もそのうち逃げられるじゃないかな、と思っていた矢先に馬車が横転した。

 車軸が折れて車輪が外れたのか、野犬の体当たりで跳ね飛ばされたのかは定かじゃないけれど、これではあの荷馬車の御者が逃げきるのは絶望的だろう。

 だが幸いにも野犬たちは荷物に夢中のようだし、案外なんとかなるんじゃないだろうか。

 私はそう楽観的に見ていたのだが、私の予想とは違い野犬たちは御者にも襲い掛かっていた。

 

 これはまずい。

 あのままじゃあの人はこのまま食い殺されてしまう。

 別に見も知らぬ相手だし、このまま放っておいても別に私には何の関係もない相手ではあったけれど……私が生きながらにして肉を食われる感触とか、骨を砕かれる感覚を知っている。

 何より、人が獣に食い殺される場面を見るというのは、あまり気分がいいものではなかった。

 

 後ろを振り向く。

 トーマスは私と違い、寝るために服を着なおしたりしていたようだが、途中から私と一緒に野犬に襲われる荷馬車を見ていたらしい。

 

「トーマス。あの馬車から逃げた馬、追いかけることはできる?」

 

 トーマスは森から街道、平原の方へと視線を走らせる。

 

「……たぶん、だいじょうぶ。にげててつかれてるはずだし、いま急げば、ぼくなら追いつくことができる」

 

 トーマスは案外俊足だ。山歩きに慣れており、ジョルジュに連れられて狩りの練習もしていた。

 獣の動きにも詳しいはずだ。

 馬については、トーマスに任せよう。

 そう考えた私は目配せをしてトーマスに馬のことを頼んだ。

 トーマスは私にどうするのか、という視線を向けていたが、私が人差し指の先に火を灯して笑ったのを見れば小さくうなずいて走り出していった。

 

 さて、ここからは私の仕事だ。

 

 私は勢いよく草の茂みから抜け出し、野犬の群れに襲われている御者の方へと駆け出した。

 とはいえ散々足腰を使った後だったというともあってあまり速くは動けなかった。

 多分、御者の人には私が歩いているように見えていたかもしれない。

 今更ながらに、呪いのせいとはいえ本当に申し訳ない。

 

 私が野犬の群れに近づくと、どうやら野犬たちは私に気が付いたらしく御者に噛みつくのをやめていた。

 そのまま野犬の群れは少しずつ私を取り囲んでいく。

 どうやら御者から意識を逸らすことができたらしい。

 ほっと息を吐いて気が緩まった瞬間、野犬の群れは私に向かっていっせいに襲い掛かってきた。

 

 それはもうすごい勢いだった。

 群れだろうから多分獣にも獣なりの序列とかがあったろうに、そんなことは関係ないとばかりに我先にと押し合いへし合いして私に噛みついてきて、食い殺そうと必死になっていた。

 まあ実際食い殺される寸前みたいな状況ではあったけれど。私の再生能力がなければ普通は死んでいたと思うし。

 

 そうやって野犬の群れをできるだけ多く惹きつければ、あとは簡単だった。

 私は火の魔術を使った。

 その瞬間、私を中心に、というか私もろとも燃やす勢いで火柱が立ち上り、私に噛みついていた野犬たちを一掃した。

 私は裸でよかった、服を着ていたら一緒に燃えてしまうところだった、なんてことをのんきに考えながら野犬と一緒に燃えていた。

 まあ元々『私の狩り』の要領でやるつもりだったから服を着るつもりはなかったんだけどね。

 超速再生のおかげで表面が焼けた端からどんどん回復し続けていたから暑いくらいで痛みとかはそれほどではなかったし。

 

 ほとんどの野犬の群れが燃え尽き、残りが遠くに逃げたのを確認すれば、私は少しずつ火の勢いを弱めさせながら御者の人に近づいていった。

 

 御者は男だった。

 まあ普通はそうか。

 それときっと南の人だと思う。

 肌が浅黒くては髪の色は金髪……というよりは蜂蜜色というのだろうか。

 燃え盛る炎が髪にキラキラ光っていてちょっときれいだ。

 体格が結構がっしりしていて鍛えられた無駄のない筋肉が体を覆っている。

 顔も悪くないし結構モテるんじゃないかこの人。

 私が男のままだったら嫉妬して卑屈になっていたところだった。

 

 まあ今の私の身体は女になっているのでそれほど嫉妬はしないけれど。

 しないわけではないけれど。

 

 男は茫然とした顔で私のことを見上げていた。

 それはまあ、当然と言えば当然だった。

 野犬の群れに襲われていて死を覚悟していただろうという頃に、突然見知らぬ全裸の女が現れて、常識の範疇を超えた火柱立てて野犬の群れを燃やし尽くした場面とか、普通に考えて夢か何かだと思うだろう。

 

「大丈夫ですか。もう大丈夫ですよ」

 

 とりあえず安心させるようにと声をかけたのだが、その瞬間に男は気絶していた。

 

「おねえちゃん、だいじょうぶ?」

 

 男についてどうしたものかと考えていると、トーマスが逃げた馬に乗ってやってきていた。

 白馬でないのが残念だけど、馬に乗ったトーマスがすこしかっこよかった。

 さっき攻めてもらっていたからかもしれない。

 普段は私がほぼ一方的に攻めてばかりだったけれど今回は初めて攻めてもらって、これは女になってみないとわからない感覚だったかもしれないと……すでに発情が終わっているはずだというのにまたお腹の奥が熱くなってしまいそうだった。

 

 ……、危ない。

 この日のことを思い出しているとまた少しばかりトリップしかけてしまっていた。

 最近は週末しかトーマスに会えなくて寂しいからかもしれない。

 早く週末になってくれないかな。

 

 

 話を戻そう。

 

 私は壊れた荷馬車から車軸を抜いて地面に打ち付けた。

 これくらいなら土の魔術を使って軽く穴をあけて差し込めばいいから楽だ。

 そしてそこにトーマスが連れてきてくれた馬の手綱を結び付けておいた。

 これなら御者の男が目を覚ました後もなんとか馬に乗って町へ行くことが出来るだろう。

 

 とりあえずこれで問題はないだろうと判断した私はすぐにその場を立ち去り、荷物を置きっぱなしにしている森の方へと戻っていった。

 すぐに気絶したとはいえ、男が私の魔術を見ていたわけだしこのまま目が覚めるまで残っていても質問攻めにされそうな気がしたからだ。

 

 そしてそのまま寝た。

 旅の疲れもあったし、噛みつかれたり魔術を使ったりといろいろ消耗したし。

 

 

 今日はここまでにしよう。

 本当はほかにも書こうと思っていたけれど想像していたよりも長くなってしまった。

 続きはまた明日。

 

 週末は日記を書かない。トーマスとのあれそれしか書くことないだろうし。

 

 以上。




書くのが少し遅くなってしまいました。
エルフさんが順調にメス堕ちしかけていて私としても嬉しい思いでいっぱいです。


感想を書いていただき、お気に入り登録をしていただけありがとうございます。

もしよろしければ感想を書いていただけると嬉しく思います。
読んでいただきありがとうございました。

2024/1/23 改行など若干加筆修正
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