妹と仲良くしたいと願ったら女になってしまったのですが!?   作:akatsuki4612

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妹と一緒に買い物に行く日

「志穂……そんなに引っ張らないで」

 

グイグイと腕を引っ張られ、ショッピングモールの中を連れて行かれる。行く場所はもう決まっているのか、志穂の足取りに迷いがない

 

「お兄ちゃんが遅いからだよっ。……ひぅ。も、もう少し早く行こー」

 

男性が近づく度に、少し離れて逃げるように移動している

 

「わかった……ほら、無理しないで」

 

志穂の身体を抱き寄せて、守るようにして歩く

 

「う、うん……っ」

 

物凄く密着しながら歩いている。

……正直歩きずらいけど、これも志穂の為だ。

 

そのまま歩いていると、どうやら目的地に到着したらしい。女性物の服が沢山置いてある

 

「着いたよ志穂……志穂?」

 

肩をポンポンと優しく叩く

 

「ひっ……。あ、う、うん。ありがと……」

 

すると志穂はいきなり呼んだせいか少し驚いている

 

「服と水着……まあ無難に肌が見えにくいのがいいよな」

 

メンズ用のコーナーを見て、気に入った服を取っていく

 

「お兄……お姉ちゃん。そっちじゃないよ。レディース、でしょ?」

 

「え……やっぱレディースじゃないと、だめ?」

 

「だーめっ。それに……ほら。こっちだと、男の人も来ちゃう、し……」

 

「あっ……ご、ごめん。れ、レディースの方に行こっか」

 

「……うん」

 

しおらしく頷く志穂

……なんだか気まずい、どうしよう

 

「あ、あんまり肌が見えない服ってどこら辺にあるんだろう」

 

「えっと……あっち、かな?」

 

そう言って目的のものがある場所へ指を指す

 

「ありがとう……出来れば志穂も見てくれると嬉しいんだけど……似合うかわかんないし」

 

「うん。見てあげるね、お姉ちゃん」

 

少し微笑み、そう答える。ある程度志穂に任せておけば多分服は何とかなると思うけど……水着はどうしようか

 

「まあ志穂が服選びに気を取られてる間にこっそり入れればいいか……」

 

聞かれないようにこっそり呟く

 

「お姉ちゃん? どうかした……?」

隣を歩きながら尋ねてくる志穂、どうやら声は聞こえなかったみたいだ

 

「ううん、なんでもない」

 

「ふーん、そっか。……あ、あれだね。そういえばお姉ちゃん。お姉ちゃんってどんな水着が好き?」

 

「そうだなービキニとか好きだよ? ……あっ、見る分としてはね」

 

「お姉ちゃん、ビキニとか好きなんだー。へぇー」

 

志穂は悪戯っぽい笑みを浮かべる

 

「……むう、悪かったね、ビキニが好きで」

 

「悪いとは言ってないよ? その……そういうのが好きなんだなぁ、ってだけだから。うん」

 

「男なら誰だって好きだと思うよ、多分」

 

そう言いながら服を取っていく

 

「ふーん……」

 

俺の隣で服を探している志穂

 

「これでいいかな……女性物でもまともな方でしょ」

 

さっき自分で選んだ服を着て、試着室から出る。青のジャケットに白のキャミソール、そして黒のホットパンツである

 

「おぉ……。お姉ちゃんって結構センスあったんだ……」

 

意外だ、と言わんばかりに感嘆の声を漏らす志穂

 

「適当に選んだだけだよ……オシャレとか別にする必要もないし」

 

「ふーん……そっか。それであれは? 水着は?」

 

「ラッシュガードでいいよ……サイズとか測ってないし、適当に選んでおけば着れるでしょ」

 

試着していた服を脱いで、元の服に着替える

 

「ラッシュガード、ねぇ。うーん……」

 

何故か不服そうな顔をしながらこちらをじっと見てくる

 

「……何さ、志穂は俺に何を着て欲しいの?」

 

「別に……。せっかくだから、もう少し派手な服着てほしいなぁ、って」

 

「派手……ねぇ、そういうのはよくわかんないんだけど」

 

「ハイネックビキニとかどう? あれなら控え目な方だろうし……」

 

「あー……俺には似合わなそう」

 

「絶対似合うと思うんだけどなぁ」

 

「やっぱり無難にラッシュガードで……」

 

「あ、志穂ちゃんだー!」

 

ラッシュガードを手に取ってカゴに入れると、遠くから声が聞こえる

 

「ひっ!?」

 

「志穂ちゃん久しぶりっ……ってなんで私怯えられてるの?」

 

「あ、く……くるみちゃん。ビックリさせないでよ、もう……っ」

 

「あははー、ごめんねー……ん? 志穂ちゃんの隣にいる人って誰?」

 

くるみと言う人は首を傾げながら聞いてくる

 

「ふぇ? え、っと……。し、親戚の子だよっ。名前は……」

 

志穂は困ったような顔をしながらこちらを見てくる

 

「え、えーと……桜井 夏奈って言います」

 

適当に思いついた名前を喋る

 

「ふーん、夏奈ちゃんかぁ……よろしくね!」

 

そう言って胡桃は俺の手を無理やり掴んで握手してくる

 

「お……夏奈ちゃん。この人は友達のくるみちゃんね。同じ学校の子だよー」

 

「そうなんだ……志穂ちゃん、友達いたんだなぁ……」

 

俺がいない所でもしっかりやれているようで兄としては嬉しい

 

「あれ? ねーねー志穂ちゃん」

 

「うん? どうしたの?」

 

「愛しの彼氏とまだ上手くいってないのー?」

 

「ばっ! ちょ、ちょっとしー!」

 

志穂は慌てて胡桃の口を塞ぐ

 

「んーっ!」

 

何かを言っているんだろうがよく分からない

 

「志穂ちゃん彼氏いたの?」

 

「い、いや! 居ないからっ。くるみちゃん! その話今はしないでっ。後でいっぱい聞いてあげるからっ」

 

「なんでー? だって今、私と志穂ちゃんと夏奈ちゃん……男性はいないし、彼氏さんだっていないじゃんー」

 

「い、いない……けどっ。その……ともかくっ。夏奈ちゃんにバレるのも恥ずかしいし、ねっ?」

 

何だろう、こんな反応をするということは本当にいるんだろうな……男性不信になる前にいたんだろうか? なんだか悲しい……って違う、ここは祝ってあげないといけないんだ 。

 

「ちぇー、まあまた今度話すかー」

 

「あ、いっけない、そろそろ行かなきゃ! じゃあねー志穂ちゃんと夏奈ちゃん!」

 

そう言って走ってどこかへ行く胡桃

 

「嵐のような子だったね……」

 

「う、うん……。そうだね……」

 

どこかほっとしている志穂

 

「で、彼氏って誰なの?」

 

「ふぇっ!? お、お姉ちゃんには内緒っ」

 

「えー……気になるなぁ」

 

「ぜーったい。言わないからっ」

 

「誰が相手でもちゃんと祝うのに……まあ志穂がそう言うなら仕方ない」

 

「う、うぅ……。とりあえずっ。早く買っちゃおー」

 

「そうだねー」

 

レジの所へ歩いて、服が入ったカゴを置く。店員さんがカゴに入った服を出してバーコードを通……ん?

 

「ふふふー」

 

志穂の方を見ると、隣でニヤニヤと笑みを浮かべていた

 

急いで確認すると、何故かワンピースが入ってるし、水着に至ってはラッシュガードが入っておらず、代わりにクロスホルタービキニが入っていた

 

「志穂ー?」

 

志穂の頬を指でグイグイ押し込む

 

「うーん? 私しーらない」

 

「というかビキニはサイズ合ってるかわかんないのに……」

 

「大丈夫ー。お姉ちゃんならきっと似合うよっ」

 

「入らなかったらどうするのさ、その時は志穂が着てくれるの?」

 

「うっ……。えーっと……お母さんに……いや。なんか嫌だなぁ。う、うん。仕方ないなぁ……」

 

冗談のつもりで言ったのだが、何故だか顔を赤くして了承してくれた

 

「あ、ほんとにしてくれるんだ……わざと入らなかったとか言おうかな」

 

「じゃあ帰ったら1回試着してみよっか?」

 

「え、いいの!……って俺は妹になんて事をさせようと……」

 

「何言ってるのお姉ちゃん。試着するの、お姉ちゃんだよっ?」

 

にっこりと笑顔で言う志穂

 

「……嵌められた気がする」

 

「今のはお姉ちゃんが勝手に勘違いしただけだよー」

 

「ぐぬぬ……どうせ入らないんだ、そんな適当に選んだサイズが入るわけないんだー」

 

「ふふ。そうだといいね? お姉ちゃん、早く会計済ませて、帰ろっ?」

 

「うん……」

 

店員にお金を支払い、服が沢山入った袋を持つ

 

「帰り……大丈夫? おんぶとかしようか?」

 

「な、何言ってるのよお姉ちゃんっ。むしろ半分くらい荷物持とっかー?」

 

「俺の荷物なんだから自分で持つって……それに志穂は怯えないように我慢するので精一杯でしょ」

 

「怖くなったら抱きついてもいいんだぞ?」

 

「し、しないって! ……は、早く帰ろうよ、お姉ちゃん……」

 

恥ずかしいのか志穂は視線を下げる

 

「あー……そっか、彼氏いるんだもんな……悪い悪い、じゃあ帰ろっか」

 

「べ、別にいない、って。……好きな人はいるけど」

 

最後に志穂が何か言った気がするが……気の所為かな?

 

それにしてもこの二日間だけでいろんな志穂を見てる気がする。あの事件以降、暗くなっちゃったと思ってたけどそんなことは無かった、それを知れただけこの姿になってよかったと感謝している。

 

「ほら、せめて迷わないように手を……って荷物で塞がってるんだった……腕でも組むか?」

 

「だ、大丈夫だって。近くに居てくれれば、それで、いいから……」

 

そう言って志穂はゆっくりと寄り添ってくる

 

「そっか……俺ならいくらでも傍に居てやるから……」

 

志穂の背中の手を回して優しく抱きしめる

 

「う、うん。……ありがとう、お兄ちゃん」

 

「どういたしまして……さあ、帰ろう」

 

「……うん」

 

やはり恥ずかしいのか、下を向いたままだ

 

俺は志穂の背中をそっと支えて、二人で家に帰るのだった。……ちなみに何故か水着はピッタリだった


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