妹と仲良くしたいと願ったら女になってしまったのですが!? 作:akatsuki4612
「暑い……なんで今日こんなに暑いんだ」
タンクトップと短パンを着て、アイスを口に咥えながらそんなことを言う
もう夏のイベントもやり切って、夏休みも残り数日となったが、未だに女性から元に戻る方法が見つからない
もう今となっては諦めているが……戻れるなら戻りたいものだ
「ナギー! あっ。こんな場所に居たのね!」
若干興奮気味で駆け寄ってくる母さん
「んぇ……どうしたの母さん?」
「何してるの! 夏休み終わる前に早く行くよっ」
母さんが半ば無理やり連れて行こうとする
「えっ、ちょ……何処に行くの!?」
「えっ。……あ。ごめん、説明し忘れてたわね、私ったら。神社よ。女体化した日の前に行った神社。もう戻る手段がありそうなの、あそこくらいしかないしね」
「じ、神社……それでダメだったら……もう、諦めるしかないのかな」
「まだ分からないよ。でもね、分からないなら試してみるのが一番よ。まぁパパに話したら『どうして最初に行かなかったんだろうね』なんて言われたけどね」
「ははは……だって思いつかないよ、うん」
「ふふん。そういうわけで、神社に行くよっ」
「うん……えっと、みんなで?」
「うん。できる限りあの時の再現したいしね。パパもシホも車で待ってるよ」
「え? ……その服でいいと思うけど」
「結構露出激しいから! 嫌だよ!?」
「えぇー。楽しいと思ったんだけどねぇ」
「楽しくないよ!? 男性に変な目で見られるだけだよ!」
「あらそう……。まぁできる限り早くね?」
そう言って母さんは先に外へ出ていった
「……適当にジャケット羽織ればいいかな」
そう言いながら着替えていく。最近女性物の服にも慣れてしまった自分が嫌だ
「……これでいっか」
そして靴を履いて外に出る
外に出ると車が出ており、志穂、父さん、母さんが既に車に乗っていた
「凪ー、早く乗れー!」
父さんが声を掛けてくる
「うん、いくよー!」
返事をして車の後部座席へ乗り込む。そして車が発進する
隣には志穂が座っていた
「あ……えっと、志穂」
「う、うん? 何かな。お兄ちゃん」
「……後部座席に乗ってるの、珍しいね」
「そうかな? ……ただ気分で、その。後ろに乗りたかっただけだよ。うん」
「そ、そっか……え、えぇと」
志穂となんて話せばいいか分からない。この前、志穂にあんな事を言ったから……
「し、志穂……俺が戻ったら、嬉しい?」
「え? う、うーん……お兄ちゃんはお兄ちゃんだからね。嬉しいかどうかは、正直わかんないや。でも、戻っても戻らなくても、私はお兄ちゃんのこと……だから」
志穂の方を見ると、小さくスキと発音しているように見えた
「……ありがとうね」
手を伸ばして頭を撫でる
「ふぇ……? う、うぅ……」
顔を赤らめ、恥ずかしがる志穂
「2人ともーそろそろ着くぞー」
暫くして、父さんが教えてくれる
神社に到着して車を止めた後、両親は外に出る
「俺達も出よっか」
そう言って志穂の手を掴む
「う、うん……」
そうして一緒に外に出る
「えっと……確かこっちだったよね?」
志穂を連れて鳥居をくぐり抜ける
「うん……」
そうして歩いていると奥に両親が見えた
「おーい、こっちこっち」
「あ、お母さん達いたよ。お兄ちゃん」
「あ、ほんとだ……」
志穂はいつものように周りを警戒しながら歩いている
「父さん、母さん……」
「おう、じゃあ早速お参りするか」
「うん、そうだね」
父さん達が4人分のお金を入れる
少しして俺はお祈りをする。元の姿に戻れますように……
そう思いを込めてお祈りをする
ふと、隣を見ると志穂もお祈りをしていた
「……志穂は何をお祈りしたの?」
「ん? ふふっ。これからも『お兄ちゃん』と仲良くできますように、だよっ」
「……志穂っ!」
思わず抱きしめそうになるも、慌てて止める
「う、うんっ? どうしたの、お兄ちゃん」
「う、ううん……嬉しくて、つい抱きしめそうになっただけ」
「ふぇっ。あ、え……う、うぅ……」
言葉にならない様子で恥ずかしがっている
「2人とも何してるんだー? 次はおみくじ引くぞー」
「……呼ばれてる、早く行かなきゃね」
「……う、うん。そうだね」
2人で歩いてくじ引きの所へ行く
「お金は入れてあるからいつでも引いていいぞ」
「ありがとう父さん」
そして沢山あるくじの中からひとつを手に取る
前回は大凶だったんだよなぁ……あんまり年内で引くのは良くなさそうだけど仕方ないよね
「あ……大吉」
開けるとそこには大吉と書かれた紙があった。前回とは真逆の結果になったなぁ……まあいいけど
「ふふっ。良かったね、お兄ちゃん。えっと、私は……あ、また大吉だ」
「志穂……結構運いいんだね、おめでとう! とりあえず、これ結ぼっか」
「う、うん……」
そうして2人で結び所へ歩いていき、おみくじを結ぶ。……本当にこれで元に戻るのだろうか
不安を感じながらおみくじを結び終える
「……お兄ちゃん。大丈夫だよ、きっとねっ」
俺の不安を感じ取ったのか笑顔で答えてくれる志穂
「……そうだよね。きっと、これで戻れるよね」
そう自分に言い聞かせるように言いながら見上げる
すると、空で何かが飛んでいるのが見えた。
目を擦ってもう一度見てみると、既に見えなくなっていた。
見間違いだろうか。鳥ではなかった気がするし……
「お兄ちゃん? どうかした?」
「いや……空になんか飛んでたような……気の所為……かなぁ?」
「ナギー、シホー。そんな場所で何してるのー! 用は済んだし、もう帰るよー!」
遠くから母さんの声が聞こえてくる
「あ……うん、今行くよー!」
「う、うん!」
志穂も慌てて付いてくる
■□■
「家に……着いたね」
「うん……」
「これで明日、どうなってるかね」
「最初はこの姿になって、とても嫌だったし早く戻りたいなんて思ってたけど……今となってはよかったのかなって思ってる……」
「少し……名残惜しいや」
「そ、そうなの……?」
「ん。じゃあまたお祈りしに行く? 神社に」
「お母さん、そういうことじゃないと思うの」
「はは、だって女性になってなかったら……家族四人でこんなに話したり遊びに出かけたりなんて、できなかった」
「今頃、部屋でゲームしてたり、ゴロゴロしてたり、友達の家に遊びにいったり……家族と過ごす時間なんてなかったかも」
「……うん、そうだね」
「ふふん。……ああ、私はそろそろご飯作ってくるわね」
母さんはそう言ってキッチンへ行く
「あ、ママ俺も手伝うよ」
父さんも母さんの後を追ってキッチンへ行く
「……それに、こうやって志穂と過ごすこともできなかったから、ね」
志穂の背中に手をまわして抱きしめる
「両親には、内緒にしとかないとね」
「ふぇっ。あ。え……うん……」
恥ずかしそうに顔を赤らめながらも抱きしめている
「今日は最後の夜かもしれないし……一緒に寝る?」
「え、っと……うん。……一緒に寝る」
「そっかっ……ふふ、夜中が楽しみだなぁ」
「ご飯できたぞー!」
「あっ……また後で……今はご飯食べに行こ」
「う、うん……っ」
そうして家族4人でわいわいと賑やかな食事を迎え……夜になった
「志穂、来たよ……」
「え、っと……ようこそ?」
「とりあえず枕は持ってきたけど……他に何かいる?」
「い、要らないと思うよ。ただ一緒に寝るだけ……だしね」
「そ、そっか」
枕をベッドに置いて横になる
「……結構ベッドふかふかだね」
「う、うん……」
恥ずかしそうに志穂は俺の隣に寝る
「……そういや、女性物の服どうしよ。あれもう着ないだろうしなぁ……」
「わ、私が貰うよ。お母さんじゃほら……着れないだろうしさ。私しか着れる人居なさそうだし」
「ありがとうね、使い古しだけど……捨てるのも勿体なかったし、助かるよ」
「……志穂、ちょっとだけお願いしてもいいかな?」
「ん? 何かな、お兄ちゃん」
「肌寂しいから……もうちょっとだけ寄ってくれる、かな」
「う、うん……」
顔を赤くして近寄る
「小さい頃も……こうやって一緒に寝てたね」
優しく頭を撫でる
「……うん」
顔を埋めて小さくなる志穂
「ふふ……今日はもう、寝ようか」
背中をポンポンと優しく叩きながら目を瞑る
「うん、寝よっか……」
顔を埋めたまま、志穂も目を閉じる
□■□
「ん、ふわぁ……よく寝た」
身体を起こそうとするが、隣でまだ志穂が眠っている事に気付き、ゆっくりとベッドから出る
そして部屋から出て、洗面所へ歩いて行き顔を洗おうとする
「あれ? 顔が違うような……」
鏡に映ったのは、最近見慣れた女性としての自分の顔ではなく───前までの男性としての自分の顔が映っていた
「……あっ!? も、戻ってる!!」
思わず声に出しながら顔や身体をぺたぺたと触る
ほ、本当に戻ってる……男性の姿に……やっと戻れた!!
「やったー!! し、ほ……」
嬉しくて部屋で寝ている志穂に言いに行こうとしたが、扉の前で立ち止まる
……そうだ、俺が男性に戻ったっていうことは、また志穂は男性不信のせいで……関わり辛くなる
あぁ……また前のように距離が離れた状態で過ごしていくことになるんだ。こんなことなら……戻らない方が良かったのかも
そう思いながら、部屋を後にしてリビングへと向かう
「おはよう……」
「おはよう。あら。あらあらあら! ナギ、戻ったのねっ」
母さんが思いっきり抱きしめてくる
「久しぶりねっ、ナギくんっ」
冗談っぽく笑顔を見せる母さん
「あぁ、久しぶりだね母さん……」
俺もそれに返すように微笑む
「いやー……本当に良かったな、元に戻れて」
「うん……ありがとう、父さん、母さん」
「2人が頑張ってくれたおかげで元に戻ることができたよ」
「ふふんー。まぁ思い付いたの遅過ぎた感はあるけどね……」
「ははは……仕方ないよ、だって普通気付かないよ」
「戻れただけ……マシだよ」
「ふーん……そっか。ところでナギ、シホは?」
「まだ部屋で寝てるよ……ぐっすりと」
「そうなのね。じゃあナギ。起こして来て、ね」
「母さんが起こしに行けばいいでしょ……俺は嫌だ」
「だーめ。……せっかく仲直りできたんだし、自信持ちなさい。昔に戻りたくはないでしょう?」
母さんは満面の笑みを浮かべる
「そう、だけど……まだ男性不信があるだろうし……朝からそんな怖がらせたくないよ……」
「ナギ! 当たって砕けろ、よ。そんなんじゃ、いつまで経っても変われないわ。必要なのはきっかけよ。貴方がそれを作るの」
「……もし嫌われたら?」
「そう思うだけでもぞっとする……嫌われたくないよ」
「ナギ……女性になったから、シホと仲良くできたわけじゃないと思うわよ? 貴方だったから、昔の仲に戻れたんじゃないかしら。もしシホが貴方のことを嫌ってたら、そもそも仲良くできなかったと思うけど?」
「……そう、かな」
「そうじゃなきゃ、一緒に寝るなんてことしなかったと思うけど?」
「ぶっ……な、なんで知って……!?」
「ふふん。適当に言っただけなんだけど、本当に一緒に寝たのねぇ」
「ぐぬぬ……わかったよ、行ってみるよ」
「ええ、行ってらしゃい」
そうして俺はリビングから出て、志穂の部屋の前に立つ
「……大丈夫、もう覚悟を決めたんだ」
意を決して扉を開ける
志穂は静かに寝息を立てて気持ちよさように寝ている
「……」
声を掛けずらい。やはりああ言われてもどうしても脳内に過ぎる
「おにい……ちゃ……」
志穂が寝返りをうち、寝言が聞こえている
「……何、弱気になってるんだ俺は」
志穂はいいって……言ってくれたじゃないか。認めてくれた……だからちゃんと応えなきゃ
「志穂、起きて。もう……朝だよ」
「んー……? ぁ、おにい……」
志穂はまだ寝ぼけているのか急に抱きしめられる……そして顔を近づけられ、目の前に志穂の顔がある
「し、しほ!? あ、あの……」
「おにい、ちゃ――」
目と鼻の先まで近づいた唇がゆっくりと触れ合う
「んんっ……!?」
とても柔らかくて、いい匂いがする。自分が女性だった時と違って……また違う感覚だ。
「ん……? へ? おにいちゃ…………ぁう!?」
目が覚めたのか、慌てた様子で離れる志穂。顔が真っ赤だ
「……おはよう、志穂」
急にされるものだから心臓がバクバクとなり続けている上に……これだけは男性って不便だよな
「お、おはよ……」
さっきの出来事が忘れられないのか、志穂は顔を赤くして目を逸らしている
「朝から凄いびっくりしたなぁ……」
「しょ、その……ごめんねっ。あのほら。ちょっと間違えただけだから! なんか夢で色々と変ななんかあの……っ!」
物凄く動揺している志穂
「いや……ベつにいいよ、うん。嫌じゃないから……むしろ嬉しいし」
「うっ、うぅ……そっか。よ、良かった……」
そう言って笑顔を見せる志穂
「そ、そういや……元に戻ったんだけど……志穂、大丈夫なの?」
「怖いとか……ない?」
「え? ……あ、ホントだ。うん、大丈夫……かな。特に怖いとか、そういうのは感じないよ、お兄ちゃんっ」
「そっか……そっかっ!」
「よかった……また距離があいたらどうしようかと思ってたっ!」
「ん。お兄ちゃん、心配してくれてたんだね。見ての通り、大丈夫だよ。……多分、慣れたのかな。女性だったけど、お兄ちゃんといることに」
「慣れたって……そういうものなの?」
「んー……正直なところ分かんない。でも、ずっと一緒に居てくれたから、大丈夫になったんだと思う。……多分ね。自分でもよく分からないけど、お兄ちゃんが居るから安心できる、っていうのだけは分かるの」
「……なるほど」
「ん。……だからさ、お兄ちゃん。これからも……近くに居てくれる……かな?」
「……喜んでっ これからもずっとよろしくね志穂!」
「うん! よろしくね、おにーちゃんっ」
笑顔でそう言う志穂
そうして俺たちは手を繋いでリビングへと向かっていく───これからも、色々あるかもしれないけど、志穂と一緒なら大丈夫だから!
これにて本編完結になります! 見てくれた方はありがとうございます。本編は終わりですが番外編を少し投稿していこうと思っておりますのでこれからもよろしくお願いします