0.0 頭を使うのは得意でしてよ!
ガンプラバトル·ネクサスオンライン。
通称をGBNと呼ばれるソレは、ネットワーク上で構築された電脳仮想空間『ディメンション』とガンプラバトルを融合、中心として様々なミッションを楽しむことができるオンライン·ネットワークゲームである。
ダイバーギアさえ用意できればガンプラを持たなくともログインすることが可能であり、従来のガンプラバトルとは違い、リアルガンプラ必須という格式が取り除かれたことでガンプラ製作の得手不得手を問わず、誰でも気軽に楽しむことができるという点が非常に魅力的であった。
その手軽さ故に元々あったガンプラ人気と相まってアッという間に世界規模の人気を確立していた。
そんなGBNにおいて『ジャイアントキリング』と呼ばれるプレイヤー――GBNダイバーが存在した。
攻撃力に極振りしたクソデカ武器や防御力に極振りしたクソカタ防具など、あまりにも極端な構成がために必然とピーキーな性能へと仕上がったガンプラを愛用するそのダイバーの名は――
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地上。山々に囲まれた島。
まばらに生えたった木々と禿げた大地によって継ぎ接ぎめいた姿を呈する島は現在、苛烈な戦場と化していた。
ここで行われているのはフォース・サバイバルバトルミッション。
文字通りメンバーと一組の小隊となって行われるサバイバル・ガンプラバトルである。
設定は五十組サバイバル。
三人一組、二人一組、腕に覚えがあるなら一人一組も可能となっている。
開始してから経過した時間は二十分三十四秒。
この時点で既に四十八組が全滅している状況であった。
「オーッホッホッホッホ!」
甲高い笑い声が戦場に木霊する。
オープンチャットで恥ずかしげもなく馬鹿みたいな笑い声だ。
「くそがっ! 何だってんだ!? もう俺たちだけかよ!?」
フォース『
彼らの駆る黒塗りのデナン・ゾン小隊は射撃偏重の改造を施されており、アトスのデナン・ゾン・ガンズは背部に備え付けたショットランサーと両手に持った二丁のビームライフルでの中距離戦を得意としていた。
接射を得意とするシャッガン・ルネのデナン・ゾン・アサルト、遠距離主体のキャノン・ボルトスのデナン・ゾン・キャノンと共に今まで生き残ってきた実力派である。
そんな彼らは、迫る笑い声に対して後退と射撃を繰り返す引き撃ち戦法を仕掛けていた。
アトスのビームライフルの光条が木々を焼き払い、ボルトスのバズーカが大地を砕く。
爆炎と土煙に彩られた戦場を貫くように、笑い声の正体が現れた。
それは鮮やかな赤に染め上げられたギャン改。
しかし、その姿は彼らの知るギャン改とは一線を画していた。
装甲を削り、正面にのみ集中させたボディ。
目に見える装備は身の丈以上もある大型ランスとジム・ガードカスタムのガーディアン・シールドのみ。
特に目を惹くのがフレーム剥き出しの脚部と背部に増設された大型ブースター。
更にギャン改の特徴的な肩パーツさえブースターに換装されていた。
腰にはバランスのために二脚のスタンドが取り付けられており、さながら人馬の如き威容。
見ただけで解る。
突撃のためだけに設計された機体。
一撃必殺を体現した装備。
一撃離脱を理想とした異形。
あまりにも極端。
あまりにもピーキー。
表示された機体名は――ギャン・スピアヘッド。
それが、笑い声の主であるダイバーが駆る機体の正体であった。
「来たぞ! あれが――」
アトスが緊張に染まった声で警戒し、
「あいつが!」
ルネが低い女性の声で確認するように言い、
「あの機体こそが!」
ボルトスが唸るような声で告げる。
「オーッホッホ! そう、私こそ!」
三人の言葉に呼応するようにひと際大きな笑い声を上げて――金髪縦ロール赤眼のお嬢様が高らかに応える。
「ジャイアントキリング、キリシマですわーっ!!!!!!!」
ギャン・スピアヘッドの全ブースターが一斉に火を噴いた。
瞬間的な超加速!
並のダイバーであればその勢いに気圧されていただろう。
だが、『ヘル・ガンズ』は並以上を自負しているダイバーたちのフォースだ。
「ボルトス!」
「オウッ!」
アトスの叫びボルトスが即座に動いた。
肩部に備えたキャノン砲を地面に向けて発射!
土煙を目隠しに、三機のデナン・ゾンが散らばる。
が、ルネだけが前に出た。
「ルネ!?」
「直進距離! 横から撃てば!」
「できるのか!?」
「やるんだよぉぉぉ!」
威勢よく叫び、ルネがショットガンを構えて突撃!
ギリギリで避け、すれ違いざまに側面に撃ち込めば勝てると踏んでの勇猛。
事実、キリシマのギャン・スピアヘッドは正面以外の装甲がほぼ無いに等しい。
直撃を受ければひとたまりもない。
だが、この時『ヘル・ガンズ』は気分の高揚によって失念していた。
一人一組として参加し、参加者五十組の内、二十組を破竹の勢いで全滅させたのが目の前の機体であることに。
「これ、はぁッ!?」
タイミングは完璧だった。
避けるまでの猶予はあった。
――あったはずなのだ。
ルネの機動先に合わせて、キリシマが片側のブースターの出力を弱めた。
ガクリ、と勢いよくギャン・スピアヘッドが傾き、大型ランスがルネの軌道線上――目の前に現れたのだ。
ルネはすぐにギャン・スピアヘッドが直進姿勢のまま無理矢理、機体を傾けたのだと理解した。
ルネにとっては最低限の機動で避けようとしたこと、避けやすい形状と判断してランス側に寄ったのが裏目に出た形となった。
「お考えがまる見えでしてよっ」
「むちゃくちゃだろッ!?」
咄嗟に頭部を狙ってショットガンの引き金を引く!
しかし結果は明白。散弾は全て厚い装甲が受け流す!
「散弾ではなぁッ!」
そのまま大型ランスが接触!
ルネのデナン・ゾン・アサルトの半身を砕いた!
シャッガン・ルネ/デナン・ゾン・アサルト――戦闘不能。
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「――フフ、一度は言ってみたかったセリフですの、よ!」
勢いはそのままにキリシマはギャン・スピアヘッドのブースターを器用に吹かしながら軌道を調整。
軋むフレームを敢えて無視。
ガーディアン・シールドの内側に仕込んだバンカーを地面に突き立て、半ば強制的に方向転換を成功させる。
次の目標は遠距離型――ボルトスのデナン・ゾン・キャノン。
「次、参りますわよ!」
「厄介と見込んで、こちらに来たか!」
ボルトスとて負けるわけにはいかない。
先ほどのルネの敗北からも学べるものはあった。
後はそれを活かし、キリシマを撃破するだけ。
身構え、残弾数を即座に確認して――ボルトスのデナン・ゾン・キャノンは、上半身を削がれていた。
「――は?」
一瞬、理解できなかった。
距離はまだあったはずだ。
回避できるように備えたはずだ。
残弾確認でほんの僅かに視線が逸れた直後の出来事だった。
キャノン・ボルトス/デナン・ゾン・キャノン――戦闘不能。
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アトスは見た。
ギャン・スピアヘッドの大型ランスの柄が火を噴いたことに。
そのまま、右腕マニピュレータから投擲されたことに。
即ち――ブースト・ランス!
「ば、バカじゃねぇか!?」
感動と呆れに混じった声を上げるも、身体は既に行動に移っていた。
「唯一の武器を捨てた隙を見逃せるかよぉッ!」
足が止まった瞬間をアトスは見逃さない。
ビームライフルをフルオートモードに切り替え、連射!
撃つ! 撃つ! 撃つ!
片方は動きを制限する牽制のためにわざと外す。
片方は機体行動を削ぐために足元とブースターを中心に狙う。
「良い狙いですわね!」
感嘆。
キリシマはガーディアン・シールドを構え、ボディへの直撃を防ぐ。
被弾したブースターを切り離す。
ゴウッ!
爆発した衝撃を利用し、無理矢理機動を再開!
表面が溶けたガーディアン・シールドを捨て、目標はこの場からの離脱――ではなく、躊躇なくアトスのデナン・ゾン・ガンズに向かう!
「んな・にぃ!?」
まさか真っ直ぐにこちらに来るとは思わず、判断が遅れた。
武器もない。
盾もない。
それでも機動力だけは健在。
「捨て身!? タックルか!」
「否、ですわ!」
煌めくはギャンシリーズ特有の尖った頭頂部。
「まさか、おまっ――」
「その、おおまさかですわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ビームスピアと化したギャン・スピアヘッドの頭頂部が――アトスのデナン・ゾン・ガンズの胸部を貫いた。
ガン・アトス/デナン・ゾン・ガンズ――戦闘不能。
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この日、一人一組の猛者がフォース・サバイバルバトルミッションを制した。
フォース『ノンプログレム・オブリージュ』(メンバー数一名)
ダイバーネーム『キリシマ』
ピーキー故に扱いづらいカスタム機を愛用し、初見殺しを得意とする自称エレガントお嬢様。
時に上位ランカーを撃破してみせることから付いた仇名は『
わたしピーキー過ぎる機体すき!(バァァァァァァァン
この作品の今後の展開についてお伺いしますわ!
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ダイバーズ本編組に絡んでいく流れ
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ダイバーズ外伝組に絡んでいく流れ
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どちらとも絡まない流れ