「ここが、バトルやミッションを受注できるミッションカウンターよ!」
マギーの声がリクの、ユッキーの、アズマの耳を透る。
一行は頂上に地球のホログラムが映り、多数のデータが表示される円柱――ミッションカウンターにいた。
ミナトとマギーの案内を受けてやって来たのだ。
道中、何人かのダイバーがマギーに親しく挨拶をしたり、お礼を言ったりしてきたので、今ではリクたちもすっかり彼女のことを信用していた。
「始め立ててでも最初から初級ミッションやフリーバトルも受けられて……えーっと……」
「ミナトの言う通り、最初から初級ミッションやフリーバトルを受けることができるわ。
でーも、まずはチュートリアルバトルから受けるのをオススメするわ。
どうしてかって言うと――ミナト?」
説明し慣れずに言葉に詰まってしまったところをマギーが即座にフォローに入った。
「――ちゅぅ、じゃなくて、チュートリアルバトルは最も基本が詰まったミッションだから、操作に慣れるって意味でも、とても大事ってこと!」
「よくできました」
「へっへへへぇ~……」
ミナトは頭を小さく下げつつ今度はきっちりと説明できたことに、ふにゃけた笑顔で照れた。
「わたし達もギャラリーモードでナビゲートしてあげるから、気楽に選んでみて♪」
言われて、リクを先頭にミッションカウンターの受付の女性NPCに話しかける。
【ようこそ。ミッションを選んでOKボタンを押してください】
受付嬢に言葉に従い、マギーとミナトに説明された通りにチュートリアルミッションと表示されている『ガンプラ、大地に立つ』を選択する。
ホワイトベースの女性通信士の名目で提示された――どことなくセイラ・マスの口調で書かれた概要欄にはリーオー三機の撃破と記されていた。
「一人一機、ということですかね」
「そうですね。それなら丁度良いかも」
「よ、よし! やってみよう!」
三人は頷き、リクがOKボタンを
短いローディングが挟まり、受注完了を示すフレームが表示された。
「オーケィ! それじゃあ格納庫へ行って、三人の機体のチェックをしましょう」
「格納庫?」
「どうやって行くんですか?」
「専用ゲートがあるのでしょうか?」
「フッフッフ……それならボクが案内してしんぜよう」
疑問符を頭上に浮かべる三人に、ミナトがしたり顔でメニューフレームを展開。
「見せてもらおうか、三人のガンプラとやらを!」
慣れていないと案外解りづらい場所に配置された『エリア移動』と表示されたボタンに指先を添える。
「うわぁ!?」
「うおぉ!?」
リクとユッキーが驚きの声を上げ、アズマは息を呑んだ。
格納庫には三人が作り上げたガンプラがハンガーに収納されておた。
「うわぁ~!」
ユッキーはジムⅢビームマスターを見上げて感動し、
「でっかぁ~!?」
リクもまたユッキーと同様にダブルオーダイバーを見て感嘆の声を漏らした。
それはアズマも同じで、自身のアストレイ・ジャグラスナイパーを静かに見上げていた。
声にこそ出さなかったが、しかしその瞳は確かに輝いていた。
「ここでガンプラのチェックをするのよ。機体の状態や武装の確認とかね♪」
「ま、そう言ってもこれが初ミッションだから、確認事項はあんまりないけどね~」
「そうね。でもチュートリアルだから、慣れるために一度は項目を開いて確認しておいてね」
「わかりました!」
「えっと、ここをこう、かな?」
「――開きましたね」
三人はそれぞれのメニューフレームを開き、各々のガンプラの状態を確認する。
ミナトの言う通り、確認以外に特にこれといってすることはなかったが、ステータス化された自身のガンプラを見るのは中々新鮮なものがあった。
「確認できたみたいね。それじゃお待ちかねのアレよぉ~! ア・レ☆」
「「「アレ?」」」
マギーの言葉に三人が小首を傾げる。
その傍でミナトが「アレなんだなぁ~」と感慨深くカイゼル髯を撫でていた。どうやら気にっているらしい。
⁎
ゴゥゥゥゥン――。
重い可動音を立てて、カタパルトが動く。
その上にはユッキーが搭乗したジムⅢビームマスター。
「すごい……カタパルトだ……」
興奮と緊張に震える声で呟く。
ユッキーから見て右側に通信画面が開き、マギーの姿が表示された。
画面内の下側からはミナトのアッガイキャップがひょっこりとモノアイを覗かせていた。
『発進シーンは定番中の定番でしょう!?』
パチコン。
よく似合う、上手なウィンクと共に大仰な動作で親指を立てる。
動きを真似たのだろうか、アッガイキャップも揺れていた。
『さぁっ、思い切っていっちゃいなさい!』
その言葉にユッキーはニッコリと口角を吊り上げ、息を短く吸い込むと、コントロールスティックを強めに握り――
「ユッキー! ジムⅢビームマスター、出ますっ!」
大きく――あらん限りの声量で叫んだ。
直後、信号が赤から青に変化。
瞬間、カタパルトが駆動。
摩擦によって生じたスパークを撒き散らしながら、かかる加速を後押しとし、出撃口からジムⅢビームマスターが飛び出した。
ユッキーに続くようにリクもまたダブルオーダイバーに搭乗し、カタパルトの上にいた。
先ほどのマギーの言葉に、彼もユッキーと同じように息を吸い込み――
「リク、ガンダムダブルオーダイバー!」
ワクワクとドキドキが綯い交ぜになったような笑顔を浮かべて、コントロールスティックを握りしめる。
呼応するかのようにダブルオーダイバーのデュアルアイに輝きが灯った。
「いきますっ!」
リクの口上ダブルオーダイバーも出撃口から飛び出していった。
二人の出撃を見届けたアズマも既にカタパルトに乗っている。
緊張故か無意識にダイバールックの手袋をギュッとはめ直し、コントロールスティックを握る。
GPDとは違い、実際にガンプラに乗り込んでいるのだ。緊張もするというもの。
現実と比べると多少の差異はあれど、感覚も機能しているようだ。
ここでは誰もが一度は夢に見た自分の作ったガンプラに乗り込んで操縦することができる。
それだけではない。
ガンダム作品に出てきた地域や建物に行けるし、原作ストーリーを体験することもできれば、NPCとして実装されている原作キャラとの共闘、あるいは対戦することもできるという。さらにifルートを実装した追体験ミッションもあるらしい。
それら全てがGBNでは可能となっている。
……これは確かに、お嬢様が夢中になるわけですね。
ただ戦い、競い合うだけだったGPDと比べてしまい、GBNが内包する無限の可能性にアズマが内心で打ち震えていると、通信画面が開いた。
『さぁ、アズマちゃんも!』
『ババっといっちゃおー!』
マギーとミナトの言葉にアズマは「さてどうしましょう」と恥ずかしそうに薄っすらと頬を赤らめる。
先の様子を見て発進時の前口上を考えてはいたのだが、実際に自分の番が来てみると何やら気恥ずかしいものがった。
……こんな時、お嬢様なら馬鹿みたいに笑って「行きますわっ!」とか言うのでしょうね。
アズマはその姿を想像し、フフフと笑んだ。
因みにキリシマは実際やった。
「あの」
『なにかしら?』
「クール系に決めても?」
『もっちろん、オーケィよ!』
『君の好きな思い切りを口に出せばいいのだよ~』
自身が映り切っていないことに気づいたのか、ミナトのカイゼル髯がアッガイキャップに付いていた。
「では――」
胸に手を当て、フゥーっと息を吐く。
再び息を吸ってる間にコントロールスティックを握り直し――
「アズマ、アストレイ・ジャグラスナイパー。洗濯出動ですっ」
言い切り、飛び出した。
身体にかかるGは軽減されているものの、それでも微妙な圧力を前面が受け止める。
ライトで照らされた薄暗い出撃口から一転、青空と街並が視界いっぱいにひろがった。
「――」
精巧な世界に、アズマは言葉を忘れた。
『アズマさん!』
リクの声が通信越しに届いた。
見ると、ダブルオーダイバーを先頭に、ジムⅢビームマスターが待ってくれていた。
あの時――現実で見た時とは違い、実際にバーニアを吹かして動く二機の姿を、アズマはジッと見つめた。
『……大丈夫ですか?』
ユッキーの心配そうな声。
どうやら数瞬、惚けてしまっていたようだと自覚する。
「恥ずかしながら、お二人のあまりの格好良さに、少し見惚れていました」
『えっ!? あ、えと、ありがとうございます!』
『アズマさんのジャグラスナイパーも格好良いですよ! ねぇ、リックん!』
『うん! こっちで見てもすごい完成度です!』
「フフ、ありがとうございます」
『よし! それじゃあ、行きましょう!」
「はい」
『了解!』
⁎
『あら、結構可愛いところのセリフ、拾ってきたじゃない♪』
『……クール?』
光点となるほどに遠ざかったリク、ユッキー、アズマ。
三人が無事に発進したのを見届けたマギーはどこか誇らしげに胸を張っていた。
ミナトは最後のアズマの発進セリフに些か引っ掛かりを覚えていたようだが。
そんな一行の格納庫から離れた別の格納庫――低い位置に出現した出撃口から飛び出した一つの光点が、三人の後を追うように飛んで行ったのに気付くことはなかった。
次回は初戦闘なので一旦ここで区切らせて頂きましたわ。
あんまり長くなると却って読みにくいのでは、と思いましたの。
……実際どうなのでしょう?
それとこれはわたくしの悪い癖で、投稿後も「やっぱりこうしましょう」なノリで微量、もしくは大幅に加筆したりすることが稀によくありますわ。ご了承くださいまし。