お嬢様はピーキーがお好き   作:アルキメです。

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Unknown――少女の声で求められる救難信号。ぐへへへ、ですわ。
戦闘描写のためにガンダム小説を漁るその場凌ぎなお嬢様問題。


1.5『WELCOME TO GBN/チュートリアルミッション』

 先を飛翔するダブルオーダイバーとジムⅢビームマスターに追従しながら、アズマはアストレイ・ジャグラスナイパーのコックピット内でマギーの言葉を聞いていた。

 

【い~い? 三人とも、ガンプラバトルで強くなるには三つの要素があるわ】

 

 ……三つの要素。

 ワールドランキング23位のダイバーの言葉だ。気にならないわけがない。

 リクとユッキーも聞き入っているようで、二人も無言のままであった。

 

【一つ目はガンプラ作りの腕!】

 

 ……これはGBNでも共通のようですね。

 作り込みが高ければ高いほどGBNでのステータスに何らかのボーナスを得られるのだろうか。

 あるいは原作の再現がより可能にしやすくなるのだろうか。

 そう思い、出撃前に確認したステータス画面を思い出す。

 きっとあれが一つの基準になるのだろうと考えた。

 ただ、それを抜きにしてもガンプラ作りの腕と言われてしまえば無視はできない。これだけは別口だ。

 アズマは内心でグッと拳を握るようにその言葉を強く心に留めた。

 

【二つ目は高い操作技術!】

 

 なるほど、と納得する。

 ……これもGPDと共通していますね。

 単純にガンプラバトルを楽しむだけならば、高い操作技術はそれほど必要とはしない。

 それはロビーの光景を見ても何となく察することができた。

 けれど、強くなること――上を目指すなら避けられないものであろうことも理解できる。

 ……いえ、違いますね。

 かぶりを振る。

 例えバトルに関係なくとも、憧れの機体を乗りこなしたいのあれば、これは自ずと磨かれていくのだろう。

 

【そして最後、三つ目は――愛よ!!! んあぁぁいっ!!!】

「……んん?」

 

 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

 何故そこで愛なのか。否――愛で当然なのだろう。

 かつて師から言われた「ガンプラは魂じゃよ。魂と書いてスピリッツ!」と言う言葉に通ずるものがある。

 ……お嬢様も「ガンプラ魂ですわよ! 魂と書いてスピリッツ!」なんて言ってましたね。

 とは言え――

 

『愛?』

 

 リクの今一ピンときていない反応。

 

【ラブッ! 貴方達は技術も腕もこれからドンドン上がっていく! ――頑張って♡】

 

 やはり概念的な表現故に、曖昧な感じではある。

 ……きっとマギーさんなりの激励なのでしょう。

 愛。

 それは今のアズマには、まだ解らない。

 

 ⁎

 

『なに、あれ?』

 

 暫くすると、ユッキーが何かに気づいて小さく呟いた。

 言葉に釣られて見れば、ドーム状の半透明なバリアのようなものが三人の進む方向にあった。

 レーダーマップを確認すると、目的地を示すアイコンと被っている。

 

【あれはバトルフィールドの境界じゃよ】

 

 今度はマギーではなく、マギーに抱きかかえられるようにして持ち上げられたミナトの姿があった。

 相変わらずカイゼル髯を付けている。やはりお気に入りのだろうか。

 

【あれの境界を超えたらミッション開始、つまりバトルスタートじゃ!】

『ミナトさん、その口調はいったい?』

【こっちのほうがらしいじゃろ~?】

「胡散臭さはらしくありますね」

『あぁー、確かに。わかります』

【え、マジで? やめたほうがいい?】

「いえ、可愛らしいとも思います」

【フヘヘヘ、じゃあもうちょっとこの口調じゃよ~】

【ち・な・み・に♪】

 

 抱えたミナトの横からマギーがズズイッと顔を出す。

 

【チュートリアルバトルは味方の攻撃が当たってもダメージを受けない設定だから、思う存分暴れちゃいなさ~い!】

『そういうことなら! 行こう、ユッキー! アズマさん!』

『うん!』

「はい!」

 

 リクの言葉に返事し、三人と三機がバトルフィールドの境界を超えた。

 

 《MISSION START》

 

 開始を告げる電子音声が流れると同時に、レーダーマップに三つの機影が表示された。

 メインカメラをズームするとリーオーと思わしき機体が三機。

 ドーバーガンを装備した一機を中央に、左右にはそれぞれドラムマシンガンを装備したタイプと長身のライフル砲を装備したタイプの二機。

 情報端末から相手の名称がリーオーNPDと表示された。

 いずれもこちらに向かって飛んできている。

 

【あれが今回の敵よ~! 全機撃破すればミッションクリア!】

「なるほど」

 

 言うが早いか、先に動いたのは――アズマのアストレイ・ジャグラスナイパーだった。

 展開した折り畳み式スナイパーライフルで瞬時に狙いを定め、ロックオンが完了する前に躊躇なくトリガーを引いた。

 淡いライトピンクの光条が一直線に伸び、アストレイ・ジャグラスナイパーの対角線上を飛んでいたリーオーNPDの左肩を貫いた。

 反動で体勢を崩し、みるみるうちに高度が落ちていく。

 

「思った以上に軽い……」

 

 胴体ど真ん中を狙い撃つつもりでいたが、身体に染みついたGPDの感覚は、ここでは少し勝手が違うと感じた。

 

『アズマさん!? 早いっ!? 早いよっ!』

 

 ユッキーが驚愕の声を上げている。

 カイ・シデンの台詞だ。ノリノリである。

 

「――仕留め損ねましたが、相手の陣形、崩れました」

『よぉし、いっくぞぉぉぉ!』

 

 それを好機と捉えたか、リクのダブルオーダイバーが先行し、GNソードⅡをライフルモードに切り替えてビームを放った。

 放たれたビームは惜しくも中央のリーオーNPDを掠める。

 攻撃に反応し、リーオーNPDがドーバーガンを撃ち返した。

 

『うわぁあぁっ!?』

 

 チョートリアルミッションとは言え、狙いは意外と正確。

 ダブルオーダイバーの胸部を狙った一撃は――咄嗟に構えたGNソードⅡが防いだ。

 しかし、ドーバーガンの威力でダブルオーダイバーが翻る。

 追撃に移ろうとリーオーNPDが追い縋る。

 ダブルオーダイバーの援護に回ろうと、ジャグラスナイパーが動き出そうとした刹那、ロックオン警報が鳴り響く。

 

「っ!」

 

 ライフル砲の弾丸がチョバムアーマーを叩き、視界が揺れる。

 ジャグラスナイパーはバランスを崩して地上に落ちていった。

 

『リッくん!? アズマさん!? ――このぉぉぉ!!!』

 

 ユッキーがよくもと言わんばかりの剣幕で前に出た。

 自分に向かってきたリーオーNPDから放たれたドラムマシンガンの弾幕を避けながら、サイドアーマーに装備した大型バインダーを手に持ち、向ける。

 

『いっけぇぇぇぇぇぇっ!』

 

 大型バインダーに内蔵された拡散メガ粒子砲――フラッシュビームが放たれる。

 文字通り散らばったビームの光条が実弾を打ち消しながらリーオーNPDに降り注ぐ。

 

『わぁっ!?』

 

 しかし、マシンガンの数発が大型バインダーに命中し破壊されてしまう。

 

『くっ、――けどっ!』

 

 反射的に武装を選択。肩部ミサイルポッドを展開、射出する。

 降り注ぐフラッシュビームに加え、殺到するミサイルに行動を制限された瞬間――

 

『そこだぁ!』

 

 その隙を見逃さず、ビームライフルがリーオーNPDを射抜いた。

 直撃を受けて動きが止まったリーオーNPDに残りのミサイルが着弾。

 リーオーNPDは爆発し、一機目の撃破判定が下された。

 

『よ、よしっ! やったぁ!』

『やるなぁユッキーも! じゃあ俺だって!』

 

 機体を制御し、着地。

 ドーバーガンを装備したリーオーNPDもまたダブルオーダイバーの目の前に着地する。

 すぐにドーバーガンの砲口をダブルオーダイバーに向けて――撃つ。

 

『うおぉぉぉぉぉ!』

 

 リクは物怖じすることなく、ダブルオーダイバーを前へ加速させる。

 向かってくるドーバーガンの弾丸はマニューバを駆使して、機体を僅かに傾けることでスレスレで躱す。

 

『てやぁっ』

 

 GNビームサーベルを投げ放つ。

 真っ直ぐに投擲されたGNビームサーベルがドーバーガンの銃口を切り裂き、銃身に深々と突き刺さった。

 過剰なダメージ負荷に耐えきれずドーバーガンが爆発した。

 ダブルオーダイバーはすかさず生じた爆煙に紛れる。

 その一瞬で標的を見失ったリーオーNPDを、爆煙の中から飛び出し様にGNソードⅡで一閃!

 上半身と下半身が泣き別れになったリーオーNPDが爆散し――撃破判定が下る。

 

『いよっしゃあぁぁぁっ!』

 

 拳を突き上げて大いに喜ぶ。

 

「お見事です」

 

 通信越しの歓声にアズマはそう呟きながら、チョバムアーマーをパージ。

 鈍い音を立てて足元に転がる。

 

「まったく迂闊でした」

 

 直撃を喰らってもダメージは全てチョバムアーマーが肩代わりしてくれたことから、チュートリアルというだけあって攻撃力は低いと判断する。

 だが、自身のガンプラはアストレイである。防御力よりも機動力をとった機体コンセプト故に、先ほどのような直撃をもう一度受ければ中破は免れない。

 

「GPDでは直接ガンプラを動かす分、所謂重さがありましたが……」

 

 GBNではガンプラを読み取ってデータとして再現するだけで、実際のガンプラとしての重みは感覚的に軽いものだった。

 

「気分はさながら地球に降りたばかりのキラ・ヤマトみたいですね」

 

 生い茂る木々の隙間からヌゥッとリーオーNPDが現れた。

 ライフル砲を右腕と胴体で挟むように持っていることから、左腕は既に機能していない様子。

 リーオーNPDはジャグラスナイパーを認識すると、ライフル砲で狙いを定め――撃った。

 ……動きをよく見る。基本は絶対。

 即座に片手に持ったチョバムアーマーを射線上に放り投げる。

 ガァン!

 弾丸はチョバムアーマーに命中し、明後日の方向へと逸れた。

 弾かれたチョバムアーマーの向こうでリーオーNPDは光を見た。

 それはスナイパーライフルの銃口に充填されたエネルギーの光。

 あの一瞬の間に、ジャグラスナイパーは既に構えを終えていたのだ。 

 

「誘い込むのは得意なので」

 

 カチリッ。

 トリガーを引くと同時に放たれた光条が一直線にリーオーNPDの胴体を綺麗に貫いた。

 そして三機目の撃破判定は下された。

 

 《BATTLE END》

 

 電子音声が流れ、《MISSION COMPLETE》の文字が浮かび上がる。

 

【エェクセレ~ントっ! やったじゃない三人ともぉ~!】

 

 画面の向こうで親指を立てたマギーがまるで自分のことのように喜んでいた。

 

『流石ですねアズマさん!』

『リッくんも凄かったね! 僕なんか結構消費しちゃったし』

「弾幕を張ることで相手の行動を狭め、回避先をある程度予想して狙い撃つ。実に堅実で理想的な戦術だと思います」

『うん! あれは凄かった! 丁度避けた先にビームライフをさ!』

『そ、そうかな? えっへへへへへ……』

 

 先に戦闘を終えたリクとユッキーに合流し、三人が思い思いにバトルの所感を述べる。

 興奮冷めやらぬと言った感じで二人の声音はいつもより若干高くなっていた。

 アズマも務めて冷静を装っていたが、初のGBNと久々のバトルで無意識の内に二人と同じくらいに熱が入っていた。

 

【や、やるじゃあないか……じゃが帰るまでがミッションじゃよ!】

【そうね。これで後はベース基地戻ってくれば、ミッションクリアよ♪】

『戻るまでがミッションってことか~』

『何だか遠足の時に先生がよく言う言い回しみたい』

「消耗が激しかったら帰還するのは骨が折れそうですね」

 

 しかし三人は気づかない。

 その後ろで仰向けに倒れたリーオーNPDのカメラアイが不気味に点滅したことに。

 表示されている『MISSION COMPLETE』の文字にノイズが奔ったことに。

 ザザ――ザザザ――ザ――ザザザザ――

 

『やっぱり二人とも強いなぁ』

 

 改めて、実感するように呟くリク。

 その直後に異変は訪れた。

 

 《CAUTION》

 

 けたたましい警報が鳴り響き、三人のコックピット内に突如として表示された警告。

 誰もが疑問を口に出す前に――リーオーNPDがサーベルを振り上げて背を向けていたジムⅢビームマスターに飛び掛かってきた。

 

『あっ……』

『えっ!?』

「なっ!?」

 

 不意打ち同然の出来事に三人は面食い、特にユッキーの反応が遅れた。

 しかし――

 

『くぅっ!』

 

 動き出しは同時だった。

 ダブルオーダイバーがGNビームサーベルを引き抜き、リーオーNPDの顔面目掛けて投擲。

 ジャグラスナイパーがアーマシュナイダーを引き抜き、リーオーNPDの右腕の関節目掛けて投擲。

 アーマシュナイダーが肘関節に突き刺さり、腕の動作を阻害。

 次いでGNビームサーベルが顔面――カメラアイを貫いた。

 リーオーNPDは糸が切れたように仰向けに倒れ――爆発。

 エフェクトとともに消滅した。

 

【どうしたの!?】

『倒したはずのリーオーが……』

「急に動き出して襲ってきました」

【えぇ!?】

【そんなことが……?】

 

 マギーとミナトの反応から、ミッション内に仕込まれた設定ではないことが窺えた。

 先輩ダイバーのミナトの「ボクの時はそんなのなかったぁ」という証言から不具合かも知れないと、後でマギーから運営に報告しておくということになった。

 

「なんだ? 今の……」

 

 その光景を木々の陰に隠れて見ていた人影も、唖然として呟いた。

 

 ⁎

 

『でも助かったよ。ありがとうリッくん、アズマさん』

 

 ユッキーのお礼にリクは「へへぇ~」と得意気に笑った。

 

「そういえばユッキーさんの機体、射撃編重のようですが、肉薄された時の為の近接武器は?」

『あ、そういえば』

『ああ、それは――』

 

 言いかけた時、警報とは違う音色が響いた。

 

 《Nearby SOS signal received》

 

 レーダーマップにはそんな文字が表示されていた。

 マップが切り替わり、発信源の位置がアイコンとして表示される。

 表記は正体不明(Unknown)

 それから《Sound Only》という表示とともに音声通信が入ってきた。

 

『たす――けて――』

 

 途切れ途切れではあるが、どうやら少女の声のようだった。

 

『えっ?』

『なに、これ?』

「マギーさん、これは?」

【救難信号ね】

【でも何で?】

『マップに反応が出てる……。とりあえず行ってみよう』

 

 リクの提案に、ユッキーとアズマも異論はなかった。

 三人はマップに表示されたアイコンを頼りに、救難信号の発せられた場所へと向かうのだった。




おかし、お嬢様の出番がありませんわね?
でも大丈夫ですわ! お嬢様が合流するのは2話ですのよ! ご安心なさって!
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