お嬢様はピーキーがお好き   作:アルキメです。

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わたくしの誤字脱字率は治らない! 加速する!


1.7『WELCOME TO GBN/アンノウンガール』

 マップに表示された救難信号を頼りに三人三機は上空を飛んでいく。

 森林エリアから緑豊かな山を越えれば、ほどなくして雪山エリアへと切り替わった。

 下れば下るほど麓付近は春の陽気に満ち溢れ、逆に登れば登るほど冬の寒気に覆われるという典型的な二重気候エリアだ。

 救難信号の発信源から辿れば――

 

『この辺のはずだけど……』

 

 ユッキーの言葉に、リクとアズマは注視しながら雪山エリアを見渡す。

 こういう時、高度な望遠機能を有するジムスナイパーのスコープバイザーが役に立つ。

 実際、それで小さな影に気づけたのだから。

 

「――リクさん、ユッキーさん、あれは?」

『え?』

 

 指差した方向に、ポツンと人影があった。

 メインカメラをズームすれば白いワンピース状の衣服を纏った少女が雪の上で横たわっていた。

 雪の白さに紛れるような淡い色彩に、一つでも誤れば見逃すところだったとアズマは思う。

 

『女の子?』

「――ですね」

 

 リクが先に着地し、アズマはユッキーと共に後に続いた。

 ダブルオーダイバーから降りたリクが倒れた女の子に駆け寄っていくのを確認しつつ、アズマもアストレイ・ジャグラスナイパーから降りる。

 アズマが雪に足を取られながらも何とか駆け寄る頃には、既にリクは少女に積もった雪を払いのけ、抱き起していた。

 薄い青色の髪をもつ少女だった。

 触れてみると雪の上で倒れていたせいか冷え切っていた。

 かすかに肩が上下しているので気を失っているだけだろうとは思うが、GBNで倒れるということはログインしているリアルの方が心配になる。

 しかし、アズマたちにはそれをどうこうする手段がないため、今はとにかく少女の無事を祈るばかりである。

 

「大丈夫でしょうか?」

「わ、わかりません。息はあるようだけど……」

「とりあえず下に連れていこう!」

「うん!」

「はい!」

 

 ユッキーの言葉に一も二もなく頷いた。

 幸いそこまで標高がある場所で倒れていたわけではないので、マギーとミナトの案内を受けながら日差しの降り注ぐ広く開けた場所まで行くのにそう時間はかからなかった。

 小さな滝が流れる広場に到達した一行は、丸みを帯びた岩に気を失っている少女をもたれかからせる。

 できるだけ暖かな日差しがあたる場所だ。岩肌も程よく温い。

 とは言え、三人ともGBNを初めたばかりなので特に用意できるものなどあるはずもなく、ただ少女が無事に目覚めるのを見守ることしかできなかった。

 目覚めるの待つ間に、アズマはマギーと通信しながら状況を伝えていた。

 

「マギーさんの見解では、感覚を再現するGBNの特性上、ダイバーにかかるデバフ――つまり状態異常を実際の体調不良と錯覚して倒れてしまったのではないか、ということだそうです。

 ただ、絶対とは言えないので、可能なら状態を聞いて報せてほしいそうです」

 

 アズマの口から伝えられたマギーの見解に二人はホッと胸をなでおろす。

 それでも不安というものは拭えず、少女の方に振り返る。

 丁度、目覚めたようで、ゆっくりと少女の目が開かれる。

 

「気づいたんだね! 大丈夫?」

「何かあったの? 君一人で倒れていたけど」

「ご気分が優れなければ安静にしていてください」

 

 三人の言葉に少女は――小首を傾げた。

 まるで自分がどういった状況にあったのか理解していないといった風に。

 そんな一行の背後――ひと際大きな岩の陰に隠れて、怪しい人影が覗いていた。

 何かをブツブツと呟き、

 

「よし、じゃあそろそろ仕掛けるか……」

 

 いやに含みのある表情を浮かべた。

 

 ⁎

 

 リクがマギーへ報告している間、同性という理由でアズマは少女の傍にいることを頼まれた。

 ユッキーも一緒にいるのだが、遠慮してか少し離れた位置にいた。

 意外だったのは、少女は目覚めてからの記憶が曖昧だったことだ。

 否、曖昧という表現は適切ではない。

 

「憶えていない……」

 

 そう答えたのだ。

 見ず知らずで――それも救難信号の通信内容と噛み合わない少女。

 疑問に思うことは多々あったが、とりあえずは無事であったことに安心を覚えた。

 

【とりあえず、ゲストモードでコックピットに保護してあげて】

「わかった」

 

 リクとマギーのやり取りを聞きながら少女のほうに顔を向けると、丁度少女もアズマのほうを向いたところだったのか、目と目が合った。

 

「……」

「……」

 

 言葉が出ない。

 どう接したらいいもの。

 どう話しかけたらいいものか。

 切っ掛けというものがないとこうも気まずいのかとアズマは臍を噛む。

 少女のほうは惚けているのか、困惑しているのか解らない。

 ただその瞳は、アズマの心を見透かすかのように澄んでいた。

 ……こういう時、お嬢様なら。

 きっと図々しくも堂々と話かけたりするのだろう。

 「あなた、お名前は!?」とか「オーッホッホッホ! もう安心なさい! わたくしが来たからには1000%実際安全ですことよ!」とか言うのだろう。それはそれで見てみたい気もするし、見せたい気もする。

 

「あの――」

 

 言葉を絞り出して、声をかけようとした時、先ほど聞いたばかりの救難信号の警報が鳴り響いた。

 

「また救難信号!?」

「今度はどこから?」

「ええっと……場所は――え?」

 

 リクのマップパネルを覗き込む。

 救難信号を受け、マップに表示されたアイコンの場所は――

 

「ここ?」

「ここですね?」

「ここだよね?」

「……?」

 

 何とも奇妙な、と思った矢先――何とも言えない気の抜けるような悲鳴が聞こえた。

 あまりにも近い。

 三人はマップから顔を上げると――救難信号の発信者が目の前にいた。

 和風な青い衣服に身を包んだ丸っこい少年姿のダイバーだ。

 額から伸びた大きな一本角が特徴的であった。

 そのダイバーが丸っこい身体をダンゴムシのようにさらに丸め、お腹を抱えて苦しんでいた。

 だが、それがどうにもわざとらしく、心配よりも先に疑心を抱いてしまう。

 ……あ、今こちらをチラリと盗み見しましたね。

 

「は、腹があぁぁぁぁ! 腹がぁ痛い……痛いのぉ……助けて……たすけぇ……」

「お、おい、大丈夫か?」

「いやリッくん。その人、完全に怪しいよ」

 

 純粋に相手を心配するリクにユッキーが最もなことを言う。

 

「いやそんなことねーよ! めっちゃ苦しんでるよ! 少しは心配しろぉ!」

 

 やはり、何とも言えない。

 アズマのじとっとした視線に気づいたのか、よし激しく足をバタつかせて苦しみだす。

 

「流石に無理が――」

「本当に困ってるみたいだ!」

「えぇ?」

「あ~」

 

 無理がなかった。少なくともリクには。

 思わず零れたユッキーとアズマの声が被った。

 駆け寄り、「どうしたの?」と声をかけている。

 

「ユッキーさん」

「うん、解ってる。優しいんだけど……」

「純粋すぎて逆に心配なると思う日がこようとは」

「うん……」

 

 やれやれ、と肩を竦める。

 その一瞬の間に、少女が動いていた。

 角付きのダイバーに何事かを言われるままパネルを操作しているリクへと近寄っていく。

 気づいた二人も近づこうとして、角付きのダイバーの言葉にユッキーが「ん?」と足を止めた。

 

「リッくん、それってもしかして――」

【ま、まさか!?】

 

 成り行きを見守っていたマギーとミナト――のアッガイキャップのモノアイ――も画面の向こう側でハッと目を見開いた。

 

【リク後輩、それはダメだ!】

 

 ミナトが叫ぶ。

 しかし、一寸遅かった。

 言葉が届くよりも前に、リクはパネルに表示されたOKボタンを押してしまっていた。

 瞬間――電子音声が『Free Battle Mode』と告げ、同時にドーム状の境界が頂部から解けるように崩れていく。

 

「これは……」

 

 変化する状況に、困惑にも似た調子でアズマは呟く。

 そして見た。

 リクのダブルオーダイバーが、見知らぬダークグレーの機体に奇襲される瞬間を。




次回で一話、完ですわ。
大よその流れとして三話までは原作沿いですので、それまではある程度本編組と絡みますの。ご承知くださいませ。
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