ミカガミ・ハルオキと言う人物の話だ。
若かりし頃からビルダーとしての技術力、ファイターとしての戦闘力は随一で、GPD世界総合大会では常に上位に入り込むほどであった。
西欧の
北宋の貴公子『サザキ・ジュンヤ』
ブリテンの
そして――『
強豪たちとの激闘に次ぐ激闘。命すら磨り減らす勢いの死闘に多くの人が魅了された。
そんなハルオキは何よりも能力と言うものを重視していた。所謂、能力至上主義である。
齢60を超えてからは何を恐れたのか何よりもそれに固執するようになっていた。
全国各地を巡り、その中で有望な人材を掻き集め、己の技術を教え込んでいた。
――
物心ついた時には両親は居らず、アマツお婆ちゃんの営む古き良き模型店で育てられていた。
彼女は幼少の頃からずっと模型を作り続けること以外には興味を示さない変わり者だった。
天性の器用さはこの頃から遺憾なく発揮されていた。
ハルオキはこのアズマの才能を見抜き、彼女を養子に迎え入れ、孫娘のミカガミ・ハバキと共に己の技術を余すことなく叩き込んだ。
将来はさぞかし立派なビルダーになるだろうと、ハルオキも、彼を囲う誰もが思っていただろう。
アズマがミカガミ家の家族となって三年目の
第二話『獄炎のオーガ』
「うえぇぇぇぇっ!?」
「オーッホッホッホッホ!」
ユッキーの悲鳴にも似た驚嘆と、キリシマの馬鹿みたいな笑い声が『THE GUNDAM BASE』に響き渡る。
フルフルと震える身体を支えるため、隣に立つリクの肩を掴んでいた。
「み、ミカガミって……あのミカガミ・ハルオキ!?」
「そうですわ!」
「の、元弟子!?」
「――そうです」
フフーン、と鼻を鳴らし、胸を張るキリシマ。
隣ではバツが悪そうな顔でアズマが頷く。
ついに都合が合い、リクとユッキーの二人と対面したキリシマであったが、二人はアズマからある程度のことを聞いていたためか「フローレンス工業のご令嬢に知り合えるなんて!」と、まるで芸能人に会うかのような大袈裟な反応だった。
キリシマはそんな反応を受けてフルスロットルですっかり調子に乗ってしまった。
さらに自己紹介の際にミカガミ・ハルオキの名を出したことで、ユッキーが目を見開いて驚いたのだ。
「えっと、その、ハルオキって? 名前は見たことあるけど――」
詳しくは知らない、と言いかけたリクにユッキーが眼鏡をキラリと光らせた。
「知らないのリッくん!? ミカガミ・ハルオキ!
GPDが主流だった時代に活躍したガンプラビルダーの一人で、全日本ガンプラ選手権で一位を三回も取って殿堂入りした凄い人なんだよ!
ガンプラファイターとしてもGPD世界総合大会で毎回五本の指に入るほどの腕前で、当時世界各国の強豪を相手に激闘を繰り広げたんだ! 最後に参加した大会では五位だったんだけど、あの時のアメリカ代表のマークス・カランのGセイバーとの戦いは名勝負としてかなり盛り上がってたんだ!」
早口で熱く語り出したユッキーに圧されながらも、リクはふと気になったことを訊いた。
「それじゃあアズマさんも、そのハルオキさんの弟子だったんですか?」
それは何気のない疑問だった。
リクの言葉にアズマが右腕をギシリと握り、隣に立つキリシマに視線を送った。
別に嫌な気持ちがあるというわけではない。
聞かれるのも、答えるのも別にいいのだ。
理由のない苦みがあるだけなのだ。
その程度。その程度でしかない。何も躊躇うことなどないはず。
けれど、もし、もしそれで――
「どうして貴女なの!? どうしてよっ!!」
「大丈夫ですわ」
そっとアズマの左手に添えられる手があった。キリシマの手だ。
「――いえ、孫です。弟子でも強ち間違いではありませんけど」
「あと養子ですが」と付け加えた言葉にユッキーが更に驚きの声を上げた。
その挙動は完全に芸能人を目の前にした一般人のような――あるいは生まれたての小鹿のようであった。
かつての
完全にリクを支えに立っているのがようやくといった様子だった。
そんなユッキーを落ち着かせながら、リクはアズマを真っ直ぐに見た。
「でも良かった。アズマさん、どこか遠慮しているところがあったから」
「――気づかれてましたか?」
「とは言っても、そうかもしれないって程度で、気づいたのは帰宅してからだったんだけど」
「そ、そうだったの!?」
「うん。ユッキーは気づいてなかったの?」
「まったくだよ!」
「アハハ」と短く笑って、リクはアズマに向き直る。
「きっと理由があってあんまり言いたくなかったんだと思います。
何と言うか――正直あの時はまだ壁みたいのが感じられて……。
今のでこう、壁がなくなった――って言うのは言い過ぎかも知れないけど」
だけど、と。
だから、と。
その右手を差し出す。
「これからも、一緒に気兼ねなく遊びましょう!」
リクの純粋さが、アズマには眩しかった。
けれど、嬉しかったのだと思う。考えていた不安も心配も無用だった。
ミカガミの名前だけで距離を置かれたり、妙に遠慮されるよりは確実に。
都合が良いことだとは解っている。でも本心だった。
「良い子たちですわね」
ヌッと顔を覗かせたキリシマが二人の手を取った。
あっという間もなく、互いの手をギュッと握らせる。
「――はい! よろしくおねがいします!」
アズマは深々と頭を下げた。
今度こそ、誰もが見た。
リクも、ユッキーも、キリシマも、ナナミも。
どこか泣きそうな表情を抑えるように、しかし自然と柔和な笑みを浮かべた彼女を。
ユッキーもすっかり浮ついていた顔を引き締め「僕も!」と握手を交わした。
……良い姿ですわ。
学校でも友人を作ろうとしないアズマを知っているキリシマからすれば、その光景は望んだ光景だった。
「キリシマちゃん、大丈夫?」
「あら?」
ナナミにひっそりと告げられて気づいた。釣られて涙ぐんでいたことに。
グッと袖で拭い「平気ですわ」と返す。
形はどうあれ、今のアズマは前に進む機会に恵まれている。
自分一人ではようやく説得することが精一杯だった。
ガンプラと向き合い、初のGBNを経て、もう一度――共に笑い合っていた頃の笑顔を少しだけ見ることができたのだ。
アズマは前に進もうとしている。止めた時間を動かそうとしている。それが堪らなく嬉しい。
腰に手を当て、ビシッと反るくらいに立てた掌を顔の横に移し――
「オーッホッホッホッホッホ!」
盛大に――馬鹿みたいな笑い声を響かせた。
「うるさいですよ」
怒られた。割とガチトーンで。
それと自分の話題がすっかりアズマにかっさらわれたことに気づき、ちょっと不満があった。
「わたくしお嬢様ですのよ!?」
「おもしろうるさい人だと認識されているだけでは?」
「そんなまさかでしてよ!?」
後で訊いたら、半分ほどそんな認識であったことが判明した。
おもしろうるさいお嬢様キリシマ。
それはそれでアリかも知れないと思うキリシマだった。
終始勢い任せで書いたのですわ!
伏線? 後先? 知らない概念ですわね!!!(思うように書き出せなかった言い訳お嬢様)