お嬢様はピーキーがお好き   作:アルキメです。

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あんたはここでふゆとしぬので初投稿ですわ。


2.4『獄炎のオーガ/ヤナギランのち、遭遇』

 フォースバトルを見届けた一行は再び移動を再開し、ミッションの目的地であるヤナギランの群生地――その手前の森林エリアに降り立っていた。

 理由はリクのダブルオーダイバーの有する特殊機能『TRANS-AM』の起動確認である。

 操縦者であるリクを残し、四人は一度地上に降りる。

 

「とらんす、あむ?」

「いえ、サラさん。正しくはトランザムですわ」

「トランザム……?」

「ええ、そうですわ」

「それは、何をするの?」

「ふふふ、それはですね――」

「そのトランザムを試すんだよ!」

 

 息を吸い、人差し指を立てていざトランザムについて解説しようとした瞬間に――隣に並んだユッキーと言葉が被り、目が合った。

 互いの瞳がキラリと光る。

 

「ふっふっふっふ……」

 

 メガネをくいっと上げて、小さく笑う。

 

「オッホッホッホッホ……」

 

 腰に手を当てて、不敵に笑う。

 

「正確にはトランザム・システム。ガンダム00に登場する動力機関、太陽炉ことGNドライブに組み込まれた特殊なシステムさ!」

「これは起動すると高濃度GN圧縮粒子を全面解放して一定時間、機体の性能を通常の3倍引き上げると言う、言わば時限式強化システムなのですわ!」

「その際に、機体表面が赤く輝くのが特徴で、さらに発動中は機体の残像が残るほどの高機動を可能とさせるんだ!」

「勿論、強すぎる力には代償が伴うものでして、大量のGN粒子を消費するこのシステムは使用後、機体の性能を大幅に低下させてしまうという弱点も持ち合わせておりますのよ!」

「使えば強いけど、使い続けられないと言う絶妙なバランスで、作中ではいかにトランザムを上手く使うかが鍵になる場面が多かったんだ!」

 

 交互に、しかし絶えることなく捲し立てるような二人のトランザムの解説を真面目に受け止めたサラだが、いきなりワッと浴びせられた言葉の洪水に、すぐに理解できるわけもなく――

 

「今の、解りましたか?」

「うーん……?」

「――私もです」

 

 途中から二人の解説を聞いていたアズマの問いに、サラはあまり解っていない様子で小首を傾げた。

 アズマも同じ反応だった。

 

『要するに、短い間だけど、赤く光って強くなると思えばいいよ』

「うん、わかった。ありがとう、リク」

「理解できました。ありがとうございます」

 

 腑に落ちたように同時に頷く。

 そんな二人を見てユッキーとキリシマはしょぼくれた顔でがっくりと肩を落とした。

 二人の反応に気づいて、サラはアズマの袖を引き、顔を見合わせた。

 

「お二人も、教えてくれてありがとうございます」

「ありがとう、ユッキー、怪力光線おねえさん」

「――あ、そこはそのあだ名で呼ぶんですね」

 

 ユッキーとキリシマに顔を向けて、お礼を言う。

 言われた二人は一瞬きょとんとした顔をしていたが、言葉の意味を理解するとユッキーは「えへへへ」照れ笑いを浮かべて自身の頭を撫で、キリシマは「わたくしは怪力光線ですわ~!」と何時もの高笑いで照れを隠した。それでいいのだろうかと思うが、本人が否定していないのならそれでいいのだろう。

 

「よし、それじゃあそろそろ――」

 

 準備を整えたダブルオーダイバーが立ち上がると同時、ピピピピと言う着信音にも似た電子音が響いた。

 

「あら?」

『どうしたんですか?』

「わたくし宛にメールが届きましたの」

 

 開いたメニューパネルを確認しながらキリシマは答える。

 

『リクさんはそのまま続けて大丈夫ですわ」

『わかりました!』

 

 言って、少し離れたところまで移動しながらパネルを操作し、メッセージフォームに切り替える。

 件名には『フォース“パサージュトレイン”より、再入荷のお報せ』とだけあった。

 それを見て、キリシマは口角を吊り上げる。内容を開くと、そこには再入荷した各種アイテムのカタログが載せられていた。

 フォース『パサージュトレイン』

 アイテム収集率だけならば現在のチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』よりも上に位置する蒐集系のフォースだ。

 その名の通り内部をガラス製アーケード風の商業空間に改造したトレイン型の移動拠点を所有し、殆どを移動しながら活動し続けていると言われる変わった特徴を持っていた。

 停車場所と日時を定め、そこで集めたアイテムを物々交換形式で売買するというターミナルバザーなる形態を取っており、一応GBN内通貨のBC(ビルドコイン)でも購入はできるのだが、レア度の高いアイテムとなると金額もそれに見合って圧倒的な巨額となる。

 また欲しい品を希望することもでき――レア度によっては確約こそできないが――入手できた際はこうして再入荷と称して定期的にカタログを送付するなど義理堅いところもあり、そういった面で利用者からも注目されている。

 他ならぬキリシマもまたパサージュトレインを利用するダイバーの一人であり、頻度こそ高くはないが、余裕があれば展示される商品を見物しに行っているのだ。

 

「あら、次のバザーは結構、近日ですわね」

 

 停車場所と日時を確認し、メニューパネルを閉じるのと、悲痛な叫び声が響いたのは同時だった。

 

「ぬわぁんだらら!? なな、な、何事ですの!?」

 

 ⁎

 

 結果を言えばトランザムの起動は失敗に終わった。

 事情を訊けば、最初までは順調だったようにも思えたらしいが、完全起動目前になって不穏なアラートが鳴り響いたそうだ。

 そのまま続けていたらガンプラが壊れてしまいそうな悪寒を感じ、慌てて停止させたそうなのだが、それよりもキリシマの視線は不安げな面持ちで俯くサラに傾いていた。

 あの時、聞こえた叫び声は確かにサラのものだった。まるで我が身のような――そう錯覚してしまうほどに感情的なものであったように思う。

 ……感受性が高いと言うやつですわね?

 アズマから聞いたサラとの出会いの経緯を思い出し、キリシマは内心でそう結論付けた。

 恐らくアズマも、リクも、ユッキーも、そんな風に考えているのだろう。

 

「トランザムは、使わないで……」

 

 俯いたまま訴えかけるサラの表情はひどく悲しそうで、揺れる瞳には不安の色がありありと浮かんでいた。

 リクもそんな彼女を態度に一瞬びっくりしたようで、すぐに宥めるようにトランザムを使わないと答えた。

 気まずい空気が漂い始めそうなところで、数回ほど手を叩きながらキリシマが口を開いた。

 思い出したかのような――と言うよりも思い出させるかのようなタイミングで。

 

「とりあえず、ヤナギランを採りに行きませんこと?」

「あぁ! そうだった!」

「すっかり忘れてた……」

「マップでは、ここから歩いて行ける距離ですね。そうですよね? ユッキーさん」

 

 言い、マップを開きながら確認するアズマとユッキー。

 二人の傍を通り過ぎて、キリシマはリクとサラの肩にそっと手を添える。

 

「サラさんも、一緒に探しに行きましょう。ね?」

 

 問えば、サラの顔が少しずつ笑顔になっていく。

 頷いた彼女にキリシマもまた笑顔で返した。

 アズマとユッキーに小走りで駆け寄っていくサラの背中を見送り、今度はリクに視線を落とす。

 

「……トランザムについては今後の課題ですわね」

「そう、ですね」

「そう気を落とさずに。あなたのガンプラ――ダブルオーダイバーが素晴らしい出来であるのに変わりはないのですから」

「ありがとうございます。でも――」

「納得はできないと言う顔ですわね?」

「わかりますか?」

「もちろん。わたくしも通ってきた道ですのよ」

 

 ガンプラを作ってきた者ならば絶対に通らなければならない道で、乗り越えなければならない壁だ。

 それは、GPDをプレイしてきたキリシマだからこそ言える経験談でもあった。

 

「あの、キリシマさん」

 

 意を決したように何かを言おうとしたリクの口元に、人差し指を添えて止める。

 

「みなまで言わずともわかりますわ。わたくしが見た範囲、知る範囲であるならば、助言は致しましょう」

「本当ですか!?」

「ええ。ただし――」

 

 一拍。

 添えた人差し指を自分の唇の下に当て、片目を瞑る。

 

「ご自身の手で作ったガンプラは、ご自身の手で完成させること。よろしくて?」

「……はい! ありがとうございます!」

 

 リクの真っ直ぐな瞳を受けて、キリシマの口元に笑みが浮かぶ。

 いつの時代においても、前に進もうとする明るい意志は人をほころばせるものなのだ。

 

 ⁎

 

 ヤナギランの群生地への道のりは、いたって平和なものであった。

 リクを先頭にユッキー、サラ、アズマを順に、最後尾はGBN歴が長いキリシマが見守る形でついて行く形となっていた。

 途中、小川にかけられた丸太をサラの手を引きながら渡れば、キリシマが滑り落ちたり、大川では露出した平らな岩を飛び移りながら渡れば、キリシマが思い切り足を滑らせて奇跡的に一回転して綺麗に着地を決めたり、半壊して植物に絡めとられたザクタイプの頭部の上でユッキーとキリシマがザク語りを始めたり、廃れた建物の一部からどこそこの作品に出てきたものかもしれないと議論したりと道草を取りつつも、着実にに進んでいった。

 その広大さと自由さに、ピクニックでもできそうな感じだと感嘆するリクの呟きに、今度こういうミッションを受けた時はお弁当でも用意してみようと提案するユッキーに合わせて、アズマが料理ならお任せくださいとさり気なくやる気を見せたり、サラが楽しみと期待を露にしたりもした。

 GBNの自由度の高さはキリシマも知るところだが、初心者である4人のやり取りを見れば、改めてその自由度に舌を巻くほかなかった。

 のんびりとした進行であったため、思ったよりも時間はかかったが、森を抜けてすぐにヤナギランの群生地が見えた。

 

「ゲームだとは解っているけど……」

「こうして見ても、本物みたいだね……」

 

 眼前に広がるヤナギランの花畑に、リクとユッキーは唖然としながら呟きを漏らす。

 アズマとサラは少女らしく目を輝かせてその美しさに見惚れていた。

 

「行こう、アズマ!」

「え、あ――」

 

 サラに手を引かれて、アズマもヤナギランの花畑へと入って行く。

 少女二人に花畑とはよく似合う構図で、まさしくお嬢様と従者と言った風情だ。

 ……いやわたくしもお嬢様なのですけどね!

 微妙にやきもきした気持ちを抱けば、隣でヤナギランに関するガンダム知識を語るユッキーの声を聞き逃すはずもなく――

 

「そうですわね。経緯こそ見れば、ヤナギランはシャクティの母親役であった方との繋がりを示す記号でもありましたが、それも後々を見れば何と言いましょうか……ですわね!?」

 

 元々ヤナギランは『機動戦士Vガンダム』のヒロインであるシャクティ・カリンの母親――正確には全ての元凶たるフォンセ・カガチが雇った男女の誘拐犯の女性が、シャクティの前から姿を消す前に教えていた花であり、どういう意図があったかは不明だが、一部の間では希薄な愛情の中にもあった確かな愛ではないかと言う考察もあったりなかったりする。あるいは、そういう希望的な考察をひねり出すことで、少しでも心に平穏を見出そうとしたのかも知れない。

 付け加えれば、これが後にウッソたちの希望や愛の認識と言う一つの役割を担っていたりもするのだから、Vガンダムにおいてはこのヤナギランもある意味においては重要なキーパーソンとなっていたりするのだ。

 

「言いよどむ気持ち、僕も解ります。Vガンダムはガンダムシリーズで特に戦争の陰鬱さを全面に押し出したような作風なので、どんな要素にも明るさと暗さが両立しているから」

「ある種、振り切れているとも言えますわね。しかし――」

「しかし?」

 

 グッと拳を固め、叫ぶように吐露する。

 

「それでも登場モビルスーツのデザイン! 戦艦のトンデモさ! 完成された兵器技術!

 ほんっっっっっっっとうに最高ですのよ!!!!!!!」

 

 キリシマの言葉に、ユッキーは激しく頷く。

 

「わかりますわかります! 従来のモビルスーツとは一線を画すザンスカール帝国のモビルスーツデザインなんか最初はビックリしたけど、見ていくうちに段々と癖になると言うか馴染んでくるというか!」

「わかりますか! わたくしもあの猫目にはギョッとしましたが、気づいたら機体デザインの親和性の高さに感動しましてよ!」

 

 ああのこうのとザンスカールのモビルスーツから次第にリガミリティアのモビルスーツへ話題が移り、再びザンスカールのモビルスーツの話に戻れば、今度はモビルアーマーの話題へと変貌していく。

 

「そうでしょうリッくん!?」

「そうですわよねリクさん!?」

 

 グワっと濃い顔つきのまま二人がリクの立っていた場所に顔を向ければ、そこには既にリクの影すらいなかった。

 

「あれ?」

「あら?」

「おーい、二人ともこっちこっちー!」

 

 見れば、サラとアズマと一緒に、リクも花畑の中にいた。

 手を振って二人を呼んでいる。

 二人はリクを見て、それから互いに顔を見合わせ、ふたたびリクを見る。

 

「リクさん、いつのまに?」

「サラたちに呼ばれて。二人にも何回か声をかけてたけど、語るのに夢中になってたから俺だけでもって」

「ぜ、全然気づかなかったよ……」

「わたくしもですわ。でも良いガンダム談義が出来たので、ヨシですわ!」

「ハハハハ……あ、そうだ! 折角だからスクリーンショット撮ろうよ!」

「いいね! 撮ろう! サラ、アズマさん!」

 

 呼ぶと、二人ともリクたちのほうへ顔を向けて、小首を傾げた。

 

「お二人とも、暫くそこにいてくださいまし!」

「ユッキー、どう?」

「ちょっと待ってて。これをこうしてっと……よし、準備完了!」

「はしれー!」

 

 ユッキーがスクリーンショットのセルフタイマーを設定。

 次いでリクの言葉を合図に、三人が一斉に走り出し、サラとアズマの傍へ駆け寄る。

 サラを中央に、右側にはリクとユッキーが互いに肩を組み合い、左側にはアズマとキリシマが並び――アズマはサラの肩に手を添え、キリシマは不敵に胸を張ったポーズでフレームに収まる。

 パシャッ!

 シャッター音が鳴り、撮影を終えた。

 スクリーンショットを確認し、五人はそれぞれの笑みを浮かべた。

 

 ⁎

 

 森の中。

 サラはヤナギラン一本を手に先頭を歩いていた。

 ミッション達成条件はヤナギラン一本以上の採取であるため、二本も三本も持ち帰る必要はないのでそれは良いのだが、本来ならアイテムボックスに収納し、持ち運ぶ手間を省くのが基本となっている。

 しかし、サラはそれにはかぶりを振り――

 

「こうしてたい」

 

 と、短く答えたのだった。

 そう言われてしまえば、否定するものなど何もない。

 微笑ましく、可愛らしい小鳥のさえずりを聞きつつ、先を歩くサラの背中を見守りながら四人はその後に続いていく。

 暫く進んでいると、森が開けた。

 眼前には太陽の麗らかな陽気を反射させて煌めく湖畔があった。

 湖畔と言えばララァ・スンとアムロ・レイが出会った場所を思い出すが、ヤナギランの群生地があったと言うことはポイント・カサレリアの地形を再現したものなのだろう。

 流石に地形までは記憶していなかったので、果たしてポイント・カサレリアにこんな場所があったのかまでは思い出せなかったが、誰かが「ん?」と何かに気づいて歩みが止まったことに気づき、キリシマも足を止めた。

 

「どうしましたの?」

「お嬢様、前を」

 

 アズマに促されるまま、視線の先を追い――

 

「おや?」

 

 そこには、鞘に収めた刀を地面に突き立てた、赤い長髪の額から三本の角を生やした男性型ダイバーと、青い短髪の一本角の小太りな少年型ダイバーは佇んでいた。

 向こうもこちらに気づいたらしく、二人揃って顔を向けた。

 その内の一人、赤髪の三本角をキリシマは知っている。

 打倒チャンプ『クジョウ・キョウヤ』を目標に掲げ、強者との戦いを求めてバトルジャンキーの聖地『ハードコアディメンション・ヴァルガ』にも現れると言う新進気鋭のダイバー。

 名前は確か、と灰色脳細胞を活性化させて思い出す。

 

「ええと、あの方は通称……そう! 極旨の、オーガでしたわね?」

「――お嬢様、知らぬ私でも、それは違うかと思います」

「そうですわね。……そうかも知れませんわ」

 

 聞かれていないだろうかと相手を見れば、心なしか眼光が鋭くなっているような気がした。




折り返しでようやく登場した獄炎のオーガ。
お嬢様と接触することで、果たしてどのような化学反応が生じるのか!?
ドム試作実験機三人衆はこの先生き残れるのか!?(予定調和お嬢様)

【パサージュトレイン】
 ∀ガンダムに登場した列車(トレイン)型フォースネスト『銀河鉄道』を使い、活動しているアイテム蒐集系フォース。
 列車は近代技術を融和させた――所謂スチームパンク風に仕上げられている。
 先頭車両のガイドビーコンからビームレールを生成しながら移動している。
 様々なアイテムを蒐集し、時にそれをターミナルバザーと称して売買している。
 内部をガラス製アーケード風の商業空間に改装しており、人の移送を目的としていない作りとなっている。
 車掌(リーダー)の『フルカニロ』は常にどや顔を浮かべる自称エレガント。
 どんな時でも悠然と構えた、車掌衣装を纏う薄紫の髪の女性。
 使用ガンプラは白と黒に彩られたタキシードカラーのリーオー。
 シルクハットとステッキを装備し、カールを巻いた髯パーツを着用している。
 「事はエレガントに運びたまえよ」
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