因みになんですけれど今後の展開についてアンケート設置してみましたわ。
GBNのセンターロビー。
フォース・サバイバルバトルを何とか勝ち抜いたキリシマがそこに居た。
「ふぅー」
壁に背を預け、ドリンクを片手に一息ついていた。
前髪を切り揃えた金髪縦ロール。
情熱のイメージをそのまま宿したような赤い双眸。
その二つの特徴をバランスよく調和させる美貌。
いかにも『お嬢様』と言う表現が相応しい女性であった。
因みに服装は最近購入したソレスタルビーイング風の女性服である。
彼女は今回のミッションを脳内で思い返し、反省点を絞り出す。
「今日一番の反省点――やはり突進力が足りませんでしたわ」
「いや、問題はそこじゃねーだろ」
キリシマの呟きに応える声があった。
「あら、貴方がたは……」
見れば、フォース『ヘル・ガンズ』の三人が立っていた。
テンガロンハットに葉巻を咥えたカウボーイ風な優男――ガン・アトス。
迷彩柄のヘルメットを斜めに被ったツインテールで小柄なカウガールー――シャッガン・ルネ。
バンダナを巻いた、顎髭の濃いガンマン風な大男――キャノン・ボルトス。
何れも先ほどのミッションで終盤まで生き残るほど中堅Bランカーとして相応の実力を有し、全員がデナン系を始め、クロスボーンのモビルスーツを愛好するマニアックな――それでいてノリの良いダイバーたちである。
付け加えると周囲からは専らアトス、ルネ、ボルトスと先頭の名前を省かれて呼ばれている。
「先ほどは対ありでしたの」
「ああ、こっちこそ。言っておくが次は負けねーからな」
アトスの言葉に、キリシマはにこやかに言い返す。
「ええ、わたくしも同じでしてよ。次も負ける気はありませんわ」
バチリ、と両者の視線が重なり、火花が散る。
「でもさー」
二人の間に割って入るように、ルネが言葉を挟んだ。
「次は負けないは事実じゃない? ま、同じ機体で来たらの話だけどなー」
「――それはそうですわね」
ルネの言葉に、キリシマは重く頷いた。
『ヘル・ガンズ』同様、キリシマもまた中堅Bランカーである。
実力はあるのだが、そのプレイリングによって対策がされやすく、毎回大事な場面において敗北を繰り返している。
例えばギャン・スピアヘッドのように、突撃のために防御を犠牲にして極端なまでに機動力を高めた機体は、フォース・サバイバルバトルのような乱戦が想定されるミッションでは真価を発揮するが、一対一などの所謂タイマンでは性能を発揮しにくい。
今回、勝利できたのは単純に運が味方しただけだと言っても過言ではない。
更に言えば、キリシマに全滅させられた二十組の敗因は完全に初見殺しだったためである。
ほんの僅かにでも気を抜いたりした瞬間には、大型ランスの餌食になっているのだから「こういう戦術もあるのか」と学び、対策を練ってくるだろう。
「むぅ、ならばもっと突進力を……」
「だから、そこじゃねーって!」
アトスのツッコミに小首を傾げるキリシマに、ルネとボルトスは「やれやれ」と肩を竦める。
「そもそもお前、この間までアレックスだったじゃねーか」
「あ、そーいえばそーだ。一ヵ月ぶりにインしたかと思ったら、久しぶりにギャンのビルド機になって、どしたん?」
「確かに。生涯アレックス宣言なんかもしてたな」
「うっ」
三人の言葉に、一瞬、キリシマは言葉を詰めた。
コホン、と咳払い。
「確かにアレックスはわたくしの知る限りでは元祖ピーキーな機体でしたわ。
アムロ・レイ専用に調整されたが故の反応性、運動性、それに伴う追従性、どれをとっても一般兵士には扱いづらいピーキーとも言える性能!」
しかし、しかしですわ!
「汎用性が――汎用性が高すぎたのですわ!!!!!」
そう高らかに、キリシマは言ってのけた。
「えぇ……」
「まぁじでぇ」
「……あれで、か」
流石の『ヘル・ガンズ』の面々も若干ドン引きしている。
「なのでわたくしのアレックスは現在、構築を見直すために一時休止し、久方ぶりにギャンを迎え入れたのですわ!」
でも良いですわよね、ギャン!
白兵戦というコンセプトの潔さがもう最高!
シリーズが派生するごとに騎士道溢れる外観になっていくエモさ!
などなど、熱く語りだしたキリシマを尻目に――
「あー、なぁお前ら、あいつのアレックスのビルド機って確か……」
「うん。システム・ファブニール搭載型で、チョバムアーマーを質量の塊としてビットしてたやつだね」
「曰く、アーマーナックルビットと命名していたな」
三人は互いの顔を見合わせ、呆れ混じりの溜め息を吐いた。
チョバムアーマーがアレックスの周囲を飛び回り、近づく者を容赦なく殴りつける光景は中々に忘れがたいものだった。
しかもチョバムアーマーとして元々の機能も有していたためメチャクチャ堅いのだ。
恐らく彼女は攻防一体としたその部分を指して「汎用性が高すぎた」と嘆いているのだろう。
「やっぱ馬鹿だな。良い意味で」
「うん、良い意味で馬鹿だね」
「右に同じだ」
苦笑を溢しつつ、一通り語りつくしたキリシマを見やる。
「よぉ、ようやく落ち着いたか?」
「ぜぇ……はぁ……お、お恥ずかしいところをお見せしましたわ」
「キリシマにも羞恥心の概念あったんだ」
「フ、突撃しか芸のない貴方と違って、わたくしにも一端の淑女らしさ――ありますのよ?」
「お? 巷じゃあその派手な金髪でカテシマお嬢とか猪カテ公呼ばわりされてるのに?」
「おまっ、それ言ったら戦争でしてよ!? このミーシャ娘!」
「んにゃっ!? ミーシャのおっさんは好きではあるけど、そう呼ばれるのは腑に落ちないかな!
とゆーかアタシ、断然ザビーネ様派なんですけど!?」
「オホホホホホ! 所詮は貴族主義の妄執に囚われ続けた敗北者ですわー!」
「は、敗北者……!? グヌヌ、そんなに戦争がお望みかい猪カテ公ぉ!」
バチバチ、バチリ。
アトスの時よりも盛大な火花が散る。
「はいはい、落ち着け落ち着け」
アトスがルネの頭を押さえて、宥める。
傍からすれば煽り煽られの喧嘩にも見えるが、実際はこの二人のよくあるやり取りである。
喧嘩するほど仲が良いと言うやつである。
行き過ぎた場合は最悪マギーお姉さんのお叱りが入るので無意識にセーブしている部分もあったりなかったりする。
「あら、そういえばもうこんな時間でしたのね」
つと、キリシマがロビーに設置された時計を見て呟いた。
「何か用事でもあるのか?」
「えぇ、少しばかり。――それではわたくしはこの辺でお暇させていただきますわ」
「次会ったら絶対決闘だかんね!」
「オホホ、精々負けた時の言い訳でも考えておきなさいな!」
「グヌヌヌ……ぜーったいに目に物見せてやるからね!」
「楽しみにしておきますわ!」
頬を膨らませて地団太を踏むルネの姿をハムスターに重ねながら、きっちり三人に「お疲れ様ですわ」と告げてログアウトするのだった。
⁎
ガンプラが飾られた棚が目立つ一室。
ログアウトしたキリシマはダイバーギアを外し、凝り固まった身体をほぐすように全身をひねる。
GBNでは金髪お嬢様なキリシマだが、現実ではそうではない。
前髪こそ同じように切り揃えているが、髪色は青みがかった長髪である。
細く吊り上がった目つきと、Vの字に曲がった自信に満ちた口元が彼女の性格を表しているようであった。
コウゴウジ・キリシマ。
それが彼女の本名であり、GBNの開発計画に携わり、射出成形機の生産を担うフローレンス工業のご令嬢であったのだ。
GBN内での自称エレガントお嬢様は決して誇張やキャラ付けなどではなく、事実であった。
エレガントかどうかは別として。
「お嬢様」
キリシマが座っていたGBNプレイ用のゲーミングチェアの後方、やや斜めの側から淡々とした声がかけられた。
「あら、ついに来ましたわね」
キィ、とゲーミングチェアから立ち上がり、振り向く。
そこには一人のメイドが佇んでいた。
真っ直ぐに伸ばした背筋と、短くキッチリと揃えたボブカットがよく似合う。
ミカガミ・アズマ。
それがメイドの名前であった。
キリシマと同じ華の女子高生でもあるのだが、どうにも大人びているというのがキリシマの素直な評価である。
そんなアズマは訳あって、キリシマのメイドを兼業としている。
「それで、どうかしら? 答えはお決まりになって?」
「――はい」
キリシマの言葉に、アズマは小さく頷き、真っ直ぐに見る。
アズマの光を宿さない黒い双眸がキリシマを写す。
そこには情熱も、活力も、気力も感じられない。
まるで夜闇のようなアズマの双眸の理由をキリシマは知っている。
「私も、GBNというものに、触れてみようと、思います」
アズマは言葉を探すように逡巡した後、区切りをつけてハッキリと、そう告げた。
⁎
これは一人のお嬢様と、心に影を落とした親友との、ほんのちょっと一歩を踏み出す物語。
キリシマお嬢が以前使っていたアレックスは『アレックス・ファブニール』
簡潔に言うなら『チョバムアーマーをオールレンジ兵器にしたアレックス』ですわ。
原作のピーキーさを再現するほどに作り込んだ上でチョバムアーマーを攻防一体にしたビルド機ですわね!
システム・ファブニールについては『いやこれ絶対に違いますわよね?』と思いつつも『こっちではこーゆー感じなのですわ!』と脳内お嬢様が押し通しましたわ!
ところでデスパーダのキット化は何時になりまして?????
この作品の今後の展開についてお伺いしますわ!
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ダイバーズ本編組に絡んでいく流れ
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ダイバーズ外伝組に絡んでいく流れ
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どちらとも絡まない流れ