獄炎のオーガとのバトルの火蓋が切られた時、リクたちは巻き込まれないように避難を始めていた。
タイミング的にかなりギリギリなのだが、これはキリシマとユッキーが寸前まで目の前で次々に現れるガンプラの群に夢中になっていたためだ。
二人の気持ちも解らないわけではないが、今は状況が状況だ。
アズマには、先にサラと一緒に遠くまで下がるように伝えておいたので、既にこの場から離れている。
「あれはゲルググGですわね! 汚し塗装かつ渋めのデザートカラーで重力下で戦い抜いてきた軍人のダンディズムがドバドバ溢れてますわぁ!」
「ザクデザートタイプとニコイチしてるんだ!? ビームナギナタじゃなくてヒートナギナタなのも拘りが見れて最高だよ! あ、あの動力パイプは太さからするとスクラッチかな!?」
「二人とも! 見ていたい気持ちは解るけど、もう少し早く!」
キリシマとユッキーは走りながらも、早回しのテープのような調子で機体名と、それがどういう工夫で改造されているのかを感想とともに吐き出しながら、熱い語り口を閉じることはない。
その時だった。一発の流れ弾が三人の傍を掠めて木々を薙ぎ払ったのは。
「……うっ、わ」
「……あ、危なかったぁ」
焦げた臭いと、抉れた大地を見て、ユッキーはぽかんと口を開けたまま固まった。
リクもまた同様で、生身――ダイバーのままで目撃した攻撃の威力の前に、額に青筋を浮かべていた。
巻き込まれても実際に死にはしないが、没入感の高いGBNだからこそ、そのリアリティを纏ったデータで構築された質量と熱の塊の前に、安全と言う意識を忘れてしまった。
唯一、GBN歴の長いキリシマだけは「あらまぁ」と呑気な様子だったが、すぐに表情を引き締めると、固まってしまったユッキーを脇に抱えるように持ち上げる。
「リクさん、わたくしのコルレル・スヴェイズは軽量故に装甲値は紙同然なのですわ。
さっきまで熱く語っていた手前、ワガママな申し出で申し訳ありませんが――」
「大丈夫です!」
自身を引き戻すように頭を縦に振って、グッと握りこぶしをつくり、真っ直ぐにキリシマの瞳を見据える。
アイコンタクト、というやつである。
視線の中で交わされた言葉――即ち、リクが今やろうとしていることは、飛んでくる流れ弾を防ぎ、避難が完了するまでの時間を稼ぐことにあった。
「……ありがとうございますわ。すぐに戻りますので!」
言下に走り出し、抱えられたまま何かを言わんとするユッキーをあえて無視して避難を再開する。
リクはその背を見送らず、戦場に目を向けた。
メニューパネルを開き、マギーさんから学んだショートカット登録でダブルオーダイバーを呼びだすのと、流れ弾――バズーカの実弾頭が飛来するのは同時だった。
GNソードⅡを展開し、流れ弾の軌道に合わせてタイミング良く振るい、斬り払う。
これがビームの光条や速射弾であったならば難しかっただろうが、幸いにも弾速が遅いバズーカの実弾であったため、元々反射神経の良いリクはそれを防ぐことができたのだ。
「っ! この攻撃、まさか二人を狙って!?」
故に、その攻撃がただの流れ弾でないことに気づいた。
計算された軌道の表示は、真っ直ぐに避難経路に向けられていたからだ。
直後にアラートが鳴り響く。
「攻撃!? どこから? 上っ!?」
見上げれば、六発のミサイルが曲線を描いて落ちてくるところだった。
六発すべてがダブルオーダイバーの周囲に着弾し、爆発する。
衝撃と巻き上げられた土と木々の破片が装甲を叩く。
ダメージにこそなりはしないが、聴覚と覆うように絶え間なく伝わる軽い音と、視界を塞ぐ土煙は、多少の不安を煽る材料となる。
リクはすぐさまメインカメラからレーダーへと視線を移し、接近する赤い光点を認識する。
『ハッハァー!』
土煙が落ち着くのを待たずして、ソレは来た。
新緑に彩られ、金色のエングレービングを施されたカスタムザク――ドズル専用ザクⅡだ。
ドズル専用ザクⅡは、担ぐように持っていた柄の短い両刃の大型ヒートホークを横薙ぎに振るう。
「くぅっ!」
咄嗟にGNソードⅡの腹で防ぐが、パワーの差に押されてしまう。
このままでは不味いと判断し、両手持ちに変えることで何とか持ち直しを図る。
原作での機体性能ならば、ダブルオーダイバーがドズル専用ザクⅡに力負けすることはない。
しかし、ここはGBNだ。原作設定などは、そのまま再現されることはない。
作り込みによって初めて近しい性能にまで引き上げることができるのだ。
そしてこの場合、作り込みの差が、パワーの差となって現れたということに他ならない。
『お前ら、行けっ!』
ドズル専用ザクⅡから高圧的な男の声が響き、ダブルオーダイバーの左右横をズゴックとサクが、頭上をキケロガが通り過ぎていく。
進行方向から、狙いは避難している四人であることは明白だ。
「しまった!?」
『あのオーガとつるんでたなら、仲間も同然だよなぁ!』
「違う! 俺たちは仲間じゃ――」
『今さら関係あるかよ、そんなの! おらぁ!』
ドズル専用ザクⅡはダブルオーダイバーをパワーで押し負かし、バランスが崩れた瞬間を狙って胸部に蹴りを入れた。
「無茶苦茶だ!」
手足のスラスターを激しくふかし、滑るように後方へ下がりながら態勢を立て直す。
「パワーでダメなら……スピードで!」
そのままドズル専用ザクⅡに向かって加速。
Z字を描くように、ジグザクに動きながらライフルモードに切り替えて連射する。
『仲間を見捨てたか!』
大型ヒートホークを分割し、二丁持ちとなったドズル専用ザクⅡが赤熱した刃で直撃コースのビームのみをタイミングよく斬り払う。
大振りにならないように意識を割き、最小限の可動域に留めた動きだ。
それだけで、ドズル専用ザクⅡもダイバーもまた、並々ならぬダイバーであることを窺うことができる。
ダブルオーダイバーは、もう一振りのGNソードⅡを近接形態にしたまま、最後のビームが斬り払われたタイミングを狙って飛び込んだ。
『素人の動きぃ!』
「ぐぅっ!」
ドズル専用ザクⅡの手首が回転し、大型ヒートホークを半回転させダブルオーダイバーの刺突を防ぐ。
衝撃がアームを伝って嫌な音を立てる。
「ま・だ・だぁ!!」
『なんだと!?』
突き出したGNソードⅡをライフルモードに切り替え、コントロールスティックのボタンを押し込む。
至近距離で放たれたビームが大型ヒートホークの刃を溶かし、貫く。
威力は衰退していたが、それでもドズル専用ザクⅡの装甲を溶解させ、小さくな穴を開けた。
『うおおおおおおおっ!?』
力任せに半壊した大型ヒートホークの柄を振るい、GNソードⅡを弾き飛ばす。
そのまま柄を手放し、バーニアをふかし、後方に下がって距離を取った。
『こいつ、舐めた真似を――』
頭部を上げると、眼前にはGNビームサーベルが迫っていた。
慌てて機体を傾けて避けるが、掠めたエネルギーの刃が左側の動力パイプを切り裂いた。
その隙をリクが、ダブルオーダイバーが見逃すことはない。
相手の意識がGNビームサーベルに注がれた一瞬を突き、なるべく視界に入らないように腰を低く保った姿勢で懐に潜り込んだ。
「これでぇ!」
『む・お・お・お・おっ!?』
GNソードⅡに渾身のパワーを溜めて、思い切り斬り上げた。
だがドズル専用ザクⅡも寸でのところで反応した。
ニードル付のショルダーアーマーをパージし、大型ヒートホークを地面に落とすことで重量を減らした。
即座に全開まで解放したバーニアを噴出。重りがなくなった分、軽くなった上半身を捻る。
GNソードⅡの切っ先が腰の動力パイプから入り、そのまま斜め上に装甲を切り裂いた。
「浅いっ!?」
反射的に相手の反撃を危惧し、ダブルオーダイバーを一度、後退させる。
ドズル専用ザクⅡはやぶれかぶれに拳を数度、突き出していたが、やがてスパークを散らしながら、膝を突いた。
『ぐっ、うぅ……こ、こんな、こんな……!?』
ドズル専用ザクⅡから漏れた呻き混じりの声を聞いても、リクは警戒を怠らない。
撃破には至らなかったものの、既にダメージは甚大であることは見て解る。
先のダブルオーダイバーの一撃を回避するために武装やパーツを捨てたことで、まともな戦闘力は残っていないはずだと、落ち着いて判断する。
注意するべきは、片手でダブルオーダイバーを圧倒したパワーから繰り出される肉弾戦だけだろう。
「よし、このまま一気に!」
GNソードⅡを構え、トドメを刺さんと駆け出そうし――
『こんな素人くさい奴に敗けるなんて……認められるかよぉぉぉぉぉぉ!!!』
怒号とともに、ドズル専用ザクⅡから紫の靄が衝撃となった噴出された。
Q.キリシマお嬢様、出番ないですわね?
A.大丈夫。次回はキリシマお嬢様vsズゴック&キケロガ&サクですわ!
実際、サクは立体化していませんが、この作品内では『駄菓子コラボで立体化済』と言う設定になっておりますわ。サムも同様に。
書いていてわたくしでも展開がゆっくりすぎて驚きですわよ!!!!!!!!
あと戦翼のシグルドリーヴァくっそかわいいですわね!!!!!! 小説版はぽこじゃか戦死者が出てると聞いてとても不安ですけど!!!!!!