お嬢様はピーキーがお好き   作:アルキメです。

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ようやく3話目ってマジですの? となったので初投稿ですわ


三話『ターミナル防衛戦/プロローグ』

 ターミナルバザーという催し(イベント)がある。

 運営が直々に開催するイベントではなく、ユーザー同士が集まって行うバザールのようなものだ。

 ターミナルという名が付くそれは、文字通り巨大な駅(ターミナル)で行われるのが最大に特徴となっている。

 元々はアイテム蒐集を生業とするフォース『パサージュトレイン』や売買でポイント稼ぎにいそしむダイバーたちが始めたもので、当初こそは小さな駅を舞台にした小規模であったものが、参加者に開催日時を記したカタログを送ったり、確約こそできないもののリクエストを受け付けたりと徹底したサポートを行う姿勢から次第に人が集まり、結果的に相応な規模なものへと発展していったのだ。

 GBNにある数あるバザールイベントの中でもパサージュトレインが開催するそれは他よりも一線を画していて、彼らが所有する∀ガンダムに登場した列車をスチームパンク風に改造した移動型フォースネスト『銀河鉄道』そのものをバザールの舞台にしている。

 ガラス製アーケード風の商業空間に改造された車内に並べらてたショーケースの中には、比較的手に入りやすいパーツから手に入れるまで困難な確率に挑み続けなければならない希少素材まで、GBN全土に存在するほとんどのアイテムが飾られているのだ。

 その収集率順位(コレクションランキング)だけであれば、フォース『AVALON』のリーダーにしてGBNのチャンピオン『クジョウ・キョウヤ』よりも現在は上に位置しているほどである。

 キリシマはそんな夢のような空間を構築するパサージュトレインのターミナルバザーが好きであり、この日が来るのを待ち続けていた。

 買えずとも見るだけでワクワクするというのは子供っぽいと思われるだろうが、そういった気持ちは店先に積まれたガンプラの箱を見ているのと同じようなだものだ。

 それはガンダム好きが、あるいはプラモデル好きが持つDNAに刻み込まれた普遍的な本能であると言ってもよいだろう。

 馬鹿みたいな高笑いを響かせ、ドレスの装いを以てハイヒールの靴をコツンと軽快に鳴らしながら、ターミナルバザーへと参加した――そのはずであった。

 

「どうして……」

 

 現在。ターミナルバザー。

 キリシマの目の前に広がる光景は大よそバザールとは程遠いものであった。

 崩れ落ちたドーム状の天井。

 砕かれたホームを覆う壁。

 床の一部は抉れ、列車の外に展開していた露店はすべて吹き飛んでいた。

 バザール目当てでガンプラを持たずにログインしていたダイバーたちは逃げ惑い、パサージュトレインのフォースメンバーたちが声を張り上げて避難誘導に必死となっている。

 ガンプラを持ったダイバーたちは全員が各々のガンプラに乗り込み、迫る脅威に対してターミナルを護ろうという気概を見せていた。

 キリシマもまた例外ではなく、ガブルの改造機である深緑色の動く城壁『ガブル・TF(タートルフォート)』に乗り込んでいた。

 通信からパサージュトレインの車掌(リーダー)である『フルカニロ』の言葉がノイズ混じりに聴こえる。

 

『現在――我々は――非戦闘エリアにて――攻撃を――正体は不明だが――恐らく――である――諸君――協力を――頼み――』

 

 もはや何度目かになる通信は、全て同じ内容だ。

 非戦闘エリア内での長距離砲撃――即ち、攻撃行為。

 その後に現れた正体不明のモビルスーツ群。

 状況から察すれば、最近噂のマスダイバーの仕業であろうことは察しがついた。

 回数を重ねるごとに途切れがちになりつつあるのは、立ち込めてきた霧の影響か、それとも別の理由か。

 耳障りになってきた通信を一度切り、キリシマは前を見据える。

 迫りくるのは統一感のないモビルスーツの群だ。ジムがいて、がいて、モビルジンがいる、

 動きこそバラバラで統率が取れているとは言い難いが、荒々しいマニューバからGBNの中でも荒くれ集団であることが窺える。

 一方、防衛側となったキリシマたちはターミナルバザー参加者で構成された即席の部隊だ。

 演出のために外に佇んでいた警備役は先の砲撃で消し飛んでしまい、数こそ少ないものの質は十分だと思いたい。

 しかし、それとは別の問題がキリシマを焦らせていた。

 

『くそ、ビクともしないぞ!』

『パワー自慢六機でもダメとかどんな構造してんだカテシマァ!?』

『バイフー重いぜ!!!』

『やべぇ関節がイカれた! 重い上にかてーんだよ!』

 

 キリシマのガブルTFが嵌っているのだ。ターミナルの中央入り口に。すっぽりと。

 コントロールスティックを押しても引いてもわずかに揺れるだけで動かない。

 味方に押してもらってもまったく動じないどころか関節の駆動系に負荷をかけてしまうという有様であった。

 このままでは防衛のために陣形を展開することさえできない。

 

「どうしてこうなったんですのぉーーー!!!」

 

 ガブルTFのコックピット内で、キリシマは悲鳴にも似た叫びをあげた。

 同時に、こうなるまでの経緯が脳裏でフラッシュバックするのだった。

 それはキリシマが参加したターミナルバザーで起きた、マスダイバーを相手にした防衛戦に至るまでの記憶である。




次回は数分前に巻き戻りますわ。

【ターミナル】
ターミナルバザーの舞台。
固有名称は不明だが、GBN内ではこのようなオリジナルの施設が幾つか存在しており、デザインや大きさはそれぞれのディメンションによって異なる。
基本的に非戦闘エリアに点在しており、本来であれば破壊不能オブジェクトとして設定されている。
今回のターミナルバザーと舞台となったターミナルは近未来を想定した巨大な建造物で、内部でMSを展開しても収めることができるほど巨大。
徒歩での移動よりも、内部各所で借りられる移動用カートの利用が推奨されている。
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