お嬢様はピーキーがお好き   作:アルキメです。

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流行りのネタはお嫌いかしら?(ムスカお嬢様)


外伝
外伝『公認Gチューバー・ナルミ』(8/3キャラ解説、機体解説追記)


 GBN格納庫。

 

「はいはいどーも。小さなバグから大きなバグまで、よりよきGBNのためにどこまでもー。

 ナルミだよー。助手の諸君、優良健康でいたかなー?」

 

『こんばんは』『神配信』『初見です。はじめまして』『来たわね』『今日のバグこ』

『初見だ! 囲め!』『大きなバグない定期』『あったら困る定期返し』

 

 下から上へ流れるコメント欄を気だるそうなジト目で追いながら、袖の余った白衣を着た少女が灰色の狐耳とツインテールを揺らしながら配信画面内の下からひょっこりと顔を出した。

 GBN運営公認Gチューバー『ナルミ』。

 活動内容は主に報告されたバグの調査である。

 GBNがゲームである以上、決して避けられぬ不具合事象だが、運営の尽力により一部の例外を除き、凶悪なバグは報告されていない。

 とは言え、ないというわけではなく、多種多様なバグが散見されているのが現状である。

 しかもGBNは広大。中にはダイバーが作り上げたエリアやミッションも存在する。

 それ故に運営側もきちんと把握できていないものがあったり、あるいは対応が後手になってしまっているものもあるのだ。

 運営はこれに対し、少しでもストレスを和らげようとして目をつけたのがGチューバーであった。

 Gチューブ特有のこの文化を舞台に、ナルミはリアルタイムでバグの調査を行い、運営以外の視点や発想をもつ存在――即ち、彼女が助手と呼ぶ視聴者からの様々な意見やアドバイスを以て改善を試みるのである。

 これが想定していたよりも好評を博し、GBNガードフレームが正式に配備されて以降、バグの報告が激減しても活動が続いていた。

 因みに公式ではなく公認なのは、ナルミ自身は初期に個人Gチューバーとして活動していたのだが、最悪なことにこの活動が公式に捕捉――と言う建前で身バレしてしまい、結果そのまま公認される形となってしまったという経緯がある。

 当時のナルミはこう語る。

 曰く、『やはり社内に設置されたGBNブースで配信なんかやるもんじゃない』と。

 

「ま、この前口上も今では完全に形だけのものになったんだけどねー。

 いやぁ、優秀だよねGBNガードフレーム。満足度は体感で95割くらい。そんくらい楽になったねー」

 

『95割? 95割!?』『950%……だと……』『もう神配信』『体感高すぎない?』

『ダイバ忍かなにかやっておられる?』『ここは健全チャンネルぞ!』

 

「ハハハ、諸君こらこら。古のネタ好きすぎるだろう。

 でも実際、デバッカーの真似事してた身としては本当にそれくらいはある」

 

『確蟹』『これは蟹配信』『ファイトクラブきたな』

『あれから細かなバグも殆ど聞かなくなったしな』

『根強かった水中のオブジェクトバグもガードフレーム実装から数日で修正されてた』

『ガードフレームでも数日かかる水中のオブジェクトバグとは』

 

 水中のオブジェクトバグ。

 水中に浮かぶオブジェクトの判定が見た目よりも小さく判定されてしまい、オブジェクトを通過して攻撃を受けてしまうというバグであった。

 ナルミも調査のために再現をしたが、主に二回以上繰り返してそのフィールドで遊ぶ、オブジェクト破壊可能な攻撃を一回当てるという条件でようやく再現できた。

 発生する条件が条件だったため、余程の水中エリア愛好家ではない限り発見し難いバグとして、ナルミの調査で知られるまでは運営も中々手が回せない状態であった。

 

「あれはまぁ、割と深刻――と言うかは他のシステムと思いの外絡み合っててね。

 人間の手数だと丸一年近くはかかる予測だったんだよー」

 

『そんなに』『知らなかったそんなの』『ただのオブジェクトバグではなかったのか』

 

 唖然とするコメント欄を横目に、ナルミは格納庫を歩き出す。

 コツコツ、と規則的な音を立てて。

 

『どこ行く』『あっち』『こっち』『そっち』

『上』『下』『真ん中』『上上下下左右左右BA!』

『どっち!?』『草』『どう見ても右に移動してて草。耳鼻科、ヨシ!』『眼科だよぉ!?』

 

 些細なことに勝手に盛り上がるコメント欄に笑いを零しつつ、第一格納庫に配備されたモビルスーツにカメラを移す。

 そこにはオレンジカラーの――

 

『おぉ?』『なになに』『ガードフレーム!』

『は?』『は?』『は?』『は? 神配信』『プレイアブル化!?』

 

「そうGBNガードフレーム。今回の配信の目的はこれね」

 

 ざわつくコメント欄の流れを確認しつつ、ナルミは言葉を続ける。

 

「何とあのガードフレーム、諸君らの熱烈な要望によってキット化することが決定しましたー」

 

『まぁじでぁ』『まてまてまって』『仕事早すぎて草』

『はい神配信』『毎回神配信ニキいておハーブ生えますわ』

『ハーブネキきたな』『そこまで熱烈だった?』『なんだァてめェ?』

 

「ハハハ、嬉しいかね諸君? 嬉しいよねー。私も嬉しい。

 で、これ、先行して組ませてもらった上に私色に改造した正真正銘のガンプラ版ガードフレームってわけなんだけどねー。どうだ羨ましいだろう?」

 

『いいなぁ』『ちな名前は?』

 

 名前と訊かれて、ナルミは少し逡巡して――

 

「ワークフレームなんて――どうだろう?」

 

『うわぁ』『強いられてそうな名前してますわね』

『働くことを強いられているんだ!』『神配信を強いられている』

 

「おいおい、諸君、私はイワークさんじゃあないんだよ。

 因みに頭部はフルフェイス型とボックスキャノピー型があって、私のは後者のボックスキャノピー型を採用しているよ。実際にそこに乗り込むってわけじゃあないから、そこは気分ということで。

 武装は元々私の活動が調査主体だったから、あんまり戦闘用の武装類は積んでないよ」

 

『太陽の牙ってそう』『鉄の戦士は死んではいなかった!』

『キバっていくぜ!』『違う、そっちじゃない』

『あ、肩の円筒ミサイルポッドじゃなくてフリッパーのスコープカメラ?』

 

 カメラを操作し、足元から上へと写してから、引いて全身へ。

 そこから各部を見せつつ、取り付けられた装備の説明に入る。

 この時ばかりはコメント欄の流れも落ち着いており、リスナーたちはポツポツと短い返事をコメントに打ち込みながら聞き入っていた。

 

「コメントでも指摘されたけど肩のはザク・フリッパーのスコープカメラだねー。

 よく気づいたもんだと感心するがどこもおかしくはないな。

 あとバックパックもフリッパーのを半分ほど流用してて、後はボールのマニピュレーターも組み合わせてアストレイ・アウトフレームのバックジョイントを再現してるんだよー。

 それとエビル・Sの偵察ポッドをハロ風に仕立てたハロポッドも付けてある」

 

『はえーすっごい改造』『ミキシングビルドいいぞこれ!』

『先行して組んだガードフレームがはちゃめちゃ偵察機に改造されてた件』

『アウトフレームのそのままもってくるんじゃなくてボールので再現してるのすご…‥』

『ハロ風偵察ポッドかわいいな』『ちゅーか名前アウトフレームでよかったんじゃ?』

 

「私は働いているから……まだ社会からドロップアウトしたくないから……」

 

『草』『草』『おハーブ』

『社内のGBN端末を使い、デバッカー権限を付与した状態で配信に勤しんでいた時点で結構ギリギリだったのだが』

『運営さん!?』『そーいや一応運営公認だからそりゃ見られてるわな』

 

「いやそれはホント……あの時は魔が差してですね……すみません……」

 

『めちゃくちゃ凹んでて草』『耳が折れてるのかわいい』

『いつもちょっと得意気な顔がとても暗くなっててこれは神配信』

『今は事前に許可を得ているので問題ない。これからも励んでくれ』

『あったけぇ』『やさしいせかい』『運営優しいな』『甘やかすとつけあがるぞ!』

 

 普段はコメントしない運営の唐突なコメントにナルミそっちのけで騒ぎだすコメント欄。

 ナルミもナルミで過去のやらかしを不意に突っつかれたので割と軽くないダメージを負っていた。

 とりあえず何か励まされたので気を取り直す。

 

「と、とにかくだね、諸君! ガードフレームはこのように改造のし甲斐があるので、発売された暁には是非とも購入してくれ!」

 

 ナルミの宣伝にコメント欄はこぞって「買います」の言葉で埋め尽くされた。

 これで一応はガードフレームのキット化を広告するという目的は達した。

 

『ところで、後でハロポッドの作り方を教えてもらいたいのだが』

 

 そこにまたも運営から予想外のコメントが打ち込まれた。

 

「はぁっ!? ――あっ、いや、はいぃ! いいですよー! 教えますとも!」

 

 そんな運営のコメントのナルミは一瞬、素っ頓狂な声を出して呆けてしまった。

 すぐに持ち直したものの、既に数万のリスナーが視聴している中でそれを見逃されるはずもなく――

 

『今の顔草』『スクショ連打しててよかった』『呆け顔たすかる』

『運営もかわいい』『わかる』『ハロしか勝たん』

 

「一応、後日エビル・Sの偵察ポッドをハロポッドに改造する工程も上げますので」

 

『ガードフレームの販促かと思ったらエビル・Sの販促だった』

『これはどちらも買えと言う神の意思!』『神=運営』『ナルミちゃんは神の使いだった?』

 

「くそぅ、油断してた……。時間もそろそろなので配信切りまーす……」

 

『めっちゃしょげてて草』『めげないで』『かわいいからね仕方ない』

 

「今の表情撮った助手は後日予定しているコラボ凸待ちフリーバトル配信で凸してきなさい。

 絶対ボコるので意地でもボコるので」

 

『こわ』『ドズル並の執念が見える』『ニュータイプがいるな』

『コラボって相手発表されてたっけ』『いやまだ』

『前回はダニエルさんだったな』『あれはおハーブでしたわね』『神配信でしたーネ』

『ダニエルさん、言動がヒールなのにナルミちゃんの介護で行動が優しかったの草だった』

 

「うん、諸君らの言う通りダニエルさんはすごく良い人だったよー。

 逆凸配信だったけど、あの後しこたまお礼言われたりしてねー。

 あ、これオフレコだったっけ? えと、まぁ、その、ダニエルさんごめんね!

 それと次回のコラボ相手だけどね、正式な発表はもう少し後なんだけど、一応ほのめかしておくと、某委員長とだけー」

 

『ダニエルさん草』『ダニエルさんの株がトップ高』

『某委員長? まさかな』『そのまさかかも!?』

『イオ……』『地獄を稲妻の如く進んでる主人公のような略し方やめろ』

『一体何リんなんだ……』『もう神配信』『神配信ニキ確定はやすぎて草』

 

「それじゃあ今日はこの辺でー。助手の諸君、優良健康を維持しつつまた会おー。

 ついでに高評価、低評価、チャンネル登録もよろしくねー。――はい、おつかれさまー」

 

『おつかれー』『おつ』『おつかれさまです』『おつですわよ』




ナル(カ)ミ

【ナルミ】
 ナルカミ・スズメのダイバールック。
 灰色の狐耳とツインテールに結んだ髪、気だるげなジト目、袖の余った白衣を纏った人外系少女姿の合法ロリ。
 一人称は私。二人称は○○助手。三人称は諸君。
 個人Gチューバーとしてバグの調査を主体に活動していたが、中々対応されないバグに苛立ちを感じてしまい、デバッカー権限を付与した状態で社内のGBNブースからログインしていたところ、それがバレてしまい、紆余曲折の末、3ヵ月の休止を経て運営公認Gチューバーとして復帰した経緯を持つ。
 その際に行った『謝罪&経緯説明配信』は今でもちょっとした語り草として話題に上がる。
 『ゼロの旧ザク』イベントの際に入手した『紙一重のニルス』による『50%の確率で射撃攻撃を回避する(発動間隔1秒)』ユニークスキルと、索敵スキルを極めて入手した『隠密看破』による『策敵範囲内のステルスを一体無効化する(発動間隔9秒)』スキルによる索敵役としてはかなりの実力を有している。
 持ち前のマニューバと紙一重で弾幕を掻い潜り、偵察機でありながら泥臭い戦い方で付いた仇名は異能生存体。
 ワークフレーム以前の乗機は『ザク・フリッパーB(ボトムズ)』


【ワークフレーム】
型式番号:GBN-GF01-WF
全高:18.0m
重量:45.6t
武装:
ガンカメラ
肩部円筒型スコープカメラ
ハロポッド
 Lトリモチネット弾内蔵
頭部バルカン砲
ビームライフル
ビームサイン

ヘヴィマシンガン
90㎜ MMP-80(サブマシンガン)
 Lグレネードランチャー
ZUX-197 ヤークトゲヴェール(多目的ショットガン)
DS(ダブルスナイパー)ライフル
 Lビーム銃口、実弾銃口を合わせたタイプ。
  状況に応じてビーム・実弾を切り替えられる。
アームバンカー(奥の手)

ナルミが先行して組み立てたガードフレームの改造機。
全身をオレンジカラーに染めたデスペラード風。
頭部はボックスキャノピー型。頭部左右にバルカン砲が確認できる。
背部のバックパックもザク・フリッパーのものを半分ほど流用し、残りはプラ板などで独自に改修しつつ、ボールのマニピュレーターを使ってアストレイ・アウトフレームのバックジョイントを再現している。
バグ調査用のため普段は索敵用の装備とガードフレームの標準装備であるビームライフルと、ビームサーベルから取り換えたビームサインしか装備していない。

索敵範囲はナルミ本人が索敵構成に重きを置いているだけあって広大で、『隠密看破』と相まって『ニンジャスレイヤー(ステルス無効的な意味で)』、『ミラコロメタ』と呼ばれる。

足裏にはローラー駆動とターンピックが内蔵してあり、地上での機動力を底上げしている他、防水処理とザク・フリッパーのバックパックに水中用ジェネレータを搭載することで「フリッパー(水かき)」の名の通り水中適性も獲得。
パーツの換装をせずとも各地形に対応可能となっている。

バトル系ミッションやフリーバトルの際は背部のボールマニピュレーターで再現したバックジョイントをフル活用するために複数の火器を搭載し、ほぼ使い捨て前提で運用している。
因みにアームバンカーは腕をパイルバンカーに仕立て、伸縮することで可能とする一回こっきりの奥の手である。
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