次回はダイバーズ本編組のあの方とちょっと邂逅しますわよ!
ミカガミ・アズマはじとっとした目付きで、小さく、しかし最大限の呆れを凝縮した溜息を吐いた。
そんなアズマは明るめの茶色のブレザーが特徴的な高校の制服を着ていた。
その下はロンググローブと前腿までを隠すハイソックスという出で立ちだ。
アズマは現在、校門前でキリシマを待っていた。
予定の時間はとっくに過ぎている。
「人が折角、決意したというのに」
二度目の溜め息。
学校でのキリシマは思いの外、忙しい。
特に今の時期は全校ビルダーコンテストが控えており、キリシマの所属している模型部は熱気に満ち溢れている。
部の方針としては、先輩たちが結果を残した余裕からか後輩に対して注力するようにしており、恐らく今頃は後輩たちから教えを請われているのだろう。
何せキリシマは、かつて全日本ガンプラ選手権の頂の座を勝ち取り、世界大会総合五位に入った実績を持つハルオキ――ミカガミ・ハルオキから手解きを受けていたことがあるのだから。
「……」
かつての師の名を思い出し、苦い感覚が胸に到来する。
無意識に左手で握った右腕がギシリと音を立てた。
ピロリン♪
その時、スマホの通知音が鳴った。
鞄の中から取り出し、慣れた手つきで素早く操作して、画面を確認する。
【ごめんなさい。もう少しばかり時間がかかってしまいますわ!】
送られてきた文章を黙読し、三度目の溜め息を吐いた。
【それなら、先に目的地へ向かって待っております】
流石のアズマにも我慢の限界というものがある。
待つこと自体には慣れてはいるが、ただ何もせずに突っ立っているというのはどうにも落ち着かないものがあった。
返信がきた。
【あうぅ~(汗) お、お待ちになって!】
奇妙な顔文字付きだった。
「何が汗ですか」
呆れ半分に呟くが、アズマの表情は薄っすらと笑んでいた。
既読だけを付け、後は無視する。
スマホを仕舞うと目的地の道筋を思い浮かべながら歩き出す。
道中、何度か通知音が響いたが、最後の最後に短く『もうすぐ着きますので』と返して後は完全に無視を決め込むことにした。
「悪いことをしましたかね」と思いつつも「たまには良い薬になるでしょう」と前向きに考え直すのであった。
⁎
「ここが……」
目的の場所を目前に、アズマは佇んでいた。
視線の先には――『THE GUNDAM BASE』と看板が掲げられた模型店が在った。
キリシマ曰く、「ガンプラなら此処でしてよ!」らしいが。
「ぜひぃー……はひぃー……」
当の本人はアズマの隣で、息も絶え絶えな状態でうなだれていた。
あの後、キリシマは猛然としたスピードで駆けて、何とか追いついたのだ。
そんな彼女を、アズマは落ち着くまで待っている。
「飲み物、飲みますか?」
「ぜひ、ぃ……」
「ゼフィランサス?」
「ぜひ、ぜひ……っ」
「ゼクアイン?」
「ぜ、ひぃっ!」
「冗談です。どうぞ」
差し出した水の入ったペットボトルを引っ手繰り、腰に手を当て、一気に飲む。
「っつはぁー! 生き返りますわーっ!」
「おじさん臭い所作ですね」
「労いの言葉も欲しいのですけど!?」
「よく頑張りました」
「ちょっと塩対応じゃありませんこと?」
「うるさいですね」
「貴方、一応メイドですのよ?」
「強要ですか? パワハラですよ」
「しゃ、社会問題はごめんですわね! さて、大分落ち着きましたし――さぁ、行きますわよ!」
言って、模型店へ進む。
今度はキリシマが少し前に行く形だ。
段々と近づくにつれ、視線に入る詰まれたガンプラの箱が増えていく。
目前で、アズマの足が止まった。
「アズマ?」
聞こえていないのだろう。
視線が泳いでいる。
若干、呼吸が荒い。
何時もの癖で、左手で右腕を強く握っていた。
ギシリ、と右腕が鳴った。
⁎
「……」
アズマからしてみれば理不尽な現象だ。
心では解ってはいても、身体が動かない。
ガンプラ――ガンダムが嫌いと言うわけではない。
むしろ好きだ。好きなはずなのだ。
だからこそ決意したではないのか、と何度も心の内で言い聞かす。
もう一度、きちんとガンダムに触れてみようと。
もう一度、前を向いてガンプラに触れてみようと。
もう一度――もう一度――
『ダメだよ』
つと、声が聴こえた。
見れば、アズマの横に一人の少女がいた。
幼い少女だ。
その声に続くように――
『もうあの子はダメだろう』
『可哀そうにねぇ』
『お姉さんも大変でしょうに』
『妹の我儘で巻き込まれて』
『あの時、あんなことを言わなければ』
『大事な腕をあんなにして』
『大切にされた技術を台無しにして』
『折角、見出された腕を無駄にして』
様々な声が、黒い靄とともに聴こえてきた。
冷や汗が背中を伝う。
これは幻だ。
そんなことは理解している。
何度も見た光景。
何度も聴いた声。
無視してしまえばいい。それだけで解放される。
それなのに身体は動かない。
『ガンプラじゃあ、誰も救えないんだ』
……ああ、どうして私は。
「アズマ!」
左手を、握る感触。
⁎
ハッと我に返れば、アズマの左手をキリシマが握っていた。
「お嬢様……」
ロンググローブ越しから伝わる柔らかさと温かさ。
……あの時も、この人はこういう風に手を取ってくれた。
「そんなにビビらなくてもいいのですわ!」
「――は?」
「まぁ、ほら? アズマはアップデートを止めたオールドタイプですから?
これほどのガンプラを目にしてビビるのも多少は、たしょーは理解できますわ!
そりゃ久しぶりに見たら何かものごっそい量のガンプラと、しかも見たこともないモビルスーツがたっくさん詰まれていたら、ちょっと気後れしますものね!」
などと捲し立てるキリシマ。
別の意味で心配された挙句、ここまで一気に言われれば流石にアズマの癪に障るもので――
「は? 何ですかそれ? 確かに最近のガンダムは見てませんでけれども、一応少しでもと調べてはいます。
そのくらいで気後れなどと、なめないでもらいたいですね。
最近のは――確かMSV戦記ジョニー・ライデンだったような」
「え、待って待って、逆行! 逆行してますわよ!
というか何ですその作品!? 帰還のほうではなくて? ソレわたくし知りませんことよ!」
「ネットの情報では、これが最近の作品だと……」
「ネットの最近は、まったく最近じゃありませんのよぉー!」
やいのやいの。
気づけば先ほどのまでの硬直は嘘のように解けており、少女の幻も消えていた。
知らずにアズマの表情も、柔らかい微笑みを浮かべていた。
その顔を知っているのはキリシマだけ。
MSV戦記ジョニー・ライデン、オススメわよ!
次回はビルドダイバーズ一期一話に相当しますので、わたくしも予習しておきますわ!
……オギャッ!? 一挙配信期間終わってましたわ!!!!!!!
因みにアンケート状況を鑑みて、今のところは『がっつり絡まないけど、要所要所で絡みつつ、お嬢様独自の物語を展開する』と言った感じにしようかと思いますわ!
一応、今回までアンケート設置しておきますので、投票よろしくおねがいいたしますわ!
一応活動報告にも『二次創作用改造ガンプラ案』を投稿してありますので、ご意見などはそちらにお願いいたしますわ!
さらに感想下さればテンション爆アゲになりますわ! ギロチンの鈴の音が聴こえるくらいに!
この作品の今後の展開についてお伺いしますわ!
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ダイバーズ本編組に絡んでいく流れ
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ダイバーズ外伝組に絡んでいく流れ
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どちらとも絡まない流れ