▼この外伝は青いカンテラ様のガンダムビルドダイバーズの二次創作作品「GBN総合掲示版」の第一有志連合編の時間軸に位置しますわ▼
▼またこのお話の内容は笑う男様のガンダムビルドダイバーズの二次創作作品「GHC活動記録」の「好きを偽らないジブン(前編)」直前にあたるお話になりますわ▼
夕方。某駅。
日も傾きかけ始めるこの時間帯は華の金曜日とばかりに仕事を早めに切り上げたサラリーマンや、学校帰りの学生たちで賑わう。
着崩した白いスクールシャツを着て、染めた金髪と紺色のミニスカートを揺らしながら、いかにもギャルといった風情の小麦色の肌の女子高生が二人の友人と共に帰路についていた。
サザキ・コトラ。それが女子高生の名前だ。
GPD最後の世界総合大会では、『北宋の貴公子』と呼ばれた長男サザキ・ジュンヤと共に――部門別ではあるが――兄妹揃って出場。
両者共にギャンを使い続け、長男はトップ10入りを果たし、コトラはベスト16位に昇りつめるという快挙を成し遂げた過去を持つ若きホープの一人でもあった。
移行したGBNではフォース『北宋の壺』のリーダー『テトラ』としてプレイしており、こちらでは現在、世界総合個人ランク16位にまで登りつめている上位ランカーの一人でもある。
またG-TUBE上で流行りのG-TUBERとしても活動している。
「くぁ~」
コトラは人混みの波に呑まれないように、できるだけ最後尾の方を歩きながら大きな欠伸を一つかいた。
目じりに浮かんだ涙をぬぐいなら、肩からずり落ちそうなバッグをかけなおす。
「寝不足か?」
つと、少し前を歩いていた友人が声をかけてきた。
切り揃えた短い黒髪と細く鋭い目つきが特徴的な少女だ。
ソバエ・マヒル。
剣道部所属の同級生。好きなガンダム作品は『武者〇伝シリーズ』と言うちょっと渋めなマブダチ。
コトラとは幼少期からの知り合いにしてGPD全盛期からの付き合いがあり、GBNでも『マヒル』と言う名前でアカウントを持ち、コトラのフォース『北宋の壺』のサブリーダーを任されていた。
家庭がそれなりに厳しいため学業を優先しがちになっているが、彼女もまた個人ランク490位に位置する強者の一人であった。
リアルでは髪を伸ばせないからと、ダイバールックは長い黒髪をポニーテールにしている可愛らしい一面もあったりする。
「うん、ちょっと昇格戦でね~」
「昇格戦……GBNか?」
「そー」
コトラの気の抜けた返事にマヒルは嘆息すると、腰に手を当てて振り返った。
「……夢中になるのは良いが、夜更かしは感心せんな。
モデルなのだから美貌に気を遣えと言ったばかりだろうに」
女子高生には似つかわしい妙に古臭さの混じった口調でマヒルが言う。
実際、コトラはサザメスがかつて発表した『ギャンパーカー(完全受注生産)』のイメージガールを務めたことがあり、その一件からギャルモデルとして活動をしている。
また、そこから結ばれた縁で、サザメスが提携するGBN内のイベントではゲストとして呼ばれることもあった。
「とは言っても最近は暇だからなぁ~。ジュンヤ
「お前の兄、傍目からでも若干不安になるくらいには心配性だからなぁ」
「あーしも流石に引いてる――ってあんまりそゆこと言っちゃ駄目だよね。マーちゃんごめん今のなし」
「いや、私は別に気にしていないが……そもそも身内の評価ならばもう少し正直になってもいいんじゃないのか?」
「おばあちゃんが言ってたことわざでさ、親しき仲にも礼儀ありって言うっしょ? だから例え家族でもあんまし悪く言うのはどうかなーって思っちゃって」
「……相変わらず良い子だな」
「夜更かししてる時点で良い子じゃないって。そーいえばケーちゃん、さっきから何してるん?」
気恥ずかし気に小さく笑ってパタパタと手を振りながら、マヒルの横でスマホを弄っていたもう一人の友人に声をかける。
猫背気味で三人の中では一番背が低いその友人は、青みがかった黒色の前髪の隙間から魚眼めいた丸い目付きと三白眼を覗かせてコトラを見上げた。
「あ、あの……ここ、この間……み、みんなで、行った……タピオカの、おお、お店……こここ、混雑してないか、見てた、よ?」
どもりながらそう答える。
サメヤマ・ケイコ。
元引き籠りで文芸部の同級生。好きなガンダム作品は『PS2版ガンダム戦記』と言うレトロ趣味なマブダチ。
喋る時には常に頭の中で言葉を整理して喋るため、たどたどしいが、根はとても良い子だと二人は知っている。
引き籠っていた間は何かに取り憑かれたかのようにひたすらガンプラを作り続けており、ビルダーとして見るならば三人の中で技量は一番高い。
因みに勉学でも試験結果は常に五位内で一番頭が良い。次点はコトラで、最後は意外にもマヒルである。
ケイコもまたGBNにアカウントを持ち、憧れのケイワンを意識した『K5』と言うダイバーネームでマヒルと一緒にコトラの立ち上げたフォース『北宋の壺』に入っていた。
ダイバールックは鼠耳のメガネをかけた女子高生姿をしている。当初はキャラクリにあまり拘りがなかったため、デフォルトアバターを少し弄って適当なアクセサリーを付けただけであるのだが。
リアルでは喋り慣れていないが、GBN内ではネットスラングや顔文字を多用する少々ギャップの激しい一面があったりする。
そんなケイコの言葉に、コトラは「マジ~!?」と瞳を輝かせた。
「あそこのタッピーのミルクティーさ、マヂヤバイってくらい美味なんだよねー!」
「確かに。しかし良いのか? あれって結構カロリーが高いものなのだろう?」
「豆乳版もあるからへーきへーき♪」
「……だと良いのだがな。コトラは昔から楽観視の強い部分があるから、心配なのだが」
「そ、そそ、それなら……わたし、が、つつ、作った……かかか、カロリー管理……アプリ、あるか、ら?」
「そーそー! ケーちゃんのお陰で先月と比べてまだ2キロしか増えてないしー!」
コトラはケイコの横に並び、肩に手を回す。さり気なく腰を屈めて身長差を解消するあたり気が利いている。
「んひひひっ」と俯いて不気味に笑うケイコだが、これは解りやすく照れているということをマヒルは理解している。
元々ケイコは自身の魚眼めいた丸い目付きと三白眼、そしてギザ歯がコンプレックスで人前に出ることを拒んでいた時期があることを知っている。それが引き籠りになった要因の一つであることも。
今でこそ、こうして外に出て一緒に笑っているが、一度染みついた癖と言うものは中々抜けないもので、今度はそれがもどかしく感じていることを告白されたことがある。
こればかりはコトラもマヒルも上手い解決法が見いだせなかったので、とにかく笑える時に笑ってみようということになったのだが、以前と比べれば俯き加減が浅いので改善はしているようだ。
そんなことを考えながらも、マヒルはやれやれと小さくかぶりを振った。
「2キロも増えてるじゃあないか」
「うぐっ……!」
「えぅ……!」
「まさか十分に痩せられる範囲内だと思ってないだろうな?」
「いやー、アハハハ……」
バツが悪そうにケイコと一緒に視線を泳がせる。
「図星か。まぁ、後で泣きを見るのは私ではないから良いのだが」
「ちょちょちょ、マーちゃん薄情者ぉ~!」
「誰が薄情者か。――仕方がない。増えた分のトレーニングメニューは私が考えておいてやる」
「マヂ!? マーちゃんの厚情者ぉ~!」
「こ、こここ、厚情者ぉ~……?」
「ふん、褒めても何も出ないからな?」
「わーかってるって♪ それじゃ、いっちょタッピー飲みにいこぉ~♪」
「ぉ、おー!」
二人で手を掲げる姿に微笑みを浮かべつつ、しかし目を細め、声のトーンを落として言葉を投げる。
「ところで、コトラ」
「うん?」
「お前、他にも悩んでいることがあるんだろう?」
「……」
「あるんだな?」
「えっと、まぁ、あるっちゃあるかな~って」
「やはりそうだろうとは思ったよ」
「バレてた?」
「何年、幼馴染をやっていると思ってる」
「あいやー、流石だなぁ」
「ついでに言うとケイコも気づいてるぞ」
「……マヂ?」
「う、うん。まま、まじ、だよ……?」
「あーしそんなに顔に出てた?」
「出てたと言うより、GBNの話題を振ってあんな気の抜けた返事をしてきた時点でな」
「うん。い、いつもは……あそこから……わわ、話題にしてくるから、ね?」
「あー……あぁー……そっかぁー」
両手で顔を覆い隠す。
コトラの悩みとは、GBN上では最近マスダイバーと言うチートツールを使用する輩が増えていて、被害者が増えているものに起因する。
彼女の周囲では、配信に来てくれるリスナー含めて被害に遭ったと言う報告は受けていない。
学業も両立しなければならない立場上、踏み入って調べる余裕もなく、チャンプこと『クジョウ・キョウヤ』や、もふもふこと『ロンメル大佐』が有志連合を募っていると言う噂を聞いて「何とかなるっしょ」と思っていたのが本当のところだ。
しかし、ここ暫く配信中に欠かさず来てくれていたリスナーの一人『ユニ』がまったく顔を出さなくなったことに気づき、もしかしたらという不安が心の奥底に生まれた。
そこから自分は昇格戦をしていて良いのか、他にもっとやるべきことがあるんじゃないのか、もしも自分がマスダイバーと遭遇したらどうするべきかとか、マスダイバーもガンダムが好きならば解り合えるはずだとか、何かにつけては考えるようになってしまい、愛機『Gエグザム』の調整も、新しい装備の制作も手に付かないでいた。
それでも友人たちには心配させまいと楽観的に振舞っていたつもりであったが、コトラは自分が思う以上に隠し事が下手だったようだ。
顔を覆い隠していた両手を下げ、長く息を吐いてから、二人を真っ直ぐに見る。
マヒルもケイコも揺るぎなくコトラを見つめていた。
「こう言うのも何だけどさ、訊かないの?」
「此処では訊かない」
それに、と続ける。
「今どきの女子高生の華と言えば、タピオカ片手に談笑だろ?」
「わ、わたし……あ、あの抹茶すき……だ、よ?」
「うぅぅ、マーちゃん、ケーちゃん……サンキューだし!」
ガッシリと二人の手を握り、頭を下げる。
「よーし、それじゃあ先ずは美味しいものお腹に収めてホッとするっしょ!」
「そうするとしよう。――ああ、そういえばコトラ」
「おうん?」
「お前、配信中は兄のことを『兄貴』と呼んでいるのに、私達の前では『
「んなぁ!?」
「か、かわいい、よね?」
「二人とも忘れて! 忘れて忘れて忘れてぇー!」
「かわいいぞー」
「かわ、かわ……?」
「にゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」
顔を真っ赤にしてあわあわと慌てるコトラをひとしきり弄り倒してから、三人は改札口を抜けて、お気に入りのとなったタピオカ店に足を運ぶのであった。
この後、自身に到来する出来事など、この時のコトラは知る由もなく。
【サザキ・ジュンヤ】
コトラの兄でサザキ家の長男。
家族構成はおばあちゃんサザキ・ハク、長女サザキ・サナエ、次女サザキ・コトラ、三女サザキ・マドカからなる逆ザビ家と言う家族構成。
『北宋の貴公子』と呼ばれる美貌(自称)と技量(自称)を持った人物で、GPD最後の世界総合大会では部門別で成人の部でシンプルなギャンを使ってトップ10入りを果たしている。
GBNには移行せず、骨董好きが高じて鑑定家として生計を立てている。
過保護――と言うわけではないが、妹たちに関して発揮される心配性はかなりのもの。
コトラがモデルとして活動してだしてからはP面で舞い込む仕事依頼を厳選しているため、コトラからはありがた迷惑と思われている。
因みに長女は金型メーカー『株式会社サザキG合金』を立ち上げており『輝羅鋼』を現代に完全復活させようと精力的な活動をしている。
三女はこの時期はまだGBNをプレイしておらず、リライズの頃に本格的にGBNを始めている。
【北宋の壺】
テトラをリーダーする少数フォース。フォースランクは圏外。
お洒落な部屋を持ちたいという理由でテトラが立てた。
フォースネストはファーストガンダムでも出てきた鉱山基地。
そこにアッザムハウスを建てて活動している。
メンバー毎に個室が用意されている。
テトラは個人ランクこそ16位と高いが、フォースランクは意外にも圏外。
曰く、「フォースはガチ2:エンジョイ8の割合」とのこと。
メンバーは少なく、いずれもガンダム好きの同級生。
ただし学業を優先しているため、ログイン頻度は低い。
ある意味ではレアキャラ。
メンバー
【マヒル(ソバエ・マヒル)】
サブリーダーを務める凛然とした黒髪ポニテJKという王道スタイル。剣道部。
生真面目だがカップリング談義になると熱く語りだすオタク気質な一面がある。
テトラとは幼馴染でGPDからの付き合い。個人ランクは490位と結構高い。
両親がそれなりに厳しいらしく、学業を優先しているためGBNのログイン頻度は低め。
使用ガンプラはギャン・エーオースのサムライ風改造機『ギャンブシドー』。
抜刀術――所謂『居合斬り』を戦術に組み込んでいる。
【K5(サメヤマ・ケイコ)】
第二次有志連合戦までは短めの青い髪に鼠耳の可愛らしいメガネJK。文芸部の元引き籠り。
第二次有志連合戦以降はサメのパーカーを着たダイバールックに大きく変化している。
リアルでは魚眼めいた目付きと三白眼、ギザ歯という身体的特徴がコンプレックスで、そこに更にガンプラに関わる問題(パーツハンター事件)が合わさり引き籠りになっていた時期がある。
リアルだと脳内で言葉を整理しながら喋るためたどたどしいが、GBN内ではネットスラングを使って割と流暢に喋る。
三人の中では最も勉学ができる。
個人ランクは圏外。
名前の由来は憧れのビルダー『ケイワン』からきている。
使用ガンプラはギャン・エーオースの索敵兼護衛仕様の改造機『ギャンSG(スコープガード)』。
【パーツハンター事件】
GPD全盛期に生じた問題で、手っ取り早く強くなるために他者の完成したガンプラを破壊し、ガンプラパーツを強奪するという集団が出てきた小規模ながらも傷痕の深い事件。
ガンプラバトルで互いのガンプラを賭けてバトルする賭博形式のものは非公式非推奨ながら存在していたものの、こちらはそもそもバトルという前提すらなく、バトルを装った上で反則行為で無理矢理勝利したことにしたり、最悪ビルダーを直接襲撃して奪うという悪辣極まりないものであった。
当時はガンプラに似せた贋作であるフェイクガンプラ――通称『ガンプーラ』も問題になっていたため、この問題が解決するまでに相応の被害者が出てしまった忌まわしき事件。
これによりGPDから離れる者も少なくはなく、GPD衰退の一因ともなっている。
ケイコもこの被害に遭ったビルダーの一人で、その際に自身のコンプレックスを詰られたことで彼女を引き籠りにする原因ともなった。
コトラとマヒルの尽力で復帰するが、今でもマヒルに真っ向から言われた「可愛い顔じゃないか」という言葉を心に刻んでいる。