ELダイバー『サラ』を巡るGBNの存亡を賭けた変則フラッグ戦――通称、第二次有志連合戦――から早2年の月日が過ぎた。
この2年の間にサラ以外のELダイバーが確認され、今では87名が保護されている。
さらにGBNも進化を続け、ディメンション上のダイバーの感覚をフィードバックする新技術により、より臨場感のあるガンプラバトルを楽しめるようになっていた。
新たなディメンションの開放。
新たなミッションの追加。
新たな難易度の解放。
等々、フィードバック機能以外にも実に多くの『新要素』が大型アップデートによって実装された。
とは言え、今まであった要素が廃れるということはない。
ハードコアディメンション・ヴァルガは未だに盛況だし、クリエイトミッションも新機能の実装に伴い大いに盛り上がっている。
これはそんな新要素とは何ら関係ないとある二人の一幕。
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ハードコアディメンション・ヴァルガ。
ゴウッ!
青白いバーニアの軌跡がヴァルガの暗闇に満たされた空を引き裂くように煌めく。
軌跡の先を駆けるは薄紫と青色で彩られたザンネックの改造機――月華武者ザンキ。
原典機と比べるとシルエットこそザンネックだが、その細部にはかなりの改造が施され、名の通り武者風の威容を誇っていた。
特にザンネックの肩後部に備えられた特徴たる開放型粒子加速器は顕著で、ヴォワチュールリュミエールのミキシングされたソレは稼働することで黄金の月のような光輪を形成することで知られている。
さらに額と胸部に取り付けられたifsユニットによりV2ガンダムの光の翼を安定して再現できるようにもなっており、その性能は破格のものとなっていた。
そんな月華武者ザンキに搭乗するダイバーは、ランキング10位に君臨するフォース『天地神明』の――『半神半魔』の渾名で有名なあのテンコの右腕として認知されている人狐――クーコである。
第11回から第14回までのガンプラフォースバトルトーナメントではテンコに代わりリーダーを務め、高い対応力と技術を以て不動のチャンプ『クジョウ・キョウヤ』とタイマンを張り続け、毎回あと一歩のところで些細な不運が重なり敗北を喫するという勝負運のなさから『不運のクーコ』として有名でもあった。
しかし、そんな不名誉な渾名を付けられていても、彼女の実力が翳ることはない。
そもそもチャンプとタイマンを張れる時点で十二分に強いのだ。
入れ替わりが激しいこそすれ、伊達に個人ランク11位にまで昇りつめたわけではない。
クーコは満月のように改造したザンネックベース『ツキフネ』に乗り、近接にも対応できるようにヒートホークを追加したザンネックキャノン『アマミツツキ』を慎重に構えながら周囲をねめまわす。
「――」
小さく短い呼吸を繰り返しながら、眼下を見れば、そこには誰もいない。静寂のみがあった。
普段であれば、どこもかしこも銃撃や剣戟の喧騒で騒がしいはずなのに、まるで嵐が来ることを予期して避難したかのように人っ子一人も確認できない。
あの脳内チンパンジーと揶揄される性質の悪いモヒカン軍団も例外ではなかった。
このような日には心当たりがあった。
「ヴァルガの静止した日……」
それは第二次有志連合戦から一年後――今から遡れば一年前に、ヴァルガにて行われたクジョウ・キョウヤの『ガンダムTRYAGEマグナム』とテンコの『天道天照』のフリーバトルだ。
その時だけはヴァルガ民の誰もが戦闘を止めて、ヴァルガの外縁部に避難するかのように集まり、誰もが静かなまま観客と化していたのを思い出す。
二人のバトルはヴァルガの地表を抉り、浮かせ、地形を砕き、変え、実際にヴァルガそのものを半壊せしめ――引き分けとなった。
戦闘後は我に返ったヴァルガ民がこぞって集まり、ロールバックされるまで半壊したヴァルガでお祭り騒ぎにも似たドンパチが繰り広げられたのだ。
今の状況はそれによく似ている、とクーコは思った。
しかし、その考えはすぐに否定される。
「否、――これは違いますね」
誰もいないわけではない。外縁部に避難しているということもない。
地表に刻まれた多数の足跡がある方向に向いているのを認識し、確信した。
集っているのだ。餌に群がる蟻のように。動物園の猿山のように。
そしてそれがただの餌でないことをクーコは自然と感じていた。
アマミツツキを構える。
開放型粒子加速器が稼働し、両側に黄金色の月を形成する。
視線の先――微かに明りが点いたり消えたりを繰り返している先に狙いを定める。
ロックオンは相手に警告を与えるので敢えてしない。
ツキフネを器用に操舵し、水平に移動しつつトリガーを引こうとして――視線の先が煌めいた。
「――!」
直感。
それが何であるかを確認する前にトリガーを引いていた。
アマミツツキの砲口から真紅の光条が迸る。
真紅の光条は向こう側から放たれた強大な光条と激突した。
さながら災害と災害と衝突。
衝撃の余波が地表をめくり上げ、周囲に立ち並ぶ岩や廃墟といったオブジェを情け容赦なく砕く。
「これ、はぁっ!!」
反動で震えるアマミツツキを両腕で支えながら、呻いた。
これほどの威力のビームをクーコは知っている。
それを放った存在も、放たせた者も。
果せるかなぶつかり合った極太のビームは混じり合うように衝突した空間を中心にギュルリと花のような渦を巻き、最後に周囲を焼き尽くす高熱を周囲一帯に降り注がせた。
クーコはその中を躊躇うことなく突き進む。
掠っただけで艦首が消し飛ぶほどのアマミツツキ――ザンネックキャノンと拮抗する威力のビームを放てるガンプラの持ち主なぞ、GBNにそうそういはしない。
一桁の上位勢を除き、クーコが把握しているだけでも個人ランク39位の災害代表FOE『キョウスケ』、ビルドダイバーズの超火力『ユッキー』、ナイトメアハロウィンのスク水マント幼女『マオー・エガオー13世』、ZA-∀Zのメンズ版プリキュア『アークとゼン』、そして――
「相も変わらず威力だけは大したものですね。――クオン!」
「は?」
崩れた山の向こう側に見えたは、群がる蟻を蹴散らす巨大な怪物。
フォース『エターナル・ダークネス』のリーダーであり個人ランク13位に君臨しているダイバー――終末を呼ぶ竜の端末『クオン』の駆るジャバウォック――そのVer2.0だ。
クーコとクオン。
時に勝ち、時に負け、時に引き分けを繰り返し、今に至る妙な因縁を持つ二人。
「んん、コホン……我の名を呼ぶ声が聞こえたと思えば、珍しい顔だな。黄金月の妖狐よ」
「私は金色ではないのですが」
「そういう意味じゃないのだけど!? えっと――空色の狐!」
「何だか急にグレードダウンした感じが強いですね。もう少しセンスを鍛えたほうがいいのでは?」
「……喧嘩なら買うわよ?」
「元よりそのつもりで来たのです。――一応、断っておきますが、あくまでもガンプラバトル的な意味合いであった決して本心から喧嘩を望んでるわけではないですよ? これはある種のキャッチボールみたいなもので――」
「長い長い長い!」
「あ、すみません。……ええと、とにかくあれです。討ち取らせて頂きます!」
「ふふふ……まぁ、いいわ。――ならば敢えて言わせてもらおう。返り討ちにしてあげるわ!」
「いざっ!」
クーコのザンキが流星丸を引き抜き、クオンのジャバウォックが見下ろす形で咆えた。
月の武者対終末を喚ぶ龍。
その日、昇格戦の名物の一つである『クーコ対クオン』の構図が、フリーバトルの聖地――ハードコアディメンション・ヴァルガにて勃発した。
息抜き。思いついた部分のみ書き出し投稿お嬢様。
二人の戦闘描写は皆さまの脳内で補ってもらいますわ!
(クオンちゃんの口調、いざ書くとなるとめちゃくちゃ悩みますわね。飛影はそんなこと言わない状態になってません?)
この二人に勝ったテトラちゃんとはいったい……(ユニちゃんの応援パワー)(お父さんお母さん、娘さんをあーしに下さい)