ナナミおねーさんはこんな感じで大丈夫かしら?
因みにログインするまでが『Before』となりますので、キャラ紹介の次からは『After』へと移行しますわ!
「いらっしゃいませ~」
足を踏み入れた途端、女性店員の声が響いた。
元気の良い声音だった。
「ナナミ様、わたくしが来ましたわ!」
「お、キリシマちゃんですわー!」
「取ってつけたようなお嬢様語尾!?」
「アハハハ! それで今日はどんなご用?」
「おっと、そうですわ!」
ナナミと呼ばれた女性店員の言葉に、キリシマはズズイッとアズマを前に押し出した。
あまりの素早さにアズマはきょとんとした顔のまま、ナナミと目が合った。
キリシマは、そんなアズマの左側から顔を覗かせ、肩に顎を置く。
「――うぇぁっ!? あ、あの、お嬢様ぁ!?」
こそばゆい感触と同時に状況を把握。途端にアズマの顔面が真っ赤に染まった。
いつもの済ました顔が面白いくらいにアワアワと震えている。
「あら、通常の三倍速そうですわね」
「からかわないでくださいっ」
グリグリと頬を押して退かされるキリシマ。
その光景を見て、ナナミは「姉妹みたいね」と微笑んでいた。
「っと、こちらはアズマ。わたくしの親友で、GBNデビューが決定したので、本日はその為のガンプラを買いに来ましたの!」
「あの、ど、どうも……」
「はいどうも! アズマちゃんて呼んでも?」
「あ、はい。構いません」
「ん! ありがと、アズマちゃん!」
ニッコリと笑うナナミに、アズマと段々と緊張が抜けてきていた。
「ところでナナミ様、例の予約していたガンプラ、入荷しまして?」
「あー、あれね。名前、何だっけ? 確かコロレロ……ザク、レロ……?」
「コルレルですわ!」
「そうそれ! 大丈夫、ちゃんと仕入れてあるから!」
「オホホホ、流石ですわ!」
グッと親指を立てるナナミに、キリシマもガッツポーズで応じた。
「じゃあ、ちょっと持ってくるから、待っててねー」
「承知の助ですわ! それではアズマ、わたくしが待っている間に早速ガンプラ探しと洒落込んでていいですわよ!」
「わかりました」
キリシマの言葉を受けて、アズマは足を動かす。
「とは言え、実のところ此処に来る前から、ある程度は決めておりまして」
「そうでしたの?」
「はい」
頷き、定めたガンプラのある場所へ。
アズマのガンダム知識は、大よそ『ガンダムSEED』、『ガンダムSEED DESTINY』および、そこから派生した幾つかの外伝作品で止まっている。
それ以降の作品は、一応、少しばかりネットの情報から仕入れてはいるが、結局はそれまでだ。
なので必然的に選ぶガンプラは絞られる。
それは幼い頃、姉と共に初めて作った思い出のガンプラ。
遡れば――まだGPDが主流だった頃に姉の知り合いがソレとよく似た赤色のガンプラを自在に操作していたのを見て、ひどく感動したものだ。
だからこそ前を向くためにあえてソレを選ぼうと心に決めたのだ。
ゆっくりと手を伸ばす。
瞬間、幼い少女の幻が現れ、脳内に響くように言葉を繰り返す。
『ガンプラじゃあ、誰も救えないんだ』
呪詛のようにアズマを縛り付ける言葉だ。
もう何度も、何度もアズマを苦しめ、その度に振り払う努力を強いる重力のような幻影。
しかし――
「決めたのです」
強く力を込め、言葉を紡ぐ。
横に押し退かすように右腕を動かし、幻影を払う。
哀し気に、あるいは恨めし気な表情の幻影はぐにゃりと歪み、掻き消えた。
そして、アズマの右手には――ガンプラ。
「己が呪縛を一本ずつ、着実に、確実に解いていくのだと」
MBF-P01 ガンダムアストレイ・ゴールドフレーム。
アストレイシリーズにおける一号機。
その色はスペシャルを意味するゴールド塗装が施されてたモビルスーツ。
全ての始めの機体であり、全ての始まりの機体。
それがアズマの選んだ――かつて一番最初に作り上げたガンプラであった。
右腕がギシリと鈍い音を立てた。
……まったく因果なものですね。
あの頃はただカッコいいと思ったから。
今は――どこか似た者同士だと、勝手にシンパシーを感じている。
「お嬢様、私はこれに致します」
振り向けば、何時の間にやら戻ってきていたナナミがいた。
キリシマと並んでアズマを見ている。
「――あの?」
「アズマ」
みなまで言わせず、キリシマは手で制した。
「そうですわね。アズマも同じ学生ですから、そういう多感な時期もありますわ」
「は?」
「だ、大丈夫よ! さっきのカッコいいと思う! 思うわ――よ?」
そこまで言われて、気づいた。
「――出てましたか、言葉に」
恐る恐る尋ねると、二人は一拍の間をおいてから軽く頷いた。
「なるほど」
反応を確認し、アズマはその場に屈み込んだ。
ゴールドフレームのガンプラの箱で顔を隠し、頭頂部からは湯気が立ち昇りだす。
「あ、アズマが羞恥のあまりに茹っていますわ!?」
「わわわ、お水かける!? それとも氷!?」
「冷やし方がかなり物理的ですわね!?」
あわあわ。
忙しく騒ぐ二人のお陰で、立ち直りはしてもすぐには立ち上がることができないアズマであった。
⁎
キリシマはコルレルを、アズマはアストレイ・ゴールドフレームを購入。
それぞれ手にしたガンプラを見て、微笑む。
アズマのは先ほど浮かべた柔らかな笑みではなく、いつも通りなぎこちのない固い笑みであったが。
「あら?」
そんな時、キリシマのスマホが着信音とともに震えた。
画面に表示された相手の名前を確認し、ほんの一瞬、目を細めた。
「アズマ」
「ご心配なさらず。お嬢様不在でも大丈夫です」
「そう? ――ナナミ様、アズマを頼めまして?」
「大丈夫。頼まれたわ!」
「えぇ、お願い致しますわ」
頷き、着信に出る。
「御機嫌よう、わたくしですわ」
アズマとナナミに軽く手を振りながら、外へ。
「――バグ? ラフレシアのアレですわね? え、違うんですの?」
⁎
「よしっ」
キリシマを見送った後、ナナミが口を開いた。
「それじゃビルドゾーンに行って組み立ててみる?」
ナナミの提案にアズマは首肯で応えた。
とは言え、初めて来た場所なので実はよく解っていない。
「恐縮なのですが、案内お願いできますか」
「勿論!」
得意気な顔でナナミが応える。
「ありがとうございます」
この短いやり取りで、アズマは彼女が面倒見が良い人だという印象を抱いた。
そして、アズマの視線が――ナナミがいつの間にか抱えていたトマトの山に向く。
「それは?」
「あ、これ? 実は此処の屋上でトマト栽培してるんだー」
「それ良いんですか?」
「良いの良いの。ちゃーんと確認も取ってあるから」
「なるほど」
「アズマちゃんも食べる?」
「ええ、後で一つ頂きます。――お嬢様の分を包んでもらっても?」
「もっちろんオッケーよ!」
そんな会話をしている間に、ビルドゾーンに着いた。
ビルドゾーンと言う作業感のある名称とは裏腹に、白を基調とした清涼感溢れる大部屋である。
ナナミが先に入り、続いてアズマが。
……これから組み立てるのですね。
緊張しているのだと自覚する。
同時に、奇妙な高揚感もあった。
それはアズマが忘れて久しい感覚である。
「空いてるところに座ってね」
短い返事を返し、促されるがままアズマは一度、内部を見回す。
既に二人の少年が席に着いている以外、客の姿はない。
……好きな所に座れるということは、却って迷いやすいですね。
しかし、判断は早い。
少年たちを目安に、そこから一スペース分離れた横の席を選んだ。
チラリと横を盗み見れば、アズマの知らないガンダムが組み上がっていた。
特徴的な肩パーツと、青と白が見事に調和した美しい造形に、アズマはつい見惚れてしまった。
ナナミが小さく拍手を打っている。
……何でしょうあの機体? SEED系列っぽくはないですね。
「えーっと、ガンダムオーツー? 酸素?」
ナナミが恐らくそのガンダムを名前を読む。
……エコロジーな雰囲気のガンダムですね。
そう思った矢先に――
「ダブルオーガンダム! 店員なんだから少しは名前憶えてよーっ」
即座に眼鏡をかけた少年が反応した。
……ダブルオー。そういえばそんなタイトルのガンダム、ありましたね。
「アハハ、ごめんごめーん」
ナナミが気圧されながらも軽く謝る。
それから傍に置いていたトマトの盛られた笊を持ち出す。
「上の農園で採れたトマト食べる?」
視線がトマトに集まり、少しの間を置いて少年たちがそれを受け取った。
そこでナナミがアズマの方に振り返った。
「あっ、そうだったそうだった。アズマちゃんにも一つ、はいどうぞ」
「――ありがとうございます」
差し出されたトマトを受け取った。
ジョニー・ライデン専用機を髣髴とさせる鮮やかな赤色が食欲をそそる。
サラダに使ったらきっと映えることだろう。
そんなことを考えて、ふと気づいた。
少年たちの視線がアズマと――アストレイ・ゴールドフレームに向けられていたことを。
「ど、どうも」
トマトを両手に持ったまま、小さく会釈した。
お嬢様は抱える悩みがほぼない状態なので必然的にアズマがメインになってしまいますわーっ!?
お嬢様要素が好きが方にはごめんあそばせですわーっ!
ついでに次回はキャラ紹介ですわ!