呪われた呪術師の復讐劇   作:千α

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遅くなりました。
文章の書き方も少し変えています。
あと、久しぶりすぎておかしな日本語使っているかもしれません。
ご了承ください。



13話

 蟲飼いへ。

 お前、まだ俺の言うこと聞くほうだったんだな。

 

 

 綴は血塗(小)を抱える矢野の背中を蹴る。

 

 と言うのも、呪術高専の虎杖悠仁、釘崎野薔薇と対峙した血塗は激闘の末殺されることとなってしまった。

 が、この矢野という呪術師はそれを諦めきれず血塗を血塗(小)にしてしまったのである。

 

「で、でも友達なんだよ!」

「手前の術式で蘇らせたって、それは本人じゃねぇだろが。

 ったく、手出しすんなって言われてんのに手前は本当に……」

 

 矢野は血塗(小)をポケットにしまうと、そのままどこかへ走って行こうとする。

 

「待て待て待て待て、どこに行く!?」

「壊相君の死体の所です!」

「俺の話聞いてた!?」

 

 もうダメだこれ、なんて説明しよう……。

 綴は深いため息を吐いた。

 

「大丈夫ですよ、田端さんなら許してくれます」

「もっと面倒なのが2人くらいいるだろうが!」

 

 再度背中を蹴ると、矢野は鈍い悲鳴を上げる。

 面倒なの2人、例のメロンパンと呪胎九相図の長男のことであるが、本当に何と説明すればいいのやら。

 ここで奴らに目をつけられるのはごめん蒙りたい。かと言って矢野が張り切って術式を使用した血塗(小)について伏せていれば、バレた時の反動がでかいような気もする。

 

「矢野」

「は、はい!」

「俺もついてってやるから謝りに行くぞ」

「何故に!?」

 

 腕が自由なら綴は矢野の額を叩いているだろう。

 

 

「というわけで、本当に申し訳なかった」

 

 血塗(小)を手のひらに載せる脹相、綴とその後ろで頭を下げる矢野という異様な光景を見て、蟲飼いは耐えきれずに笑った。

 

「笑うなバカ」

「だって! 君のことを悪意なく振り回す子なんてなかなかいないから!」

「うるさい。矢野、俺はこの事をあの野郎に説明しに行くから、脹相にはしっかり説明しろよ」

 

 綴はそう言って糸で蟲飼いを引っ張って部屋を出て行ってしまった。

 

「………」

「………矢野、と言ったか」

「あ、はい」

 

 正直、矢野はどうして怒られているのか全くわかっていない。

 単純に血塗と友達になれたのにこのままお別れしてしまうのが嫌だったからこうした形にして残したのに……。

 

「これは、本物の血塗なのか?」

「えーと、俺にもよく分かってないんですけど、呪力や肉体は確かに血塗君のものです。でも……本人の意思は、無いんですよ。そこまでまだ上手くできなくて」

「お前は屍術師、ということか?」

「あ、はい、そうなんです。

 こうやって死んだひとを残しておけるから、俺のしては……その、いい事したなって感じで……なんで怒られたのか、サッパリで」

 

 矢野に悪意は無い。知らないだけなのだ。

 脹相は矢野から小血塗を受け取る。それはとても軽かった。

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「どうなると思う?」

「なんの事だ?」

「矢野のことだよ、よくわかっているだろう?」

 

 確かにほの暗い廊下を進みながら、綴は矢野のことを考えていた。

 後先考えず行動するところは欠点ではあるが、そのぶん素直な性格であるため打ち解けることが出来れば問題は無いだろう。

 

「俺的には、少し懲りて欲しいなと思っているよ」

「……意外だな」

 

 基本、呪術師を殺すことは無い綴に倣い、蟲飼いも呪術師が死ぬことを良しとしていないと綴は思っている。

 実際はどうかはわからない。

 裏でコソコソと邪魔な者を排除している可能性もあるが、証拠がない以上は何も言うことはできない。

 そんな蟲飼いが、自分の前でそんなことを言うなんて思ってもみていなかった。

 

「……綴」

「なに?」

「そろそろ、君は人の上に立つ人間だということを、しっかり自覚した方がいい」

 

 あまりにも真剣な声色に綴は足を止める。

 普段は綴が失敗したとしても、笑って次があるさと言ってのける彼は今はこうして綴の正面に立ち塞がっていた。

 あまりにも珍しい進言に綴は耳を傾ける。

 自分が未熟であるということはよく理解しているつもりだ。だからこそ、その隙を早く克服せねばならない。

 

「夏油傑なら、許しちゃうんだろうけど……君は優しすぎるんだよ」

「身に覚えがないな」

「だろうね。

 でもその身に覚えがない優しさを振り撒いている結果、矢野みたいな君の言うことを聞かないって言うトラブルが起きたんだろう?」

 

 言うことを聞かないのはお前も一緒だと言いたかったが、あまりにも真剣なのでやめておこう。

 しかし、それとこれと何か関係があるのだろうかと綴は首を傾げる。それを見た蟲飼いは僅かに苦笑いをしてみせる。

 

「綴、規律(ルール)は人間にとって必要不可欠なものなんだよ。

 君ひとりのカリスマで成り立っていると言っても過言ではない組織だからね。

 でもそれで綴の身に何かあっては行けないんだ。

 だからしっかりと教えなければならない。君が絶対的な規律(ルール)であることを」

 

 蟲飼いは綴の頬に触れる。

 

「君が心配なんだ」

 

 これは本気でそう思っているのだろうな、とすぐにわかった。

 そうさせてしまったのは自分だ。

 だから本当に申し訳なく思ってしまう。

 

 付き合いだけで言えば蟲飼いは1番古い。

 しかし未だに綴は蟲飼いのことを理解しきれていない。

 付き合い方はそんな中でも色々と学んできたつもりだった。だが、ここまで自分を案じてくれていることを見誤っていたようだ。

 

──どうしてこの男は、自分のことをこんなにも大切にしてくれるのだろうか。

 

 

「………今後は気を付ける」

「本当に?」

「俺が信用できないのか?」

「ふふっ

 冗談だって、そんな顔して怒るなよ。興奮するから」

「キモイ」

 

 蟲飼いの脛をつま先で思い切り蹴って、綴は歩を進める。

 

 そんな彼の後ろ姿を見ながら蟲飼いはため息を吐いた。

 綴が今回血塗と壊相、呪術高専の虎杖悠仁と釘崎野薔薇との戦いに参戦せずにいてくれたことに安堵していたからだ。

 

──綴が現れた場所を高専に知られるのは不味い。

 

 綴は脱獄した呪詛師であると同時にあの五条悟に行方を探られている。

 今は追われないように蟲飼いの蟲で呪力を誤魔化しているが、それもいつ綻びてしまうかわからない。

 そもそも前回の1回でも危なかったところだったのだ。田端の機転がなければ綴はまた捕まっていた。

 

 正直なところ、綴の平穏の為に呪術界が本当の意味で落ち着くまでは彼を助ける気は無かった。

 暗躍している人々、呪霊が多い今この時に綴が出てくれば色んな所から悪意ある手が利用しようと伸ばされるのは目に見えていた。

 その予感は見事に的中した。

 

 綴の所属する夏油一派には夏油派と綴派が存在している。

 綴自身が夏油傑を尊敬していたからこそ、両派閥はそこまでの拗れを産んではいなかった。

 しかし、今回綴が脱獄した途端夏油派の人間達が綴を利用しようとしてきた。それも呪霊達も一緒にだ。

 

 ふざけるな。

 

 綴は彼らのことも未だに仲間だと思っているが、そんなことはもう関係がない。

 どんな理由を並べようと彼らは蟲飼い達を敵に回していた。

 

 

 とにかく、綴が利用され心落ち着かない姿を見たくはない。

 

「だと言うのに、綴はそういうとこ無関心なんだよなぁ」

「何か言ったか?」

「いや、なんでもないよ」

 

 夏油派の人間や、夏油傑の皮を被るアレに協力すると決めてしまっている以上、今は綴がこれ以上苦しまないようにサポートするしかない。

 綴への信用があるため、その決定を覆してまで意見を言うことは無い。もし綴が失敗しそうになっていれば、助けてやればいいだけだ。

 

 でもその前に尋ねなければならないことがある。

 

「綴、1つ聞いてもいいかな?」

「なんだ?」

「君は、俺のことをあの頃(・・・)と変わらず思ってくれているかい?」

 

 幼い綴の手が蟲飼いの手を握ってくれたことを思い出す。

 あの手がなければ、自分はこうして綴をここまで大切に思うことは無かっただろう。

 この子は、今でもあの頃と変わらない救世主なのだろうか……?

 

「当たり前だろ?」

「………そう、か……そうか……」

 

 蟲飼いは安堵の笑みを浮かべて綴の後ろを着いて歩く。

 

「やっぱり綴はこの世で最も美しいよ」

「五月蝿い」

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