呪われた呪術師の復讐劇   作:千α

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4話

 東京都立呪術高等専門学校。

 呪いを祓うため呪いを学ぶ呪術師の学校。そこに在学している虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇はある任務のため、都内の外れにある屋敷を訪れていた。

 

「いかにもって感じね」

 

 呟く釘崎に虎杖と伏黒は頷いた。

 任務の内容は、この屋敷にいる呪具を法外な値段で呪詛師に売りつけている男を捕まえることである。

 

「じゃあ、開けるぞ」

 

 虎杖が先行する形で3人は屋敷の玄関へ足を踏み入れた。

 静かだ。生きている人間がいるかも疑わしいくらいに。だが異様な雰囲気が屋敷一帯に広がっているのも事実だ。

 

「おや、思っていたよりもお若い呪術師ですね?」

 

 急に目の前に現れた初老の男に3人は驚く。

 全く気配もしなかったというのに、いったいどんな術を使ったと言うのだろうか。

 

「アンタが、呪具を売ってる……?」

「いいえ。どちらかと言えば彼の客かと……。

 ああ、申し遅れました。私、とあるお方の側仕えをさせて頂いております。田端と申します。相容れぬ存在ですが、以後お見知り置きを」

 

 つまり、呪詛師である。

 3人は田端の言葉を聞いてそれぞれ構える。

 

「呪術師はできるだけ殺すなと言われております。この場は収めて頂きたいのですが」

 

 つまり戦うつもりは無いと、そういうことだろうか?

 

「呪具を売っていた男はどこにいる?」

 

 伏黒が尋ねると田端は朗らかに笑いながら、蓄えている髭を撫でる。

 

「成程、彼を捕まえるのが貴方達の任務ですね?

 ならば残念ですが、彼は先程私の主が殺してしまいまして……」

 

 ぶわりと栗肌立つのがわかる。

 

「ここにある呪具は意外にも質の良い物ばかりでしてね……全て貰って行こうと運び出しているところなのですよ。ですから、お帰り願いたいのです。あの男についてはその後で……」

「できると思うか?」

「それは……残念です。私は主に"絶対"に殺すなとは命じられておりませんので」

 

 田端は恭しく頭を垂れてから、手を前に出す。いったい何をする気だ?3人が警戒心を高めていると、その手をまるでドアノブを捻るかのように動かす。

 だが何も起きない。更に田端の行動を注視しようとする3人に危機を知らせるように、伏黒が出していた式神の玉犬(黒)が吠える。

 その声を聞いて伏黒が後ろを振り返ると田端の腕が何も無い空間から飛び出してきていた。

 

「虎杖、釘崎! 後ろだ!」

 

 それを聞いて、2人も田端の腕に気が付く。

 咄嗟に躱してから田端の方を見ると、捻ったほうと反対の腕が消えていた。

 

「ふむ、なかなか厄介な術を使う。少し席を外してもらいましょうか」

 

 そう言って田端はまた手首を捻る。すると伏黒の下から扉が開くような音が聞こえ、そこに現れた黒い空間へそのまま落下する。

 

「伏黒!?」

 

 虎杖が伏黒の腕を掴もうとするが、田端は虎杖を蹴ってそれを阻止する。

 

「おや、受け止めますか。私も鈍りましたかね?」

「いや、動きほぼ見えなかったんだけど?」

 

 その動きに何とかついていけた虎杖だったが、反応が遅れていれば多少なりともダメージを受けていただろう。

 すでに黒い空間は閉じられており、伏黒の後を追うことはできない。

 

「いえいえ、そちら(・・・)ではなく、術のほうですよ」

「?」

「まさか、()()()()()()とは……まあ、あの方にはちょうど良い相手ですしね」

 

 田端はニッコリと笑いながら、虎杖と釘崎を見つめる。

 

「2人もあちらに送らなかったことに、感謝して頂きたい。

 3人も相手にしろと言われた時は「このクソガキ」と……おっと失礼。あの方の我儘にも困り果てたものですから」

 

 2人を見つめて語っているようであるが、田端のそれはどう考えても独り言だ。

 そして田端の言っていることを推察するに……伏黒は生きており、そして消えた先にいるのは田端の"主"なのだろう。

 

 

 さて、その綴はいきなり上から現れた少年を見つめていた。

 ここは地下にある中々の広さを持つ倉庫。

 田端の術で呪具はすでに回収済み。この少年は田端の術でこちらへ送られてきた呪術師だろう。制服に見覚えがある。呪術高専の生徒なのだろう。

 

「……田端の奴、嫌がらせだな?」

 

 惚けている少年を綴は足でつつく。

 

「おい、大丈夫か?」

「は?」

 

 田端と会敵したということは、綴が呪詛師であることを知っている可能性があると思っていたが、この少年の反応を見るにその考えは当たりのようだ。

 だが今のところ綴にはこの少年と敵対するつもりは無い。呪具は回収しているのだから、これ以上ここに留まる理由はないし、なにより自分よりも弱い相手と戦って殺してしまうかもしれない。

 

「去年の百鬼夜行では見たことないな……1年か?」

 

 少年は自分の学年を当てられたことに動揺する。

 

「余計に敵対したくないな……ええっと…1年で黒髪って言ったら……伏黒、だっけ?」

 

 名前まで当てられた伏黒は飛び起きて綴から距離をとる。

 

「なんで……?」

 

 最もな質問だ。学年を当てるならまだできるだろうが、名前などできるわけが無い。

 

「悟兄ちゃんに聞いてたから。ああ、術式のことはいくら聞いても話してくれなかったから、そこは安心しろ」

 

──悟、兄ちゃん……? 悟ってあの(・・)悟? あの五条悟のことか?

 

 悟という名前自体は珍しいものでは無い。だがこの界隈で真っ先に思い出すのは、最強の呪術師・五条悟である。

 

「多分手前が思ってる五条悟であってるよ。

 あの人の生徒の話は、捕まってる半年と少しで散々自慢されてっから」

 

 その言葉と、綴の容姿を見て伏黒は先日の交流戦の日に脱獄した呪詛師の存在を思い出す。

 

「甘菜、綴……っ」

「そんなに睨むなよ。術師同士仲良くしよう」

 

 伏黒は印を結ぶが、綴は構えない。そんな綴に動揺するが、それが余裕から来る行動だとわかると、妙なイラつきを覚える。既視感があるのだ、いったいどこで?

 

「……うん、次何するか何となくわかった」

 

 玉犬(黒)を出す前に伏黒は床に転がされる。

 

「ほら、どうした式神使い(・・・・)。接近されたら為す術もない、なんてこたぁないよな?」

 

 綴は伏黒が式神を使うとすぐに看破する。接近戦にすぐに対応できなかったところを見てそう判断し、指摘した際の伏黒の反応を見て確信した。

 一方、伏黒はそんな綴を見て既視感の正体を思い出す。

 

──ああ、思い出した。この人をおちょくるような態度……五条先生にそっくりだ。

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

【東京都立呪術高等専門学校】

 

 

「五条さん、例の件について、情報が入りました!」

 

 伊地知の声にソファで寝ていた五条はハッと目を覚ます。

 

「綴、見つかったの?」

「似た人物、という情報ですが……おそらく間違いないかと…」

 

 冷や汗をかきながら伊地知は五条にまとめていた資料を渡す。それを奪い取るようにして伊地知から受け取ると、五条は急いで目を通す。確かに特徴が綴と一致している。

 

「伊地知、次の僕の任務キャンセルで」

「ええ!?」

 

 何としてでも綴を連れて戻すつもりの五条は、すぐに高専を出る支度を始める。

 

「で、でもこの任務はどうするんですか!?」

「七海にでも回しといて。それ、僕が出るまでもないでしょ?」

 

 いや、でも……としどろもどろする伊地知だが結局五条に押し切られるという形になってしまった。ガックリと肩を落とす伊地知はそのまま五条の埋め合わせをするために片っ端から呪術師達に連絡し、同情されるのであった。

 

 そんなこと知ったこっちゃない、と五条は現場へ急ぐ。もしもこの情報が本当だとすると、少々まずいことになる。

 なぜなら、綴を相手にすることになるのは今五条が受け持つ1年生の虎杖、伏黒、釘崎なのだから。

 いくら期待している生徒達と言えど、まだ綴の相手は早い。特に伏黒か釘崎と戦うとなれば、相性が悪い。殺されはしないだろうが、酷い被害が出るのは目に見えている。せめて虎杖なら綴に対応出来るだろうが……。

 

「本当に、呪流体術を封じられてて良かった」

 

 おそらく呪流体術を封じられていなければ虎杖も相手にならなかっただろう。

 

 

 

 

 

 五条も認める体術と捕縛術のスペシャリスト、それが甘菜綴だ。

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