IS -可能性の宇宙へ-   作:ババネロ

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#phase-8「悪意と姫の傘」

 セシリアと一夏の訓練が決まった翌日、早速マコトは朝食の時間から面倒なことに巻き込まれていた。

「ぅわっ!」

 朝食を受け取り、トレーを持って簪の待つ席へと向かおうとしたところで背後から誰かがぶつがり、全くの無警戒だったマコトはトレーの上に載せていた朝食の焼き魚定食を食堂の床のうえにぶち撒けてしまった。

 当然、食器類も割れて大きな音を立て、周囲の注目を浴びる。

「あぁ!大丈夫かい!?」

 慌てて食堂の職員である割腹のいい女性が受け渡し口から飛び出してマコトに駆け寄る。

「あたしは大丈夫です。ただ、ご飯が…」

「気にしないでいいよ。またつくりゃいいだけだから」

「すいません…」

「それより今この子にぶつかった子、どこいったんだい」

 マコトは周囲を見渡すが確かにぶつけられたはずなのにそれらしき生徒はいなかった。こぼしたものを片付けだした女性が見ていたはずだが、どういうことだとマコトは首を傾げる。

 騒ぎを聞きつけて、簪も珍しく駆け寄ってくる。マコトはそういえば彼女が走るのを初めて見たかもしれないと呑気なことを考え、簪の走るフォームが意外にも綺麗で洗練されていることに気が付く。内向的、とはいっても彼女は代表候補生で、それなりに身体能力もいいのかもしれない。

「マコトさん…!?どうしたの!?」

「あー、混雑してるからぶつけられちゃって」

「そうなの…?」

「いいや、ありゃわざとだよ」

 マコトは簪に心配させないよう言ったが、食堂の女性はそう断言する。

「茶髪の長い髪の子だったね。ぶつかったあとスッと列の合間を通って消えちゃったけど。今度見たら叱っとくよ」

「なんかすいません」

「謝るんじゃないよ。ほら、同じの出してあげるから、あっちの受け口に行きな」

 女性に促され、マコトは教員用と書かれている受け渡し口に向い、そこで別の食堂の厨房担当者から同じ料理を貰う。今度は誰にもぶつけられることもなく簪の取っていた席につくことができた。

「いやぁ、早速きたね」

「そんな呑気な態度してる場合じゃない」

 なんとか場の空気を緩ませようとしたマコトだったが、簪の真剣な表情に固まる。正義感の強い簪がこうしてマコトに実害が及べばこうなってしまうのは想像できていた。

「そうは言っても……あたし、こういうことされるの初めてだし」

「私はある。だから、実際に起きたらもう止まらない。銃の引き金と同じだよ。一回引いちゃえば、躊躇うことがなくなる」

 本気で心配そうな表情で簪は言い、マコトは彼女の言葉に「あぁ…」と納得する。前世でそれは嫌というほど実例を知っていた。それはいじめられた経験などではなく、例え自体だ。地球連合軍が核を当たり前のように撃ったり、所属していた軍が奪取した戦略兵器を簡単に連射しようとしたり……引き金は初めて引くときが異様に重く、そのあとはまるでオモチャのように軽い。

 あまりにスケールが違う経験だったがマコトはこれから更に激しくなるのかと困惑するしかない。

「簪は、その…言いづらかったらアレだけど、前はどうしたの?」

「お姉ちゃんに助けてもらった」

「…た、楯無さんに?」

「昔はちゃんと私を見てくれていたから…って、私の話はいいの。とにかく、こういう時は頼れる人に話すのが一番良い。マコトは織斑先生と幼馴染みなんでしょう?先生に相談して解決するなら一番良い」

「千冬さんか……」

 千冬に相談すれば確かに助けてくれるだろう。だが“織斑先生”としてはどうだろうか。今の状態では「証拠が足りん、動けない」で彼女はマコトを助けたくても助けられないだろう。突撃バカのように見えて、千冬の真面目さはそういうところで発揮されてしまうからだ。

 だから千冬に頼るという選択肢はなくなる。では束は……とマコトは考えるが即座に却下した。頼れば確かに即時マコトへの嫌がらせは治るだろう。それどころか一夏へのものも。しかし、犯人たちはおそらくこの世界から社会的にも物理的にも“抹消”されるだろう。

 まだマコトが小学生の頃、箒が僅かな間いじめられていたことがあった。それを一夏と一緒に助け…る必要もなく箒自身がいじめてきた相手を締め上げていたが、大抵そういったイジメを行なうものは親の前では“いい子”であり、被害者であるはずの箒が逆に学校側と加害者親子に追及されることがあった。

 当然、箒は否定し、学校に呼ばれた箒の父もありえないと言うが学校側からすれば証拠もなく先に言ったもの勝ちだ。箒たちは圧倒的に不利だった。

 が、箒のそんな状況をふと束が聞いた翌日、加害者家族は突如として町から失踪した。殺人なども考えられたが全くそんな形跡もなく、まるでマリーセレスト号のように夕食の準備がされている状態で誰もいなくなっていたという。

 マコトは間違いなくそれは束がしたのだと思っている、というより、束もマコトと千冬にだけは仄かしている。

 ——人間って自分の身に何かおきないといつまでも他人事だよね。

 と、加害者家族が失踪したその日に言ったのである。千冬もマコト、それで束を追及する気はなかったが、彼女本来の「人を人として見れない、他人がわからない」本性の末恐ろしさを感じた出来事だった。

 今は多少、改善されているかもしれないがそれでもマコトが話せば同じことが起きる可能性が高い。束の理性という枷を外すのはあまりにも危険すぎる。

「マコトさん?」

「え?」

「相談できる人、いないの?」

「いや、まぁ、その……千冬さんは難しいだろうし、他の人も…」

「デュランダルさんやオルコットさんは?」

「オルコットさんは今、一夏のことに集中して欲しいし、レイラをこれに巻き込むのも……同じ生徒だし」

「デュランダルさんの家柄的にまず大丈夫だと思うけど」

「そういえば、レイラって一体イギリスだとどれくらい偉いの?」

「……知らないの?」

「うん」

 マコトはレイラがレイなこともあって、彼女の背景をよくは知らなかった。一夏たちが真耶から聞いた父親が政治家なこととそれなりの上流階級のお嬢様であることはわかっていたが。

「元ロイヤルファミリーだよ」

「………え」

「デュランダルさんのお母さん、タリア・デュランダル大佐は元英国王室の人で、軍隊に入ってそのまま王室から出た人なの」

「れ、レイラ、本当にお姫様だったの!?」

「そうだよ。だからデュランダルさん、向こうじゃ仲のいいセシリアさんとセットでこう呼ばれてる……“青の姉妹姫”って」

 とんでもない事実にマコトは自身の置かれている状況など、どうでもよくなってしまうが「だから」と簪が話を戻す。

「デュランダルさんと一緒に行動してれば迂闊に手を出せないはずだよ。マコトさんは仲いいみたいだし、話せば協力してくれるんじゃないの」

「まぁ、そりゃぁ……」

 前世からの付き合いである。今世ではまだ一ヶ月も経っていないが、レイラはマコトに相談されれば断らないだろう。

「今はそれしかないのかな…」

「決定的なものを掴むまではだね」

 何もずっと耐えろというわけではなく、どんどん大きくなっていく釣り針を逆に捕まえるまで待てばいいのである。マコトは待つことがあまり得意ではないが今はそれしかないと判断し、レイラに相談することを決めた。

 

 

 

 朝のSHRが始まる前にマコトはレイラにだけこっそりと相談し、彼女はマコトのお願いを快諾した。

「あなたが困っているとなれば当然助けますよ」

「ありがとう、レイラ」

 早速その日の朝から授業時間以外はかならずマコトの隣にレイラがいる状態となった。休み時間中も普段はセシリアの隣にいる彼女がわざわざマコトの席まで行くようになり、さやかがかなり驚いていたがレイラは得意の「私は気にしません、だからあなたもお気になさらず」で誤魔化し、当たり前のようにマコトの側に付き添った。

 セシリアはレイラが先日のパーティー中にマコトと仲良くなったことを聞かされていたため特に気にせず、一夏は自身のことで目一杯、箒は何かが起きていることを察しているが、問題が大きくなったら剣を振るえばいいだろうと放置だ。

「それにしてもレイラが本当にお姫様だったなんて驚いたよ」

「聞いたのですか?」

「うん、簪さんから。あぁ、もっと丁寧な口調話したほうがいい?」

「別にどうでもいいことですよ。今はただの一般人ですし」

 昼休み中、珍しく屋上で買ったサンドイッチを食べながら談笑しているマコトはレイラに彼女の家のことを言っていた。レイラ自身も親のことを特に鼻にかけることもなく、むしろマコトの冗談に若干嫌な顔をしたぐらいである。

「人に頭を垂られるのは好きではありません」

「オルコットさんはそう言う感じだよね」

「セシリアはあくまでそういう“役目”だからそのように振る舞っているだけです。完全オフだと使用人にも敬語ですよ、彼女」

「そうなの?意外だね……」

「十代のセシリアが当主不在になった家を持ち直して、そのまま続けさせられているのは優秀な使用人たちのおかげもあるのでしょうね」

 根は善人すぎるぐらいのセシリアの、レイラが語る姿は簡単にマコトの脳裏に浮かぶ。それに、ただ高慢なだけであればレイラ自身も彼女の付き人のように学園では一緒に行動していないのだろう。

「そういうところ、“好ましい”のかな」

「えぇ、とても“好ましい”ですよ」

 微笑み、肯定するレイラに、マコトは本当に仲がいいんだなと僅かにセシリアに嫉妬してしまった。

「……それにしても、本当に悪いよ、巻き込んじゃって」

「それは言わないでください。さっきも言いましたが、あなたが困っていたら絶対助けますから」

「頼もしいや」

「どんどん頼ってください、そういうものでしょう?」

「うん。レイラがいてくれるなら百人力だよ」

 あはは、と二人は笑い合う。昼休みはそのままゆっくり時間が流れていき、なんの事件も起きなかった。

 

 

 

「そういえば、他のクラスの代表候補生ってどんなのがいるんだ?」

 放課後である。夜のセシリアとの訓練もあるため、食堂でかなり早めに軽食をとっていた一夏が一緒に机を囲んでいるマコトたちにそんなことを聞く。

「まず簪さんがいるよね」

 マコトがはや当たり前のように混じっている簪を指差す。一夏はそういえばそうだったと頷く。セシリアやレイラのように明らかに「私は特別です」といった空気は纏っておらず、限りなく普通な彼女に一夏は代表候補生であることを忘れていた。

「……まぁ、影薄いし……」

「いやいや、簪、ごめんって」

「別にいい……」

 拗ねる簪に一夏は苦笑いする。

「で、他は?」

「切り替えが早いですわね……」

「いいことだと思いますよ」

 さらに簪の纏う空気が沈むが、1組生徒であるマコトたちはその程度のことは気にせず話を進める。一ヶ月も経たないうちに1組の中ではスルースキルの習得が出来ているため、話を進めたい時は容赦無くスルーができるのだ。

「他には2組のコメット姉妹でしょうか。カナダの代表候補生です」

「カナダ?コメット?そんなのいるのか?」

「双子の姉妹で代表候補生な上、飛び級していますね」

 レイラは言いながら珍しく携帯端末を操作し、テーブルの上に置く。画面にはオレンジと菫色の髪をした双子と思われる少女が、華やかなドレスを纏ってマイクを握っている写真が表示されていた。

「オレンジのほうが姉のファニール、菫色のほうが妹のオニールです」

「なんだこれは。破廉恥な」

「箒、そこまで言わなくてもいいんじゃ」

「いや破廉恥だ、マコト。見てみろ、脇腹は空いてるし、指抜きの手袋にこの様子だと背中は空いているだろう。破廉恥以外の何者でもない」

 生真面目さを発揮した箒がそんなことを言いつつ画面をガン見していることに全員がツッコミたかったがスルーする。箒がボケ出すと止まらなくなるためだ。マコトも画面のコメット姉妹の画像をよく見るが、非常に可愛らしく、おそらくはアイドルとして活動している時の写真なのだろうと推測することができる。

 代表候補生は何かと広報的な仕事も多く、セシリアも雑誌の表紙になったり、校内には顔女の写ったポスターまで貼られている。

「コメット姉妹はアイドルとして有名だよ。私も何度かテレビで見たことがある」

「そうなのか、簪?俺見たことないや。箒は」

「私もわからん」

「マコトは?」

「うーん、ちらっと見たことがあるような」

 藍越出身の3人は昔からあまりテレビを見ずに外ではしゃぎ回っていたせいか今でもあまりテレビを見る習慣がない。そのため、コメット姉妹のことはよくわからなかった。

「まぁ、アイドルなのはわかったけど、肝心のISとかはどうなんだ?」

「専用機が未完成らしく未だに母国ではアメリカ製のライセンス生産機に乗っているようです」

 レイラの解説に簪やセシリアが頷く。事実らしく、マコトたちもそうなのかと思った。

「腕も…未知数ですわね。公式戦への出場もなし、非公式の記録もなし。簪さんもそうですが、まだ候補生としてはなり立てというのも大きいですわね」

 未知数、といっても単純にコメット姉妹自体の記録がないためのもので一夏はならそこまで警戒する必要もないか、と判断する。だが、そんな一夏の気持ちを見破ったのかセシリアが付け加えるように言った。

「ただ、当然代表候補生となるということはそれなりの実力…もしくは何か特異性あってのこと。侮るなど、ありえないですわよ」

「うっ、わ、わかってるって」

 釘を刺された一夏にマコトたちはくすりとする。ここで千冬がいれば強烈な一撃が一夏の後頭部入れられていたところだった。

「2組はわかった。なら残りの組は」

「3組、5組、6組にはいませんわね」

「え、そうなのか?じゃあ1年の代表候補生って……」

「ここにほとんど集まっていますわね。もしかしたら他にいるのかもしれませんが、代表候補生であること公表していない人もいる可能性があります」

 セシリアの言うことは事実だったが、確かめようがないため一夏の疑問はここまでで解消されてしまった。また、この様子ではクラス代表になっている代表候補生は簪しかおらず、あとは一般生徒が代表になっている可能性が高い。

「……だから、相川や相沢が「勝ったな…」などと言っていたのか」

「そういうことですわ箒さん。一夏さんは素人もいいところですがIS自体の性能はかなりのものです。もちろんあまりにピーキーすぎますが、素人と素人では性能差が如実に結果に出るでしょう」

「そして、一夏さんは剣術の心得がある様子。白式を扱えるようになれればシンプルな装備ですからある程度は戦えるようになるはずです」

「いやでも、簪がいるだろ。簪って強いのか?」

「……それ、本人がいる前で聞く?」

 全く簪がいつことなど気にしていない様子で一夏はセシリアたちに聞く。簪は当然「それはないだろう」と言った顔をした。

「じゃあ簪に聞くけど、お前強いのか?」

「私が強いって自信満々に言えると思ってるの」

「いや……」

「………少なくとも、素人よりは強いよ…」

 自信なさげに簪は言う。誰もフォローができない。先ほど話にあがったコメット姉妹同様、そもそも簪の戦っている姿やISに乗った姿を全員見たことがないからだ。

「代表戦で当たったら、負ける気ないから」

「宣戦布告か?いいぜ、受けてたつ」

「一夏、なんでそんないつもやる気満々なの」

「売られた喧嘩は買わないとな」

 腰抜けと言われたらすぐに燃え上がりそうな勢いにマコトは「そう」と波風立たせずに流した。箒が頷いているため余計にだ。

「マコトさん、なんでこの人こんな好戦的なの?」

「ごめん…単純で…」

 マコトは簪に謝罪しつつ、ここに以前は弾なども混じりヒートアップしていったのだが今はいないためマコトは感謝した。

「ま、となると警戒しなくちゃいけないのは簪か。といっても俺にできるのは剣振るだけだし、千冬姉みたいに強くないけど」

「そうですわね。ですが、この私の指導を受ければ私とレイラ以外は相手にならなくなりますわよ!おーっほっほっほっ!」

 あまりの自信にもはやギャグのように思えてきた簪はヒクヒクと口の端を笑わせるだけだった。マコトはここに鈴がいれば間違いなくセシリアにツッコミを入れていただろうし、もっと楽しかっただろうと思ってしまう。さらに弾が入ればもっといい。

「あっ、あとさ、俺以外の男性操縦者って見つからないのかな」

 一夏が入学して以来誰も気に留めていなかったことを口にする。世の中、前例があれば可能性を否定できないもので、全世界では男性操縦者探しのためにパッチテストのように起動テストが行われているのはニュースや新聞に載っていたが、こと1組の生徒は一夏に早々に慣れてしまったのでそんなことを気にしていなかった。

「一夏は他に誰かいてほしいの?」

「うーん、どうなんだろ。どっちでもいいのかな…ただ、俺が起動できたってことは他にもいるんじゃないかっていう疑問」

「ISには未知の領域が多いですから、ありえなくはないですわね」

 セシリアの言う通りでISには未知の領域が多いため、結局のところやってみなければわからないということになってしまう。マコトは話を聞きながらも、何故一夏が起動できたかの理由を知っているため絶対に出てこないとだけ内心呟く。レイラは微妙に表情の硬いマコトに気が付くが、何も言わない。

「新たに見つかったところで、大勢には影響ないだろう。女尊男卑などと言いつつも、それが顕著なのはIS周りだけだろうからな」

「むしろISが更に普及するのではないでしょうか。環境問題解決に大きく寄与する可能性が高いです」

「環境問題?あぁ、そっか。排気ガスとかないもんなIS」

「少ならからずスラスターで燃料は使ってるけどそれで出てくる空気汚染物質なんて超微量だしね」

「……まぁ、見つかったら…大騒ぎだろうね、また」

 宇宙空間での運用を大前提に作成されたインフィット・ストラトスであるが、束の作成したジェネレーターは無補給航行を目指し半永久的にエネルギーを生み出すことができるものであり、その詳細はマコトですら知らない。開発者権限でのみ覗けるブラックボックス内に存在していることや、発生可能エネルギー量の限界こそわかっているがそれが何をどうやって稼働し、何からエネルギーを取り出しているのはわからない。

 考えてみればよくそんなものから機動兵器を作ろうとするなこの世界は、とマコトは呆れに近い感情を抱く。ただ、束のことだから安全性自体は保証されたものであることは間違いないと信じている。彼女の近しい人を大事にする姿勢はわかっているし、本当に危険であれば千冬にテストを任せていない。マコト出会う前、白騎士がまだインフィニット・ストラトスとしては不完全な頃は束一人で実験していたというのだから。

「見つかったらその人もIS学園にくるだろうね」

 マコトの言葉に全員が頷く。その時はおそらく一人目がいる1組に来るだろうとも全員が考えた。

「ま、期待しないでおくさ。それでセシリア、今日の訓練なんだけどさ——」

 話が今夜の訓練にうつり、マコトはふぅ、と少し話から身を引く。思考は今話のあった二人目のことだった。未だに原因は束もわかっていない。白騎士のログや世界中のISのログを探っても起動時のスキャン自体はしているが、男性とわかるとそこでISは起動を停止し、そもそもOSすら立ち上がっていないのだという。ISの基本システム周りは束が配布したコアに初期から搭載されているもので、束自身がその後、ある企業に潜入してブラックボックス以外の周辺システムを解析したかのように作成し、コアの初期化をしてもコピー&ペーストで復旧可能なようになっている。

 そのシステムがダメなのかと束は考えていくつも違うOSや起動シークエンスのプログラムを変えたりしたがどれも効果がなかった。となればブラックボックス…束からすればAI本体やジェネレーター部分に原因があると探っているのだが成果は出ていない。開発者なのに開発品に振り回されているあたりはいくら天才といえど変わらないようだった。

 とはいえ、二人目の登場はそれこそ一夏がもう一人いるぐらいでないと現状ありえず、もし現れればそれは何らかの無理か、嘘がある。マコトはそう思ってもし現れれば注意すべきだろうと思った。




※ネタバレ

当分コメット姉妹は出てこない上に専用機も出てくるか怪しい
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