私、セシリア・オルコットと姫様の出会いは5歳の頃……父の友人だったギルバート様がレイラ様のために開かれた誕生日会でのことでした。既にロイヤルファミリーではなくなっていたとしても、タリア様のお人柄から未だに人気は根強く、レイラ様も幻のプリンセスと当時は持て囃されていました。
幼い私からすれば、立場はどうあれ相手はお姫様。今日のようにオルコット家当主としての胆力などない私は初めて出会うやんごとなき身分の方に怯えていたのです。加えて、オルコット家は…死の商人ともされる兵器開発を担っていた鍛冶からの成り上がり。
初めての社交界で味わった子供たちからも、大人たちからも向けられた視線が辛く、苦しかった。私は死神のこども。だから、こんな高貴な方々がおられる場所にいてはいけない。そんな風に思っていました。
だから、パーティーが始まってすぐ、父の側から逃げ出すように私はテラスへと足を運びました。父は冷たくも……いいえ、今にして思えば苦笑いしながら……私を一人にしてくださいました。普通の家庭ならば、ここで放置するというのはきっとよくないことなのでしょうけれど、私は一人になる時間が欲しかった。父は優しすぎるから、それがわかっていたのだと今の私は考えています。
一人となったテラスから夜空を見上げれば美しく輝く星々たちが碧い宇宙に広がっている。こっそりと忍び込んだお父様の書斎で見つけた星にまつわる神話を纏めた本や、宇宙に関する本。難しくてもそこにある浪漫は大いに幼い私に刺激を与えてくれていた。
父も母も、わかっている。それでも私の境遇をどうすることもできない。幼い私は既に達観というものを知っていましたのでしょう。窮屈で、誰も私を見てくれないこんな鳥籠のような地上ではなく、星々が自由に瞬く宇宙に羽ばたけたらどれだけよかっただろうか。
——星に手を伸ばして、どうされたのですか?
可憐な声。不敬を働いてまで聞くはずのなから声が私にかけられました。振り向けばそこにいたのは月光に美しい髪を輝かせ、まるで地上の星のように吸い込まれそうな蒼い瞳が私のことを認めています。
私と同じく幼いのに、まるでそれ以上の何か『大きな』モノを背負ったような存在感。私のドレスよりも遥かに良い仕立てのそれは、彼女の美貌を際立たせていた。
——あなたは?
——セシリア・オルコット、ですわ。
——初めまして、セシリア様。私はレイラ・デュランダル。
姫様。私は慌てて膝をつこうとする。失礼を働いた。なら頭を垂らすしかない。当時の私の無様な処世術とも言えないそれを、レイラ様は優しく、手をかざすだけで止めて見せた。
いいえ、手の仕草など見えなかったと思うのですが、何か“言葉が走った”ような気がして、私は彼女の前で、無礼にも呆然としていたのです。
——星が好きなのですか?
そんな私のことなど気にしていないかのように姫様は私の横に並び、テラスから空を見上げていました。
——レイラ様、わたくし、ごぶれいを。
——ふふ、こんな唯の小娘に、様づけなんていいですよ。
——ですが。
——なら、命令です。セシリア、と私も呼びますのであなたも私のことはレイラと呼び捨てにしてください。
——そんな、私はそのような恐れ多い。
——いいですね?セシリア。
レイラ様は強引なところがありました。それは今でも変わりありませんわ。時には男性のように凛々しくもあられるというのに、幼い頃は笑顔で、まるでこれまで堰き止めていた“わがまま”をたくさんせれている…そんな失礼なことが脳裏をよぎったことがありました。あまりにも、根拠のないことでしたが。
そんな強引な姫様の命令に私は呆気にとられながらも、レイラと呼び捨てにすることにしました。抵抗はありましたが。
——それで、質問の続きですが。
——ほ、星よりも、宇宙が好きです。
——宇宙が……。
そう言って夜空を見上げるレイラ様はどこか望郷の念に駆られているようにも思えました。
——あなたには宇宙がどう見えているのですか?
——碧く、とても綺麗で、星も輝いていて……すごく、自由に、そのように見えています。
——ふふ、そうですね。この“世界の宇宙”はきっと、そうなのでしょう。
レイラ様にも宇宙が“碧く”見えているようだった。漆黒、父も母も宇宙をそうだと言ったが、私にはずっと碧く見えていた。暖かく、星となった神々がおあせられる、自由な場所。
——私はあの宇宙に行きたいのです。
——宇宙に…ですか。
——あそこなら、きっと、あの星たちのように自由に輝ける、そう思うのです。
血統によるしがらみも、国境も、人種も……そんな区別などない場所だと、私は暖かな宇宙の色を見てそう思った。そこならば、父とも母とも、武器商人の家族ではなく、ただの親子でいられる気がしていた。
レイラ様はそんな私の言葉を聞いて、ただ優しく微笑まれていました。
——素敵な夢ですわね。
それから、私とレイラ様は友人の関係になりました。もともと、あの誕生会は私とレイラ様を引き合わせようという両家の親たちの狙いがあったようでした。
幼い頃のレイラ様はどんなありふれたものにも興味を抱いて、世間一般の姫様というイメージからかけ離れたやんちゃなものでした。気がつけば私もそんな彼女に釣られて自然と彼女のことを呼び捨てに、誕生日が私の方が少し先だったのもあって、年の同じ妹のように見るようになっていきました。
同時に、どうしても行かなくてはならなかった社交界ではレイラ様の大人顔負けのお姿に感銘を受け、オルコット家を継ぐものとしての意識も徐々に芽生えていきました。
そんなある日、私は父から珍しく「たまには我がままを言ってほしい」と言われ、レイラ様にならってたまには…と私は言ってしまったのです。崩壊の引き金となってしまった言葉を。
——宇宙に行ってみたいですわ。誰のものでもない、宇宙に。
父は私の言葉を聞いて微笑むと「そうか」と悲しげに微笑んだのちに「じゃあ、約束しよう」と言ってくれました。
後で知りましたが、そのときちょうど父は“エクスカリバー”の建造を行っていました。戦略兵器の製造だけは避けようとしていた父が折れ、進めていた建造の最終段階まで行ったというのに、突如エクスカリバーの製造を止めようとしたのは私の「我がまま」を聞いたあとでした。
そうして、父上は母上と共に命を奪われた。呪われし聖剣の第1射によって。私の家族たちもまた、奪われた。目の前で、殺されていった。誰しもが私のことを想いながら、笑顔で、生きてほしいと。数多の骸の上に立つオルコット家から飛び立ってほしいと。
こんな私に、私のために、皆が死んでいった。だというのに、私は絶望しなかった。皆、死んだというのに、私は立つことを選んだ。親友であるレイラが怒り、犯人を追い詰めると言ったときは喜んでそうしてほしいと告げ、私は父の跡を継いだ。
私のせいだ。私がわがままを言ったから、皆死んだ。そんな罪深い人間が、絶望などできるのだろうか。できない。
死の間際に、弾けていく皆の魂の叫びが私を突き動かす。生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて、生きて——。
生きなくてはならない。セシリア・オルコットは生きなければいけない呪いをかけられた。
誰のために?死んでいった家族たちのために。
なんのために?生きるためには目標が必要だ、故に“宇宙に行くため”に。
私は生きなくてはならない。なんとしても。姫様のような強いお人のようにならなくては。
だから、あの日、家族を全て喪ったあの日の“悪夢”を私は超えていく必要がある。そうして今日も、あの日のようにまた我が家に家族を奪おうと現れた。4人もいる。何度も、何度も、何度きても、結果は変わらない。
今の私は生き続ける。あの日の悪夢を越えて——!
『えぇ、マスター。あなた様と共にこの悪夢を何度でも終わらせましょう』
蒼く、深い心が私を包みこみ、私は引き金を“彼女”に委ねた。
セシリアの夢の中、レイラの背にあるのは今は失われたオルコット家の屋敷であり、彼女はこの夢が屋敷襲撃の当日だとマコトたち3人に告げた。レイラの背にある屋敷は平和そのもので、これから襲撃されるようには見えない。
「それで、レイラ。どういうことなんだ」
「改めて説明しましょう。この屋敷が襲撃されたのは大凡8年ほど前です」
「8年前?けど、海外つっても屋敷が襲撃なんてされたら日本でもニュースになるんじゃねぇの」
一夏の発言はもっともだとマコトも簪も思った。先ほどの、この夢に入ったときのレイラの言葉からして目の前の屋敷は焼かれてしまっているという。おまけに、セシリアの家は貴族だというのもあって海外で凄惨な事件が起これば規模が規模だけに日本でも報道されているはずだった。
しかし、レイラは首を横にふる。
「報道はされていません。8年前……まだその頃は世界があまりにも汚れていました。簪さんはご存知なのでは?」
「…え?」
レイラが珍しく、そのようなフリをして簪は驚いた。基本的に1組における暗黙のルール「過去の詮索・暴露」はしないを意図的に破って、レイラはそう言ったのだ。一夏はどういうことだ、と簪を見る。マコトは思わず「レイラ!」と声を上げたがレイラは少し静かにするようにと掌をマコトに向けた。
「無理に、とはいいませんし、断片的にでも構いません」
「……でも…ううん、そうだね…」
簪は一夏がいる前で、加えてマコトに対して暗部としての自身を晒すことを一瞬躊躇ったものの、状況が状況であり、今の簪はただ目を逸らすことはしないと考え、覚悟を決めた。
「…知っているよ。私は、8年前までの、世界を」
「やはり、知っていますか」
「簪さん、レイラ、8年前とか、一体何の話をしてるの」
「そうだぜ、どういうことなんだよ」
8年前。ISが生まれて2年であり、アラスカ条約と呼ばれるISの運用を決定づけるものが全世界で結ばれた年でもある。その頃のマコトは束と箒が離れ、一夏や弾、鈴音と交流を始めていた頃だ。ISによって激変していく世界であったが、マコトの周囲は変わらない日常が続いていた。
二人の口ぶりはまるで世界が完全に変わったとも言わんばかりで、マコトはどういうことなのかわからなかった。
「……8年前まで“亡国機業”と呼ばれるものがあったの。それが報道規制をかけてた」
「は?なんだそれ」
亡国機業、聞いたことのない単語に一夏は首を傾げ、マコトも同じように訝しげな表情をする。そんなマコトに、レイラはわかりやすい例を挙げた。
「マコトにはロゴス、といった方がわかりやすいでしょうか」
「………ッ!!」
ロゴス。その名を聞いた瞬間にマコトは血が沸き立つような感覚に襲われる。マコトたちの前世、コズミック・イラの世界を裏から牛耳り自らの利益のために戦争を何度も起こし続けてきた秘密結社。あらゆる経済分野のトップたちが手を組み、思うがままに人類を操ってきた悪意の権化。…たとえ、必要悪だったとしてもその所業は行き過ぎ、マコトの目の前にいるレイラが引導を渡したものだった。
「あんなものが…この世界にも、あったの?」
「もしかしたら、ロゴスの前身だったのかもしれませんね」
レイラの認識ではこの世界は並行世界であり、もしかしたら前世の世界でもロゴスは亡国機業と名乗っていたのかもしれないと考えていた。マコトはそこまでの推測はしていなかったが、今の例えである程度のことは把握した。
「セシリアの両親と…他の家族は、それに…」
「えぇ」
「どうして、そんなことを…!」
怒りがマコトの思考を支配する。やり場のない怒りだ。先ほどの簪の言葉であれば“あった”という過去形であり、既に滅んでいる相手なのだろう。もはや、どうこうすることもできないことだ。
「ま、待ってくれ!何がなんだか…!」
一人、話についていけない一夏にレイラは簡潔に説明する。
「語弊がありますが、簡潔に言うとセシリアの家族は悪の組織に襲われたのですよ。といっても……その組織は襲撃事件から数ヶ月後滅んでいますが」
「滅んだって…その、セシリアの家族を襲ったことが原因で?」
名のある貴族を殺してしまったとなれば因果応報、一夏はそう思ったがレイラは首を横に降る。
「いいえ…私がこの事件の首謀者を追い詰めたのは組織が滅んだ後です。でなければ力のない小娘が世界を牛耳っていた者を突き止められるはずがありませんでした」
「………このオルコット家の事件が起きたときはまだ健在だった亡国機業が、同じ年のうちに壊滅した。何者かによって」
レイラに続き簪が説明し、一夏は余計に困惑する。世界を牛耳るほどの巨悪がどうしてそんな簡単に壊滅するのか。
「壊滅させた何者かは世界中でも、いまだに分かっていません。ただ一つ言えるのは世界を裏から操っていた者たちがいなくなった。それだけです」
「私も、そういう人たちがいて、滅んだことしかわからない。…実家も、詳しいことはわからなかったの」
諜報機関に属している二人の大元ですらも不明な亡国機業の壊滅。マコトはまるで正義のヒーローが人知れずやったのではないかと馬鹿げたことを考えた。今のマコトならばわかる。どんな巨悪でも世界を動かす歯車の一つであり、冷静に考えれば簡単に殺したりすることはできないことを。
それをいきなり、レイラの言葉などから察すれば本当に滅してしまえるというのは余程向こうみずでなければ不可能だ。
そして、それができるあろう二人をマコトは知っている。
「(……束姉さん、千冬さん…二人が、やったの?)」
今のマコトにそれを知る術はなかった。
「…ん〜、まぁ、なんとなくわかった。じゃあ、これから屋敷にそいつらが仕掛けてくるってことか」
「恐らくは。私も襲撃時は居合わせていなかったのでどういった状況なのかはわからず」
「レイラ、事件の生き残りは?」
「セシリアとこの日休暇をもらっていた使用人たちだけです。彼女の専属メイドもちょうどこの日は外していて、屋敷で生き延びたのはセシリアだけでした」
壮絶な状況に3人は息を飲む。つまり、セシリアは目の前で使用人たちを皆殺しにされているのだ。だというのに、今のセシリアは明るく、溌剌としている。クラスメイト、友人の窺い知ることができなかったあまりに暗い過去だ。
「彼女の両親も今日の昼に暗殺されていますが、まだセシリアには知らされていませんでした。なぜかはわかりませんが、恐らくは使用人たちが気を遣ったのでしょうね」
「俺でもそうするよ…小さい子にいきなり両親が死んだなんて…」
「一夏、一夏の言う通りだよ。——当主をいきなり暗殺したせいで屋敷は混乱しているからその日のうちに…本当に念入りだね」
「正直、今でもこれは止められなかったと私も悔しいですが認めるしかありません」
屋敷にレイラが向き直る。彼女の背中は決して大きくないが、小さくは見えない。
「本題に入りましょう。ここがセシリアの夢ならば、セシリアが知るうる限りの事件当日の状況がこれから発生するはずです。目的としてはこの屋敷のどこかにいるセシリアの精神を見つけ出して、覚醒を促せばいいのですが」
ワールドパージによる潜入を行う前に。4人はしばね…束から最低限の説明を受けていた。入った先がどういった夢なのかはわからないが、夢に囚われた精神体を覚醒させるのは一筋縄ではいかないと。
「……確認してみないとわからない。まずはセシリアさんに会わなきゃ」
「簪さんの言う通りだね。レイラはどこにいるかわかる?」
「当日のセシリアの動きは把握できていません。屋敷にいたことはわかっているのですが」
「とりあえず、中入ろうぜ」
どうあれ前に進むしか今はなく、一夏の言葉に全員が納得した。そもそも夢の中に入って夢の主人を起こすなど4人どころか人類でも初めての行為でどうすれば目覚めさせられるのか4人には皆目見当がついていない。
「七槻先生曰く、出会ってこの世界が夢であることを言えば起きるって言ってたけど」
「マコト、そんな簡単にいくと?」
「思ってないよ。じゃなかったら、レイラ一人でいかせたはずだよ」
束はレイラだけを送るのが本来は好ましいと考えていたが、彼女一人では危険だとマコトたちも同行させている。となればただ声をかけるだけで済むなど、マコトは思っていなかった。
4人は屋敷の敷地内に足を踏み入れる。特に何も起きはしない。前庭なので当然と言えば当然だが、レイラは「おかしい」と呟いた。
「何がおかしいの、レイラ」
「門を抜ければ警報の一つは鳴るはずです」
「……ここ夢だし…」
「セシリアが幼かった頃の記憶をベースに作っているとすればあり得なくはないですか」
この空間がブルー・ティアーズによって生み出されたことはわかっており、ベースとなっているのはセシリアの記憶である。幼い頃のセシリアの記憶では屋敷の形状などは覚えていても警備システムは記憶にない可能性が高い。
レイラは用心しつつも前に進んだ。
「屋敷は正面の本館と左右の分館に分かれています。セシリアの部屋があったのは左翼分館の三階です。まずはそこに行ってみましょう」
「おう。ついてくよ」
向かうべき場所をレイラが示し、4人は駆け出す。まずは最初の屋敷の入り口である大きな扉の前に立った。レイラは幼い頃の記憶のままに、ノックする。しかし、屋敷内から反応はない。
レイラはマコトと目を合わせる。
「……夢、となるとそもそも支離滅裂な空間になっている可能性もありそうです」
「小さい頃の記憶って結構今だと覚えてるようで覚えてないもんな」
「人間は完全に忘れることはない、思い出しにくくなる、というのが正確でしょうがそれでも摩耗はあるはずです」
「警戒していこう」
「えぇ」
レイラはマコトに頷いて、おもむろにスカートの付け根を触るといつもの長い丈のスカートがはらりと落ちて、中からミニスカートが出てきた。そして、太腿には拳銃がホルスターに収まっている。
「えぇ!?レイラ、それ銃!?」
「はい。セシリアの護衛も兼ねていますからね」
笑顔で言いながら、一夏の困惑を流しつつレイラは拳銃を抜く。オートマチックの銃で、よく使い込まれているのが目に見えた。レイラもまさか現実の装備品をそのまま持って来れているとは思っていなかった。
「…なんというか、すごい似合ってるね」
「ありがとうございます、簪さん」
戦う女子高生といった状態のレイラは簪から見ればロマンの塊だった。前世の経験もあり、レイラは軍人相当の生身での戦闘力もある。マコトも筋力などを除けば概ね同じだが、今のマコトは一般人でレイラのように携帯武器はない。
「先頭は私が行きます。後方はマコトにお願いしたいのですが」
「了解。銃、予備のとかはないよね…?」
「マコトは使えないでしょう?」
はっきりとレイラはそう言って扉を押し開ける。ロゴスや簪のことは明かしてもあくまでマコトは今世において一般人。対外的には拳銃は扱えない。
ギィ、と音を立てて扉が開く。刹那、反射的にレイラは伏せた。
「なっ…!?」
蒼い光条がレイラの頭があった場所を通り過ぎた。木製の扉はその光の余波で焦げる。今の光をこの場にいる4人は何度も見ていた。間違えることなどありえない。IS用の高出力ビーム粒子。
「ブルー!」
咄嗟にレイラは、夢の中にも関わらずダイヴトゥ・ブルーを身に纏った。マコトも黒騎士を呼び出す。一夏と簪もそれぞれ、白式と打鉄を呼び出した。玄関から後退すれば、直後に扉が弾け飛び、屋敷の中から“蒼”が飛び出してくる。
「セシリア……!?いや、誰だ!?」
一夏が現れた人物を見てそう言った。間違いなく容姿はセシリアだと4人は断言できた。しかし、腰まで伸びた髪は末端部から蒼のグラデーションがかかり、瞳の色も蒼から碧に変わっている。
なにより、纏うISが全くブルー・ティアーズとは似ても似つかない。
「ブルー・ティアーズ・ストライクガンナー?いいえ、違う。あの姿は一体」
レイラはブルー・ティアーズのオプション兵装“ストライクガンナー”の姿にそれが似ていると一瞬感じたが、違うとすぐに断定する。
ベースは僅かにブルー・ティアーズであるとわかるが、セシリアのような少女が纏うISはまるで機械仕掛けのドレスのように4人には見えていた。おそらくはビットが形成しているスカートアーマーが下半身を包み、脚部の装甲は通常のブルー・ティアーズよりもスマートになりがらもスラスターのベーンが覗く。
一対の非固定ユニットにはビットではなく固定式のウィングバインダーが搭載されており、まるで天使のようにさえ見える。
そして、手に持つのは”レヴァリエ“の面影を残す二挺のロング・ビーム・ライフル。
「我が友の姿を騙る…何者か」
レイラが“レヴァリエ”を向け、問いかける。対して相手は微笑むだけで、それ以上の反応を返さない。否、口を開き、ロックオンを4人に行う。
「我が主人の悪夢は私が払う」
警鐘が、マコトの中で鳴った。濃密な、殺気。この世界にきて、初めて向けられた純粋な殺意。敵意から来るものではない。もっと、もっと、わかりやすい感情からくるそれにマコトは誰よりも敏感だった。
「我が名はブルー・ティアーズ。主人と共に、この終わらぬ悪夢を相克するモノであれば」
スカートアーマー状のビットが射出される。その数は3、6、9、12と増えて全ての砲門が4人へと向けられた。その光景に、マコトとレイラは強烈なデジャヴを受けた。同時に、叫んだ。
「みんな!避けろッ!」
ブルー・ティアーズ・ステラドレス——本来であれば“まだ”顕れることのなかったブルー・ティアーズというIS…ではなくインフィニット・ストラトスとしての『
本当はちゃんと探索しようとしてたけど…別にいいよね!