IS -可能性の宇宙へ-   作:ババネロ

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これからも気ままに頑張りたいと思います。


#phase-34「星は陰ることなく」

 結果的に、タッグマッチの優勝者はさやかとティナになっていた。1年生の部A・Bブロックの第一試合に出場したマコトたち4組が全員棄権し、結果的に残った生徒たちの中で一番実力の高かったのがさやかとティナだった、というだけである。

「……どうしよこれ」

「どうしよ…」

 まさか自分たちが優勝するとは思っておらず、新聞部にフラッシュを焚かれながら二人はただただ呆然とすることになった。

 マコトと簪、コメット姉妹に関しては双方とても再試合や2回戦などできる状態ではなく、一応の勝者となったセシリアとレイラはブルー・ティアーズの不調によりこれ以上の戦闘はできなくなった。一夏は言わずもがな、シエラから念のため絶対安静とされていたのもあった。

 優勝候補たちの全滅により、来賓のIS関連企業や一夏の偵察を兼ねていたものたちは目にも留まらぬ戦闘機動を見せた一夏は男性操縦者という色眼鏡を外し、世界最強の再来の可能性があるという情報だけしか持ち帰ることができなかった。

 表向きのリザルトは尻すぼみな盛り上がりで何事もなく終わったが、裏は更識家含む学園の警備の完全敗北という形となる。オニールを襲った正体不明のシステムは束の解析に回されたものの、僅か1時間で意味がないと判断が下された。肝心のオニールのフリカアトラに何も残っていなかったのである。中身のデータは正常そのもので、本来発動するはずだった衛星リンクシステム“グローバル・システム”がしっかりとあった。

 ただし、“何かが”ISのコアネットワークを経由しフリカアトラをのっとったことが判明し、ISに対するウィルス事件という前代未聞の事態に束は頭を悩ませることになる。

 そうして、タッグマッチ当日の夕方。学園側が影で事後処理に奔走する中でマコトは保健室で眠る簪の横にずっと座っていた。

 シエラは現在席を外しており、ここにいるのは意識を失った簪とコメット姉妹の4人だけ。一夏はベッドが足りないため早々にシエラが彼の自室へ追い出してしまった。

「………簪さん」

 運び込まれた簪はシエラの“魔法”で即座に回復させられた。マコトには知らされることはなかったが、打撲による僅かな内蔵損傷が認められていた。ファニールも首を刈るような動きで蹴られたせいか打撲と首の骨にヒビが入っており、そちらもシエラにより治っている。

 よって二人は公的には“無傷“とされ、楯無が明日以降流布するカヴァーストーリーにより、マコトたちの戦いは”ただ熱くなっただけ“となっていく。

 それによって今後の4人の世間体が守られたとしても、当人たちの心まで保障はできない。

 一番ダメージの少ないマコトでさえも精神的なダメージは大きく、簪を危うく失うところであったこと、オニールを殺そうとしてしまったこと。落ち着いてからはひどく落ち込んだ。

 こんなときに彼女を励ましてくれるレイラはブルー・ティアーズの件で本国への対応に追われ、ここにはこれていない。

「ごめん…束姉さん、あたし……」

 大切な人の夢の導を殺しの道具として扱おうとした。それが何よりもマコトには辛かった。考えるたびに、あの無邪気な兎のような少女の笑顔が、汚されていく。純粋で、けれどもちょっと邪悪で、真っ直ぐな不思議な女性。素敵な夢だと、他ならぬマコトが認めたものを血で汚そうとしたなど、マコトは自身を許せなくなる。

「………あぁ…結局、あたしは変われないのかな」

 ——アスラン。迷い続け、もがき続け、最後まで答えが出せずに討った正義の担い手がマコトの中で思い返される。間違えたこともたくさん言われた。それでも、正しいことたくさん教えてもらえた。考えてみれば、始まりは全く同じ彼もきっと、変わろうと変えようと、必死だったのだろうとマコトは今更思ってしまう。

 手が震える。怒りに身を任せ、たくさんの命を奪ってきた。“こんなこと”しかできない。そんなふうに嘆いて、今世ではそうはなりたくなくて、平和な宇宙を飛びたいと、あの日出会った夢見る少女に誓ったはずなのに。

「…そんなこと、ないよ」

「っ!簪さん、気がついて…!?」

「さっきから。でも、マコトさんがそんな深刻な顔してるから」

 むくりと簪は起き上がった。何事もなかったかのように、儚げな笑顔をマコトに彼女は向けている。夕日のせいか余計にそれは強く感じられて、マコトは思わず簪に抱きついてしまった。

「うぇ…!?」

「よかった…よかったよぉ……」

「ま、まま、マコトさ」

「ごめん、あたし、あなたのこと、守れなくって」

「し、死んだわけでもないし、正直、オニールさんが突っ込んできた瞬間しか覚えてないから…」

 通常であれば腹部に鈍痛が残っていそうなものだが、シエラのおかげでそんなこともなく、PTSDの症状は出なかった。涙を流すマコトに、簪は徐々に冷静になる。好きな人とか、そんなことは今置いて、自分のために泣いて、自らを責めてしまう優しすぎる“ヒーロー”を優しく抱き返した。

「…さっき、変われないって、そう言ったよね」

「だって、あたし、簪さんの仇を取ろうとして、オニールさんを」

 ちらりと簪が横のベッドを見ればオニールたちは規則正しい呼吸をしており、顔色もよくただ眠っているだけなのがわかる。彼女たちは生きている。簪も生きている。だから、マコトは何も奪うことはなかった。

「大丈夫。マコトさんは、きっと、変われてる。だってあの夜、あなたは誰かを守れたでしょう?」

「あ——」

「今日だって、私も、この二人も、生きてる。だからマコトさんは、大丈夫だよ」

 背中に伝わる、簪の髪色とは真逆の暖かな感触が、包み込む想いがマコトの傷ついた心を癒していく。

「(どうして、簪さんは、あたしが欲しかった言葉を、たくさんくれるんだろう)」

 ここまで優しくしてくれる簪に、マコトはとうとう、一歩相手へと踏み込んだ。友人だから、というにはあまりにも優しすぎる。もっと、もっと、深い感情がないとこんなにもマコト自身の心が暖かくはならない。

 簪がマコトから離れる。すぐ目の前にある簪の表情をマコトはまじまじと見てしまう。

「マコトさん、その、見つめられると、はずかし」

「あ、ごめん」

 頬を赤らめる簪に、マコトは見惚れていた。謝りながらも目を離せない。

「マコトさん、み、みつめないで」

「そうなんだけど」

 ちょっとずつ、マコトの顔が簪に近づいていく。吸い寄せられるように。わけもわからず、マコトはそうしていた。迫ってくるマコトに、簪は逃げない。何をされるのか、なんとなく察してしまった。

 桜色の髪留めは夕陽に照らされて輝いて、それが眩しいからと簪は目を閉じた。マコトの吐息が唇へとかかる。

 その接触をしてしまえば、もう二人は引き返せない。マコトは一つの扉を開ける。

「(あたし、なんでこんな)」

 魅入られた。そのようにしか思えないのに、心地がいいマコトも目を閉じようとして——。

「あ、あ、あんたたち、なにしてんの!?」

 タイミング悪く、目を覚ましたファニールがそんな悲鳴を上げた。マコトと簪は「うひゃあっ!?」と一緒に声をあげて飛び上がって距離をとった。簪は悲鳴をあげながらもほんの少し恨めしげにファニールをチラ見した。

「(あと少しだったのに——!)」

「な、なによ、その目は…はぁ…目を覚まして話訊こうと思ったらこんな」

 ファニールは深くため息をつく。とりあえず試合に出ていた全員が無事だったことで、混乱することはなかったが、目を覚まして見たのが試合相手のイチャつきとなれば、彼女はたまったものではない。

「まぁ、いいわ。それで、試合はどうなったわけ?」

「え、えぇっと、私たちは全員棄権、かな」

「……でしょうね」

 座り直したマコトが答えれば、ファニールはだろうなという形で納得した。そうでなければこの4人がこんな場所で寝ているわけがないのだ。ファニールはそれがわかると、天井を見上げた。

「あーあ、そっか。負けちゃったか」

「負けたって…」

「飛鳥マコト、いい?結果として私たちは輝けなかった。その様子からして、あんたなんでしょ、オニールを止めてくれたの」

 正確には楯無だが、楯無がくる前まで止めていたのはマコトなので肯定する。

「やっぱり。……そのことには礼を言うわ。ありがとう、妹を助けてくれて」

 ファニールは素直に頭を下げる。マコトは思わず手を前にしてしまうが、彼女の真っ直ぐな謝意を受け取らないということはありえず、一度呼吸を整えてから、それを受けた。

「ううん。あたしも、必死だったから。それに、おあいこだから、いいよ」

「あおいこ?」

「そういうことにしてほしい、ってことでいいかな」

「…あんた、お人よしね。芸能界には向いてないわ」

「だろうね」

 くすくすとマコトとファニールは笑った。マコトはどこか鈴音のような素直で真っ直ぐな気質をファニールから感じ取って、本当は付き合いやすい子なのかもしれないと思った。2組からはファンとしての崇拝も向けられているかもしれないが、ティナからマコトのことを聞くなど、関係は良好そうだった。

「まぁ、ISの詳しいことはプロデューサーあたりから聞くとして……あたしが落とされたあと、何があったの?」

「それは——」

 マコトは正直に、ファニール撃墜後からのことを彼女に伝えた。オニールが暴走し、マコトが応戦したこと。楯無がどうにかあの暴走後の戦闘を“試合”として収めて混乱を起こさせなかったことなどを伝えた。

 聞いたファニールの反応は安堵、その一言に尽きた。

「よかった…ここの生徒会長、流石ね」

「うん。おかげで、タッグマッチ自体はつつなく終わって、あたしのクラスメイトが優勝したよ。あ、ペアのティナさんは2組だから、ここにいる3人のクラスは優勝だね」

「ティナが?やるじゃない、あの子」

 自分たちはダメだったが、結果的にクラスメイトが優勝したというのはほんのわずかにファニールの中に喜びが出る。簪は仲間外れにされたような気分になるが、そもそも4組で出場したのは簪だけで、相も変わらず「簪さんならきっと大丈夫だよ!」という心がこもっているのかよくわからない応援だけで送り出されていた。なので、もうこれはどうしようもないと思った。

「なんとか私たちのイメージは落ちなくて済むかな……あとで生徒会長にはお詫びにいかないと」

「…別にいいと思う」

「え?」

「お姉ちゃん、気にしてないと思うから」

「あぁ、そっか。妹だったね、そういえば」

 散々人のことを助けないくせに邪魔し続けてきた姉が、ようやく自分を、自分の好きな人を助けてくれたのだ。素直に称賛するのは少々憚られた。ファニールは簪と楯無の確執など知らないので妹である彼女が照れ隠しで言っているだけだろうと思った。

 マコトは苦笑いするばかりだ。

「さて、私は起きたいけど、いいの?」

「デュノア先生はダメだって」

「そっか」

 ファニールは以前もシエラの世話になったことがあり、ならしょうがないと思った。シエラの包容力は親のいないファニールにとって争い難いものがあった。

 ここでふと、マコトは気になったことがあったのでファニールに聞くことにした。

「あの、ファニールさん?」

「なに?」

「教えてくれたらでいいんだけど、どうして、そこまで負けたくないの?」

 ともすればその質問は失礼な、と切って捨てられてしまうものだったが、今のファニールは素直に答えることにした。

「あんたたちなら、いっか。オニールを救ってくれたお礼よ。私たちの負けられない理由と、夢、教えてあげる」

 そこから、ファニールは語った。小さな頃に見た伝説的アイドルに触発されて目指すようになったこと。そのアイドルが引退して、忘れ去った世間に彼女の輝きを思い出させるよう、アイドルになったことを。

「伝説的なアイドル?」

「言ったところでわからないでしょうから言わないわよ」

 簪がその伝説的なアイドルとは誰なのか気になったのだが、ファニールは言わない。世界中で痕跡が消えたのだ。今更その名前を言ったところで伝わらない。

「……えっと、なんだっけ、名前は聞いたことありそうなんだけど…」

「……へ?」

 そのはずなのに、マコトは何故か引っかかるような反応をする。ありえない、とファニールは思ったのだが、まさか、と思っていつも肌身離さず持っているロケットをいつの間にか着せられていた病衣の胸元を開いて取り出すと、それをあけてマコトに投げた。

「その人!その人が私たちの憧れたアイドルよ!」

「おっとっと……この人が、ファニールさんたちの憧れた………」

 ロケットの中にあった写真をマコトが見た瞬間、蘇ったのは——自らを絶望に叩き落とした自由の担い手——だった。

 栗毛色の髪、紫水晶のような瞳。マコトやレイラのように僅かに残る面影。

「キラ・ヤマト…!」

「お、おしい!その人の名前は戸山キララ、っていうの!8年前、忽然と姿を消してからみんな世界が忘れたみたいになって!」

「どういう、こと?」

 簪はどういうことがよくわからない。マコトはそもそも、写真の人物がどう見ても前世で殺したはずの相手で驚愕に襲われている。

「なんであんたは覚えてるの!?私たちにキララさんを教えてくれた孤児院のママも忘れたのに!」

「忘れるわけない。忘れるはずがない。この人は……」

 この人は、なんと言えばいいのだろう、とマコトは思った。

 好きだった人の仇?あたしが殺した人?どれも、それらはこの世界に持ち込んではいけないものだった。特に後者はこのタイミングで言えば最悪だった。ファニールは目を輝かせてマコトの言葉を待っている。彼女とてまだ12歳。憧れの人を知る人を見つけてしまえばこうもなってしまうだろう。

「えっと、この人は」

「この人は!?」

「興味のないあたしでも、知ってるぐらい有名だから!……かな?」

「なんで疑問形なの!?でも、よかった!私たち以外に覚えてる人いたんだ!よかったよ〜!」

 嬉し泣きしだすファニールに、マコトはそこまでのことなのかと思った。

 同時に疑問も浮かぶ。この写真を見せられて、確かにマコトの中には小さい頃に見た“アイドル キララ”を見たことがある記憶がある。ただ、まだその記憶はもやがかっていてすっきりとしない。

 それも、この写真を見せられるまで、なんとなく、としか思い出せなかった。

「(何かが、おかしい)」

 写真の中にいる、キラ・ヤマトと思しき少女からキラのことを除いたとしても明らかにアイドルとしては一度見れば忘れられないほどの可愛さだ。それをこんなまるで“いなかった”かのように忘れることなどありえるのだろうか。

 篠ノ之神社という超常の力場を知っている以上、何か、不条理な力がこのキララというアイドルを消したのではと考えてしまう。考えるが、今はもうどうすることもできない。彼女が姿を消したのは8年前なのだ。

「ありがと、返すね」

「ううん。えっと、飛鳥マコト、あんたのこと、マコトって呼んでも?」

「別にいいよ」

 あっさりと名前呼びを許したマコトに簪はちょっとやきもちを焼いて、マコトの制服の袖を掴んだ。マコトはよくわからないので、簪にそのままにさせる。

「じゃあマコト。明日、私たちの部屋に来なさい。私たちが持ってるキララさんのCD、きかせたげる」

「そこまで言ってもらえて嬉しいんだけど、明日ちょっと予定があって」

「予定?」

「友達がここの編入試験を受けるんだ。それで、午後、実技試験を観戦することになってて」

 以前から決まっていたシャルロットの編入試験は明日であり、マコトはそれをいつものメンバーで見にいくことになっていた。そのため、明日は他の予定を入れられずにいる。ファニールはそれならば仕方がないと「じゃあ明後日は」と聞く。

「明後日なら大丈夫だね。あ、よければ友達も連れてきていい?」

「……それはやめてちょうだい」

 ファニールとしてはいたずらに世界から抹消されたキララのことはあえて今は周囲に言おうとは思っていない。芸能界に触れて、大人のドロっとしたものを彼女は察していた。だから、迂闊に喋らないほうがいいと考えている。マコトは特例中の特例だった。

 マコトも、急に真剣な表情になったファニールに頷くしかない。

「………それと、そっちの更識さん」

「名前でいい」

「なら簪さん。あなたは今聞いたこと多言しないで。キララさんのことは特に」

「わかった」

 簪はこの奇妙な話に、何か大きなものが関わっていると考える。束や千冬の亡国機業との戦いもあったのだ。その消されたアイドルが本当に忘れ去られただけとは思えない。最悪の場合は姉やマコトを通して束に相談してもいいだろうと思った。

「じゃ、そういうことで。あと、単純にアイドルの私室に誘うっていうの、あんまりよくないから、絶対に言わないでよ、明後日のこと」

「うん、わかったよ」

 一先ず、オニールは目を覚ましていないが、4人の試合は完全にこれで終わったのだった。明日、明後日の約束がある以上、4人は残り少ない今日を無事に終えていくのだった。

 

 

 

——IS学園 留学生専用格納庫

「見かけない顔だが、貴官は?」

「レオニー・シューゲル技術中尉です。少佐」

 ラウラはタッグマッチの警備が終了後、その日の晩に格納庫で待ち合わせ予定だった人部と顔を合わせていた。事前に聞いていた人間とは違うが、確かにドイツの軍服に身を包んでいる女性士官だった。くすんだ銀髪に、赤い瞳。ラウラとは似ても似つかない容姿ではあるが、似たような色合いの女性というのは妙に気味が悪かった。まだ、あのセシリアの一件以降、クロエと関係を構築できていないせいもある。

「機体の輸送には私の部下たちがくる予定だったのだか、変わったのか?」

「はっ。こちらがその指示書になります」

「受け取ろう……確かに、司令部からのものだな」

 レオニーを名乗る女性士官から受け取った指令書は確かに本物であった。本来こちらに来るはずだったラウラの副官であり、彼女の“趣味”の師匠であるクラリッサ・ハルフォーフはレオニー・シューゲルにラウラの専用機輸送の任を代るように書かれている。

「それで、私のレーゲンは?」

 これぐらいのことは何もおかしくない、とラウラは思いながらレオニーに目的のものであるラウラの専用機のことを問えば、レオニーは手でこちらです、とラウラの視線をハンガーへと移動させる。

 そこには漆黒の、一目で兵器とわかるISがあった。シュヴァルツェア・レーゲン。ラウラの専用機として、ドイツで現在開発中の次期主力機を調整したものだ。

「B装備の上、件の機動力向上システムを装備しております。背部コンテナはスラスターユニットに換装、両腕部のプラズマブレードもナックル・ダガーユニットへ換装しています」

「近中距離装備だったか、Bは」

「はい」

 実験的な装備から実戦装備に変えるようにボヤいたことはちゃんと技術部に伝わっていたようだとラウラは機体の仕上がりに満足する。レオニーは「詳しいスペックはこちらに」とタブレットを渡す。ラウラはあとで確認すると告げて、レオニーに向き直った。

「中尉はこれからどうするのだ?」

「明日の便でこちらを発つことになっています」

「そうか。了解した。任務ご苦労だった。機体は確かに受領したと伝えてくれ」

「ハッ!」

 ラウラはレーゲンに触れ、機体を待機状態にして軍服のポケットにしまうとそのまま格納庫から出ていく。そこにレオニー・シューゲル……という名の女性の皮を被った“ナニ”かはただ一人残された。

「…えぇ、ご苦労様、“私の体の出来損ない”。今日の“実験”はうまくいった。だから、明日は完全になるはず。返してもらうよ、私の体」

 その言葉を奏でる声はおぞましいものであった。少女のような声にも、高慢な男性の声にも、無機質な機械のようにも聞こえる。その中には、シャルロットが聞いたものも混ざっていた。

「これは私の計画。“ネスト”のものではない。私のものになった計画」

 

「勝負をしよう、篠ノ之束。どちらが、人類の可能性なのかをね」

 




オニールのフォローはまた後日。

ようやく、本作の”敵”の一つを出すことができました。
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