IS -可能性の宇宙へ-   作:ババネロ

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#phase-42「単一の化身」

 ラウラが学園に復帰する朝。一週間ぶりにマコトたちは揃って朝食を取ることとなった。

「改めて、久しぶりだなみんな」

「久しぶり、つっても一週間とちょっとだけどな」

「まぁ、向こうでやることが多かったからな。体感ではどうも長く感じたよ」

 ラウラは一夏にそのように答える。表面上はドイツに帰国前のラウラとなんら変わりなく、マコトたちが聞いたドイツの惨状などまるで嘘のような姿だ。しかし、前世では軍人であるマコトやレイラはそれが空元気のようなものであると察した。

 もちろん、一夏や箒、シャルロットやセシリアに加えて、簪もそうなのだろうと思ったがドイツでのことは無理に聞かない。

「……聞かないのか?私が帰国したときのことを」

 だが、ラウラは気遣われていると思ったのかテーブルを囲む全員に問いかける。これに代表して答えたのは家族である一夏だった。

「千冬姉からどう言う状況だったのかは聞いてるよ。けど、あんなことが起きてるのを聞いて、今一番辛い思いをしてるラウラにまた聞けねぇよ」

「一夏…お前たちも、なのか?」

 マコトを含め全員が頷く。ラウラは「そうか」と静かに呟き、無理に聞いてこない一夏たちに感謝した。ラウラとて、何故原隊復帰ができないのか察している。ドイツ軍に戻るよりも、千冬といた方がラウラは安全だからだ。

 もしドイツで一人きりとなったときにユグドラシルにまた襲われようものなら目もあてられない。それがラウラには屈辱的ではあったが、同時に、そんな名目があったとしてもラウラに預けられたユグドラシル討伐の任務は完遂したいと思っている。同胞を容赦無く殺戮した化物を退治したい、と考えたいのは人として決しておかしくない考えだった。

「ありがとう。なら、その気持ちに甘えよう。話は変わるが、結局のところ、シャルロットは問題なかったのだな」

 ラウラは話題を切り替えるため、一度聞いてはいたがあえてもう一度シャルロットに編入試験のことを聞いた。シャルロットもラウラの意図に乗る。

「うん。おかげさまでね。詳しい点数は教えてもらえてないけど、山田先生いわく、8割はとれてたって」

「そうか。教えた甲斐があったものだ」

「本当に助かったよ」

 編入試験の結果はおおむね、十二分すぎる結果を残しており、シャルロットはラウラの教え方のおかげだと感謝していた。流されるままに生きてきてシャルロットにとって、人生で一番勉強して合格することができた試験は、終わったあとの喜びが強かった。

「まさか本当に一ヶ月で仕上げてしまわれるとは、驚きですわね」

「そうですね。セシリアは半年かかりましたからね、いい点数までくるのに」

「れ、レイラ!それは言わないでくださいまし!」

 さらりとレイラがセシリアのことをからかい、皆がくすりとする。実際のところ、セシリアは家業をしながらの試験勉強であり、致し方ない部分はあったが、一緒に勉強をしていたレイラは時折ISの一部理論が理解できず癇癪をおこしかけていたセシリアをよく覚えている。

「だいたい、レイラが出来すぎるのです!なぜあそこまでISの理論を簡単に飲み込めたのですか」

 セシリアに言われ、レイラは内心「うっ」と呻いた。うかつな発言であったと後悔しつつ、どう答えたものかと笑顔を浮かべたままレイラは考える。マコト同様前世のモビルスーツの知識やコズミック・イラの科学知識のおかげでレイラはすんなりとISのことが頭に入ってきたのだが、そんなことは明かせないため理由をでっちあげる必要がある。

 もちろん、その理由は簡単に出てくる。

「お母様がIS部隊の指揮官なのですから、おかしくはないでしょう?」

「…まぁ、確かに、レイラは士官学校に体験で入っていましたが」

「そういうことです」

 強引に丸め込まれるセシリアを周囲は見て、明らかに他に何か理由があるのだろうと察したが、やはりレイラの“元王族”という肩書きが追及を控えさせる。あまりこの肩書が好きではないレイラであったが、こういうときは便利だと思っていた。

「というより、それを言い出したらマコトもだいぶおかしいんじゃ」

 が、シャルロットによりこの話題はマコトに飛び火した。マコトは正真正銘一般人である。レイラと違い、束の関係者であることを伏せればISに触れる機会は学園にくるまでほぼない。

「だがシャルロット、こいつはあの姉の関係者だ。それで全て説明がつく」

「…それもそうだよねぇ」

 しかし、この面々には束の存在は共有されており、マコトの異常な戦闘能力も一応は説明がつく。簪はそんな面々の会話を聞きながら、本当は前世でロボットのパイロットであったことを知っているのは自身とレイラだけ、というところに少しだけ優越感を感じてしまう。

 まるで、スーパーヒーローと秘密を共有しているかのような気持ちだ。

「(けど……織斑くんとか篠ノ之さんのほうが明らかにおかしいと思うけど)」

 あの白騎士や天才の弟・妹だからといって超人の域にいる二人の方がおかしいと簪は思ってしまう。特に、最近は学園内の空気で忘れ去られているが一夏は世界で唯一の男性操縦者である。学園の外に出てしまえば女尊男卑は残っているし、世界で女性が優遇されていることも変わらない。

「(織斑くんは一体……)」

 彼は簪にとってはもう見慣れた身近な友人だ。同じ企業のISを使うパイロットでもあり、将来的には仕事仲間となる可能性だってある。だが、そういった見方を外して、彼自体の存在に目を向けてみれば織斑一夏とは不可思議なことだらけの存在だ。

 タッグマッチではセシリアを追い詰め、千冬と同等の動きをしてみせたという。それで体を痛めたとも言われたが、本当に、たった数ヶ月で素人が世界最強と同じ動きができるのだろうか。簪の頭のどこかが、違和感を感じ取って、一夏へ視線を注がせる。千冬とよく似た、けれども男性的になっている顔のパーツ。体格も身長は千冬よりも高いが、千冬も女性としては身長が高い。それはまるで、双子のようにさえ見える。

「(……まさか…いや、前例も、あるし)」

 ラウラとクロエ。漫画のような何かのクローンとして生み出された少女たちを簪は知ってしまっている。だから、考えてしまう。

 織斑千冬と織斑一夏は、どちらかのクローンではないかと。年齢的には一夏が千冬のクローンなのかもしれない。

「(ISを使えるのも、それが理由?)」

 妄想だと思いながらも、簪はその“真実”にたどり着く。たどり着きはしたが「馬鹿馬鹿しい」と切って捨てた。どうあれ、本人たちからはそんな様子も見て取れない。

「簪さん?」

「え、なに?」

「いや、急に考え出したから」

 マコトに声をかけられ、簪は思考の海から帰還する。簪は当然、考えていたことをそのまま言うわけにもいかず、どう誤魔化したものかと考え、今週末の予定をマコトに話すことにした。

「えっと、マコトさん、今週末のお買い物だけど、どこに行こうかなって」

「あぁ、そのことね」

 簪の発言に、マコト以外の全員の空気が僅かに固まった。レイラ以外の面々は気がつけばマコトと簪が花は違うとはいえ同じように髪留めをつけていることに、まさかもう仲が更に進展したのかと思ってしまう。

「ここから近いのだとレゾナンスになっちゃうけど、マコトさんはどこか別のところとかある?」

「倉持にそのあと行くなら、倉持の近くでもいいよ」

「……それなら、乗り換えの駅に複合施設があるところもあるから、そこでしようかな」

「了解。簪さんにお任せするね」

「任せて」

 これで付き合っていないというのは無理があるのでは?とシャルロットは思った。束のことも知っているレイラは胃がむずがゆくなるような奇妙な感覚になりつつも、マコトを見守ることしかできない。

「お買い物にいかれるということですが、お二人は何を買われるのですか?」

「そうだな。何をしに行くんだ」

 このまま聞き流さそう、といった空気だったはずが、セシリアとラウラが躊躇いなくマコトと簪にそう言った。特にセシリアも察しはいいはずなのだが、何故、とレイラは思わず隣にいる親友を見てしまう。

「…?レイラ、何か?」

「いいえ、何も」

 当然、その視線にセシリアは気が付くが、レイラはただ微笑むだけに止めた。

 二人に何を買いに行くのか聞かれた簪は特に嫌な顔をすることもなく「水着を買いに行く」と答えた。

「なるほど、今月末の校外学習ですわね」

 セシリアは合点がいったという様子であったが、ラウラは違ったようだった。

「買いに行く必要があるのか?学園指定の水着があるだろう」

「だな。遊びに行くわけではないのだ」

 学園指定の競泳水着があるとラウラは言い、箒もこれに便乗する。なんともこの二人らしい見解であったが、これに対し異を唱えたのは意外にも一夏であった。

「いや、箒、ラウラ。流石に自由時間もあるだろうし、いいんじゃないか?」

「機能性に優れた水着だと私は感じている。わざわざ新調しなくともいいと思うがな、一夏兄」

「ラウラに同意だ」

 一夏はこの二人の会話に苦笑いするしかない。まぁ、そこまで言うなら、と一夏はそれ以上のことは言わなかったが、ここでセシリアとシャルロットが信じられないといった顔で話に割り込んだ。

「ありえませんわ!煌く海、熱のこもった砂浜、そこで自らを輝かせる術を最初から放棄するなど、信じられませんわ!」

「…まぁ、道着のようなものか」

「ドウギというものはよくわかりませんが、たぶんそうですわね」

「急に雑になってない?私も思うけど、せっかくの海なんだからちゃんと水着は選んだほうがいいよ」

 着飾ることを大切にするセシリアは冷静さを失い、彼女らしくもなく勢いに任せた言葉を発し、シャルロットは持ち前のマイペースな空気を纏いながらラウラと箒に水着は選んだ方がいいと言う。

「よければ、私が二人の水着選び、手伝ってもいいし」

 シャルロットはそう言いながら、簪をチラリと見た。シャルロットは恋する乙女の味方であった。

 

「(これで自然と二人を巻き込むことなく、こっちは別に買い物に行けるはず)」

「(…これは、シャルロットさん、気遣ってくれてる?)」

 シャルロットの意図を察した簪はこっそりサムズアップし、シャルロットも同じくサムズアップを返す。もし、ここでマコトがいっそのことみんなで、と言おうものであれば混沌とした状況となっていたが、マコトと簪の外出の主目的は倉持技研への訪問で、買い物はそのついでのため、言い出すことはなかった。

 箒とラウラはシャルロットの提案を特に断る理由はないため、お互い僅かに顔を見合わせて頷いた。

「よかった。じゃあ、私がとびきり可愛いの選んであげるね」

「いや、可愛い…タイプのはラウラはともかく私は似合わないと思うぞ」

「私はともかくとはどういうことだ、箒」

「まぁまぁ。ちゃんと箒にも、ラウラにも似合うの選ぶよ。セシリアさんやレイラさんだって、きっと手伝ってくれると思うし」

 さらりとシャルロットに買い物に同行することを言われたセシリアは「も、もちろんですわ!」と胸を張った。レイラはシャルロットの提案の意図を察して、なるほど、と納得し首を縦に降った。

「セシリアほど強くは言わないですが、お二人は十二分に美しい容姿です。きっといい水着もあると思いますから、私も同伴しますよ」

「ありがと、レイラさん」

 二重の意味でお礼を言ったシャルロットはレイラにウィンクした。

「あと一夏も水着買いにいくでしょ?」

「いや、俺は別に元々持ってるのあるし」

「行こうね?」

「アッハイ」

 絶対に恋する二人を二人きりにしたいシャルロットは容赦無く一夏も誘い、週末のマコトと簪の買い物…デートは二人きりになることが確定した。

 

 

 

「それで?戻ってきて早々になんの用だ」

 放課後、一夏は帰国したばかりの千冬を使用されていないアリーナに呼び出していた。アリーナの周囲にはベンチなどが設置されており、千冬はそこに座り、一夏は彼女の前に立っている。足を組み一夏に相対する千冬は威圧的であり、教師半分、姉半分といった様子だ。

 一夏は無理に呼び出したことを理解しているため、すぐに本題に入ることにした。

「千冬姉が白騎士だったんだな」

「それがどうしたんだ」

「……どうにも」

 姉が世界を変えた白騎士そのものであったことを一夏は大して重要だとは考えていなかった。そもそも、亡国機業の話を聞いた時にそんな予感はあった。

「千冬姉が白騎士だったことはどうでもいいんだ」

 弟の言葉に千冬は僅かに眉根をピクリとさせる。白騎士であったことがどうでもいい。常人であれば、あり得ない言葉だが、一夏は常人ではなかった。

「俺が聞きたいのは…どうして、あんな“強い”んだ」

 一夏の瞳が千冬を、羨むように見る。ユグドラシルとの戦いで見せた千冬の動き。ブランクもあり僅かな被弾こそ許したが、その技量は一夏から見た千冬の中で最も優れていた。彼女が日本の国家代表として戦った時よりも剣筋は鋭く、動きに容赦がない、迷いがない。

 敵を斬って捨てる。剣士としての理に至っているかのように一夏はあのときの千冬が見えていた。それがわかって、無力感に苛まれた。

 白騎士がリバースシフトを迎えた際に一夏は保健室で束からこっそり説明を受けていた。白騎士と同じ性能を叩き出すが、まともな人間であれば体がついていかないという、白式・白夜叉形態。一夏の体は白騎士と同レベルの超加速によって、ISのG制御の限界値を超えたGを受けてズタズタにされた。

——束さん、どうすればそれに耐えられるんだ?

——無理だね。ちーちゃんレベルの超人じゃないと。

 束から告げられたのは無慈悲な言葉であるが、事実であった。だからこそ世の中のISは全てコアが自制リミッターを設けて搭乗者の体を守っている。それがない白騎士、白夜叉に乗ることは自殺行為に等しい。

「束さんは、あのタッグマッチのときの白式が白騎士並だったって言った。それで戦った俺の体は死人同然になった。なのになんで…千冬姉は平気なんだ」

 一夏の真剣な表情に千冬はどうしたものかと考えたが、彼女に腹芸はできない。かといって、そのまま彼女の“秘密”を明かすことは憚られた。千冬は弟に“絶望”してほしくなどなかった。

「鍛え方の問題だ。お前も私がどれだけ無茶な特訓をしていたか見ていただろう」

「いや見てたけど。というか、自覚あったのか」

「特訓をするにあたってただ無茶をするのではなく、トレーニング同様それがどんな効果を生み出すのか、といったことを意識しなくてはならないからな」

「流石にあんな無茶は無理だ。鉄塊背負いながらマラソンとか」

「だろうな。私も二度とやりたくはないよ」

 笑いながら千冬は言う。一夏はこの様子では明かす気はないな、と引き下がることにした。正直に言えば無理にでも聞き出したいが、一夏にはまだその覚悟がなかった。この歳になれば一夏も嫌でも両親が失踪したわけではなく“最初から存在していない”ことに気が付く。織斑家には一切の両親の痕跡がなかった。

 一夏は中学生の時に一度、自宅の土地が篠ノ之家所有の土地である以上は篠ノ之家に聞けばわかるだろうと、姉の目を盗み篠ノ之神社の現在の管理人である、束とそっくりな従姉妹の篠ノ之珠代に頼んで自宅の権利書などを見せてもらったことがある。得られたのは契約者が最初から千冬であったこと。

 織斑姉弟に両親など存在していない証左であった。

「一夏。強くなりたいか」

「あぁ」

 千冬からの問いに、一夏は迷いなく答える。元々、剣の修羅としての才覚は一夏に備わっていた。それが開花したのがあのタッグマッチでのことだ。千冬はもちろん、彼に“可能性”を見た。

「なら、あいつを屈服させろ」

「……誰を?」

「白騎士だ。あいつはまだ私を主人と見て、お前は私によく似た誰かだと考えている。だから色々と“雑”なんだ」

「ISってそんな人間っぽいのか」

「白騎士は別格だ。長いからな、稼働時間が。ともかく、あいつに認められれば多少は肉体への負担も軽減するように考えるはずだ。出力を可変させるのか、それともシステムを構築して受けるGを減らすかはわからんがな」

 他のISと違い、白騎士にとって千冬が人間のスタンダードであり、白騎士に一夏を理解させなければいつまでもタッグマッチの二の舞が続くと千冬は踏んだ。まるで振り向かない女性を振り向かせるためにアピールするようだな、と千冬は内心苦笑いした。

「方法は私もわからない。基本的にインフィニット・ストラトスは人間に従順だが、白騎士だけがそのように生意気なんだ。開発者に似たのかもな」

「束さんに似てるって言うとちょっと」

「フッ…そうだな、あんなやつはこの世で一人がちょうどいい。一夏、白騎士に自らを認知させるには乗り続けるしかない。私の総搭乗時間はだいたい丸々6年分だ。そこまでしてあそこまで限界に振り切った性能を出せた。お前がどれだけかかるかわからんが、諦めるなよ」

「ろ、6年って……半端じゃないな」

「剣と同じだ。いきなりは無理だ」

「……わかったよ」

「頑張れよ」

 丸め込まれた、と一夏は思ったが決して無駄な時間ではなかった。ラウラを襲ったユグドラシル、次に出会った時はかならずラウラを守ると一夏は心に決めていた。かつて、姉が親友たちを守ろうとしたときと同じように。

 

 

 

 IS学園の地下にある警備員控室——実質アキとスコールの家となっているそこで、スコールは一糸纏わぬ姿でベッドの上に寝転がりながら、ついさっき“古巣”から受けた連絡を聞いて困ったものだとため息をついた。

「オペレーション・ラビット・ハント…ねぇ。兎狩りだなんて、いつからアメリカは狼になったのかしら」

 アメリカ軍による偶発的な戦闘を装った事故で“篠ノ之博士”を誘拐又は暗殺する。そんな無茶な作戦が行われることにスコールは強い疑問を持つ。そこまで、祖国は馬鹿なことをするだろうかと。やるにしても、もっと盛大な形でやるだろう。大量破壊兵器を所持しているとでっち上げぐらいに。

「……これまでも、フランス、ドイツ、とユグドラシルの手が入ってバカなことをしている。ということはアメリカも同じね。傀儡がいる」

 学園に現れたユグドラシルの物言いはスコールにも届いていた。過去に護衛を行なっていた際とは比較にならないほど感情があり思考をしている。人間を見下している化け物。だからこそ、人を人形にして遊んでいるのだろうか。

 だとすればそれはあまりにも…稚拙だ。

「人間はオモチャにするには中途半端すぎるのよ。オモチャにするならそれこそ、心を壊さないと。そうしないのであれば……ユグドラシル、まだあなたは化け物というには少々、物足りないわね」

 かつて、二人の化け物と戦ったスコールは心底、ユグドラシルという世間知らずの赤子がどこまで行くのか見ものであった。

「けれど、ただ見ているだけじゃあ、主治医さんに怒られちゃうし……オータムには少し骨を折ってもらおうかしら」

 更識は学園内の警備を請け負っている。だが、IS学園の警備員たちはIS学園の教員・生徒がいればそこは職場となる。

「私たちを傭兵会社から引き抜いて、散々めちゃくちゃにこき使って、最後はみんな使い潰してくれて……なぜ私たちがモノクローム・アバター(単一の化身)と呼ばれていたのか理解もせずに……ユグドラシルとの戦いはあなたたちだけのものじゃないのよ、博士」

 魔女は妖艶にも嗤いながら復讐の焔に釜をかける。ユグドラシルは知らぬ間に、自らがその焔を支える薪となっていた。

 




次回ぐらいからお話動かしたいですね
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