IS -可能性の宇宙へ-   作:ババネロ

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#phase-43「リビングデッド・マザー(前編)」

 ——旧東京湾、人工島「バビロン」。高度成長期より日本内、東京の人口増加に合わせて作られた埋立地である。現在、日本のIS産業はこの島に集中しており、最もバビロン島内で大きい企業が、かの“世界最強”のISを作成した株式会社倉持先端技術研究所…通称“倉持技研”と呼ばれるIS開発・研究企業だ。

 彼らによって生み出された第一世代IS“春風”を初めとした近接戦闘を主眼に置いた扱いやすい機体群は日本以外でも採用されており、その技術力の高さはISを生み出した国として恥じないものである。

 だが、それでもソフトウェアの開発は不得意であり、現在の主力機“打鉄”のマイナーチェンジ機、“打鉄二式”の開発は難航していた。テストパイロットである更識簪による不完全な状態での運用で、要求性能を全く満たせていないことが判明したことで、倉持技研は打鉄をベースとすることでは限界があると判明し、結果的に完成した打鉄二式は形状こそ打鉄に寄ってはいるが、もはや中身は全くの別物の機体となってしまった。

 しかし、完成したことには変わりなく、倉持技研は簪に完成通知と、組み上げ予定の二号機のテストパイロット候補として飛鳥マコトをスカウトしようと考えていた。情報は漏れるものであり、倉持技研の上層部にはマコトが打鉄で暴走したサイレント・ゼフィルスや、直接タッグマッチで見られてしまった打鉄による暴走フリカアトラとの戦闘を行なったが知られている。

「……本当に、すごい子ね」

 そんな内部情報を“更識楯無”は倉持技研の内部にある取締役室で知ることができた。今の“更識楯無“の顔は彼女本人のものではなく、本来はこの倉持技研取締役の一人である女性のものになっていた。

「それにしても、十年経ってここまでセキュリティが杜撰になってるなんて。更識も力が落ちているわね」

 まぁ、落ちた原因を作ったのは自分だが、と“更識楯無”は苦笑いする。もともと、倉持技研とは個人的な付き合いがあり、“更識楯無”は潜入も容易であった。この取締役執務室の中に散らばっている“サイコロステーキ”はそんな“更識楯無”によって用意されてしまったものである。

「ごめんなさいね、倉持さん。私、雇い主が違うのよ」

 奪い取った顔の主に“更識楯無”はそのように謝罪するが、相手に聞こえるはずもない。悲鳴をあげることもなく、“更識楯無”の得意とする技で彼女は切り刻まれてしまった。

「さて。簪ちゃんが来るまでは時間があるし……どうしたものかしら。コレの片付けもそうだし、逃走手段は……簪ちゃんには悪いけど、これを使いましょうか」

 この“更識楯無”はもはや更識の頭領ではなく、蜘蛛のように忍び込み気がつかれずに目的を達成するようなことはしない。今の彼女は“化け物”が雇い主のただの犯罪者であり、強引な手をあえて選んでいる。それはユグドラシルが心までは操れていない証左であり、逆らえない“更識楯無”のささやかな抵抗であった。

「飛鳥マコトさん、かぁ。とっても真っ直ぐな人なんでしょうね。すごい良い目をしてる」

 娘の友人に“更識楯無”は好印象を受ける。ユグドラシルよりインプットされている情報からも、まさに正義のヒーローそのもので、いずれ彼女に滅ぼされるのも悪くない、と思える。

「だけど、今はそんな彼女を攫って、ユグちゃんに献上しなくちゃいけないわけだ」

 簪に恨まれるだろうか、と“更識楯無”は考え、むしろその方がいいとさえ思える。死人に引っ張られるよりは遥かにマシだ。

「刀奈ちゃんはコレ見れば気が付くだろうし……娘たちの成長、じっくり見させてもらいましょうかしら」

 “更識楯無”にできることはせいぜい、全力で娘たちを殺しにかかり、返り討ちに合うことだ。幸いなことに、IS戦となれば娘たちに分がある。簡単にやられるつもりはないが、いずれ滅ぼされることは間違い無い。

「待ってるわよ、簪ちゃん、飛鳥マコトさん」

 

 

 

 約束の週末。マコトは簪との買い物及び倉持技研への訪問のため、珍しく妹のマユに選んでもらった洋服を着ていた。グレーのフレアスカートに黒のノースリーブのトップス。マユからは「お姉ちゃん落ち着いてるし、こういうので良いと思うよ!」と勧められて買った服であったが、着る機会がなかなかないため、久しぶりに袖を通した形だ。

 梅雨も明け本格的な夏がくる直前のため、まだこの服で大丈夫だろうという気温で、マコトは肩掛けの小さな鞄を持って外に出る。簪は先に校門の前に行き「待ち合わせ」をしている。まるでデートみたいだな、とマコトは思った。彼女は考えてみれば前世でまともなデートをしたことがなかった。

「……デート、かぁ」

 マコトはしっかりと簪を意識し始めていた。女性同士、というのは特に気にする気はおきなかった。マコトにとっては相手がどうあれ、好き、という気持ちが大事だと考えているからだ。

「(けど、あたし)」

 簪への好き、という気持ちにマコトはまだ曖昧だった。愛したいから好きなのか、親愛として好きなのか。それとも、誰かと重ねて好きなのか、そして、簪のことを考えると同時にマコトは束の姿も浮かぶ。エキセントリックだが、いつまでも子供のような姿はマコトには魅力的に見える。だが、その束への気持ちも、なんなのかがわからない。

「………わかんなく、なっちゃったのかなぁ」

 誰かを愛する、という気持ちが前世でわからなくなってしまったのか、そんな気がマコトにはした。ルナマリアへの愛は嘘ではなかった。シン・アスカはただ傷を舐め合うために、彼女を愛したはずではなかった。そのときの想いは、今の飛鳥マコトにはまるで他人事のようだった。

「(あぁいや、実際、他人、だよね)」

 もはや遠い、宇宙での物語。今はもう、この世界に根を下ろしたマコトにとって、シン・アスカは間違いなくお別れをした自身なのだ。過去にはもう戻れない。だから、過去に囚われず前に進まなくてはいけない。

「(なのに、あたしはまだ、戸山キララと)」

 運命はマコトにある意味味方をしている。過去と決着をつけて、前に進めと、そう言われている気がした。ただ、決着をつけるとは言っても、過去のように剣を手にするわけではなく、マコトは知りたいと思っている。誤解なく、キラ・ヤマトのことをマコトは知りたかった。

「(いずれ、きっと彼女とは会える。だから、今はもう、こんなことを考えるのはやめよう。簪さんが待ってるから)」

 彼女がくれた髪飾りにマコトは触れる。暖かさを感じるこの桜の髪飾りにマコトは想いがこめられていることがわかる。それがなんなのかはわからなくとも、きっと素晴らしいものだとマコトは思う。

「よし、行こう」

 マコトは簪が待つ校門に向かうために、部屋のドアを開け、歩み始めた。

 

 

 

 校門、といってもマコトが向かったのは裏門だ。どういうわけか簪がそこで待ち合わせと指定したためである。マコトは休日の人気のあまりない校内を通り、誰にも会うことなく裏門のある倉庫エリアまでやってくる。午前中、陽のある時間帯とはいえ倉庫エリアは変わらず暗かった。

「…裏門は」

「このまままっすぐだなぁ」

「うわっ」

 いきなりマコトは声を背後からかけられる。慌ててマコトは戦闘態勢になって構えながら振り向けば、そこにいたのは警備服姿のアキとスコールであった。アキはニヤリと明らかに堅気ではない表情をしており、スコールはくすくすと笑っている。

「おうおう、生身でも良い反応してんな。本当にただの民間人なのか?それで」

「無理のある話ねぇ」

 マコトは以前、アキとは会話をしたことがあったが、その時に見た彼女の雰囲気から警備員というには穏やかでは無い気質に、今回の印象で間違い無く彼女はただの警備員ではないと察する。

「……警備員、なんですか?本当に」

「そんな構えんなって。味方だよ、あたしたちは」

「えぇ、それも、篠ノ之博士子飼いの戦力、って言ってもいいかもね」

「あなたたちが、束姉さんの…?」

 構えは解くも警戒は解かずにマコトは言う。アキはそんなマコトに「明らかに軍人だよなぁ」と内心思いながらも、それは指摘しない。傭兵の矜恃であった。

「そうさ。もう聞いてるんだろ、亡国機業のこと」

「…はい」

「あたしらは元、その亡国機業に雇われてた傭兵だよ」

「どうしてそんな人たちがここに」

「うーん、単純に死にぞこなったのよね。それで、戻るとこもなくなったし、行くあてを無くしたからここに就職したのよ」

 スコールからもっともらしい——実際に事実であるが——理由を語られ、マコトは訝しむ。アキは明らかに戦闘狂の類だと一眼でわかったが、マコトはスコールから政治家と似たような策謀に長けた印象を受ける。政治将校とでも言うべきか。

 マコトからの視線を受けて、スコールはさすが束が自らインフィニット・ストラトスを与えるだけあると感じる。

「それで、なんの用ですか?」

「別に?ただ呼び止めただけさ」

「可愛らしい格好をして、裏門で待っている子とデートかしら?」

 スコールは笑みを浮かべながら言うと、マコトが露骨に敵対心を剥き出しにする。スコールは的確にマコトのことを“刺激”する。これまでの戦いをスコールもその立場上確認しているため、マコトが“守ろう”とする気持ちが強いことを知っていた。

「おいおい、そんな気ィ張るなよ。あたしら警備員だぜ?裏門に生徒が待ってるなんて珍しい状況なら目にもつく」

「元亡国機業、って言われて簡単に信用できますか?」

「その前に、あたしらは“傭兵”だ。金さえありゃ、あたしらは誰の味方にもつく。依頼主の依頼は絶対だ。それがあたしらの信念ってな。だから、あの嬢ちゃんには手出しなんかしねぇよ」

「そうよ、飛鳥さん?…軍人も、そうでしょ」

 スコールの瞳がマコトを射抜く。ゾクッとマコトは心を鷲掴みにされるような気配を感じ、スコールの瞳の中に炎が揺らめいたのを幻視する。恐ろしく美しいスコールに、マコトは策謀に長けた印象に加えて、闘争も好んでいるかのように思えた。

 何より、マコトに軍人もと、軍の決定には絶対という同意を向けてきた。どこまで彼女たちは知っているんだとマコトは考える。束はマコトが別世界の住人だとバラすことはないので、ただの推測か。

「あたしは民間人です」

「あら、そうね。ふふ、今のは聞かなかったことにして頂戴」

 冷や汗が出る。カマをかけられていた。

「あぁ、そうだ。悪いな引き止めて、時間大丈夫か」

「大丈夫です。じゃあ、これで」

「えぇ、楽しいデートを」

 マコトはそのまま踵を返して去っていく。それにスコールは笑顔で手を振るが、アキはその姿に微妙な顔をした。

「あら、オータム。そんな顔をしてどうしたの」

「まるでこれから“地獄に落ちるぞ”って感じがしたぞ。悪役っぽいっていうか」

「そんな気はないけど、ダメねぇ。悪い側で働きすぎた影響かしら」

「かもな」

「言うじゃない」

「言うさ。それが、好きってことさ」

「………言うじゃない」

 甘酸っぱい恋をする若人をからかったつもりのスコールであったが、今の自身も恋をし続けているのだと思うのだった。

「それはともかくとして、オータム、仕事よ」

「お転婆なウサギにも困ったもんだな。わかってるよ」

 

 

 

 スコールたちと別れたマコトは簪が待つ裏門へとようやく到達した。そこにいたのは夏に合わせた白のワンピースに髪色のジャケットを合わせた簪だった。いつものマコトと同じ気を遣わない服装ではなく、他所行きの格好で、簪の顔立ちの良さを際立たせるナチュラル系メイクがマコトの瞳に映り込む。

「………」

 魅力的な少女にマコトは目を奪われる。

「あ…マコト、さん?」

「か、簪さん、ごめん、待った?」

「ううん。そんなに」

 お約束のようなやりとりに、簪は微笑んでマコトは慣れているはずなのに逆にドギマギとする。マコトはそれでも簪に歩み寄って、横に並ぶ。柑橘系の甘い香水の匂いが届く。決して強くは無い、けれどもほのかに漂うものだ。

「簪さん、香水なんて使うんだね」

「……うん。これ、お母さんが大事な時に使うといいって、言ってたの」

「へぇ」

 簪の母親、つまりは更識姉妹の母親の話が初めて出てきて、マコトはどんな人なのだろうと想像する。楯無のように活発な人なのか、それとも簪のように穏やかなのか。もしくはその中間か。真逆の性質を持つ姉妹から、その人物像を言い当てるのは難しい。

 ただ、ここでマコトは簪に彼女の母親のことを詳しく聞く気がおきない。今の今まで、簪が語らない、ということはそれだけ、何かがきっとあるとマコトは思ってしまう。

「あたしは香水って使わないからよくわからないけど、なんか良い匂いだね」

「ありがとう。私もこの匂い、好きなんだ」

 無邪気な笑みはまるで自慢の母親を褒められたような印象で、マコトは見惚れてしまう。魅力的なこの少女と、これから二人きり。マコトは改めてそう意識すると、顔がどんどん暑くなってくる。

「っ…い、行こう、簪さん」

「…?うん、いこっか」

 顔を見ていられず、マコトは思わず前に出て歩み出す。簪はマコトの態度がどういうことなのか首を傾げながらも彼女に続いた。

 裏門から程遠く無いところに本州と繋がるモノレールの“IS学園南駅”がある。本数は休日に限り増えるため、マコトたちが改札を抜け、ちょうどホームに入ったところで車両が入ってきた。

 タイミングがいいね、と二人は笑みを交わしながらモノレールに乗り込んだ。車内には正門側の駅で乗り込んだ生徒たちもそこそこ乗り込んでおり、マコトたちもその中に溶け込む…には少々、気合の入った服装で、周囲の座席の生徒たちは簪とマコトの空気から全員が内心「なるほどな」といった表情になっていた。——ただ、一人を除いて。

「(うぐぐ…歳の差?歳の差なの!?)」

 自慢の欺瞞装置を巧みに利用し、ちょっと発育が良すぎる生徒に変装した束は明らかにカップルな二人に呻いていた。束は恥も外聞も捨てて二人をなんと尾行しているのである。なぜ二人が出かけるのかを知っているのかといえば、それはつい先日、ひっそりと行われた簪の青騎士稼働試験で束がマコトから聞いたからだ。

 シャルロットの気遣いは残念ながら、束の存在によって無に帰した。

「(いやまぁ、簪ちゃんも実際可愛いし)」

 ライバルといえど、気合の入った簪を見て束は素直に可愛らしいと思った。元々、容姿は代表候補生に選ばれるほどのものなので、悪いわけがないが。

「(とにかく……見守ろう)」

 ここで二人のデートに乱入して終わらせるのは束のプライドが許さない。それをすれば即ち、束自身が負けを認めているようなもので、束のこの尾行の真の目的はマコトをより束に惚れさせるにはどうすればいいか、というものである。好きもの同士、似てしまったのか束へのマコトの好感度は簪とは別ベクトルで相当に高いのだが、束はその想いに気がついていない。

「最初は“バビロン”に着いたらそこで水着を買うんだよね」

「うん。マコトさんは、どういう水着が好き?」

「あたし?うーん、動きやすいのがいいかな」

「……いや、うん、そうなんだ」

 簪が「そうじゃない」といった面持ちになり、束も「いやそうじゃない!」と内心思った。マコトのなんともいえない察しの悪さというのは奇跡的なレベルだと束は思った。一夏のラキスケ体質や朴念仁さに劣らないものだと束はマコトに改めてそんな印象を持った。

「(これ、かなりの強敵では?)」

 いくらマコトが今世の女性相手でも“恋愛対象になりえる”という自覚を得たところで、マコトの本質が変わるわけではないので、髪留めをプレゼントしても、肝心の領域に達することができないのだ。

「簪さんはちなみに、どんなの着るの?」

「…えっと、実を言うと、ちゃんとした水着買うの…初めてで」

「えっ、そうなんだ。それなら、一緒に選ぼうよ」

「うんっ」

 いいリカバリーであった。束もなぜかホッとした。話を聞きながら、束もそういえば校外学習に出るように学園側から要請があったことを思い出し、水着を新調しようかと考えた。クロエを海に連れて行きたいという気持ちもある。

「(なんか罠っぽいけど、どうせ潰しちゃえばおしまいだし、いっか。くーちゃんの水着も用意してあげよ)」

 クロエのスリーサイズはクロエ自身の体のこともあり束はしっかりと把握している。なので、本人がいなくとも水着のサイズはぴったりのものを用意できる自信がある。

「(せっかくだから黒系のにして、デザインはフリルついたのとかいいかなぁ。いやもうISスーツ素材で自作したほうが——)」

 愛娘のことを考え出したせいで束はさっそく当初の目的が忘却されかけたが、気がつけばあっという間に十数駅を過ぎ、二人が目的の乗り換えの駅で降りようとしていたことに気がついたので慌てて下車した。

 マコトと簪に付かず離れずの距離を歩く。歩きながらさりげなく束は普段は滅多にやらない、篠ノ之流剣術の気配を消す歩法を使う。千冬と箒の実力が高すぎるが、超人である束も十二分に剣士としては力を持つ。これぐらいは朝飯前であった。

「(流石のまーちゃんも気がつかないようだね。簪ちゃんは一応暗部の人だけど、気がついてないのかな?)」

 マコトは仕方がないにしても、こういったものに敏感そうな簪が反応しないことに束は不思議がる。

「(……博士かな)」

 が、簪は反応を返さないだけでモノレールの時から感じていた視線に気がついていた。そもそも束が隠密行動に慣れていないこともあり、気がつけていたのだが、簪もそこまで詳細にわかるほど慣れていないので、ただ知っている気配だ、という程度の感覚だった。

「それにしても、IS学園もそうだけど、こんなに人工島ってあるんだね」

「え?そうだね」

 唐突にマコトがそんなことを言い出し、簪は相槌をうつ。人工島が太平洋側にそこそこあることはマコトにとっては新鮮だった。だが、その理由をマコトは知らない。簪はマコトの世界ではこうではなかったのかと思い、人工島が多くなった理由を述べた。

「…人工島が多いのは、今は落ち着いたけど昔は人口増加の影響で本州に土地が足りなくなる、そんなことを言われて、たくさん作ったみたい」

「環境団体とか反発しなかったのかな」

「学園にも、たまにきてるよね」

「そういえば生徒手帳にもそういう団体がくるからって書いてあったね」

 これからマコトたちが向かうバビロン島も自然破壊だと——実際のところ本当に自然破壊にしか過ぎず根強い反対運動があったが、そこは海の上。陸上ほど強引な反対運動はされなかった。マコトは少し複雑な気持ちになるも、自身はその当事者でもなんでもなく、何か思うことはない。

「そういえばIS関連の施設って本州にはあんまりないって授業で言ってたね」

「…ビーム兵器とか使うから、本州には置かないようにされてるみたい」

「なるほどね」

 マコトはバビロン島にあるという倉持技研やその他のIS企業が洋上にあることの理由に納得した。市街地でのビーム兵器はただ対象を貫くだけでなく火災も発生させる。なにより、実弾と違い、なかなか止まらないため被害が拡大しやすい。ビームが拡散してしまった場合は目も当てられない。

 ある種の隔離、マコトはそう思った。

「(そんな島が“バビロン”ってなんか皮肉だなぁ)」

 栄華を誇ったとされる古代都市の名前を持つにしてはまるで何かを閉じ込めているようにもマコトは感じた。

 その感覚が正しいものであることは今はまだ、マコトも気がつかなかった。

 

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