異世界短編集   作:風呂

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短編集とか言って、一話だけ書いて放置してた奴がこの辺にいるらしいっすよ。


ある日の鍛冶師と二人の客

「これ幾ら?」

 朝飯を食うには遅く、昼飯を食うにも早い、中途半端な時間帯。

 次に取り掛かる武器の構想を練っていると、女の冒険者が話しかけてきた。

 彼女の手にあるのはモンスターの解体に便利な作業用ナイフだ。

「……800だな」

「へえ、値段の割には中々良いね。じゃあこれと手入れ用の油貰える?」

「あいよ。……嬢ちゃん、見ない顔だな?」

 初めて見る顔だ。だが纏っている覇気がそんじょそこらの連中と違う。

 大物になる予感をさせる良い雰囲気、一度見たら忘れる筈がない。 

「うん、この街には昨日来たばかりでさ。暫くはここを拠点に活動しようかなって」

「そうかい。なら油の方は負けといてやるよ。代わりに今後ともご贔屓にってな」

「ありがと。あ、そうだ、この辺でお勧めの酒場ってある?」

「ん? それなら東の通りの真ん中くらいにある一番デカい所が良い。酒も飯も美味いぞ。北側の並びも美味いが所謂高級店って奴でな。かたっ苦しくていけねえ」

「成程、気兼ねなくいっぱい食べられる所がいいから大きい方かな。夜になったら行ってみるわ」

 それじゃ、と大槌を背負った冒険者が店を後にした。

 ……たまには丁稚に任せず、店番もしてみるもんだな。良いもんが見れた。

 我が偉大なる種族であるドワーフは、エルフ等と同じくその発生から神霊存在と深く関わりがあると言われている。

 その所為か、生来の特性として生物の生命力、オーラの様なものを感じ取ることができる。

 また、魔術具や長い年月を経て神秘が宿った物品にも感じるので、表面的な魔力等ではなく、存在力、概念的な強さを感じているのではないかと学者は言うが、詳しいことは知らん。

 そういった意味では先程の嬢ちゃんはかなりの上玉だった。放っといてもすぐに大物になるタイプである。

 ともあれ将来のお得意様候補だ。贔屓にしても悪くないだろう。

 それに背中に背負っていた大鎚。あれ程の存在感を放つモノは初めて見た。

 悔しいがあんなものを作ることは今の俺には出来ない。作れるとしたら神匠レベルの鍛冶師か、それこそ神や精霊が造るという神霊武装の類……、

「まさかな」

 頭を振って考えを打ち消す。

 ……仮にそうだとしてもまた嬢ちゃんが来たときに見せてもらえれりゃいい。最近鍛冶そのものに行き詰まりしている感じがしてたし、良い刺激なりゃいいんだが。

 つらつらそんなふうに考えていると、新たに客が入ってきた。

 男だ。

 革製の、しかし要所要所に金属板を当てて強度を増している全身鎧。

 更にはフルフェイスの兜までしていて、その表情を直接読み取ることはできない。

 しかしそのどれもが傷だらけで補修の跡があり、光沢を失くして古ぼけた印象を与える。

 顔見知り(?)でもなければ不審者として衛兵に突き出されてもおかしくない外見である。

 この男が纏うオーラも先程の嬢ちゃんと、いや、他のそこそこ実力がある客と比べても微々たるものだった。

「お前さんか。今日も剣のメンテか?」

 そう尋ねると男は頭を横に振る。そして無言で鞘ごと剣を取り出してカウンターの上に置いた。

「こいつはまた見事にいったな」

 剣を受け取り鞘から引き抜くと、肉厚な刀身を覗かせるが、それが途中から無くなっていた。

 一応、折れた剣先も回収されており、それもカウンターの上に出してから折れた刀身を検分する。

「……はん、無茶な使い方はしているようだが、雑には扱ってないみてえだな。力の入り方が綺麗だったお陰か、抜け方も真っ直ぐだ。力が分散しなかったから破片もあまり飛び散ってない、か」

 二つに分かれた刀身を合わせると、合わせ目以外にほぼ欠けがない。かかった力の大きさ、鋭さ、速度、そのどれもが高いレベルで加えられなければこうはならない。

「何とやりやった?」

 男は事前にそう質問されることを察していたのだろう。背嚢から依頼書の写しを取り出した。

「あぁん? おめえまたこんな無茶しやがったのか。自殺志願者に作ってやるモンなんてねぇっていつも言ってるよな? あぁ?」

 依頼書にあったのは、普通なら五、六人の一パーティフルメンバーで挑むような相手の討伐依頼だった。

 それを目の前の野郎は、たった独りで成し遂げた。成し遂げてしまったのだ。

「すま……、ない」

 ふと、小さく掠れ罅割れていて、絞り出すように発せられた声が耳に届いた。

 それは目の前に立つ男から発せられた言葉だった。

「ちっ、仕方ねえ。ほれ、他にも出すもん出しやがれ。金さえ出しゃ完璧に整備してやらぁよ」

「あ、あ……り」

「良い、無理に喋んな。おら、出すもん出したらさっさと出ていきな。そろそろ丁稚も帰ってくる。作業の邪魔だ」

 そして半ば追い出すように男を出て行かせた。

 足音が遠退いたのを確認してからふぅ、と一息つく。

 あの男とはそこそこ長い付き合いだ。

 奴の現状は仕事を通してだけの関係とはいえ、所作や周りの声からなんとなくは察することが出きる。

 同情の気持ちはないではないが、俺がどうこう出来る事でもないし、するべきことでもない。向こうも切った張ったの商売だ。色々覚悟も決めていることだろう。

 今日来た印象に残る二人の客。

 片や才気溢れる若者。片や傷だらけの(つわもの)

 どちらも気になる存在ではあるが、自分に出来ることは鉄を鍛えることだけなのだから、それをもって二人に応えるしかないのである。

 

 

 後に、二人がコンビを組んだと聞いて、ひっくり返るのは別の話である。




二人目のメインのイメージソースは勿論、ゴブリンをスレイする人。
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