それではどうぞ!
リヴェリアに凄く怒られてから、早数日。
リューは結構隠密行動が得意なのか、あれからバレずにダンジョンに入れているようだ。自分の眷属ながらどうやって入ってるんだろう? とたまに疑問に思う。何か聞いちゃいけないような気がするけど。だってこう言っちゃなんだがアイツみたいな幼女をギルドが見逃すはず無い。まぁ今は昔と違ってどんな奴でもダンジョンに入ってはいるけれど。それでもアドバイザーが存在する理由がないからなぁ。……どうやってるんだろう?
さて、いつまでも不思議に思っても自分ではどうやっても答えは出ないのでネメシスはバイト先を探す事にした。
眷属のおかげでまだ余裕があるが、いつか絶対ギルドから面倒ごとを押し付けられるようになる。ミッションというものだ。だから、お金に余裕があって困る事は無い。それにまだ零細だから情報収集系統の任務はあまり向かない。ヘルメス辺りが得意そうだ。それでは何が与えられるかといったら多分ダンジョン探索の任務だ。正直面倒だから、このままレベル1のままで登録しとこうかなぁとも思ったが、それをするとほかの冒険者から怪しまれる。特にダンジョンの奥に進むなら、それは面倒にしかならない。かといってもうレベル3程度の実力だと馬鹿正直に報告することもしないけど。
「さぁ、私でもできるバイト先を探すぞぉ」
と言っても何個は目星はつけてある。事前にシャクティに忙しい合間を縫って聞いた。
「ジャガ丸君の出店かぁ。……でジャガ丸君ってなんだ?」
この神様はわざわざ調べる事はしないためほぼ知識なしである。それはこんな治安が悪い時期に来たことで分かるだろう。特に下調べなんてしないのである。リューの方がしっかりしているかもしれない。
「ここだな!」
ここから始まるネメシスのバイト生活である。
まぁ覚えは悪くないし、基本的に女神だとバレないように神威を隠している為一目見て女神だと分かるやつもいない。長年にわたり旅を続けてきた癖である。
「ネメシス様って人間臭いですね」
「アーディ、何してんの? 仕事は?」
「休憩中です。今日はリオンは?」
「バベルで武器見てるよ。夜までじっくり見てくるって」
「そうかぁ~」
何故か仕事場にアーディが来た。ちなみにリューは現在ダンジョン内にいるがそれをアーディが知る由もない。
というか
「人間臭いって。まぁ神威は出してないからそう感じるだけだと思うけど」
「見た目無害な子供ですけどね」
「ヘスティア並みの低身長だからな。天界に居たころからロリっ子って言われてきたからなあ」
ヘスティアよりも胸はないけれど、何故あのぐうたら女神は体に似合わないほどの胸があるんだろう? 肩こるだろあの大きさは。
凄く失礼と言うか的が外れた考えをしている。まぁ見た目子供の為店主たちに可愛がられている。客たちもかわいがっているから売り上げもぼちぼち上がっている。こちらのバイト代も増えるし余ったらジャガ丸君のおすそ分けで今晩の夕飯である。つまりwin_winの関係である。なかなかいいバイト先である。まぁ物騒な奴はネメシスが実力行使で捕まえている。ただの一般人ならネメシスでも対処できる。恩恵受けた冒険者は無理だけど。
「そう言えば厄介事の件は大丈夫なんですか?」
「ん? あぁそれほど」
「微妙ってことですか?」
「ん、今無理やり片付ける必要はなくなっただけだ」
「ふーん、じゃぁリオンとまたダンジョンに行けるのかな?」
「まぁその内な」
まぁもう潜れるけど、とは言わなかった。今リューは必死に経験値稼いでいるなんて知らないほうがいいと思ったのだ。嘘をついていた手前色々言いにくい事が出来てしまった。なんか申し訳ない。
「それじゃあ、私はもう行きますね」
「うん、頑張れよ!」
そう言ってアーディは去っていった。ガネーシャファミリアの子供たちも大変だ。
さあ仕事だ仕事。働かざる者食うべからずである。まぁその帰り道に顔見知りと会う事となろうとは思ってはいなかった。
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「ふう終わったぁ」
ちょっと疲れたが大分稼いだネメシスだ。店主もホクホク顔でジャガ丸君をくれた。ついてるなぁと思いつつ帰路につく。少しうれしそうである。人間の善意はどんなものでも嬉しいものだ。それに働いた後のご飯はおいしいものである。
「あら、ネメシス?」
「ん? えっアストレア!?」
「ええ久しぶりなのかしら?」
びっくりした。浮かれすぎだろう私。ここまで近くにいた神に気が付かないとは。
「久しぶり、来てたんだ」
「えぇ、まだファミリアとしての規模はそこまでだけれど」
「私も同じようなものだよ」
まぁレベルは高くなってきているけれど。報告しないだけで。
「せっかくだし、久しぶりにお茶でもする?」
「いいの? 貴方はみていたけれどバイト帰りでしょう?」
「まぁ久しぶりにあったし、私の眷属は夜まで帰ってこないし、ひまなんだよねぇ」
てか見てたのね。少し恥ずかしい恰好してたから複雑だ。まぁアストレアは天界に居たころから優しくて少しお天婆だけれど常識はあった神だから私も懐いてた記憶がある。まあ自分の仕事が増えてからは私の問題で距離は置いていたけど。
「あら、そうなの?」
「ついでに少しジャガ丸君の消費に付き合ってほしい」
「えぇいいわよ。私の眷属にも手伝ってもらいましょう」
「助かったよ。自分と眷属だけではちょっと難しかったから」
そう言ってとりあえずアストレアの拠点に行くことに。
その時
「えっっ! わざわざ拠点までお邪魔するわけには」
「いいのよ、今はあの子達は出ているから」
「警邏?」
「えぇそうよ」
「ちょっとアストレアの眷属気になるな」
「あら、じゃあ自分たちの眷属の話を肴にしてお茶でもしましょう」
相変わらず優しいなぁと思う。普通は神友でもこんな治安悪いから拠点に案内することもしないはずなのに。
それからはアストレアと眷属たちの話をした。いやぁ何というか色々訳ありが多いファミリアだ。まぁ正義のファミリアなのに闇を抱えたやつが多いというか、まぁそういうやつがいないとすぐ潰れてしまうかもしれないが。この時期に来たことから考えても希望の一つとなるファミリアになるんだろうなぁ。聞いた感じリューより歳が上だけどいい子達らしいし。少しあってみたい気もする。……にしてもアストレアの子供たちは主神に話をしているのに自分の眷属は全然自分の話しないんだよなぁ。信頼がないのか? 目的教えてくれただけでもいいとすべきなのかなぁ。
と少し気落ちするネメシスであった。
訳ありというならネメシスの所も訳ありなのだが、本人はそんな事気づかない。
「ネメシスの所の子はどんな子なの?」
「アストレアに似てる」
「私に?」
「まっすぐな所とか、お天婆の所とかうまく言えないけど色々」
「貴方の私の印象を聞いてみたいけれど、貴方の眷属は少しあってみたい子ね」
「自分たちの眷属が暇なときにでも合わせてやればいいよ。多分仲良くなると思う」
「そうね」
そう言って仲良く談笑していると、アストレアの子が帰ってきたあたりでお暇することにした。話に付き合ってくれたお礼にジャガ丸君をあげたら喜んでくれた。10歳くらいの女の子で赤髪と緑色の目を持つ子が印象的だった。
まぁ好評そうで何よりだ。さぁ帰ろう。
そうしてホームに帰った。
ちなみにリューにこのことを伝えると一瞬凄く驚いた顔をした。いや何故だよ! 私だって神様の友達の一人や二人いるわ。
そんなことにリューは驚いたわけでは無いのだが、その方が都合がいいので何も言及しなかった。
そして、バイト先から貰ったジャガ丸君を食べながら今日の事を話す。基本的にリューは聞き役に徹するので私が主に話す。こいつ全然自分から話振らないんだよなぁ。
「っでアストレアに会ってその後赤髪の眷属と会ったよ」
「なるほど、でも神様バイトなんてしなくとも稼ぎならありますよね?」
そう聞いてくるから普通にこう答えた。
「え? だっていずれ必要になってくるだろ。ギルドからのミッションやダンジョン探索での武器の整備や回復薬の費用だってあるだろう?」
「そこまでしなくとも」
「まぁファミリアなんだ。持ちつ持たれつだよ」
「ありがとうございます」
そう言って嬉しそうに微笑んだ。かわいいもんである。いつも無表情な分こういう時の表情は貴重である。当たり前のことを言っただけなんだけどなぁ。こいつは人の善意に対して大げさと言うほど恩を返そうとする。たまに心配になったりするけどコイツのいい所の一つだよなぁ。
逆にリューからすれば当然の事である。自分がふがいないせいで主神に苦労を強いていると考えているのだ。全くそんな事をネメシスは欠片も思っていない。逆に頼れと思っている。すれ違いの多いファミリアである。
(もっと精進しなければネメシス様が安心できるぐらいには。私の目的に付き合わされているだけなのだから。それにしても会うのが早かったですね)
そう思ってたリューである。正直もう少し遅くアストレア様が来ると思っていた。いや前と同じというのならという話だけれど。もしかしたら、変わる場合もありますからね。まだ分かりませんけど。
リューからすればアリーゼ達とあまり会う気が起きない。前に復讐に走り、私怨で暴れまくった事がまだ尾を引いているが今はそれは関係のない話ではあるが。それとこれとは別問題である。それに加えてだと言ってはなんだがそれのせいでアストレアの眷属になることを無意識の内に避けたし恐れた。絶対にこの暗い気持ちが落ち着かなければ皆と会った時に泣いてしまう。アーディの時は耐えられたが、それでもギリギリだった。
「あっ暇なときに会おうと約束しちゃったから、暇なとき教えてよ、リュー?」
「…………えっと今月はずっとダンジョンに行こうと思っていて」
だから会いに行く約束をしたという主神の言う事には返答が遅れた。それに気づいたのか、僅かな表情の変化に気づいたのかネメシスは「そうか、分かった」と言って話を切り上げてくれた。声が震えていなくてよかった。
どうせ将来的に必ず遅かれ早かれ会うことになる。そして、あの地獄を体験することになるのかもしれない。できるだけ頑張るが、自分は弱いから守れるかどうかなんてわからない。
リューの頭の中には仲間たちが次々とあの災厄に一瞬の内にやられるあの地獄の光景や火に焼かれる友の姿がちらついた。それを首を振り、振り払うがどうしてもどこかでちらつくようになった。これではダメだと思っても、頑張って頭の中を整理しようとするが無理そうだ。頭が痛くなりそうだとおもいながら主神の話を聞いていた。
ネメシスはリューがアストレアの話をしてから気分が悪そうだと気づいた。かといってどうすることもできないけど。だから話を早めに切り上げ早く寝ることにした。
しかし、その夜リューが初めて夜泣きするとは思っていなかったが。
真夜中の事、急にリューがうなされ始めた。その魘されている言葉が凄く____
ただただごめんなさいと繰り返すリューに何をできるわけもなく、ただ抱きしめていた。こういう時自分の小柄な体が嫌になる。自分の眷属を覆えるほどの腕の長さも、ドーンと抱えてやれるほどの胸の大きさも無い。抱きしめているがはたから見るとリューが寄りかかっているだけである。誰に謝っているか分からずに泣き止むのを待った。ひたすら待った。幸いなのはこの子は静かに泣くから周りに泣いたことがバレていない事だ。泣く姿をとことん見せたがらないこの眷属だから近隣の人が心配したらさらに泣かなくなる。そして、落ち着いたのか力尽きるように寝てしまった。目の腫れがひどいから明日はダンジョンに行けないかな。まぁ行くと言っても認めないけれど。
タオルを水につけて絞り、リューの目のあたりに当てた。これで腫れは少しは良くなる。こいつは何を抱えているんだろうとずっと思っていた疑問がさらに深まった。
(アストレアファミリア、か…………)
恐らくコイツの目的に関係しているだろうと思われる気高い神アストレアの派閥の事を考えた。まぁすぐに寝たけど、眠かったし。
その朝はリューがダンジョンに行くのを止めて夜起きていた分眠くなったから寝た。リューもいつの間にか寝ていた。その日は穏やかに過ぎていった。
Psバイト先の店主に連絡してなくて心配されてしまった。凄く申し訳なく思った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
アストレアファミリアがどのくらいからでてきたか分からないので憶測です。現在半年ほど過ぎている設定です。だから本編の14年程前です。だから平均10とかなのかなぁ?ファミリア全員の情報ないので厳しいですね……。
楽しんでくれたなら幸いです。また次回もよろしくお願いします。