FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

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藤丸視点:巨壁の前で

 ――緊張感のない戦いだ、と言えばウソになるだろう。それだけ、目の前に広がるその巨大な壁、無数の矢と、壁の前に配置されたゴーレムの群れの威圧感は半端なものではないと思う。でも、個人的にはどうにも其方に集中しきれない。

 

「――では、香子さんの作成して下さった式を用いて、なんとかデオンさんへの接触を図ります。マスター、操作の方はお願いします」

「了解」

 

 デオンさんを見つける為に準備されたのは……一枚の紙の式神。式部さん曰く、取り敢えず自由に飛ぶ事くらいは出来る、と半泣きで言っていた。それを操縦、というか、操作するのが俺じゃなければ、めっちゃ凄いとストレートに言えていたと思う。

 

「……大丈夫なの? それ」

「多分。使い方も凄い簡単だし、後は俺がこの式神をどれだけ扱えるか……因みにラジコンの操作とか俺スッゴイ苦手だけど、失敗したらゴメン」

「ダメじゃない……そのシキ? じゃなくてアンタが」

 

 全くもってその通り。この式の性能自体は昨日見せて貰ったので問題は無い。『晴明様であれば式神を雄々しく戦わせることも難しくないのでしょうが、私にはとても』という事らしかったが、飛んで動かせるだけ十分スゴイ。

 自分が台無しにしなければ、だけど。

 

「ぶっつけ本番でやるしかないか……」

『式からの映像は、此方のモニタで捉えられる様にはなってる。それをさらに君達の所に投影するからラグが凄いと思う。頑張れ☆』

 

 その上にダ・ヴィンチちゃんからの容赦の無い一言だ。ラグとか、魔術という言葉から信じられないような現実的な問題(トラブル)。泣きたい。

 

「……はいっ! 何とか頑張ります!」

「大丈夫、アタシも居るし。そっちに手出しはさせないよ」

 

 しかも、ネロ陛下から、態々ブーディカ将軍を護衛に回して貰って、プレッシャーは倍率ドン。いきなりなんでこんな大役を任されたのか……そりゃあ、俺が一番戦力的には使えない男だからで、その分他の事を任せやすいからである。情けなさで二重に辛い。

 

「接触できなかったら俺戦犯どころの騒ぎじゃないよなぁ……」

「さ、マスター。始めましょう」

 

 あぁマシュ待って。まだ心の準備が……ああもう仕方ない! そんなことグチグチ言ったってどうしようもないんだ。漢は度胸、何だってやってみるもんだよ!

 

「――オーライ……! 見てろマシュ、先輩がカッコいい所見せるからな!」

 

 そうして手元にある式に、親指を噛み切って血を垂らせば……鳥の様な形をした式が動き出す。後は俺の思う通りに動いてくれる、との事。

 

「えっと、じゃあデオンさんの姿を思い浮かべて……」

 

 出来るだけ、強く……強く……で、後はどの辺りで探すかを、決める、だっけかな。えっとじゃあ……向こうに見えてる連合首都の方を……

 

「ってうわぁっ!?」

 

 結構、風がっ……じゃなくて! と、飛んだ飛んだ! スゲェ、カルデアの礼装とおんなじ感じでやったけど、上手く行ってくれて助かった。あー凄い勢いで飛んで行ってる。画面には……あー、凄い空からの映像がしっかり写ってる!

 

「成功です! 流石ですねマスター」

「あ、あぁ。案外簡単で良かった」

 

 後は、式神が勝手に探してくれる……らしいけど。それ以外は俺が逐一指示しなければならない。その辺りはしっかりと集中しなければ。というかこんな簡単な事で褒められてたらダメになる気がする。その辺りも気を引き締めて行こう。

 

「――さて、仕事を始めましょうか!」

「防衛なんて退屈なだけだと思うけど……」

「そう言う事言わない。攻めるだけじゃ戦なんて勝てるもんじゃないし。あ、マシュもあんまり張り切り過ぎちゃダメ。冷静に、きっちりこなしていこう」

「は、はいっ!」

 

 ……とはいえ、オルタの言う事が分からない訳でもない。自分以外は防衛が得意なメンバーばかりで、攻勢の得意な彼女の出番があるかは微妙な所。それをオルタも自覚しているのだろうか。

 

「……そっちにあんまり集中しすぎてもダメだ。皆を信じて、俺はこっちの仕事をしないと」

 

 どうやら式は、連合首都の上空にもう到達しているみたいだった。結構速い。やっぱりサーヴァントって凄いなぁ……じゃない。落ち着け俺。ちゃんと仕事しろ。えっと、見つかったりしたら事だ。気を付けて。

 

「ズーム機能とかは無いらしいから、後は俺の眼の良さ次第だ。気張れよ俺……絶対に見逃すな」

 

 しかし、随分とこの連合首都というのは、綺麗な……いや本当に綺麗だな、ここまで完璧な八角形ないよマジで。こういう城壁って四角形とか、星型だとか、そんなんを想像してたけど。城壁の上に立ってる人とか、気になんないのかなぁ。

 

「こっちの方が防衛上良いのか……? いや、そんなん気にしてる場合じゃないだろ」

 

 しっかりと見てないと見逃しちまう。とは言えども、人が豆粒にしか見えないんだがこれ結構無茶を……? いやちょっと待てよ?

 

「今、城壁の上に立ってたのって……」

 

 やっべ! しまった見逃した! なんてこった、こっちから何の連絡もしてない状況で態々分かりやすい所に立ってくれてたってのに……頼む、見つかる前に間に合えよ……!

 

「――よし! セーフセーフ! 見つかってない見つかってない!」

 

 さて、後は此奴をデオンさんに届けて、任務は完了だ。

 

「……ふぅ」

 

 予想以上に上手く行ってくれて助かった……ここで失敗したら情報は愚か、本人すら危ないかもしれない。あーホント……式神兼手紙の内容がしっかりと伝われば、ちゃんとこっちに来てくれる、はず。

 

「――っし!」

 

 こっからは、合流ポイントの死守がお仕事だ。と言っても、結局俺に殆どお仕事は無い訳なんだが。サーヴァントが四人、ガッツリ守りを固めている。

 

「……なんか、この前の戦闘からあんまり戦いに回されなくなったような」

 

 前までは、俺が前線に突っ込んで、兵隊相手しててもそこまで何も言われなかったんだけども。今回の戦闘なんかなんか口を挟む間もなくガチガチの防衛体制になって俺が介入する暇ないし。

 

「うーん……っと、あのゴーレムの集団はマズいんじゃないか、塊になってこっちに来てるし、オルタ! 瞬間強化を掛けるから突出したゴーレム達を集中攻撃! お願い!」

「――ウィ! 悪くない指示するじゃない!」

 

 そんなガチガチ防御で特に攻め立てている訳でも無い此方を相手に、向こうはゴーレム迄ドンドン投入して攻撃して来ている。ネロ陛下は、以前と同じように、ここを守っているのは征服王である、と言っていたのだが。

 

「……イスカンダルって、こんな無茶な戦い方をする人だったのかな」

 

 集中しきれない理由は、そこにある。最初から全力、というか()()()()()()()()。余りにも単調、というか。コレは最早……本気で指揮しているのか、と素人でも思ってしまうような感じだ。さっきのゴーレムの動かし方とか、凄い『怖い』と思わせられてしまう事は幾度もあるのだけれど。

 

「全力じゃないのかな……」

「――全力にもなれんわ!!」

 

 その声に、ハッと天を仰ぐ。此方に向けて跳躍する影、巨大な馬。その背に揺れる、紅い髪。間違いない、アレは――!

 

「征服王、イスカンダル!?」

「ここまで気に入らん闘いを強いられて。そもそも余が指揮を執っているのであれば、もっとマトモな戦をしているという話だ」

 

 後方で指揮を執っているとばかり思って居たのだが。ネロ陛下の方でも無く、どうして此方に突撃して来たのか……その視線が向かって居る先は。

 

「当代の皇帝があそこ迄覚悟を決めているのだ。こういう策は余りにも無粋、と思うのだがなぁ……敵将、ブリテンの勝利の女王ブーディカよ!」

「――私?」

「左様。お主の仇たる皇帝、ネロ・クラウディウス……あ奴に、お主の牙を向ける積りは無いか! 英霊として成ったその身には、息づいているであろう、故郷を焼き払ったあの娘への恩讐が!」

 

 ――此方の将軍、ブーディカさんだった。

 




某魔術師さん「不完全な人間の感情にも使い道はあるやで」(ニチャア)
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