FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

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幕間の物語:瓦解の時

「――ええぃ……サーヴァント一騎とアレだけの軍勢、全て費やしてこの程度だと!?」

「仕方あるまい。コレに関しては向こうの方が上手だったと割り切らねば、次につなげる事も出来ないだろうよ」

 

 ――呂布の敗北を、しっかりと彼らは見ていた。上空に配置した使い魔の数は、相当数である。戦場の動きを把握し、確実な指示を下すつもりだったのだが……その所為でまぁ各地の敗戦を嫌というほど目にする事になった。

 

「クソッ、本当に虫の如く抵抗しおって! 見るのも悍ましい!」

「とはいえ、向こうもそれなりにリソースを割いて此方に対抗しているのだ。それに此方には征服王、イスカンダルが居るのだ。彼ならば残った戦力を預ければ、それなりの戦果を挙げると思われるからな」

「そのセリフ、呂布の時にも聞いたのだが?」

「少なくともマスター一人を釘付けにし、奥の手を引き出し、彼の底を見る事には成功した。後はそれを組み込んで作戦を練ればいい」

 

 しかし、そんな中でもレフが冷静でいられるのは……傍らのキャスター、諸葛孔明が存在しているからだ。

 彼の作り上げた三重の防壁、そしてここに至るまでの戦略、カルデアを発見する為、及びそのカルデアを攻撃する為、という事で配置したクレオパトラ。幾つも策を弄し、一定の成果を上げ続けている。そして、今回の戦いも、唯消耗を強いるだけではなく、戦いの中で敵の行動を観察する為に多くの使い魔に魔力リソースを割く事を提案している。

 

「――それに、彼らの戦略は凡そ分かった」

「ほう?」

「同時に、厄介なのは、間違いなくあの黒髪のマスターだろうとも分かる。彼と契約していると思われるサーヴァント三騎の戦術は実に完成している。そして……何か理由があってだろうが髪の薄いマスターの方と契約しているサーヴァントが、一騎見当たらない」

「狙い目は其方、という事かね?」

「カルデアも、この特異点を一刻も早く解決したいと思っているだろう。ならば効率を重視する作戦を取る可能性が高い。二人いるマスターを分けて運用する可能性は十分」

 

 そこまで言われ、レフも察しがついた。

 

「その時に、予備人員の本造院康友を?」

「ほう、彼はそう言う名前なのか……その通りだ。彼を、討ち取る」

 

 理にかなった作戦だ。馬鹿正直に二人のマスターを相手する事も無い、各個撃破するのが一番だろう。

 

「彼らは一時の勝利に浮かれているが」

「最終的に勝利するのは此方、という事か」

「そう言う事だ。余り激昂するものではない。落ち着いて、勝利を待っていればいい。そもそも、彼らがここに来るまでに……」

「――そうだな。あの壁には、最低限運用できるだけの戦力を残してある」

 

 そう。壁を守っているのはイスカンダルだ。かつてダレイオスを討ち取った時の様に。最悪人員が足りなくとも、聖杯の無尽蔵な魔力で運用する、あの宝具が此方にあるのだ。即座に一万人も戦力が補充できるのだから。

 

「我々に、先ず負けは存在しない、か。すまないな、少しばかり神経質になり過ぎた」

「仕方あるまい。向こうの抵抗が予想以上に激しいのだからな」

「――それに、イスカンダルだけではない。我々には」

 

 そうして、レフが振り向いたのは、玉座。そして、続いて見つめたのは床に記された……巨大な術式。壁を起爆する為の。

 

「まだ我々には切り札が二つ。残っているのだからな」

「――おい、余り中心に立つな。万が一それが誤起動でもしたら此方の負けが確定するのだぞ」

「誤作動? ふふふ、ありえない。これは私の一存でしか起動出来ないのだからね。如何に君が私を殺したい、と思ったとしても、絶対に起動は出来ないのだから」

 

 そう言って、レフがコツコツと、術式の中心に、無造作に立つ。そして孔明にちらりと視線を向けて見せた。どうだ、とでも言いたげに。そして改めて使い魔からの映像が映る壁を見つめる。

 

「そら? 問題は無いだろう?」

「なら……そうか。セキュリティはしっかりとしているようだな」

「私を愚かな人類と一緒にしないで貰おう。こういった所で、ミスなど犯さない」

 

 そう言って、振り向いた、レフの目に映ったのは……鋭い剣の切っ先だった。

 

「――は?」

「あぁ、ミスは犯していない。コレは、私が君の実力を上回った。それだけの事だよレフ・ライノール」

 

 片目を切り裂かれて尚、何が起こったのかと呆然とするレフ。そして、その先に見えたのは……黒の髪ではなく、金色の長髪。そして、スーツではない……白雪の如き装束。その直後、ポタリとレフの血が、紋様の上に滴る。

 

「驚いたかな?」

「き……さま、は」

「頼りの軍師様は此処には居ないよ。今頃城壁で、彼と共に指示を待ってる。まぁ、この爆発で一緒に吹き飛ぶんだから、そっちの方が都合が良いけどね」

 

 血は、力を解き放つ鍵。此度の戦争を決着づける為の、最後の一撃。敵の対応よりもなによりも、レフが何とか暴発を抑えようと動くが、時すでに遅し。彼が孔明にしっかりと組み上げさせた術式は……容赦なく、起動の時を迎える。

 

「まっ……!」

 

 そして、中継された映像から見える、容赦ない壁の爆発の兆し。敵の動向を探るために、最前線に集中させている使い魔だが、そのくらいの映像は見える。そして……

 

――         ――

 

 大爆発

 堅牢を謳い、ローマ軍の勢いに乗った大攻勢など、まるで意にも介さなかった巨大な壁の一つ目が。二つ目が。一つ一つのレンガから、丁寧に、弾けて、容赦も無く使い物にならなくなっていく。

 

「――」

「何時からすり替わっていた、なんてチープな質問は受け付けないよ。何時からだろうと君は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。残る事実は、唯それだけなんだから」

「――遺言は、それだけか。サーヴァント風情が」

 

 瞬間、何かの力で床が弾け飛ぶ。其処に居た白い騎士……デオンは既に一歩、最低限下がって攻撃を凌いでいる。涼やかなその表情に比べ、レフの表情は、歪み切った、怒りを混ぜ込んだ笑顔にもなり切れぬ何かと化していた。

 

「随分と、舐めた真似をしてくれるものだ」

「潜り込まれるようなザルな監視体制を敷いていた君が悪いのではないかな? レフ・ライノール」

「ほざくな。やれ、ランサー」

 

 抉られた目を抑えようともせず、レフが指示を下したのは、暗がりの玉座に座っていた一人の男。ゆっくりと立ち上がり……明かりの前に、その姿を晒す。

 

「残念ながら、それに付き合っている暇はない。任を遂げたなら、即座に撤退するのが一番だからね。それでは……」

 

 ――その直後、デオンは一瞬で身を翻し、その場から逃げ出してしまう。余りにも潔い逃げっぷりとその速度に、一瞬、怒りも何も忘れて呆然とするレフ。僅かな隙を見逃されず、撤退を許してしまった。

 

「――どうする?」

「……許さん。そのまま出撃し、敵を迎撃しろ。ランサー」

「巨神を、呼ぶのか?」

「呼ぶ。万が一にも奴らの勝利の可能性を……消す。()()()()()()()()で、ローマ諸共カルデアを粉砕してくれる――それに、奴らのしぶとい悪運も、ここら辺で尽きたらしいからな」

 

 本来、この術式を起動させれば、第三の壁まで起爆し、町諸共吹き飛ぶ予定だったのだが……それは無かった。バグか、それとも。兎も角、無かったのだ。起爆は。コレを吉兆とレフは捉えていた。

 

「我が王の寵愛を失った種族などこの程度。第三の壁、貴様のカリスマ、そしてセファールの力があれば。まだ、まだ巻き返しは出来る」

 

 もはや駒もほぼ討ち取られた状況で、それでもレフには勝算があった。普段ならば運等と言う不確定要素に頼る事など無いのに。自らに訪れた、望外の幸運を充てに、未だ巻き返しは可能だと。

 ――それほどまでに、自分が錯乱している事にも気付かず。

 ――その望外の幸運が、全く幸運で無い事になど気付かず。

 ――既に、この特異点において、カルデアが相手にするべきが、自分でなくなっている事にも全く気付かず。

 

「後悔させてやるぞカルデア……小細工を弄し、私を苛立たせたことになぁ!」

 

 彼は、未だ自分が、プレイヤーであることを、疑わない。

 




ミスってちょっと早く上げたけど……まま、ええか(適当)

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