FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

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メドゥーサ・キャットサイド:破壊の申し子

 天に輝く日の光が、砂地を焼いている。

 突如として現れた……否、孔明の手によって召喚された白いサーヴァント。マスターの命を受け、メドゥーサ、キャットの二人がその眼の前に立つ。三色に輝く、異質な剣がゆらりとその鎌首を擡げた。

 

「タマモキャット」

「オロチのムスメ、舞踊を舞っている場合ではないのである。この相手は正に難易度インフェルノ、キャットの毛も逆立ちで百点満点である」

 

 その剣の先に……二人の背筋が粟立っている。実力等は分からないが、しかし実力とは明らかに違う、異質な感覚が、二人を襲っていた。目の前の存在が、自分達とは、根本的に違う。それは二人が、神性に類するものだったからなのだろうか。

 

「――私は」

 

 その視線が……二人を捕らえた。焔の様な赤い瞳に、しかし熱は無い。あくまでも冷たく確実に、目の前の二人を粉砕するという、意思に満ちている。

 

()()()()()()()()()。文明を、()()()()()()()。お前たちがどのように抗おうと関係ない。私は、その抵抗諸共、粉砕するだけだ」

「貴方は、何者です」

「答える必要は……ない」

 

 軽い足音と共に、瞬間的に相手が距離を詰める。振り下ろされた剣を、二人が一歩下がって避ける……が、その撤退する動きに、何と切っ先が追い付いて来た。目を見開くメドゥーサが見たものは、鞭のようにしなる、光り輝く剣が此方へと首を掻っ切らんと動き出すその光景!

 

「っ!?」

「にゃんとぉおおおおおっ!?」

 

 全力で剣の間を抜けながら地を走るメドゥーサ、ケモノ特有のしなやかな体で仰け反ってギリギリ凌ぐタマモキャット。剣が直撃することは無かったが……その動きは正に異質。二人の緊張感の高ぶりが無ければ、間違いなく直撃していた。

 メドゥーサとキャットの視線が一瞬かち合う。明らかに実力の桁が違う。となれば……頷いた二人が、白いサーヴァントと向き合った。

 

「破壊する」

「――申し訳ありませんが、貴方の戦いに付き合っている積りもありませんので」

 

 ここでメドゥーサが反撃へと移る。向けられるのは、必殺の魔眼。悉く英雄の命を奪い、如何な相手とて逃れられぬ、虹の視線が、白いサーヴァントへと向けられて。

 

「無駄だ」

 

 ――その、魔眼の力を、彼女は一撃にて切り捨てた。

 

「なっ」

「この剣に、破壊できない物はない。そして、お前の魔眼の力とて、例外ではないぞ。形無き島の女怪、メドゥーサ」

 

 目を見開かざるを得なかった。形の無い力を、彼女は、手にした剣で切り裂いたのだ。一体、どういう原理なのか、さっぱり分からない。

 思わず歯噛みする。魔眼の能力を無効化されただけではなく、そこから一瞬で自分の真名を見抜く。力だけではない。その判断力、冷静な知性、どれをとっても、明らかにこのサーヴァント、頭一つ抜け出している。

 

「であれば拙者の爪がオヌシをナマススラッシャーなのだな♪」

「――」

 

 しかし、視線を向けたのは単に彼女の動きを鈍らせる為ではない。その間にキャットの一撃を叩き込む算段だったのだが、結果として相手の隙を突いてキャットが攻撃する形となった……のだが。

 

「甘い」

「ごはっ!?」

 

 振り切ったその姿勢から、何と見もしていない後ろのキャットに向けてケリが伸びる。無防備に腹を晒した、両の爪の振りかぶり攻撃が、完全に仇となった。防ぐどころか、鈍い音をたてながら受け入れるしかなく、そのまま吹っ飛んで転がるしかなかった。

 

「――四方から敵が押し寄せるなど、日常茶飯事だった。その程度でやれると思われていたとは……心外だ」

「ぬぅっ……なんと言う身持ちの固い女。コレは間違いなく良妻の香り。旦那の敵は一撃で切り捨てるタイプと見た」

「戯言を言っている場合ではありません」

 

 その吹っ飛んだキャットへと踏み出す白いサーヴァント……それを阻止せんと、楔から伸びた鎖が、ぐるりとその腕を捉えた。手ごたえありと、メドゥーサが彼女を引き摺ろうとしたが、それより早く捉えた相手はくるり、と構えた剣を、手首のスナップを利かせ振った。

 

「っぁ~~~~っ!」

 

 それだけで、再び伸び、しなり、凡そ剣とは思えぬほど柔軟にメドゥーサの首を狙う光の剣。流石に距離がある故、鎖を外して逃げる事も出来たが……僅か、彼女の髪の先が剣に掠った。

 

「しぶとい。今ので落としたと思ったが。流石に古き神性だけはあるか」

「やって、くれますね……」

 

 たかが髪、とは言えない。彼女の逸話を考えれば。しかし激昂して襲い掛かる、という選択肢はあり得ない。目の前の存在相手に、そんな愚かな事をすれば、今度こそ首を斬られるだろう事は明確だったからだ。

 

「うぬぬ、タマネギの如く強敵……!」

「タマネギ……? いえ、それは兎も角。あの剣、それに使いこなす本人の技量。厄介としか言いようがありませんか」

 

 連携に慣れている、とは言い難いコンビではあるが、それでも二対一。不利の筈なのに全く怯まない。サーヴァントという枠に収まっているかどうかすら、怪しいほどに。だがそんな相手に対策を練る暇も無く、一か所に集まったと見るや、速攻でその剣を伸ばし、纏めて薙ぎ払いにかかる。

 

「ちぃっ!」

「何の必殺のキャットバウァー!」

 

 横一線、跳躍したメドゥーサのほんの下を通り過ぎながら、キャットのメイド服の先を消し飛ばした、仰け反りが少しでも足りなければ体を二つにされていただろう。

 

「とはいえ、避けられないという訳でも、っ!?」

 

 だがその一閃ですら、白いサーヴァントにとっては準備に過ぎなかった。砂地に食い込んだ切っ先を杭の様に使い、何と剣を縮ませる勢いで宙を舞う! さながら、現代のワイヤーアクションの様な動きで空中のメドゥーサに肉薄して見せた。

 

「そんなっ……」

「私が破壊できぬモノは、ない。常識すら、疑う事だ」

 

 膝の一撃が、メドゥーサの胴に突き刺さる。くの字に折れる体。そのままの勢いで、彼方まで一気に吹き飛ばされていくメドゥーサ。

 

「ぬぅっ! 雷電!」

「貴様もだ」

 

 メドゥーサの方に振り向いたキャットの後頭部に、空中で器用に胴を回してはなった、踵からの蹴りが襲い掛かる。弾かれるように吹っ飛んでいったが……しかし、その直前に何とか肉球での衝撃吸収が間に合い、致命的なダメージにはなって居ない。何とか体制を立て直し、メドゥーサの傍らに。

 

「これは油断大敵火事ボーボー……消火は出来たか?」

「この程度でやられる程、軟ではありませんよ」

 

 そう言って立ち上がるメドゥーサも、まだまだ戦闘続行可能、と言わんばかりにゴキリと肩を鳴らした……しかし、その表情は険しい。

 

「とはいえ、何度も何度も喰らっては、たまった物ではありませんが」

「生足魅惑の一撃でキャットもクラクラするというモノ。ご主人が貰ったら、クラクラでは間違いなく済まぬが」

「血反吐吐き散らしてミンチが関の山でしょう」

 

 さり、さりと砂地を進むその姿。走る事すらなく、ゆっくりと距離を詰めてくる姿。しかし逃げようとは思えない。寧ろ、彼女は此方の動きに合わせ、行動するつもりで、あえてそうしているだろう事は、余りにも分かりやすかった。

 

「……もう一度、魔眼を狙ってみましょうか」

「まぁ待て独歩チャン。そう焦らずとも()いではないか」

「誰ですかドッポ」

 

 そう言って、一歩キャットが前に出る。

 

「ナニ、策はある。キャットは野生故な、狩りには鉄則というモノがあるのだ」

「……貴方が策と言っても、全く期待できないのですが」

「そう言うな! 事はシンプルイズベスト、キャットでも分かる三分クッキングであるからナ! 失敗したら天然系ドジっ子称号を贈呈しよう」

「要りませんよ。というか、なんかその称号は非常に不愉快なのでやめてください」

 

 しかし、そこまで言うのであれば……賭けてみるしかない。どっちみち、あのサーヴァントを相手に、無策で挑むのは無謀なのだと、今の今までで、しっかりとメドゥーサは味わったのだから。

 




スペックを見れば見る程、なんでネタキャラ扱いされる事が多いのか分かるアルテラちゃん。だって本気ださせたら英雄王並みの人じゃんか……

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