FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

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ネロ・ジャンヌオルタサイド:我こそがローマである

 ――ネロは、当代のローマ皇帝である。

 幼い頃から、ローマの絶えぬ栄光を見つめ、ローマの輝かしい歴史を知り、ローマの進む未来は光ある物だと信じて疑わなかった。ローマを、愛していた。

 

 故にこそ、連合ローマなる、人々の笑顔を奪う、偽物のローマを許すわけにはいかなかったのだ。皇帝として、導く者として、抵抗を続けて来た。心強い味方も、多く彼女の下に集って来ていた。自分の正当性を、疑わなかったのだ……

 そう、今の今までは。

 

「――ちょっと! もうちょっとマトモに抵抗しなさいよアンタ!」

 

 そうだ。オルタの言う通り、抵抗しなくてはいけない。いけない筈なのに。出来ないのだ。抵抗しようと、心が奮い立たない。まるで牙を抜かれたかのように。

 

「っち! 実質タイマンてワケ! 上等じゃない!」

「ヌゥウン!」

「ええい暑苦しい、そんなにアツいのがお望みなら、特別、念入りに焼いてやるから覚悟しなさい筋肉達磨二号!」

 

 放たれた焔が、真正面から神祖を捉え……しかし、全く怯まない。寧ろ、更に前進して来る。ネロが瞠目する。オルタも瞠目している。片や畏怖、片や驚愕、理由は違えど、やってのけた事は尋常ではないのだ。

 

「凄まじい(ローマ)だ。肌身に沁みる、良き(ローマ)でもある」

「温泉か何かだとでも思ってんの!? 舐めてくれんじゃない……!」

 

 本来、警戒するべきだろう、どれだけの力なのかと、絶望すらしていなければならないような場面なのだ。だが……ネロの心に、次に到来したのは、果てしない、尊敬の念ばかりだった。彼こそがローマだと、思ってしまった。

 自らが守ろうと思ったローマ。繫栄せよと願ったローマ。自らが皇帝として在って、滅びなど考えられぬ程、偉大なローマ帝国を、築き上げた男。

 筋肉隆々の、黄金の様な肉体を持ち、王者として格の違う、圧倒的な覇気を齎す、偉大なる建国王。

 

「(勝てぬ)」

 

 そう思ってしまったのだ。

 力ではない。そんなちっぽけな次元ではない。皇帝としての在り方ではない。そんなせせこましい事で彼を計ろうとすること自体がおこがましい。

 存在そのもので、彼と張り合う事は出来ない。

 

「――しかし、娘よ。此度、(ローマ)と相対するのは、其方ではない」

「何ッ! ぐっ、ぁあっ!」

 

 そんな彼が……今、自分に視線を向けている。立ちはだかる障害など、その手の槍で軽く払い除けて。ネロには、それを嬉しく感じてしまっているのだ。

 

「ローマよ。当代の皇帝(ローマ)よ。立て、自らの足で。抗うも、従うも、決めぬまま。蹲るばかりでは、生き方(ローマ)を示す事も出来ぬぞ」

「……っ」

 

 恐ろしい事だと、ネロにも分かる。それを警戒できないのが。光栄だと思ってしまうのが。自らの芯に刻まれた、ローマとしての心が、彼女に戦わずしての屈服を選ばせようとしている。信じられなかった。

 

「さぁ、来るがいい。(ローマ)は、(ローマ)の挑戦を心待ちにしている」

 

 ――偉大だ。

 自分への叛逆であろうと、彼はその雄大な心で、受け入れるのだろう。ああ、そうか。連合ローマに集っていた皇帝たちが纏まっていた理由が、肌身に沁みて、やっとわかった。あのカエサルが、一尖兵となって居た理由が、ネロには分かった。

 

「無視してんじゃ、ないわよっ!」

「ぬぅっ!」

「自分達だけで話完結させて、うざったいのよアンタ……! 大体ローマローマって、意味の分かる言葉喋りなさいっての!」

 

 ――そんなネロとロムルスの間に、あくまでもオルタは割り込んでくる。凄まじい剣幕だ。ネロの目の前で、神祖が退いている。

 

「私を舐め腐った奴は、骨の髄まで焼き尽くして、そのゴーマンを後悔させてやるって決めてんのよ! 大人しくTボーンステーキにでもなってなさい!」

「――」

 

 ふと、ネロは目の前の彼女が羨ましくなった。

 彼女は、ローマの民ではない。だからロムルスに相対しても、全く尻込みせず立ち向かえる。何も気にせず、戦えるのだ。そんな後姿が……あまりにも……

 

「余には……」

 

 出来ない。自分は、神祖には立ち向かえない。

 自分は、彼に連なる……ローマの民なのだから。

 

「神祖だか何だか知らないけど、気に入らないのよ、アンタみたいなやつが一番!」

「ぐぅっ」

「偉そうに、上から目線でモノ言って! ()()()()()()()! クソくらえだっての! 私に偉そうに説教垂れて見なさい! 骨すら残さず塵にしてやるから覚悟しろ!」

 

 ――その言葉に、思わず目を丸くした。

 

「敬意なんて、私が欠片でも持ってると思った? お生憎様ね! 私はアンタを唯の敵として見てるわよ。それも、特別気に入らない、顔面をぶん殴ってやりたいタイプの敵だってね!」

「おぉ……この熱は、何ともローマ……!」

「カテゴリ化するんじゃない!」

 

 そして、その背から溢れる熱に、目を細めた。凄まじい。自己を自己として主張するそのパワフルさ。思い知る。彼女は、きっとローマの民であったとしても、こうしてロムルスに真っ向から殴りかかっていくだろう。その姿が、見える。

 

「(――何故だ)」

 

 どうしてだろう。彼女は……そこまで抗える。どうして立ち上がれる。自分と、何が違うのだろうか、と。

 

「私は誰にも迎合しない、私だっての! 誰にも屈さない、膝をつかない! 竜の魔女としてサーヴァントやってるんだ! 舐めんじゃないって、言ってんの!」

「――それが、お主のローマか」

「誰がローマだっ! 私は、ジャンヌ・ダルク・オルタナティブ! 世を呪う竜の魔女だって言ってんでしょうが!」

「自ら、己こそは誰にも決して負けぬと牙を剥く。誇り高きローマ。良きローマだ」

 

 ――そこで気が付く。

 

「(ああそうか。だから立ち上がれるのか)」

 

 オルタを支えているのは、恐るべき程確立されたアイデンティティだ。だから誰が相手だろうと、自分がどういう存在なのかを決して彼女は見失わないし、迷わないのだろう。

 

「(――余は、どうだ)」

 

 自分には何があるのか。アイデンティティは、一体何処にあるのだろうか。自分以上のローマを相手に、何を誇れるのか。分からない。だから立ち上がれないし、真っ向からぶつかる気にもなれない。

 膝をついて、思わず歯噛みする。当代の皇帝がコレだ。連合ローマが成立するのも、道理だったのではないか……そう、そう思いたかった。

 

「……違う」

 

 思えない。思ってはいけない。自分は皇帝なのだ。当代の、ローマの皇帝なのだ。自分が今のローマを肯定せずに、誰が出来るのか。

 ローマが斜陽の危機にある今だからこそ。神祖という、偉大なる存在が敵になったからこそ、自分だけは誰よりも、ローマでなくてはならない。そうだ。アイデンティティはここに有る。自分はローマであるが故に。灯る、熱き浪漫が胸の内にある。

 

「余は、皇帝だ。余の愛しいローマを守る、皇帝なのだ」

 

 だからこそ……力を以て、戦うのではなく。

 立ち向かう事で、示すしかない。自分のローマは、何物にも負けぬ輝きを持って今を堂々と生きていると! 何者にも、今を渡すつもりはないと!

 

「ここで、しおらしく崩れている……場合ではない!」

 

 奥歯を噛みしめて立ち上がる。

 

「――そこを代われっ! 竜の娘!

「あぁっ!?」

 

 目の前の少女に、これ以上任せきりにするのは、最低の恥だ。自分が戦わずして、自分がやらずしてどうするのだ。彼らは援軍。この戦いの主役は、自分達ローマなのだから、と。ネロはその視線を、真っすぐに……

 

「任せきりで済まなかった……援護を頼む! ()()()との決着は、余が付ける!」

「……はっ、今更しゃしゃり出てきて、調子いいんじゃない!? ソイツは私の獲物、悪いけど譲るつもりはないわ。やりたいなら、私より先にぶっ潰す事ね!」

「なにおう!? ならば早い者勝ちでどうか!」

「上等!」

 

「――良い。良い。その(ローマ)。燃えて見せよ、我が愛しきローマよ」

 

 神祖の、紅い視線とぶつけた。

 




皆でローマ、しよう!
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