FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

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レオニダス・ダレイオスサイド:激突の砂原

 ――イスカンダルの後ろに並ぶ無数の兵に、ダレイオスは怯む様子を見せない。寧ろ喉から唸り声を上げて、威嚇しているようにも見える。ここでの戦いが、他の戦いの趨勢をも決めるのは間違いない以上、心強い事この上ない。

 そして、そこに近寄る影……ダレイオスが振り向けば、片手に盾を、片手に槍を構えた偉丈夫の姿。

 

「――覚えてはおられますまい。ダレイオス殿。貴方と私が一騎打ちをした事」

 

 美術館での死闘を、その男……レオニダスは思い出していた。無数の躯相手に自らと軍勢一人で戦って見せた、正に死闘だった。しかしながら……実に充実した戦いであった。かの男を相手取った自分だからこそ、この戦いに与する義理がある。

 

「あの時に交わした刃の縁により、助太刀いたす!」

「■■■■■■……」

 

 宿敵との一騎打ち、怒鳴られるくらいは覚悟していたが……しかし、ダレイオスは何も言わず、すっと横へズレた。まるで隣に立て、とでも言っているかのように。一瞬、レオニダスは目を見開いて、しかし何も言わずに隣に並んだ。

 

「ほほぉぉおお! テルモピュライ、炎門の守護者のレオニダス! かのアケメネス朝の大王、ダレイオス三世と組んでの戦いとは、なんとも心躍るではないかぁ!」

「■■■■■■―っ!」

「申し訳ありませんが、史実の再現とはいかせません!」

 

 ――そうして並び立った両雄は、征服王の軍勢に相対すためにと、同時に自らの宝具を解き放つ。

 

片や、攻め潰す死者の群れ。征服王の軍勢にも全く劣らぬ迫力。どこまでも続く鉾と盾と死の流れが、日輪輝く熱砂の砂漠に、暗い影と凍える風を齎す。率いるは、巨象に乗り込んだ大巨人!

片や守り弾き返す守護者たち。死の流れを主導するように先頭に立つ彼らこそ、守護に置いては双つ並ぶ者無き伝説。自軍の倍も軽く超える大軍勢とて、幾度となく退けたその堅さが、此度は後方の軍を守り抜く!

 

「ドリームタッグ、と言う奴です!」

■■■■■■■■■■■■ォォォオオオオオオ!

 

お互いの時代は違えど、史実に置いて激突した両国がこうして並び立つ。歴史ファンからすれば垂涎モノの光景だろう。しかもその相手は、嘗てペルシアを破った征服王。すなわち力強い援軍を得たペルシア側の、ドリームリベンジマッチなのだ。

 

「――良かろう、相手にとって不足なし! 者共、構えぇい!」

 

 それに我慢の利くイスカンダルではない。ワクワクと喜色満面、声にすら滲ませてその手を大きく振り上げる。その直後、マケドニアの全軍が、一糸乱れぬ動きでその武器を構えて見せる。恐るべき練度の高さが、それだけで伺える。

 しかし、そんな軍団の兵士たちの表情は……何れも険しい。目の前に現れた軍勢が、そう容易く打ち破れるものではない事を良く分かっているだろう。両脇で行われているもう二つの戦いの趨勢次第では、彼らも加わってくるとなれば、気も抜けない。

 

「進撃を開始せよ!」

 

――それでも、その一言で動きを止めていたマケドニア全軍は突撃を開始する。雄叫びと共に。それに合わせ、先ずはレオニダスが自らの軍勢に盾を構えさせ……その直後、イスカンダルは信じられない光景を目にする。

 

「――ぬほぉお!?」

 

 何と、ダレイオスを囲んでいた軍勢が、一斉に左右に割れて……ダレイオスまでの道を作って見せたのだ。まるで、ここを進んで来いと言わんばかり。というより、それ以外は通さないとばかり、そこ一点以外はしっかりと守りを固めている。

 そして、その一点を守るのが……

 

「全員、構えぇええええええい!」

 

 レオニダス率いるスパルタ軍、僅か三百。だが、その数に見合わぬあまりにも、あまりにも分厚い壁は……ダレイオスへ続く道と言う、格好のチャンスの前に立ち塞がっているのである。

 

「――来いという事か」

 

 ()()()()()。どんな鈍感ですら、コレは分かるだろう。ここを突破して、真っすぐに突っ込んで、自分の首を取りに来い、という。要するに、時間はかけない、一瞬で決着をつける腹積もりなのだろう。

 

「アレ、露骨過ぎませんか。王よ」

「だが清々しい! 策謀を巡らすのも嫌いでは無いが、やはり真っ向からの勝負こそ一番燃える! それに……あのペルシアの全盛期を、たった三百人で凌ぎ切ったあの炎門の守護者達に、余の征服が何処まで通じるか……試してみたくはないか!」

「試してみたいですよ!」

 

 行こう、行こう、とそう言う事になった。躊躇いもせず、マケドニアの全軍が此方に向けて一点集中していく。しかし、この軍勢全体が突っ込めるわけも無く、余った部隊はズルズルとダレイオスの軍勢に向けて流れていく。

 そして、テルモピュライの目の前に立ったイスカンダルは……思わずと言った様子で、ほぅ、と溜息を吐いていた

 

「ううむ、何という。余の軍勢の精鋭ぶりも中々のモノだと思って居るが……」

「凄まじく絞られた筋肉。綺麗に揃い、乱れぬ縦の壁。ピクリとも動かぬ槍の穂先。我らと比較しても、明らかにその練度ならば上を行かれていますな」

 

 マケドニアの大軍勢をして、練度で負けるとまで言い切れてしまう程のスパルタ。しかもその気迫は、既に最高潮と言って良いだろう。

 

「――成程! コレは我が軍勢の全てをぶつける以外あるまいて!」

 

 全てを決着するのならば、出し惜しみはしない。自らの愛馬、ブケファラスを呼び出しその上に跨ると……剣を抜き放った。

 

「覚悟を決めよ! 相手は彼の炎門の守護者! レオニダスとその配下! 突き抜ければ活路! 突き破れねば死地! 命を燃やし、伝説を突き破り……彼のペルシアの王の元へと至るぞ!」

「「「「「「オォォォォォオオオオオオオオオ!」」」」」」

 

 雄叫びを上げる大軍勢。合わせていななきを上げる軍馬。彼らの咆哮に応える様に盾と矛を構える守護者達に向けて……イスカンダルは、堂々と剣を掲げ、そして全力を以て振り下ろした。

 

「いざ、蹂躙せよぉおおおおお!」

「来るぞぉおおおおおおッ! スパルタの魂、存分に示せっ!」

 

 ――その一言で、遂に火ぶたが切って落とされる。蹄が砂原を抉り、征服王が先陣を切って、レオニダスの元へ突っ込んでいく。勝負は単純、この一瞬でレオニダスの守りを破れるか、それともレオニダスの守りに軍勢が跳ね返されるか……双方の距離は、瞬く間に縮まっていって。

 

「「ぬぅぅおおおっ!!」」

 

 ――破裂音と共に、衝突する。騎馬の衝突を、円盾が受け止めて……しかし、止まった訳ではない。ジリジリと、受け止めた側が少しずつ、後ろへと押し返されていく。

 

「進め! 進め! 押し開けろ!」

「進ませるなぁアアアアア!」

 

 そして、征服王の突撃に続き、マケドニアの軍勢が次々と壁へと守護者達を押し込もうと体を叩きつける。しかし……それでも、さして後退する速度は落ちない。マケドニアの全力でも、まるで揺るがない。

 

「くっ……ならばせめて……っ!」

「王よ! 我らが道を!」

 

 ――このままでは、全員突破できず、弾き返されて終わりやもしれない。そう悟った家臣たちが、今度はイスカンダルたちの元へと集い、其処に剣や鉾を差し込んで、一人だけでもこじ開けて通そうと、方針を変えた。

 

「――済まぬっ! 悪いが、余一人だけでも、通させてもらうぞ……! レオニダス!」

「ぐっ、流石に、かの征服王の軍勢……すべて止められる、と楽観視はしていませんでしたが……っ!」

 

 そして開いた、ほんのわずかな隙間に、ブケファラスが割って入る。しかし、流石に無数の槍を受けていななきを上げ、動きを止められて……されど、何とか炎門に僅かな隙間を自らの体で、こじ開けて見せたのだ。

 

「感謝するぞ、ブケファラス……っ!」

 

 その愛馬の体を蹴って……遂に、征服王は、自らの宿敵へと続く、たった一本の道へとたどり着いて見せた。

 

 




実質おしくらまんじゅうやんこんなん……



四月になりまして、またちょっと忙しくなってくる時期となりました。つきましては、また投稿を一旦お休みさせていただきたく思います。次の投稿は最短で5月1日からです。5月15日までには必ず投稿いたします。

また投稿し始めたその時は、暇つぶしがてらに見て頂ければ、幸いです。
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