FGORPG ノンケがエンジョイプレイ 作:秋の自由研究
――三色の切っ先が、唸りを上げる。明らかに剣の間合いではない所から、しかし再び撓り、伸びた切っ先は、二人に向けて襲い掛かる。
「合図が有ればアレを頼むぞ、ではなっ! キャットはこれより、修羅に入る!」
「あ、ちょっと……全く、本当に自由ですねあの謎サーヴァントは。仕方ありません、援護くらいはしましょうか!」
そして、その切っ先に向けて……ではなく、白いサーヴァントの手元に向けて、鎖は伸びていく。真正面から相手にするだけ馬鹿らしいと判断したメドゥーサに対し、キャットはその鎖に並走し、真っすぐ突っ込んでいく。
「――味な真似を」
「にゃははっ! 戦場へきてキャットと握手! ハグ! 四肢粉砕!」
普通に鎖くらいを切り裂く事は出来るだろう。しかし、目の前には既にタマモキャットが迫っている。油断して居れば、彼女が一撃を叩き込む。しかし其方に気を取られていては手持ちの剣を弾き飛ばされかねない。
「仕方ない」
それ以外には道も無いと思われたのか、大きく、いっそ大袈裟なほどに距離を取って彼女が下がる。下がると同時、剣を縮めて接近戦に対応できるように剣を構えて……だがその一瞬、白いサーヴァントの目に入ったのは、紅い輝きだった。
「その脂身を落とす……」
「っ」
「――と言ったなそれも嘘だっ! うぅぅうにゃああああっ!」
キャットの手の上で弾け、渦を巻く、膨大な量の焔の塊。宝具とまでは行かずとも、それなりに魔力の込められた大火球が、真っすぐにそのサーヴァントを狙う。
「無駄な事をっ」
だが、それを避けるどころか、白いサーヴァントはその場に仁王立ち。正眼に構えた光の剣が、縦一文字に軌跡を刻む。彼女に衝突するその直前、その一閃で生まれた風が目の前の火球と衝突し……なんと、そのまま炎の嵐となってキャットへと襲い掛かる。
「
「温いぞ。せめて九尾揃えて出直すのだな」
流石にそれにぶつかる程キャットとて愚鈍ではない、軽く跳躍して躱した……が、恐るべきは、白いサーヴァントである。たった剣の一振りで、アレだけの魔力の塊をあっさりと打ち返す。引き出しが多いのか、はたまた、スペックでのゴリ押しか。
「しかしキャットは諦めない。何故ならバスケがしたいから!」
「来い」
――その状態を後方から見つめるメドゥーサは鎖を構えながら、機会を伺っていた。キャットが相手の気を引くつもりなのは、先程の動きから分かっている。だが、それが達成出来ているとは言い難い。
「(それでも此方から離していませんか)」
キャットの爪を避けつつ、華麗に反撃し……その動きを、剣で制する。そうしつつ決してメドゥーサから意識を逸らさない、しかも、メドゥーサの如何な攻撃でも捌けるように決して背を向ける事をしていない。
「余り浮気をするでない、我の元へカモンナウ! ご馳走するぞ鴨南蛮!」
「下手な挑発は無駄だ。どうせ、貴様から意識を逸らすつもりはないのだから、安心しておけ」
まだまだ底が知れない彼女の実力。それが全て引き出されるまで時間はかけたくないと考える……其処にすら至らないのだ。今のままでは。引き出す必要も無く、このままに磨り潰す事もあのサーヴァントには可能なのかもしれない。
「上手い! 上手い! 上手い! しかしながら遅いっ! キャットのしなやかかつ水分90%ボディには止まって見える! 座・ワールドである!」
「良く動く……だが逃がさん」
「にゅあっ!? キャットの毛並みを容赦なくそり込むとは、さてはトリミングの達人であるな? しかしワイルドスタイルこそ我の心の故郷故押し売りにはぶぶ漬けである!」
現に彼女の剣が、凌ぐことに徹しているキャットに少しずつ掠り始めている。
圧倒的なバトルセンスは戦いの中で更に冴え渡り、既にキャットの動きを掴んでしまっているのだろう。
「(――まだですか)」
既に、何時でも魔眼を解き放つ準備は出来ている。それが逆に、メドゥーサに焦りを生んでいた。準備万端なれど、迂闊に仕掛ければ無駄に終わる。しかし、このまま何もしないでいれば……
「(早く――全力を、出す前に!)」
――相手に宝具を、使われるかもしれない。
「もう既に、お前の動きは凡そ把握した。逃がさない。確実に仕留めさせてもらう」
「ほうほう、キャットへの熱烈な視線でハートをキャッチ、ワイルドなスタイルも把握済みであるか、スリーサイズはオフレコで頼むゾ?」
「そうだな……既に心臓を穿つ程度なら」
「――お主の把握したスリーサイズ、だがそれも嘘だっ!」
メドゥーサの……その焦りが頂点に達した。その瞬間だった。キャットが大きく後方へと跳ねる。超接近戦に挑んでいたその直後の事、流石に、白いサーヴァントも反応が大きく遅れた。
「これがキャットの真のナイスバディ、キャット呪術、呪詛・空裂大密天っ!」
「――なにっ!?」
キャットのモフモフの指が印を切る。其処から解き放たれるは、キャスターもかくやと言わんばかりの魔の奔流、それが風にも似た動きで……白いサーヴァントに絡みついていった。
「ふはは、溢れるインテリジェンスがお前を襲う!」
「くっ、野生の類だと思って居たが……見誤ったか」
白いサーヴァントも、されるままではない。足掻こうとするが……しかし、その得物すら動かす事も出来なければ、メドゥーサにやったように剣での粉砕もしようがない。そして、単純に、拘束の強さも相当なモノだ。
「今である!」
「……随分と、待たせてくれましたね」
――そして、言われずとも。キャットは下がった事で視界から外れている。メドゥーサは遠慮なく魔眼を解き放っていた。身動きもそう容易く取れない状況。最早これでは避ける事も、先程の様な離れ業も不可能。そして、邪魔の一つも無いのであれば……この魔眼は、絶対不可避、必中にも等しい!
形無き目の魔力が、白いサーヴァントを捕らえた。圧倒的な力量を持ったサーヴァントであれ、この魔眼の前では平等。余程の例外でなければ、無効化など敵わない!
「っあぁ……!」
「捉えましたよ!」
視線を向けたままに、投擲するは鋼の楔。引き戻した方をもう一度振るい、その鎖を首に絡みつかせ……思い切り締め上げた。
「ぐっ」
「悪いですが、余裕もありませんので……貴方は少々荒めに、殺して差し上げます」
しかしそれだけでは終わらない。それは、あくまで確と白いサーヴァントを捕らえる為の措置。其処からメドゥーサは、全力を振り絞って……彼女を、地上から引っぺがし宙へ向けて振り回した。
「!!」
「はぁあああああああっ!」
そこから、宙に浮いた彼女を、彗星の如く、床へと向けて振り下ろす。ゴズ、という鈍い音と共に、白いサーヴァントが思い切り砂地に叩き付けられる。常人であれば、これだけで脊髄が確実に損傷する程の勢いで、砂塵が、爆発したかのように撒き散らされて。
「――まだですっ!」
「……ぁ」
更に。もう一度持ち上げられ、更にドズンと墜落させる。更に、更に、更に! 幾度となく上下を繰り返し、叩き付ける事――都度六回。
「トドメッ!」
もはや声も発さなくなった白いサーヴァントを思い切り振り回し、全力で回転させ始める。ハンマー投げの要領で超高速で回され、最早死体蹴りの領域を超えた追撃。そして思い切り回転させるメドゥーサの目に……
「――」
遠くで戦う、屈強な背中が見える。ネロと、オルタの戦っている敵。それに向けて、ほぼ無意識の内に、メドゥーサは捕まえた相手を投擲していた。己の楔諸共に。
「――蹴散らして差し上げます、立て直しをする暇は、与えない……!」
これが最大のチャンスと、彼女は、その手に手綱を握りしめていた。彼女の宝具、愛馬の全力を引き出す為の、切り札を! 投げたサーヴァントがどうしているか、そんなのを確認する、一瞬の手間すら省いて。
「……っ!?」
その瞬間、二つの影が天に掲げられる。いや……アレは最早晒し上げられている、と言った方が正しいか。黒く、禍々しい焔を纏った鉾が、天高く、二騎のサーヴァントを貫いて伸びている。
「成程、オルタの宝具ですか……好都合です。的がしっかりと、良く見えるというもの」
ならば次は自分の番だろう。白銀に輝く白馬に手綱を噛ませ、その背に跨って……瞬く間に天へと上る。ここは固有結界の中、室内ではない、全力で空を駆け、最大速度でぶつかる事が出来るというもの。
「これで……仕留めます! 『
――流星の如く天より落ちる天馬。地より敵対者を焼きつくす焔。二つが二騎のサーヴァントを確実に捉え……最大限迄膨れ上がり、白と赤が、混ざり合う事も無く、暴れ、爆ぜていく。
そうして、後に残ったのは。
「……全く、手古摺らせてくれます」
ほんの僅かな、黄金の輝きの欠片だった。宝具の二重攻撃。余りの出力に、最早塵すら残っていない。しかし、それでも、メドゥーサに達成感など欠片もない。あるのは……余りにも重い、疲労感だけだった。
取り敢えず、EXTRAのタマモを参考に描写してみました。