FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

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レオニダス・ダレイオスサイド:決着の咆哮

「――■■■■■■■」

 

 彼が――ダレイオスが、イスカンダルを目の前にしてとった行動……それは、予想以上にシンプルな物だった。激昂し、真っすぐに襲い掛かる? 否。大声を出して相手を威嚇する? 否。

 彼は、静かに座した椅子から立ち上がって、イスカンダルに向けてその手に持った斧を、ゆっくりと掲げて……打ち合わせた。闘志の高ぶりを見せつけるかのように。

 

「ふ、其方を相手に余は丸腰か……等と思って居るのではないか?」

 

 そんなダレイオスに向けて、その剣を構え……直後、その傍らに青い燐光が収束していく。そして……そこに顕れるのは、先程足止めされたはずのイスカンダルの愛馬、ブケファラスだ。

 

「サーヴァントというのもは、まぁ便利なものよ!」

「■■■■■■ーッ!」

 

 敢えて――という事なのだろうか。ブケファラスを槍で繋ぎ止めさせたのは、寧ろこうしてダレイオスの目の前で、愛馬を暴れさせるために。

 

「とはいえ、我が宿敵を相手では、ブケファラスと共にあっても些か、安堵しきれるという訳でも無いが……まぁいい、行くぞ!」

「■■■……!」

 

 その傍らのブケファラスに跨って、剣を掲げ、イスカンダルが疾走する。それを見て、堂々と掲げた斧を構え、ダレイオスは一歩、また一歩と前へ踏み出していく。両者の速度に差はあれど、両者の距離はドンドンと縮まり……

 

「行けぇい! ブケファラス!」

「――■■■■!」

 

 振り下ろされた剣を、ダレイオスの斧が受け止める。空いた左腕の斧で、ダレイオスがブケファラスの足を狙って振り下ろすが、しかしイスカンダルは愛馬の手綱を引き、嘶くように高く足を上げて避けさせた。

 そのままに、ブケファラスが両足をハンマーの様に振り下ろす。狙いは当然、ダレイオスの頭蓋だ。

 

「――■■ッ!」

 

 しかしそれを、何と片腕でダレイオスは受け止めて見せる。馬の全体重を。イスカンダルも不敵な笑みを一瞬崩し、呆然としてしまう。

 

「……はっ! やるではないか! ブケファラス、もう一撃叩き込んでやれい!」

「■■■■ーッ!」

 

 だがそれで諦める訳も無く、更にイスカンダルはブケファラスを操り、更に蹄を叩き込む準備を整え……その一瞬、そうはさせじとダレイオスが斧を振りかぶった。狙いは、足から胴体へ。もはや、相手を愛馬諸共両断する勢いだ。

 

「ぬぅっ!」

 

 流石にそれを察して、イスカンダルも愛馬諸共引き下がったが、それに乗じ、更にダレイオスが右足から前へと進み出る。相手を粉砕せんと、両の手の斧を振りかざして、堂々と突撃していく。

 

「来るか、良い……駆けよブケファラス! 一気呵成に蹴飛ばすぞ!」

「■■■■■■■■■■■■■ーッ!」

 

 再び激突するダレイオス、イスカンダルとブケファラス。交差させて、切り払わんと迫る二つの斧に、振り下ろされる剣と蹄。金属同士の凄まじい激突音が、空気を振るわせそして……再び互いの武器を大きくぶつけ、絶え間なく音を鳴らす。

 最上級の騎兵と規格外の狂戦士の激突に、その度に砂塵が舞う……どころの騒ぎではないのだ。ぶつかる度に地面は抉れてしまっている。

 

「くらぇぇい!」

 

 イスカンダルの振り下ろした剣が、砂塵を断ち、その時に巻きあがった砂塵を散らして突撃したブケファラスが砂場を抉り、突風を纏って全てを吹き飛ばす。

 

「■■■■■■ッ!」

 

 その突撃に合わせる様に、二振りの斧が同時に振り下ろされる。ブケファラスの突撃の勢いを一撃で断ち切って、さらにその巨体を生かし、力任せに刃を振り回す。それだけで嵐の如き脅威。

 

「猛れブケファラスッ!」

「■■■!」

 

 イスカンダルを引き込むの通路は、何時の間にか、二人が戦う為の舞台になるように広がって、両者の戦いを妨げることは無くなっていた。

ライダーとして、自らの機動力と突進力を全力で活かすイスカンダル。そんな征服王に、ダレイオスはバーサーカーのポテンシャルを最大限に生かし、只管に押す、押す、押す。押してダメなら更に押せ、相手が砕け散るまで、どこまでも押し潰す。斧の勢いは、未だ減速するどころか、さらに加速していくばかり。

 

「■■■■■■ッ! ■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!!!」

「ぬ、ぉお! これはっ……!」

 

 そしてその果てに、僅かに、少しずつ、圧されていったのは……イスカンダルの方であった。疾走から降りぬいた剣を、片方の斧が豪快に弾いた時から、遂に拮抗は崩れ始めたのだ。

 

「これはっ、堪える、ではないかっ!」

 

 ブケファラス諸共に、ダレイオスという嵐に、少しずつ傷を刻まれるその姿。ダレイオスと軍勢を指揮してぶつかるのであれば、間違いなくダレイオスは敗れ去るだろう。 史実に置いて、ダレイオス三世をイスカンダルは破った。間違いない事実ではある。伝承の修正力は、絶望的なまでに高い。

だがそれは、軍勢に置いての話。個人で、サーヴァントとして、激突するのであれば? 話は変わってくる、というより、そもそも前提からして変わってくるのだ。

 

「■■■■■■ッ!」

 

 如何に愛馬との連携で、人馬一体の如き動きで魅せる征服王とて、尋常を遥かに超える巨体、それに見合った膂力を誇る巨人相手は、不利の一文字だった。そもそも、破壊の規模から考えて彼は、人間というより、災害のソレだ。個人で相手すべき現象ではない。

 すなわち……この結果は、最早決まっていた事、なのだろう。

 

「なんとも、コレは……マズいかっ」

「■■■■■■■■■■■ッ!」

「……っ、しまった!」

 

 先ず、一撃が大地を割り、ブケファラスの足を奪った。その一瞬……間違いなく、常に厳めしい表情のダレイオスが、笑った。

 そこから、自らの巨体を生かした体当たり。ブケファラスを突き飛ばし、その上からイスカンダルを引き摺り降ろした。受け身を取ってダメージこそ無いが、その目の前には黒い巨体。

 

「――ふははっ、コレは見事というしかあるまいな!」

ISKANDAR(イスカンダル)ゥゥッッ……!!」

 

 その最初の一撃は……なんと、両方の斧を投げ捨てての、右ストレートから始まった。最早、彼にとって、イスカンダルとの対決には斧という武器の存在すら不要だとでもいうのか。自らの拳で、真っすぐにイスカンダルの頬を殴り飛ばした。

 

「ゴホッ……っはぁっ! 良い拳ゴフゥッ!?」

IィSKANDAR(イスカンダル)ゥゥゥッッッ……!!!」」

 

 更にボディにスマッシュ! 会話をする暇も与えず、更にもう一発腹に。重いボディが二連続。更にそれだけでは終わらず、砲丸の様な膝で、更にイスカンダルを蹴っ飛ばす。そのまま倒れ込むかと思いきや……イスカンダルは、膝をつく事もせず、着地したそのままに踏ん張って見せた。

 

「ぐぐっ……はは、体が軋むわい……! だが、このまま殴られたまま、というのは流石に性に合わぬ!」

「ISKANDARゥッ!」

「最後に一撃位、拳を喰らわせて、終わりにさせてもらうぞっ!」

 

 しかも、そのまま明らかに自分に不利、というのが分かっているだろうにそのまま突っ込んでいくのだ。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!!!

AAAALaLaLaLaLaie!!!

 

 征服王の疾走と、嵐の進撃が、真っ向から衝突する。何方も小細工は一切なし、文字通りの力比べ。両腕をがっぷり四つに組んで、大地を踏み締め……しかし、力の差は余りにも歴然。一瞬、拮抗したように見えたがしかし。イスカンダルの方が、一気にダレイオスの力に押され、一歩、また一歩と退き始める

 

「やはり……っ、無理な物は無理かっ!」

 

 そして、遂に……その掴んだ両腕諸共、ダレイオスは己の宿敵を、天に向けて空高く掲げて見せたのだ。勝利宣言をするかのように。

 

「見事よ、此度はお前の勝ちだ。だが……」

「■■■■■■……」

「次は、負けぬ! また何れ、覇を競おうではないか……我が宿痾よ」

ISKANDAR(イスカンダル)ゥッ!」

 

 ばっ、と両手を離し、イスカンダルが宙に舞う。その正中線に突き刺さる、黒い拳。渾身、全体重を乗せた重厚なブローが、イスカンダルを彼方へと吹っ飛ばす。未だ足止めを続けるレオニダスの頭の上を超えて。

 

「――お見事、ダレイオス殿」

 

 そのまま、イスカンダルは自らの軍勢の後ろまで吹っ飛んで……砂漠の上、堂々と大の字になって転がって……荒い息をついて、起き上がらない。それは、このペルシア・ギリシャ連合軍とマケドニアの、決着がついた証であり……

 

――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ァァアアアアアアッ!

 

 ダレイオスが、自らの悲願を成し遂げた、その証でもあった。

 




軍勢と軍勢→伝承補正で間違いなくイスカンダルの勝ち。
個人対個人→伝承では二人はタイマン張ってないので可能性は未知数ッ! ノーカン! ノーカン! ノーカウントなんだッ!

追記:ちょっと予定が入って、明日は投稿する事が出来なくなってしまったゾ…申し訳ナス!! 明後日は必ず投稿するから許し亭許して。

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