FGORPG ノンケがエンジョイプレイ 作:秋の自由研究
「早速ですがマスター君! 逮捕です!」
「なんでさ」
思わず、といった様子の言葉を、本造院康友は零すしかなかった。そりゃあ、朝食堂に言ったら速攻で逮捕の一言である。ボケている頭も絡まってそう言わざるを得ない。人として生を受けて十数年、おてんとさんに顔向けできない部分など……まぁ、文字通り顔は向けられるかどうかわからないが。
「……なんだ、女性サーヴァントから『カルデアに妙なチンピラが!』とか通報でもあったか? 誤解を解きたいからその人の元へ連れて行ってくれ」
「あ、いえすみません。逮捕というのは言葉のアヤです。実際マスター君は私に逮捕されても文句言えない顔してるとは思いますけれど」
「おいゴラ」
思わず傍らのバットを掴んでしまう。もはやそれは周知の事実とは言えど、ここまでドストレートに言うのはちょっと……流石に悲しいというか。言い方を考えて欲しかった。
「付き合って欲しいだけですよ。ちょっと、検挙したい所があって」
「検挙ぉ?」
「そうです。実はとある特異点にて、不審なアルトリウム反応がですね……この反応は私としても、見逃すわけにはいかないというか」
もうこの時点で帰りたかった。アルトリウム反応とかいう、下手するとぐだぐだ粒子以上の厄ネタ。こういうのは立香の担当だろう、と周りを見回せば……最近加入して来た謎のグッパイセンに絡まれている。取り敢えず頼りにならない事だけは分かった。
「というか、初対面からセイバーウォーズ2まで。バディを組んだ私の誘いですよ? 素直に乗ってくれたっていいじゃないですか」
「だからだよ。お前さん、どれだけハチャメチャしたかもう忘れたと申すか」
目の前の女性サーヴァント……謎のヒロインXXとは、喜ぶべきなのか、嘆くべきなのかは分からないが、どうにも合縁奇縁で結ばれている。サバフェスの頃合いから始まりそして、あのトンチキ特異点でも、立香を救う為に共闘した。その高い実力は確かに頼りになる。なるのだが……
『うぅ……お願いします……養ってください……事件解決まで……』
『フォーリナー反応! え? 目的の奴とは違う? いいえフォーリナー反応を叩くのが私の任務ですので! あ、ちょ、腰にしがみ付かないでください!』
だの。
『いやぁ頼りになる助手を携えての宇宙の旅は最高ですねぇ! あ、マスター君ご飯の準備お願いします!』
『あれ? マスター君どうして念仏なんか唱えてるんですか? おーい?』(風呂上り)
だの……抱いた苛立ちは天井知らずである。思わず怒りゲージでご無礼も辞さぬ。
このXXというサーヴァント。その実力でも補え切れない程に残念な部分もまた多い。完璧な人物など存在しない、その見本のような人物なのである。因みに上記四つ目だけは本気と書いてガチの説教をかました。嫁入り前の女が肌を晒すとは何事か。まぁ人それぞれだとしてもせめて、せめて最低限肌を隠せ、と。
『うーん……じゃあおねーさんの事、マスター君が貰ってくれます?』
とか言う一言で説教の量は僅か一瞬で五倍近く増加した。発言に気を付けろと、後で会話ログを見直したら三十回くらい言っていた。
「……記憶にありません!」
そしてこれである。残念の見本市の様な人ではあるのだが……しかし、何の根拠もないような事を突然言い出す様な悪辣さは無いのは知っている。なんだかんだ言って真面目でサバフェスの時も、セイバーウォーズの時も、黒幕への強力な一矢になってくれた。
「……ったく、分かった分かった! 特異点に関しては俺も見逃す訳にゃいかんからな。付き合うよ!」
「本当ですか! やりました! マスター君が付いてるなら百人力ですとも!」
故に、こう言ってしまうのは必然というか……しかし、流石にこのサーヴァントと二人っきりで事件解決、となると間違いなく自分の健康レベルは低下するだろうと。
「で、何処なんだ其処は。場所を教えろ。茶々っと解決して帰るぞ」
「あの大阪の子ですか?」
「遠からず……じゃなくて、関係ないから。うん」
どうにもカルデアに沢山のサーヴァントが増え、その個性も強いためか……何というか頭に残ってしまう事はあるので。今回はその一例だと思いたい。
「まぁでもちゃちゃっとは無理だと思いますよ?」
「……なんでだよ」
「いやー、実はその特異点の規模なんですけどもね? あのー……新宿って所があるじゃないですか。あそこの地下丸々、何かに使われてるみたいで」
……?
「はぁ!?」
「XXちゃんの言う事は紛れも無い事実なんだよねぇ。いや、立香君か君に解決を依頼しようと思っていた時に急に飛び出して行っちゃったから説明が遅れたけど」
「マジで新宿の地下に、新宿の特異点の半分を丸々使って……」
頭が痛くなってきた。それだけの場所を使って、作るのがアルトリウムとは。いや希少な物資であることは間違いないのだろうが、しかし何かが間違って居る気がしないでもないと思う。
「……なんで新宿なんだ? ダ・ヴィンチちゃん」
「新宿を根城にしていた悪徳魔術使い達、居ただろう? なんというか、完全に野良の輩達とかがさ」
「あー……居たなそんなん」
「居たんですか? もしかしてそれも私が仕事しなければならない案件ですか?」
それは間違いないとは思うが……しかしながら今回はそれ『も』ではなく、それ『を』だとは思う。ダ・ヴィンチの喋り方からして。
「で、その悪徳魔術使い君達はどんな物でも使う主義だ。あのアルトリウムとかいう謎物質でもあっても。まぁ寧ろ、あの悪食新宿じゃなければ多分、あんなバカな物が有っても捨てられるだけだったと思うよ」
「つまり何でも使う主義がアカン方向で出て来ちゃったと……ぐだぐだ粒子なんかも渡しちゃいけねぇなあれは」
渡した途端にぐだぐだ新宿~幻想英霊七番勝負~とか開始しかねない。なんか混ざっている気がする。気にしない。泣きたい。
「で、それでスペース・レオナルド。そのアルトリウムの量なのですが」
「スペース・レオナルドって結構カッコいいよね。まぁそれは兎も角、アルトリウムの量だっけ? いやぁ聞いて驚かないでよぉ? ギルガメッシュの全力全開の宝具に匹敵……いや多分凌駕するレベルのエネルギーを発する量が貯蔵されてると来た!」
「……もうそれは違法所持とかそういうレベル越えてますよ!?」
「私としては速攻この危険物質をどうにかして欲しいわけ。今の新宿は特異点全部核爆弾みたいなもんだから、起爆したらまーた
笑いごとではない。XXもここまでの事態は全く想像していなかったようで、頭を抱えてしゃがみ込んでいる始末。あのあっけらかんとした性格が特徴のXXが、である。
「これはコスモ刑事として最低限の職務を全うしないと……フォーリナーハンターやってる場合じゃないですよ……!」
「というかアルトリウムってユニヴァースでもドチャクソ希少なもんじゃないのかXX姉さんよぉ!? なんで新宿の地下にそんなもんがパンパンに埋まってるんだ! 説明してくれ頼むから!」
「あ、お姉さんっていうの良いですね。今度からはそう呼んでください。年上ですし」
「今んな事言ってる場合かぁ!?」
やっぱりいつも通りだった……とはいえ、流石に彼女も現状の危険さは理解しているのか調子を取り戻して尚、少々と顔色は良くない。
「弱りましたね……これだけ大規模な摘発になるとは。マスター君だけでは人手が足りないかもしれません」
「応援呼ぶか?」
「そうした方が良いでしょうね。でも、誰を呼びましょうか」
彼の禿げた脳裏に浮かぶのは……白百合の騎士、妖艶な女怪、誰よりも頼りになる女流作家、その他自分が一番頼りにしているサーヴァント達なのだが。生憎とその誰もが予定があると言っていた。それ故に、今日は久しぶりに自分も一人で過ごそうと考えていた位で……
「XX、誰か候補は?」
「マスター君こそ、あのフランスセイバーとか、スネークウーマンとか、それこそ紫式部先生とか、他にも居るじゃないですか」
「全員今日は非番を謳歌してるよ。邪魔は出来ない」
「人理の危機なのに……」
確かに人理の危機だが、こんなスカポンタンな人理の危機で折角の非番を潰すのは流石に可愛そうな気がした。本造院康友君はサーヴァント達に優しいのである。
「……仕方ないですねコレは。何とかこの人理の危機を共に救ってくれる頼もしいサーヴァントを探すしかないでしょう!」
「つっても、誰を誘うかねぇ……」
思考を回す。誰が良いだろうか。こんな、スットコドッコイな人理の危機に巻き込んでもいいサーヴァントが良い。巻き込んでも罪悪感の無いサーヴァントが良いのだが。そう上手く行くのかは、神のみぞ知る、と言った所である。
その神はどうやらハゲの嫌いなクソッたれビッチな女神さまだった模様で……このようなメンツが、三十分程後には集っていた。
「ねーねーヤスー。わたしたち、これ終わったら何か食べたい」
「おう。任せろジャック。こんな事に巻き込んじまった詫びだ、すっからかんになるまでやってやるからな……!」
「わーい」
「まぁマスター。そこまで思いつめるな、気楽にいこうぜ?」
「いや、この明らかにヤバい雰囲気で気楽にって方が無理じゃないっすかね……伝説の狩人はやっぱ違うんだなぁ……」
「そういうのは違うと思うわよ? でもアルトリウム……実にマハトマを感じる名前、楽しそうね!」
「なんじゃこれカオスワロタ。沖田にラインしたろ」
こんなスカポンタンな人理の危機に巻き込んでしまい、本当に申し訳ない。二人を除き彼は、参加している全員に土下座したくなった。
誰が一話で終わると言った……?
三話位に話が膨れ上がりました。幕間の物語って結構難しいんだね!