FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

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藤丸視点:竜魔対蛇盾

 飛竜がいる。その向こうには、巨大な黒竜が居る。

 竜殺しを探していた俺達を嗅ぎ付けた黒いジャンヌは、リヨンへと凄まじい数の軍勢を差し向けてきた。兵隊も、対象も、全てが竜の、文字通りの竜騎兵(ドラグーン)。サーヴァントなど必要ない、と彼女が言い切れるのも分かる戦力だ。

 

「流石は竜の魔女を名乗るだけはある!! なんという数の竜!」

「レオニダス王! 一度下がって態勢の立て直しを! 今度は私とジャンヌさんでカバーします!」

「承知しましたマシュ殿!」

 

 けれど。そんな圧倒的な軍勢を前にしても。

 強い。大盾が、槍が、旗が。群がる飛竜達を次々打ち払う。砦で戦った時とは全然比べ物にならない数なのに。寧ろ、今の方が力強く、戦っている様にすら見える。俺に力を貸してくれるサーヴァントの皆が、本当に心強い。

 

「俺なんか、零れた奴の処理が精いっぱいだ! っだぁあ!」

「……やはり、俺も……ワイバーン程度なら」

「大丈夫です! 弱いですけど、此奴らを追い払う、だけなら……!」

 

 翻って自分が情けなくなる……それでも。後ろのジークフリートさんを守るのは、俺の役割だ。ここで引き下がるわけにはいかない。そんな弱気、今は捨てろ藤丸立香!

 

「マスター! 戦線を下げます!」

「分かった! ジークフリートさん、ちょっと担ぎますよ……っ!」

「……ありがとう、すまない」

 

 この数を引き連れて逃げ出せば……どれだけの被害を生むか。ファブニールはどうしようもなくてもせめて、この場のワイバーンは全滅させてから撤退する、とみんなで決めたんだ。ジークフリートさんを連れて逃げ出せるようになるまで、気を張り続けろ。

 空を埋め尽くすほどだったワイバーンは、確実に数を減らしている。もう少しで逃げ出しても問題ないくらいになるだろう。

 ファブニールの攻撃も、先程から散発的で、脅威ではあるが、マシュ達でギリギリ凌ぎ切れる程度に収まっている。

 

「ふざけるな……どうなってるのよ! これだけのワイバーンに加えてファブニールまで居るっていうのに……! 足手まといもいる、たった四人のサーヴァントをなんで! 潰し切れない!」

「――激昂している余裕がおありですか」

「っ!? ファブニール……っ」

 

 それを支えてくれているのが、メドゥーサさんだ。

 鎖でワイバーンを蹴散らしつつ、時折ファブニールの翼の付け根や、足の付け根を静止させてファブニールの動きを妨害してから撤退するという流れを繰り返している。

 

「クソッ、その、その()()()()()()さえなければ……!」

 

 向こうにファブニールありなら、此方にはメドゥーサさんあり。

 ギリシャにて、見たものを石化させる力を持つ強者。その眼は、魔眼って言う物の中でも最高峰に位置する石化の魔眼(キュベレイ)という物らしく、あのファブニールにすら通じる力を持つ。

 

「まぁ、一瞬足止めをするので精一杯ですが。とはいえファブニールも、自分の思う通りに動けないというのは初めての経験のようですね」

「蛇……蛇がぁ!」

 

 黒いジャンヌは怒り狂っている、けど分かる。アレは焦ってもいるんだろう。嘲る様な笑みと一緒に、自分が優位だっていう態度が消えてる。

 ファブニールにすら通じる魔眼に、守勢の強さ。それが彼女から余裕を奪っているんだ。向こうの方が優勢なのは間違いないけど、それでも流れはこっちが掴んでいる。後はドクターに逃げ出しやすいようなルートでも割り出して貰えれば……!

 

『やー、味方が見つかって良かった良かった……ってなんだぁ!?』

「ドクター! 漸くつながった!」

『いやそれはいいんだけど、ちょっと本造院君の方に集中してたらエライ事になってないかいそっち!?』

「いいからスムーズに逃げ出せるルートの割り出しをお願いします!」

 

 そう思っていたら、丁度来てくれた。どうやら康友の方へ通信を繋いでいたらしい。繋がらない訳だ。

 

『まってなんか凄い魔力反応が君達の周りにあるんだけど……!? え、これ竜種とかいるんじゃないの? それも超ド級の奴』

「居ます! ファブニールって奴!」

『めっちゃヤバい奴じゃないか!? 神話級の竜種!?』

「でもジークフリートさんって人が見つかりました!」

『へ? ファブニールを倒したっていう!? か、カウンターで呼ばれていたんだな! はーそれは一安心だ』

「とても戦える状況じゃないですけど!」

『うそぉお!?』

 

 混乱している。正直そうなる気持ちも分かるし、そうなってしまう位畳みかけている自覚もある。後で謝るから、早く逃走する為のルートを……っ!

 

『ちょちょ! マズいって! 本造院君達の方にこれ知らせないと』

「え? 康友たちに!?」

 

 ……この状況、正直助勢があるのはありがたい。今はなんとか流れを掴めているが、何時それが俺達の手を擦り抜けていってしまうかは分からない。でも、康友が居れば、百人力だし。式部さんとアマデウスの妨害があれば、逃げる時によりスムーズに逃げ切れるかもしれない。助けに来てもらった方が……

 

「どうなされましたマスター!」

「や、康友達が、こっちに来るかもって!」

「――それはなりません!

 

 えっ!?

 

「ど、どうして……」

「確かに助勢を待って反撃するのは常道ですが、今は我々が不利! そこに本造院殿達が来ても戦力の逐次投入の愚を犯すだけ! 彼らを巻き込む前に、ここは我々だけで逃げ切らねば!」

「っ!」

 

 ――馬鹿か俺は。レオニダス王の言う通りだ。

 こんな状況に巻き込むような事、しちゃいけない。例えどれだけキツかったとしても、安易に負担を背負わせるような事……今、何とか自分達で逃げ出せるかもしれないというのに猶更だ。

 

「……ドクター! とりあえず救援はいりません」

『……え? いい? 救援は要らないって!? 君達どういう思考してるの!?』

「こっちは俺達だけで何とかなりそうなんで! 大丈夫です!」

 

 取り敢えず、それだけ言って視線を前へ。

 俺達は、マルタさんから教えてもらった、竜殺しを探すため、そして康友に無理をさせないように、態々分かれて探索を開始したのだ。それなのにピンチになったら力を借りるなんで。何のために分かれたのかわかりゃしない。

 

「レオニダス王、ごめん……それとありがとう!」

「礼などいりません! それと王は要りません、ただレオニダスと! 共に窮地を切り抜けましょうムァスタァ!」

「……っ! 分かった! レオニダス」

 

 その一言と共に、レオニダスの槍の一閃が竜の首を刈り取る。誰よりも先頭に立ち敵を押し返す姿は、ここに居る誰よりも頼もしい。彼に跳ね返せない逆境など、想像できない!

 

「――はい! 寧ろ、やっさん達に行くかもしれないワイバーン達を、ここで減らすつもりで応戦します!」

「ファブニールにも、もしかすれば傷の一つくらいなら!」

「その意気ですぞ御二人共ぉ! 逃げるにも方法があります! 竜の魔女が悔しがるような()()()()()を勝ち取って、凱歌と共に帰還いたしましょう!」

 

 他の何者をも、鼓舞し、引っ張る。先陣を切る王。

 これがスパルタ。これがレオニダス、という英雄なんだ。

 彼の事がより深く知れた気が少しして、嬉しかった。こんなに凄い彼が自分なんかの下で戦ってくれているのが申し訳なくて、それ以上に誇らしかった。

 

「……流石だ。レオニダス」

「本当に、俺なんかには、もったいない……」

「いいや、君も。良い主従だと思うぞ」

「え……」

 

 良い、主従。そう見えるのだろうか。

 今もレオニダスに守ってもらいっぱなしで……彼の忠告が無ければ、他の仲間を危機にさらす所だった。そんな俺が……

 

「例え失態をしても……サーヴァントからの言葉を受け入れ即座に直す。それが出来るだけでも良い関係を築いていると言える……全く、俺とは大違いだな」

「そんな……」

「それでも、自分が未熟だというのなら、これから……彼らと共に、直していけばいい」

 

 ジークフリートさんの視線の先、シールドで敵を押し返す、二人が見える。レオニダス。マシュ。俺の、大切な仲間。ああそうだ。彼らと一緒に、戦って、俺も……!

 

「……ありがとうございます!」

 

 お礼と共に前へ踏み出す。何時もより、体に力があふれる気がする。疲れも消し飛んだように、足が軽い!

 彼らと一緒にあれる、自分でいる為に。得難い仲間を失わない為に!

 

「踏み出せよ、藤丸立香!」

 

 俺は、前へと進むんだ!

 




マシュもジャンヌも居ますけど、ここはこの二人をフォーカスさせてもらいました。書きたいものが書けて、オラ満足や……! あ、小説自体はまだ全然書きますよ~書く書く!

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