FGORPG ノンケがエンジョイプレイ 作:秋の自由研究
新宿の夜闇、電気すらない深夜。月の光に照らされる白い髪。肌。そして幼い体躯には余りにも不相応な……大振りのナイフ。それをまるで見せつけるように腰に下げて、楽しそうにゆらゆらと少女は揺れている。
その少し先には、広大な地下へと続く底見えぬ階段が一つ。
「……じゃあまぁ、これより状況を開始するかね。先ずはジャック! 早速令呪の大盤振る舞いだ。地下を霧の都に沈めてやりな」
「――おっけい」
にやりと笑い、先ずはアサシン、ジャック・ザ・リッパーが前に出る。直後、彼女の近くに現れたランタン、そこから湧き出したスモッグがゆっくりと階段を伝い、シュルシュルと地下へと流れていった。
「どれくらいかかる?」
「んー、すぐには無理、だと思う」
「オーケイ、気楽に待とうじゃないか。じゃあ今の内に作戦の確認をしたい。構わないな諸君」
――作戦といっても、シンプルである。
要するに相手に一切の抵抗を許さない電撃戦。ジャックの宝具で弱体化&視界を封じて一気に地下に居る敵に打撃を加え、突破。最悪倒さなくてもいい、ダメージを与えジャックの宝具、
「前衛はXX、信長公。中衛にマンドリカルド。後衛にエレナさん、テルさん。遊撃をジャックが担当する。速度が重要だ、足を止めずに駆け抜けるから、逸れないようにするのが注意事項。大丈夫かな?」
「えっと……因みに俺が中衛の理由は?」
「前衛、後衛をカバーできそうな君に任せたいんだ、期待してるぜマイフレンド」
「プレッシャーが重ぇえええええええ!?」
因みにこの人選は、取り合ず人材を探す為に雑に頼った信長(水着)がやってくれた。コレをどう生かすかはお主ら次第、との事だった。
「わはは、とはいえワシを前衛に置くとは余りに奇抜過ぎてノッブもビックリじゃ!」
「信長公にはあのギターでのガリガリ突撃あるし、突進力はあるかなと」
「まぁ悪くは無いと思うぞ。XXに合わせられるのもワシくらいじゃろうし」
稀代の戦略家、信長にそう言って貰えると悪い気はしなかった。とはいえ後衛に関しては完全に遠距離持ちの二人を固めただけである。伝説の猟師にして狙撃の天才、ウィリアム・テル。マハトマに通じる新機軸の魔術師、エレナ・ブラヴァツキ―。この二人のスペックを果たして生かし切れるのだろうか。
「お二人共、宜しく」
「おう。随分とお膳立てして貰ってるからな。やれるだけはやるさ」
「敵の索敵と火力支援。何処迄両立できるかは分からないけど……頑張ってみるわ!」
一応二人の能力を最大限生かす為のジャックの宝具である。此方を隠しながら相手を一方的に弱らせ、エレナに索敵をお願いし、発見した敵をテルが確実に射貫く。見えてない敵でも位置が分かれば当たるか、問いかければ「まあ行けるだろう」との事だった。
「あの、私だけ指示無いんですけどマスター君」
「アンタは好き勝手に突っ込んで破壊していってくれ。俺達が付いていくから。先頭でアルトリウムを悪用しているロクデナシ共をドンドンしょっ引いてくれ。俺もついていくからさ」
「成程! 考える必要が無いのは良いですね!」
指示は出していない。出していないが、しかしながらここで一番重要なのはXXなのである。実はこの中で一番破壊力、突破力、機動力、あらゆる攻撃面でずば抜けているのはXX、彼女が一気呵成に突撃するだけの事が十分戦略になるのである。
正直な所、
「……自分、あの人のカバーできるんでしょうか」
「頑張れマイフレンド。お前の慎重派な所を俺は信じてる」
「期待も重ぇええええええええ!?」
尚、行かせるままに突撃させると止まらなくなってしまうのでカバーは必須ではあるのだが。等々、色々考えての配置な訳だ。
「ヤスー、おわったよー」
「お、サンキュなジャック。じゃあ後は皆について行って、好き勝手暴れてくれ」
「はーい」
後は何処まで敵の戦力が居るか。余りにも多い場合は、撤退も視野に入れないといけない。要するに、後は自分の指揮次第。前線で鉄砲玉やってる方が性に合っているだけにどうにも気が重い。
「じゃあXXの姐さん。不法アルトリウム所持でガサ入れの時間だ。全員しょっ引いてやってくれ。遠慮はいらない」
「了解! 地球、ニホン時間で夜一時……全員、突入です!」
その一言と共に、XXが普段の軽装から、重装備……フルアーマーモードへと換装し地下へと突っ込んでいき、その後に皆続く。足元も見えない霧の中だがそこは皆サーヴァントである。この程度の事でこけたりはしない。尚エレナだけは康友が抱えて行っている。
「ごめんなさいね」
「移動になれてないからしょうがないですよっと」
全員がガンガンと音を立てて降りて行ってるが、特に何か反応が有る訳ではない。やはりこの霧で大分内部は混乱しているのだろう。そうしている内に階段を下り終え、広い空間へと全員が到着した。
「到着! じゃあこっちから行きますか!」
「了解じゃ!」
一応灯りは灯っているようだが、殆ど霧で機能していない。目の前の仲間の背を追うだけの視界しか確保されていない。それでも。
「――い、一体何なんだコレは……!?」
「はーい逮捕ですよスラ―ッシュ!」
「そーれ追撃のノッブフレイムじゃあ!」
「な、げぇべぇ!?」
XXの尋常ではない能力は、全く関係なく向かう先の敵を捉え、撃破する。狙ったかのように敵の塊に斬り込み、蹴散らし、その散った相手を信長が軽く薙ぎ払って駆け抜けていく。
「ええい、進路確保確保……っ! 後ろ、大丈夫すか!?」
「問題ない……そこだっ!」
「次、右から2時、12時、9時よ! 後方にあぶれたのは私が!」
「了解した!」
その残りは、中衛、後衛のメンバーが迅速に処理。マンドリカルドの慎重な性格が確実に後衛の邪魔を排除。安心して索敵を行うエレナの指示を受け、テルが狙撃で手早く処理して、残りへの牽制はエレナが行う。
全くもって隙も、油断も無い。最大の力である数の強みを、ジャックの宝具でほぼ封じられてしまっているような相手には余りにも過剰な暴力だった。
「XX! 今の所どんな感じだ!?」
「あらかじめマッピングしてある新宿地下の構造が間違って無ければ、もう半分以上は制圧したと思いますよ! 多分ですけど!」
「順調じゃな!」
順調、というのも少し弱いレベルであっさりと突破は行われていた。信長の千里眼の如き戦略眼の空恐ろしさを知った。指揮が得意でない自分ですら、ここまでの成果を出せるのだから。
「信長公が力を貸してくれて助かったよ! お陰で楽に済む!」
「褒めるのは当然じゃが、気を抜くでないぞ!」
「はいはい! まだ終わってないからな!」
とはいえ、もう制圧もそろそろ終わる頃合いだ。そろそろ気を抜けるようになるとは思うのだが……そこであなたは、ある一つの疑問を口にした。
「そういえば、なんでバーサーカーのままだったんだ?」
「あぁん?」
「アーチャーで良いじゃないか、と思ったんだよ。XXの破壊力があれば、一人でも前衛は十分熟せたはずだし!」
先も言った通り、XXのパワーは尋常ではない。一人でも十分戦略兵器となる様な彼女なら、一人でも十分前衛を熟す事は出来て……態々信長がその隣に立つ必要は無い。康友は、助言だけした後、彼女はこのトラブル解決には出向かないのではないか。とすら考えていた……彼女の性格的に。
だが、それどころか彼女は自らこの特異点に来ることを進言したのである。
「……妙じゃと思わんか!?」
「妙?」
「ダ・ヴィンチの奴は、XXの奴にアルトリウム反応の事を聞いた、という話じゃ。だがあ奴そこまでアルトリウム反応に拘っておった訳でも無い。謎刑事の勘が発動するきっかけがあったとすれば、奴が反応するのはセイバーか若しくは……」
――
「……」
「しかもアルトリウム、というのは採る事は出来ても作り出せぬものと聞いた。ここはサーヴァント・ユニヴァースとやらではないから採掘場所などある気がせん。ではアルトリウムは何処から来たのかのう!」
そう言われれば……と思考を回そうとした、その時だった。
「待ってくださいマスター君コレ……」
「どうした?」
「いえ、気のせいだったらいいんですけど……フォーリナー反応らしきものが」
背筋が凍る。信長を振り向けばその顔を間違いなく顰めていた。バーサーカー信長、という単騎相手に強い状態になったのは、コレを考えての事だったのか。
「場所は?」
「ここ……新宿地下ですよ!」
XXのスキル:刑事の直感E
犯人を突き止める為の天啓。
謎のヒロインXXの場合、事件解決においては使わない方がいいランク。 理屈を無視した異次元のひらめきで事件解決の為のヒントを周囲にバラ撒くが、このスキルを使用したXX本人は決してそのヒントに気付かない。場合によってはデメリットがメリットになる、実はとても優秀なスキル。
まぁ、そういう事です。