FGORPG ノンケがエンジョイプレイ 作:秋の自由研究
――そこに行ったのは、多分偶然だった。
『……最後に一晩だけ。一人で考えてみたいの。ごめんなさい』
マリーさんにそう言われて……二人の事を詳しくは知らない俺は、『危ない所にはいかないでください』と、一言だけ言うしかできなくて。無力感を感じて。それで、少し用を足してくる、という言い訳をして……弱音を、吐きに来たんだけど。
『後悔しない選択を……君と立香なら出来る。大丈夫だ。俺がドンと保証してやるよ』
「……康友」
後悔をしない生き方を。それが、俺とマシュならきっと出来ると。弱ってた自分の背中を蹴っ飛ばしてくれた気がした。
「ありがとうな」
何となく、直接あの場に乗り込んで言うのは照れくさいから、今はしないけど……後で改めて。礼を言おうと思う。あのハゲ頭の、何時も前向きな友人に。
そうだ、マリーさんにも、出来るだけの事をしよう。知らないなんて、そんな言い訳は要らない。まず知る努力をしてから、それからだ。後悔する選択なんて、しないように。そう思って戻ろうとした時、視界に、人影が。
「――貴方達の事を余程信頼しているようですね、我がマスターは」
「あ、メドゥーサさん」
向こうで休んでいた筈の、メドゥーサさんだった。
「まぁその気持ちも分からないでもないですが……貴方達二人の在り方は、私の様な輩には些か眩しいほどに輝いていると思いますよ」
……なんというか。サーヴァントはその人物と相性のいい人物が呼ばれると、ドクターに休暇の一週間の間で教わったけど。メドゥーサさんはまさにその典型だろう。康友もメドゥーサさんも一切言葉を飾らないし、遠慮なく色々言う。
気質は……まぁ、彼奴とは全然違うけど。ストレートに褒められると、照れる。正直。
「あ、ありがとうございます……えっと、どうしてここに?」
確か皆が居るのは向こうの焚火の方向だったと思うけど……夜風にでも当たりに来たとか?
「私は何方かと言えば一人を好むので。一人で居れるような場所を探していたのですが」
「あ、そうなんですか」
「それに……私は彼女が苦手なので。あまり同じ場所に居るのは」
彼女?
「マリー・アントワネット王妃ですよ」
「マリーさん?」
「えぇ。嫌い、という訳でも無いのですが……どうにも気後れ、というか、凄まじい違和感で倒れそうになる、と申しますか」
「違和感、ですか?
確かに、マリーさんは純粋で明るい人けど、それが苦手っていうのはちょっと不思議だ。
「ああいうアイドル気質の方は、少し……私の知っている二人を思い出して。けど性格が、素直で、純粋で……想像してしまうと、自分でダメージを負ってしまうというか……気が付いたら勝手に立ち直っていそうな、結構逞しいという、共通する部分もあるとは思うんですけど」
「そ、そうなんですか……えっと、大変ですね? って言えばいいんでしょうか」
「お気遣いありがとうございます……大丈夫、とは言い切れませんが、なんとか、頑張ってみたいと思っています」
そういう割に物凄い深いため息ついてるけど……うん。後悔するような選択はしないって、決めたばかりだし。その始めの一歩だ。
「えっと、その。悩みだったら、話した方が楽になるって言いますけど。俺で良ければ、話聞きましょうか?」
「……いいえ、これはあくまで個人的な問題ではあるので、話す意味も無いですし」
「けど、そんなに凄いため息ついて。気にするなっていう方が無理ですし……」
平気そうに見えるなら良いんだけど。全然そう見えないっていうか。だったら、サーヴァントの相談に乗るのは、その、マスターの仕事じゃないかなって思う訳だけど。いや遥か昔に生きてた凄い先輩の相談に乗るなんてそうそう簡単に出来る訳ないとは分かってるけど。
「今がどうしても無理っていうなら、何時か折を見て……俺が嫌なら、康友に。貴方のマスターにでも話してみるのはどうでしょうか。やっぱり、抱え込んでるとストレスになりますし、俺達に手を貸してくれるんですから、出来る事はしたいと思うんですよ。だから……その」
「……」
「俺達に、貴方達の力にならせてくれませんか」
……自分で言ってて、何言ってるかも分かんないし、結構臭い事言ってるかもしれないし……アレ、言っててなんか恥ずかしくなってきた。
「す、すいません。その、お節介でしたかね! そうですよね迷惑ですよね! すいませんやっぱり……」
「いえ、貴方も彼も、同じような事を言うのだなと、驚いていただけです。その様に考えていた訳ではありませんよ」
「……そ、そうなんですか?」
表情からじゃ正直分からなかった。あんまり表情変わらなかったし。
「えぇ。マスターも、そんな事を言っていたので……そうですね。貴方の言う通り。腹の内でグツグツとさせたままで居るよりも、話して少しでもスッキリした方がこの泡沫の夢を楽しめるでしょうから……えぇ。マスターにでも今度、愚痴代わりに話してみようかと思います」
「――! はい! 思いっきり話して、こき使ってやってください!」
……自己満足かもしれないけど。うん。一つ、役に立てた気がして、何となくうれしい。
うん。これがマスターとして、後悔しない選択肢なんだ。サーヴァントの皆さんに寄り添って、出来る事をする。忘れないようにしよう。
「ありがとうございます藤丸。面倒を避けようとして、余計な面倒を抱え込むところでした」
「はい……え? 面倒?」
「いえ、なんでも。それでは、私はこれで……マシュと見張りを交代するのであれば、声をかけてください」
「あ、はい。わかりました。っていうか態々言うって、交代したいんですか?」
「まぁ、怪我人のマスターの近くであれば、静かに休めると思うので」
あ、間接的に一人で居れるような場所になりえると……この人、意外にちゃっかりしてるなぁ。図太いっていうか。やっぱりどこか康友と似てる気がしないでもない。頬の傷が触媒って言ってたけど、本当は縁での召喚だったりしないだろうか。
「ま、まぁ。今夜は大丈夫だと思います。はい」
「そうですか。であればこれで。何かあればお呼びを……では、お休みなさい。
そう言葉を残してメドゥーサさんは消えてしまった。霊体化したのだろう。何処で休んでいるかは分からないが、近くには居ると思うので大丈夫だと思う。
「……なんていうか、ミステリアスな人だよな。メドゥーサさん」
マシュとは全然違うというか……あんまり、年頃の少女と接した経験のない俺としては正直、どう接したらいいのか、距離を掴みかねるというか。言葉の端々には、妙な説得力があった気がするけど。最後の言葉とかも、良く分からなかったし。
「俺もそろそろ寝ようか……康友の体力が回復し次第、オルレアンへ進撃。だからな」
何時でも戦えるように、調子を整えておかないと。
……朝の陽ざしが眩しい。誰かに揺り起こされている。あんまり強くない。レオニダスだったら揺り起こすというより、総員起こし、と言う方が正しいようなモーニングコールが飛んでくるので、これは。
「おはようございます。先輩」
――俺の予測通り、そこに居たのは、マシュだった。
しかし、マシュは康友の監視をお願いしていたのだが……康友が要らないと固辞したのだろうか。そこまで監視されている、と言うのが嫌なのだろうか。
「マシュ……どうしたの? 康友が、見張りは要らないって?」
「あ、いえ。そうではなくてですね。メドゥーサさんが」
「メドゥーサさん?」
あの人がどうしたのだろうか。
「朝になったので見張りの交代の時間だと……先輩がそうおっしゃっていたと」
「……あの人」
今夜は大丈夫ってそういう意味じゃないんだけどなぁ……いや、もしかしてそれを分かった上で、一人で居る口実を作る為に利用したのかもしれない。
「なんか、しれっと嘘をついている顔が想像できる……」
「?」
「あ、いやなんでもないよ。うん。交代の時間で大丈夫」
とはいえ、別に自分のマスターを護るのは可笑しい事ではない……と、ロマニは言っていたので。大丈夫だと思う。だから変にメドゥーサさんのイメージを下げるようなことを言う必要は無い。うん。沈黙も金だ。
「さ、今日も一日頑張りましょう、先輩」
「うん」
可愛い後輩の声に、体を起こす。そろそろオルレアンの攻略に乗り出す頃合いだ。気を引き締めていかないと。
「――えぇ、立香! お早う!」
そう思って立ち上がった時、聞こえて来たその声に、目を見開いた。
前日とは明らかに違う、張りのある、透き通った声。間違いなくあの声は……彼女と初めて出会った時の声だ。
「……マリーさん?」
「えぇ! ごめんなさいね、心配をおかけしてしまって……ジャンヌにも、マダム・式部にも後でお礼を言わないと。もう、大丈夫よ!」
一発で分かる。言葉を交わす必要もないくらい。まるで不死鳥の様に。沈み込んでいた淵から、見事にマリーさんは蘇った。輝ける王妃として、立ち直ったんだ。
「良かった。もう、大丈夫なんですね」
「大丈夫、かは微妙だけど。けど立ち上がらないという選択肢だけは、選ばない事にしたから。だったらもう、後は立ち上がるだけでしょう?」
凄い。
きらきら輝く、王妃様。彼女が何故処刑されたのかが、分からない程に。彼女は今、人を引き付けるカリスマを放っていると思う。完全復活だ。
「あ、そうだ。立香! メドゥーサさんに、後で伝言を頼めるかしら」
「え?」
「――
……そ、それは。
「もしかして、昨日マリーさん、その」
「ふふ。あぁ、そうだわ。康友にもお礼をしないといけませんわね。それじゃ!」
あ、行っちゃった……はぁ~、そっか。昨日、マリーさんは……なるほどなぁ。
「スゲェな康友。お前、歴史上の偉人を勇気づけてんぞ」
基本的にいい子で真っ直ぐなのが藤丸君。
基本的に漢の子で猪突猛進なのがホモ君。
そんな感じで書き分けて居る積りで居ます。