FGORPG ノンケがエンジョイプレイ   作:秋の自由研究

6 / 271
幕間の物語:XXの事件簿・新宿編 その四

『――解析結果が出たけど……聞く余裕はなさそうだねコレは!』

「ある様に見えたら万能の天才の目はとんだ節穴だよ!」

 

 叫びつつ、自らに対し振るわれた黒い霞の様な爪を辛うじて回避に成功する。大暴れするは、正体不明の影の如き悪鬼。部屋に充満していたアルトリウムを媒介に、黄金のXオルタが呼び出したそれは只管に康友達に向けて殺到する。

 

「もぅっ! しつこいよ! えぇいっ!」

「ったく、尽きる事ない獲物ってのは一度は夢見るもんだが……実際だと悪夢だな!」

「この馬鹿みたいな数相手じゃジリ貧っすよ!」

 

 決して動きが良い訳では無いが、しかし数が数。頭数自体も多いが、減った傍からオルタ擬きが雑に数を増やす。一度全力で突破を試みたのだが、逆に数に圧され……こうして分断されてしまっている訳である。

 

「でええい埒が明かん! エレナさんに令呪切るか!?」

「馬鹿者一時的に数を減らしても同じ事! 兎も角、今は堪えるしか……!」

「それよりも先ず……彼女を救出しないと危ないわ!」

 

 そして最悪の事態なのは……XXがこの闇の軍勢の中心で孤立してしまっている事。孤軍奮闘の活躍を見せ、今の所は無事でいるようだが、それも何処まで持つのか。

 

「っぇえい! 最優先はXXの救出、及びあ奴の撃破じゃ! こやつ等を殲滅する事ではない! どうするマスター!」

「なら……マンドリカルドぉ!」

 

 彼が欲したのは、騎馬による突進力。すなわち、マンドリカルドとその愛馬、ブリリアドーロである。離れている彼に、絶叫にも等しい声を上げた。この乱戦の中でも届く様にと、右手を掲げ二画目の令呪を切った。

 

「令呪を持ってライダー、マンドリカルドに命ずる! 令呪の魔力を喰らい、影の軍勢を蹴散らし友軍を救え!」

「――了解っ! ジャック、テルさんすいません! ここ抜けます! 駆けろ、ブリリアドォオオロォオオオオオ!」

 

 右手が赤く輝いたその直後、数体の影が、宙を舞った。更に続けて幾体もの影が次々と蹴散らされていく。陰を割る陽の一筋は、嘗て九偉人ヘクトールの鎧を継承するにふさわしいと言われた英傑、マンドリカルド。

 木刀を振り回し、XXへと一直線に向かっていくが、しかし。やはり数が数。そう容易く突破、とはいかない。どうしても、突撃の勢いは少しずつではあるが、落ちていく。

 

「クッソ、もうちょっとだってのに……!」

「       」

「っ!? しまっ――!?」

 

 速度が落ちて来た、そこを狙ったかのように飛び掛かる黒い影。迎撃していては突破する勢いはさらに落ちてしまうだろう、だがマンドリカルドがその判断を下す前に、とびかかってきたその影を赤い一射が射抜く。

 

「行け! 援護は俺がする!」

「申し訳ないっす! 行きます!」

 

 もはやマンドリカルドの動きに迷いは無く……もうXXを目の前に捉えたこの状況、ブリリアドーロの勢いが落ち切る前に思い切りその木刀を振りかぶり、声を上げた。

 

「駆けろ、ブリリアドーロ! 虹の彼方にて光を放て! 絶世無くとも幻想は我が手に……『不帯剣の誓い』!」

 

 極光の一撃が、最後の壁を断ち、一筋の道を作り出す。その一瞬、ブリリアドーロが再度加速……否、華麗に跳躍した。そのまま黒い影達を飛び越し渦中のXXを見事に救い上げ、ブリリアドーロの背に跨らせた。

 

「っ! すいませんマンドリ君!」

「問題ないっす! マスター! 指示頼む!」

 

――指示は、初めから決まっている。相手がフォーリナーなら、その相手はやはりただ一人……上位者を借る者、フォリナーハンター、謎のヒロインXX! 二人を

 

「XXを敵性フォーリナーの元へ! 全員、二人を全力で援護してくれ!」

「「「「了解!」」」」

 

 エレナが魔導書を開き、文言を唱える……その直後、信長の手に持った大得物の唸りが一段と上がった。ここまで温存、というより使う暇も無かった強化スキルを乗せて、振り下ろした一撃は、影を二つに割り……その先には、ジャックと、テル。

 

「合流じゃあ! ばらけていても援護は十全に出来ん!」

「良し行くぞジャック!」

「おっけい!」

 

 影が閉じる寸でで、テルとジャックが滑り込んで合流に成功、そして言葉を交わす事すらせず、テル、エレナを中心にして、信長、ジャック、康友が護衛の陣を展開。マンドリカルドとXXに向けて援護射撃の雨が降り注ぎ始める。

 

「へへっ、エレナさんの援護が入ってから矢も好調だ!」

「油断しちゃダメよ!」

「私たちがざくって暗殺してきちゃだめ?」

「数が数だから多分無理! オジサンとエレナさんをまもってくれな!」

「マンドリィ! 止まるんじゃない! その先にワシらは居るぞおおおお!」

 

 なんか変なミームが混ざったがそれは兎も角。援護射撃の雨は、確実に二人を乗せたブリリアドーロの傷害を取り除けている。曲がる事も、止まる事もせず、真っすぐに、最短距離を!

 

「――捉えた! XXさん!」

「ありがとうございますマンドリ君! 後で缶チューハイ奢ります!」

 

 そして影の中心、空白の輪、その直前。初めて輪の弧を擦るように曲がりを入れ……その直後、ブリリアドーロの背からXXが飛び出した。狙いは唯一人。XXに無機質な視線を向けるオルタ擬き。

 

「よーし、マスター! お主も飛べ! XXの出力をフルに発揮させてやれい!」

「――んん?」

 

 そんな景色を見ていた直後だった。急な浮遊感と共に目の前の景色が流れる。何事かと周辺を見回せば、目に入ったのは……あろう事か、背後の黒い髑髏で投球フォームを決めた信長の姿。

 

テメェええええええええ!?

「うっはっはーっ! 任せるぞマスター!」

 

 叫びつつも、何とか着地は決める事に成功。憎らしい事に、コントロールは完璧。着地場所は見事にXXの隣だ。

 

「ったく、無茶させやがって……!」

「……なんでマスター君がここに?」

「ノッブがバカした。後でシバく。今はそれよりも眼の前の敵だ」

「――それもそうですね!」

 

 そして振り向きざま、XXが飛び出した。振り上げられたXXの双頭の槍を、黄金の双頭の剣が迎撃する。一瞬の拮抗の後、退いたのは……XX。剣を持たぬ片腕から迸る黄金の雷をスレスレで避けきりはしたが、逃がさぬとばかり更なる雷撃が。

 

「ええい! 本当にえっちゃんみたいな攻撃しますね貴方!」

「――」

「何方様なんです!? お姉さんとか!?」

 

 ……姉にしてもここまでそっくりになるか? そう思っていた貴方の耳に聞こえてきたのは、ダ・ヴィンチの声だった。

 

『その予想は遠からず、だ。XX』

「えっ?」

『解析の結果、彼女の霊基はXオルタと似通っているという結果が出たんだ……()()()()()()ね』

 

 ダ・ヴィンチの声に一瞬反応したXXに、容赦なくオルタ擬きは剣を振り下ろし……しかし、XXもギリギリでそれを受け、今度は完全な鍔競り合いに突入する。そんな二人の様子を知ってか知らずが、ダ・ヴィンチは喋るのをやめはしない。

 

『オルトリアクター。彼女が、謎のヒロインXオルタである所以。そこが同じなら彼女と類似している、姉妹か何かか……と類推する事も出来たんだけど』

「……だけど?」

『それ以外だ。それ以外の9割の彼女の霊基は、此方でも解析不能なブラックボックスと置き換えられている。あらゆるサーヴァントのデータ、当然Xオルタ当人のデータとも参照したけれど……そもそも生物としての系統が違うような、そんな手応えだったよ』

 

 ピクリ。

 その言葉を聞いた直後、XXの肩が……僅かに跳ねた。

 

『バーサーカーからフォーリナーに霊基が変わった、Xオルタとそっくりな彼女……フォーリナーハンターの君なら、想像は――』

「えぇ。ピンときましたよ。えっちゃんの事は、調べてなかった訳でも無いので。それにフォーリナー共のやり方も……知らない訳じゃありません。成程、そういう事ですか。えぇえぇ。分かりましたとも……!」

 

 ダ・ヴィンチの言葉を遮って、XXが声を上げる。その横顔は……まるで何時もの彼女とは違う、迫力の有る、眼光鋭い狩人の顔。

 

()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()。そう思ってたんですか?」

「――」

()()()()()()()()()()()()。作られて、でも完成させることは出来なかったから。せめて安らかにと、そう願われて……それを、()()()()()()()()()、好き勝手に、()()()()()()()()……!」

 

 まるで真剣みが違う。コメディドラマの主人公、などと評されていた若き日の彼女。しかし今の彼女の凄みは、そんな雰囲気など欠片も見当たらぬ、歴戦の上位者狩り(フォーリナーハンター)としてのソレだ。

 

「貴方達の好き勝手になんかさせません! 私が、居る限り!」

 

 鍔競り合っていた剣を、気合一閃で弾き飛ばす。一瞬、目を見開いたようなオルタ擬きに更に槍を振るう。縦切り、横の払い、突き、その鋭さも速さも全てが、貴方の眼には一段階上がったようにすら見えて。

 

「――っ!?」

「マスター君、援護を! 彼女をもう一度、眠らせる、為に!」

 

 詳しい事情は分からなかった。だが、今のXXは間違いなく、真剣に怒っている。目の前の彼女の為に。真っ直ぐに。ならば、その援護をするのは……!

 

「――瞬間強化に、令呪も入れる! 一撃で決めろ! フォーリナーハンター、XX!」

「了解です! 来なさいアーヴァロン! 乗着して、一気に決めます!」

 

 瞬間、XXの声に応え、再び聖槍装甲が彼女の全身を纏う。XXを退ける為の雷撃はその装甲に阻まれ、届かない。真っ向から、力押しで、上位者に迫るその姿。正に上位者を狩る者!

 そして……その狩人に、上位者もまた、その黄金の得物をさらに輝かせ、迎え撃つ。返り討ちにしてやろう、とでも言わんばかりの、全力全開!

 

「蒼輝銀河即ちコスモス!」

「――臨界、突破」

 

 蒼輝と黄金が唸りを上げる。

 

「エーテル宇宙然るに秩序!」

「――素粒子に、還れ」

 

 エーテルとアルトリウムが、喰らい合う。

 

「最果ての正義を以て……征くぞ! ツインミニアド・ディザスタァアアア!

クロスッ……カリバァアアアアア!!!

 

 双方一撃必殺。対フォーリナー最強の斬撃と、上位者の牙が噛み合わさる。

 

 そして……

 

 

 

「……」

 

 私室を覗いて見ると、カップ麺を前に撃沈しているOLが居た。その眼の前には、もう一個のカップ麺と、おろおろとしているXオルタの姿。

 先の一戦から、色々と何かが切れて、会いに行きたくなったのだろうか。

 

「あ、あの。本造院さん。えっと、その……」

「――まぁ、その。なんだ。付き合ってやってくれ。今は、ちょっと……甘えたい気分だろうしさ」

 

 そう言って、踵を返す。

 

『――ありがとうございました。マスター君。無念を、晴らせたと思います』

 

 自分は、あの一言だけで十分。後は、彼女とXXの問題だろう。この後は、事件解決メンバーとの祝勝会もある。楽しみだ。

 康友が後にしたその私室で、XXがぽつりぽつりと、今回の一件を話し始めたのは……祝勝会が始まる、直前。大分経ってからの頃だった。

 




くう疲れました……投稿が遅れるのも多少はね?














一応、ネタバレ解説。必要な方はどうぞ。要らない方は飛ばしてください。

Q:結局あの子は何だったの?
A:Xオルタの試作品。彼女の体験クエストで、試作品が作られてたみたいな描写が有ったので。で、なんであんな所に居たのか。まぁ、上位者が考える事なんて、降臨くらいなもんでしょ(偏見) おや? 降臨のエネルギーに使えそうな良い素材と、それを生み出してくれそうな素体が居ますね……? よっしゃ、上位者が拾い上げて、あーしてこーして……こうじゃ! 詳しくは現在開催中のイベント、『イマジナリ・スクランブル』をチェック! あーしてこーしての辺りを、項羽様とかが詳しく解説してくれているぞ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。