FGORPG ノンケがエンジョイプレイ 作:秋の自由研究
薙ぎ払う。
一言で済む行動ではあるが、そんな簡単に出来る技でもない。剣でも槍でも、下手を打てば大きく隙を晒す攻撃だ。実力が低ければ、弾かれて大きな隙を晒し、反撃に転じる好機にすらなってしまうのだ。
「――隙がありませんね」
「薙ぎ払い、と言うのは本来後隙を狙いやすい一手なのですが!」
だが、達人、と呼べるレベルの実力者であればそれも大きく変わってくる。恐ろしい速度で振るわれ、後に僅かな隙がほぼ存在しないとなれば、単純に範囲の広く、威力もある攻撃として、主軸に振るい、相手を圧倒するのも容易い。槍と言う間合いの広い武器でそれが行えたならば、その脅威は桁違いだろう。
「……困ります、本当に。お見事な腕前を見せてくださって。私……本当に。燃え上がって、しまいます」
レオニダスの槍よりも長く、圧倒的な大槍。それを容易く、操るランサーの実力は、槍使いとしては正に最上級だろう。槍を打ち払ってから、腕をそっと撫でる、その可憐な仕草とは裏腹に。
「此方も二対一で追い込もうとしているのに、ここまで上手くいかないとは」
「単純にサーヴァントとしての地力が高いうえに、戦士としても強いのでしょう!」
レオニダス、メドゥーサの二人がかりで尚、有利を保っているというのに攻めきれないのがその証拠だが……彼女の強みは、それだけではない。先ほどから、一気に責め立てようと突撃するといつの間にか姿を消され、攻め切れていない。
「これは先ずあの掻き消える術を攻略する所から始めなければいけませんね」
「しかし、あの掻き消える仕組みすら分からないのが現状ですよ、どうやって……」
「――いけません、その様に隙を晒しては」
「「っ!」」
それどころか、一瞬でも隙を晒せば背後から染み出てくる様に背後に現れ、纏めて打ち倒そうとしてくるのだから溜まらない。戦いのチャンスを取り逃がさないという点において正に彼女は戦乙女、というジャンヌ・オルタの願望は当て嵌まっていた。
「っふぅ」
「またですか!」
そう、
振りぬいた槍を、二人が首の皮一枚ギリギリで回避できているのは、レオニダス、そしてメドゥーサが一流の英霊だからこそである。
「……また、とてもお上手に避けますね……本当に、素晴らしい。私、熱くなってしまいます。本当に……堪え、きれません……!」
胸の少し下、鳩尾の辺りに手をやって、そのままもう
「メドゥーサ殿、ここは私が!」
「えぇ、下がらせてもらいます」
その直後。前へ出たレオニダスの盾に槍の巨大な穂先が叩き付けられる。腕で堪えている、と言うよりは体全てで盾を支えて、そうでなくては、とてもこの一撃を防ぎきれなかった。僅かな膠着の後、なんとか大槍を払いのけるが即座に、次撃が振るわれた。
「ぬぅっ!」
「……」
振り下ろしからそのまま突きに転じ、更にバトンの様に振り回し、畳みかける。槍の穂先からは炎が巻き上がり、肌を焦がす。そのいちいちが的確で、冷静だ。まるで、機械の様に。
「あのっ、バーサーカーも! 恐ろしいほどに強かったですが、しかしこのランサーは、個人技に関しては! 間違いなく……!」
「それを凌いでいる貴方も大概だとは思いますが」
それを真っ向から相手しているレオニダスも、迂闊な反撃など出来ないと割り切り、全てのリソースを防御に回して互角と呼べるまでに凌いでいる。そしてその攻勢の間に僅かな隙を見抱いたメドゥーサの鎖がランサーの首を絞め上げようと伸びるが……くるりと後転、身を屈めつつ鎖の間合いから離脱。
「――流石ですね。かのギリシャの女怪、メドゥーサ様」
「私の真名を見抜かれているとは……いいえ、キャスター辺りが解析しましたか」
「えぇ……キャスターは魔眼に警戒をするように言った時点で……」
伸びた鎖は地面を削り、包囲する様に踊ってランサーを狙うが……グルリと回した槍がその悉くを打ち落とし……その鎖に気を取られた一瞬を狙い、メドゥーサがランサーの上から蹴りを仕掛ける。当然狙いは、頭蓋。
「……故に、油断は致しません」
「「っ!」」
それに合わせる様に反撃を仕掛けたレオニダスとメドゥーサを諸共に、巨大な炎の壁が阻む。魔眼を妨害する為の目くらましであり、一瞬の時間を稼ぐための術でもある。その一瞬に、更に一歩下がろうとしたランサー……しかし。
「此方こそ、もう逃がすつもりはありませんが」
「っ!」
もう一歩、下がろうとしたその足が、重く、鈍くなる。ランサーはキャスターの言う通り、見られないように炎での目隠しまで行ったというのに……レオニダスとメドゥーサからもランサーは見えていない。
しかしメドゥーサの魔眼は、相手がメドゥーサを認識して居れば発動可能だ。ランサーはメドゥーサを炎の壁の向こう側にしっかりと捉えている。彼女の魔眼からは、逃げきれない。
「――そこです!」
「っ……」
鋭く、焔を盾で無理矢理に突破したレオニダスがその槍を突き出し……狙ったのは、彼女の腕。その腕に刻まれていた、奇妙なマーク。それに傷をつけてレオニダスは一歩距離を取り……ランサーは、何歩も一気に距離を取った。
「やはり何かその腕に仕込んでいましたか。しきりに腕を撫でていたのが気になって居ましたが、それが、恐らく」
「……そうです。現実誤認を誘発するルーン……このわずかな攻防の間に、見抜かれてしまうなんて。やはり貴方は、強い英雄、なのですね」
「効果は見抜いて居ませんでしたがね」
腕を撫でていたのは、何度もルーンをかけなおしていたのだろう。
「――そして、それを見抜いた以上、容赦はしません」
そのルーンをかけなおす隙を与えぬ、とばかり更にメドゥーサから鎖が飛び、今度は、ルーンを見抜かれた僅かな動揺を突いて、その足に絡みついた。槍で破壊させる時間など与えず、一気に地面に引き倒し……そこに、レオニダスが踏み込んだ。
「はぁああああっ!」
「……がっ、ぁあ……」
レオニダスが槍の穂先を、鋭く、相手に向けて杭打ちの如く叩き付ける。ランサーの白い肌を、鋭い槍が食い破り、地面に繋ぎ止めて……そんな光景を幻視したレオニダスは、目を見開いた。胴に、槍の穂先の僅かな先、それ以上が刺さらない。
「なっ、に!?」
「強い方……容赦なく、一撃で相手を仕留め、仕留められなかった場合にも、そう簡単には逃げられない様に……中心に。貴方が、強い英霊でなければ、この守りは通用しなかったでしょう」
胸と腹の合間。鳩尾の辺りに向けて振り下ろされたそこに、刻まれていた……ルーン。それが槍の一撃を、堰き止めていたのだ。鳩尾の辺りにも、そう言えば確か触れていたが。それすら此方の行動を見越した仕込みだったのか!
「何という!」
「ごめんなさい……ぁあ、殺します……!」
レオニダスは渾身の振り下ろしに両手を使い、咄嗟に盾を投げ捨てていた。防御は、間に合わない。片手の槍がレオニダスの胸板を、逆に貫き、食い破らんと一直線に迫る。
「判断を誤りましたね」
だが……その槍の一撃を停止させたのは……レオニダスの背面に既に近寄ってその魔眼でランサーを捉えていた、メドゥーサだった。ピタリと体の動きが止まり、完全にその動きを停止させている……その両腕は、既に石化していた。
「この戦いは二対一です。忘れていたのですか? ランサー」
「申し訳ありませんメドゥーサ殿。仕損じてしまいました……!」
「いいえ、お気になさらず」
流石にギリシャで多くの勇士を石化させたその伝説は伊達では無い。力任せで破ろうとする抵抗すら許されない。そして。
「それよりも早く彼女を。一撃で。万が一回復などされれば厄介です」
「承知いたしました……では、御免。フンヌッ!」
その動けない体に、再度、その槍を振り下ろす。ルーンの守りももはや存在しないその体に、今度こそ……レオニダスの槍は、深々と突き刺さった。
「……かはっ……!」
手応えあり。それを確認した後に、レオニダスは槍を引き抜く。一応反撃があるかもしれないと、レオニダスは盾を拾い直し、メドゥーサはもう一度魔眼を展開しようとしたが…………それもない。ランサーの体から黄金の光が立ち上っていた。
「……もうしわけ、ありません……おねえさま……」
その光が空へ立ち上り……消えていく。と同時に余韻をかき消すかのように禿げた頭が黄金の光の欠片を引きつぶしながら転がっていく。思わずスゴイしょっぱい顔になった二人の眼の前で、ハゲ頭を掻きながらマスター、本造院康友が立ち上がった。
思わず、メドゥーサが呆れた表情で声をかけて……
「ってぇ……んの黒魔女! やってくれるじゃねぇか!」
「……マスター、なにやってるんですか?」
「お、メドゥーサさん丁度いい所に。
「……はぁ?」
その要求に、更に眉間のしわを増やしたのだった。
ブリュンヒルデさんが普通にクソつよお姉さんなので活躍させすぎると話が伸びる……という事でこんな感じに収めてみたゾ。