ありふれた職業でも桜の勇者と共に   作:ぬがー

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プロローグ

 南雲ハジメはエリートオタクである。

 

 ゲーム会社社長の父と有名少女漫画家の母の間に生まれ、両親の職場に入り浸りながら育てられた。

 趣味を仕事にして大成功した両親だけあって子育ても型破りだった。

 

「人生なんか趣味の合間にするもんだ」

 

 ハジメがゲームに興味を持てば父は時間を気にせず好きに遊ばせ、プログラミングに興味を持てば現場で働かせてみたりした。中学生にして職場の戦力にカウントされていることはともかく、デスマーチに参加させられた事はハジメですら問題じゃないかと思う。だがそんな彼の息子だけあってゲームはハジメの趣味になり大いに楽しんだ。

 ハジメが漫画に興味を持てば母は好きに与え、書く方に興味を持てば自分のアシスタントを体験させた。中学生にして職場の戦力にカウントされていることはともかく、締め切りギリギリの修羅場で働かされた事はハジメですら問題じゃないかと思う。だがそんな彼女の息子だけあって漫画はハジメの趣味になり大いに楽しんだ。

 その分学校生活はおろそかになっていったが、両親もハジメも趣味より優先するような物ではないという考えだ。やりたいことだけやって将来的にも見通しが立っているなら、やりたくないことをやる必要はない。

 

 とはいえ「やらなくていい、やりたくないこと」をやらないのと、「やらなくてはならない、やりたくないこと」をやらないのは違う。

 周囲の目というのは脅威であり強力な武器なのだ。だから身だしなみを整えて出来る範囲で周りに合わせたりはしたし、周囲に合わせられない睡眠時間確保(いねむり)も「そういうキャラ」として受け入れられるよう立ち回った。将来の保険と世間体にも気を使い、高校進学だってした。そうした積み重ねがあってこそ、厄介そうな不良でも大袈裟に衆人環視で土下座して見せれば追い払えたのだ。やり過ぎだったと後から恥ずかしくなったが、護身としては悪くなかったと思っている。

 

 だから高校入学時から続く現状は、ハジメにとって対処ができず非常に面倒な厄介事だった。

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

 

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

 一体何が面白いのかゲラゲラと笑い出す男子生徒達。

 

 声を掛けてきたのは檜山大介といい、毎日飽きもせず日課のようにハジメに絡む生徒の筆頭だ。近くでバカ笑いをしているのは取り巻きの三人で、大体この四人が頻繁にハジメに絡む。

 しかし絡んでこない他の生徒が無害と言うとそうでもない。男子生徒は遭遇すると舌打ちや睨みなどいつものことだし、女子生徒も無関心は良い方であからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。

 無視すれば大きな害はないが、だからこそ対処に動けずうっとおしく憂鬱だ。

 

 せめて原因がハジメ自身であれば改善の余地もあるのだが、それすらない。では、なぜ多くの生徒がハジメに対し敵意や侮蔑をあらわにするのか。

 

 その答えが彼女だ。

 

「南雲君、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

 ハジメに絡む四人を押しのけ、一人の女子生徒がニコニコと微笑みながらハジメのもとに駆け寄った。周囲を気にもかけずハジメにフレンドリーに接する数少ない例外であり、この事態の原因でもある。

 

 彼女は白崎香織(しらさきかおり)、学校で絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、優しげな雰囲気を作り出している少し垂れ気味の大きな瞳。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻に、薄い桜色の唇が完璧だと思える配置で並んでいる。人間離れしていて女神扱いされているほどだ。それでいて面倒見がいいので、学年を問わず慕われていた。

 

 そんな香織が何故かハジメをよく構うのだ。

 明らかに他の男子とは違う扱いで好意が見え透けており、男子生徒は「自分と大差なく見えるのに、なんであいつが」と嫉妬の炎を燃え上がらせ、女子生徒は「白崎さんをキープ扱いとか何様のつもりだ」とハジメを軽蔑するのである。

 

「あ、ああ、おはよう白崎さん」

 

 挨拶を返しただけで香織は嬉しそうな表情を浮かべる。それに反応して鋭さを増す周囲の視線にハジメは冷や汗を流した。

 周囲の認識とは異なり、ハジメは自分が香織に好意を寄せられているとは考えていなかった。趣味のために色々と切り捨てている自覚はあるし、好かれるようなことをした覚えもない。だから好かれるはずがないし、まだハジメの学校生活をストレス地獄にして遊んでいると言われた方が納得がいく程だからだ。

 

 ハジメが会話を切り上げるタイミングを図っていると、香織につられて三人の男女が近寄って来た。

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

 

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

 

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

 唯一ハジメに声をかけた少女は八重樫雫(やえがししずく)。香織の親友で同じレベルの美少女だ。ただしタイプが違って、香織がカワイイなら雫はカッコいい、もしくは美人だ。また剣道の大会で負けなしの猛者であり、熱狂的なファンがいる。そんな彼女に挨拶されたことで刺さる視線はさらに増えた。

 香織に声をかけたのは天之河光輝(あまのかわこうき)。思い込みの激しさと表裏一体だが正義感が強く文武両道の美男子だ。

 投げやりな言葉を発したのは坂上龍太郎(さかがみりゅうたろう)。光輝の親友で脳筋だ。努力や根性が好きな反面、学校でのハジメのような気力のない人間に価値を感じていない。

 彼ら四人は幼馴染であり、ハジメに突撃する香織に引かれてハジメと衝突事故を起こすことも多かった。善意で暴走している分、ハジメにとっては不良グループより厄介な相手だった。それこそ不良グループは面倒だと思っても相手に何か望むことはないが、彼らには「異世界召喚でもされて、自分の周囲からいなくなってほしい」と望む程度には。

 

 ハジメは光輝の説教や香織の爆弾発言を適当に流し、教師が来て彼らが席に戻るまでまで針の筵を耐えきった。

 

 そして授業開始早々に寝た。

 ストレスを感じてはいても、どんな感情が沸いて来ても、棚に上げて無視する技術。両親の仕事を手伝ううちに習得していたが、高校生活の中で完全に染みついていた。だからこの状況を耐えきれているのだが、救けてくれる相手も「救けはいらないだろうし、むしろ迷惑かな」と思って出てこないのだった。

 

 

 

 

 

 

 そんな日常を諦観と共にやり過ごし、趣味に全力を注ぐ生活が続くと思っていたある日の昼休み。

 ハジメ達の教室に魔法陣が浮かび上がり、クラスメイト全員と一人の教師は異世界に召喚された。

 




のわゆクロスオーバーで友奈入れたのに、すぐに出てこないのは申し訳ないと思ってます。

ただ何か起きる前から自己主張する高嶋友奈は解釈違いなので。
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