ありふれた職業でも桜の勇者と共に   作:ぬがー

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再会後のあれこれ 前編

 突然の鉄粉の嵐で意識を絶たれた者たちに、今度は暖かな光が降り注ぐ。

 金属化を解かれたクラスメイト達は当然混乱に陥った。

 つい先ほどまで魔人族に追い詰められ、後は膝を屈するのが早いか遅いかという状況だったはずだ。なのにいきなり鉄粉の嵐が起きて、気付けば敵はすべて金属像に。そして目の前にはいるはずのない相手。わけが分からない。

 頭上に?を大量に浮かべているようにすら見える彼らに、遠藤が事情を説明しようとする。

 だがそれより先に動き出した者がいた。

 

「ハジメくんっ!!!」

 

 香織だ。

 なんとなく状況的にハジメが助けてくれたっぽいのはわかった。余計なの(友奈とシア)もいるがそこは香織の視界には入っても映ってはいない。それが嬉しくてつい駆け出し抱き着こうとした。

 

「へぶぅっ!!!???」

 

 そんな香織の足にはロープが括り付けられており、地面と繋がっていた。当然進めるはずもなく、派手に転倒。これまたいつの間にか頭に付けられていた道具からクッションが飛び出し、どうにか顔面強打は免れた。

 

「ううう、なんでぇ……!?」

 

「いや、だって危ないから。悪いとは思ってたけど、必要だったでしょ? というかなんで名前呼び? まぁともかく今は大人しくしてて」

 

 犯人はハジメだ。

 香織は筋力も敏捷も共に現地人騎士の最高クラス、ハジメは現地一般人と比較してもそこそこレベル。そんな彼女にタックルをかまされればハジメが危険だ。そのための安全策だったが、見事に役に立ってしまった。対策が不発で終わるような精神であってほしかったというのがハジメの本心だった。

 

「遠藤、これは一体……?」

 

「ああ、うん、混乱するよな。迷宮の外に行ったら南雲と高嶋が来てて、助けてもらえたんだよ。魔人族とか魔物はそっちで全部固まってる。とりあえず今ここは安全だ」

 

 混乱する永山に遠藤が答えた。

 今は安全という言葉と物証である金属像に、クラスメイト達の緊張もようやく緩む。疲労と安堵から崩れ落ちる者が数名、残りは友奈の下へ押しかけた。日本で友奈と関わりのあった者ほど行動が早かったように見える。

 

「ありがとう! 本当にありがとう!」

「死ぬかと思った! 助かったの高嶋さんのおかげだよ!」

「また助けてもらっちゃった。感謝してもしきれないよ」

 

「あわわわわわ!?」

 

 人は助けても感謝されることにはいつまで経っても慣れない友奈では、押し寄せるクラスメイトには対応しきれず慌てる。それでもクラスメイトが少し落ち着いたタイミングを見計らって、言うべきと思ったことは力強く主張した。

 

「私はそんな大したことはしてないよ! 今回皆を助けられたのは、ほとんど南雲くんのおかげだから! 助けに行くって決めたのも南雲くんだし、私はお手伝いしただけ! だからお礼はそっちにね!!」

 

 これが友奈的最重要ポイント。

 今回遠藤から話を聞いて助けに行くと決めたのはハジメで、実行の主力もハジメなのだ。友奈が決めたことでも、友奈だけでやったことでもない。そこは友奈にとって譲りたくないポイントなのだ。

 

「「「「「………………」」」」」

 

 だがその主張も、クラスメイト達は困ったような表情で受け入れかねる様子だ。

 ハジメを皆で悪く言っていたから掌返しをしづらいというのもある。だが「ハジメの功績だ」と言ったのが友奈と言うのも問題なのだ。

 友奈は良くも悪くも自己主張の弱い少女だ。自分の功績を語る事は少なく、他人の功績は嬉々として褒める。たとえクラスメイト達を救出した功績の9割程度が友奈の力によるものだったとしても、その功績を全部ハジメに譲ってしまいそうな印象を持たれているのだ。これでは友奈がいかに主張してもクラスメイト達には受け入れられない。

 

 友奈は彼らの表情からソレを察してしまい、この場で理解してもらうのは無理そうだと理解する。自分が評価してもらえないのは別に我慢できる。だが友達が正しく評価してもらえないのは悲しい。別にハジメの功績を認めて他の誰かが傷つくと言うわけでもないのに、なぜ蔑ろにされないといけないのか。友奈は自分だけでも後でうんと褒めてあげようと決めた。

 

「高嶋は嘘は言ってないぞ。マジで救出に来るって決めてくれたの南雲だし、魔人族も魔物のほとんども倒したの南雲だ。ほら、高嶋が倒したら金属像とかにならないだろ?

 いや、魔物の残り倒したのも大仕事のはずなんだけど、南雲のやったことに比べたら手伝いって感じだった。マジで南雲が半端なかった」

 

 そこへ思わぬ助け船がやってきた。影が薄く先ほどの今で、もう友奈を含めて皆に存在を忘れられていた遠藤だ。自分で話して、自分で見たことを言っただけだが、遠藤が言うならクラスメイトもある程度だが信用できる。

 ただハジメにとって自分の評価など急いで覆さないといけないと思うようなものでもない。クラスメイトが掌返しする間もなく、サクサクとすべきことを成すための準備を進めていた。

 

「誰のおかげとかは今は置いとこう。それよりやらないといけないこと多いんだから。

 “治癒師”の人は魔力回復してるよね? これからメルド団長と天之河くんの金属化を解除するから、失血で死ぬ前に治してもらいたいんだ」

 

「えっと、あれ? 出来そうなくらい回復してる……」

 

 “治癒師”の辻綾子が困惑しつつ答える。彼女視点では仲間の石化解除から全回復するほどの時間は経っておらず、まだ魔力量は厳しかったはずなのだ。なのに回復しているのは何故か。

 

「金属化解除と合わせて魔力回復効果のあるマジックアイテム作ったからね。回復してないと困るよ」

 

 とんでもないことをさらっと答えるハジメ。言ってることが本当なら辻はおろか香織も超える回復魔法を行使できるアイテムをハジメは作れるということになる。

 だが魔人族と魔物をほぼ全滅させたのがハジメというのに偽りがないなら、土属性魔法も“土術師”の野村健太郎を越えているということだから、そのくらい出来るのかもしれない。友奈と遠藤の言葉に信憑性が増していた。

 

 指示を出されなかった者達が困惑する中、ハジメは手を止めない。さっさと雑事は済ませて騎士たちの遺体を迷宮の外まで出してやりたいのだ。

 

「……? 一体、何が……?」

 

「………………………………」

 

 光輝とメルドの金属化が解除される。

 生かしたまま魔人族の領土まで連れていくつもりだった光輝には、既に応急処置が施されていたので辻が治療に当たる。逆に光輝に見せつける囮として少しの間だけ生きていればいいという雑な扱いだったメルドは、傷も深く話す余裕がないほど衰弱していたため香織が治療に当たった。辻も香織も“治癒師”として優れた技術を持っており、二人もすぐに問題ない状態まで回復できたし、状況を理解してもらえた。

 

「よく戻ってきたなハジメ、友奈。怪我もしていないようで何よりだ」

 

「お久しぶりですメルド団長。見ての通り高嶋さんのおかげで元気にやってます。

 いきなりなんですが、清水くんの処遇は僕が決めても問題ないですか?」

 

 迷宮内できちんと決めておかないといけないのはコレだ。

 迷宮の外で判決を出そうとすると、教会や王国など面倒な勢力による口出しが必ずある。しかし迷宮内なら外野はおらず、どんな結論になっても今いる者だけで口裏を合わせておけばどうとでもなる。これ以上の被害を被らないために、ここできちんと始末をつけておく必要があった。

 

「南雲、清水は暴走したとはいえクラスメイトなんだ。こいつのことは俺が」

 

「きちんと罰と制限を与えられる? 殺されかけた身としては、半端な処置じゃ認めないよ? また高嶋さんにまで被害が広がるかもしれないんだから。天之河くんの取れる方法だと殺すくらいだろうけど、出来るの?」

 

 想定通り光輝は口出ししてきたが、殺せるかと問えば黙った。口出しさせずに勝手に決めた方が拗らせて面倒になるかもと考えた結果の対応だ。

 その流れで、クラスメイトにもざっと視線を向ける。

 庇う者が出てきたら対応しようとは思ったが、当然ながら誰も出てこない。清水に親しい相手はいないし、クラスメイト丸ごと売り飛ばそうとした直後なのだ。自分の立場を清水と同等まで落としてまで庇う者は出てこない。

 

 クラスメイトの意見も大体統一できたところで、改めてメルドに視線を向ける。メルドは少し考え、騎士団長として決断を下した。

 

「……清水も“神の使徒”だ。その名誉を傷つけない範囲なら構わん。だが問題があれば口出しはさせてもらうぞ」

 

「勿論です。“神の使徒”から人間族を裏切るようなことをした者はいなかった。これは事実にします」

 

 魔人族の狙いは“勇者”及び“神の使徒”に人間族を裏切らせ、戦意を削ぎ絶望させることだ。清水の裏切りを公表すれば、それは魔人族の思惑通りと言うことになってしまう。裏切るものは一人もなく、最後まで魔人族と戦った。そういうことにしないとマズいのだ。

 

「ならいい。好きにしろ、責任は私が持つ」

 

 

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