ありふれた職業でも桜の勇者と共に   作:ぬがー

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【バーン大迷宮】の試練・終

「ん……」

 

「あ、起きた?」

 

 友奈がハジメの上で体を起こす。

 パチパチと瞬きを繰り返した後、自分の状況を思い出し大きく息をついた。

 光属性魔法は体を傷つけないが、デバフのように負荷をかけ弱らせる。洗脳を圧倒的出力で洗い流すのが目的だったが、それでも友奈にはそれなりの量の疲れのようなダメージが嵩んでいた。

 無理に意地を張らず、ハジメの上に寝直した友奈。そしてそのまま会話を始めた。

 

「危なかったぁ……! 止めてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。こっちも期待通りに踏ん張ってくれて助かったよ。もうちょっとで僕の義足も直せるから待って」

 

 洗脳を受けていた記憶はある。それでハジメを攻撃してしまった記憶もだ。

 でもそのことを謝ったりはしない。友奈への洗脳を止められなかったハジメも同様だ。

 上手く止められて実害はなかったのは大きいし、本人に落ち度はなく敵が上手だったのもある。だが一番は相手は本当に気にしていないからだ。ハジメは迷惑に思っていれば隠さないし、友奈もハジメには遠慮をしなくていいと学んでいる。ならば言うべきなのは謝罪ではなく感謝の言葉だ。

 

「これからどうするの? 考えてるよね」

 

「まあね。と言っても神山に行って釣りだすか、向こうから来るの迎え撃つくらいだよ。敵地に乗り込むのは危ないし。

 ……よし直った。高嶋さん、ちょっと咥えて」

 

「? こう?」

 

 言われるがままハジメの義手の指を咥える友奈。

 直後、疲れも吹き飛びハジメの上から飛び起きた。

 

「何これ!? 凄い元気出たよっ!?」

 

「原理の説明は後でね。聞き耳立ててるのもいそうだし」

 

 やったことは単純で、歯にコーティングするように“神結晶”を錬成したのだ。唾液に混ざる程度の量だが絶えず“神水”があふれ、傷を癒し疲れを飛ばし魔力だって回復させる。技術は凄まじいが魔力量自体はトータス現地民の上位程度しかないハジメが、核融合を制御する魔力を捻出できたのもコレで回復しながらだったからだ。

 単純ゆえにバレづらく対策も取られづらいが、ハジメが想定する以外の方法で対処されることを警戒し一応隠すことにしたのだ。

 

 警戒は無駄ではなかった。神自身が赴き、不心得者どもを誅さんとしていたのだ。

 

 敵の接近に気付いた友奈は友奈が立ち上がって戦闘態勢に入る。受けたのは洗脳解除の余波だけだった上、ハジメの調整と“神水”の回復も有りほぼ万全な状態だ。

 

「―――確かにいたみたいだね、聞いてた人。こっちに来てるよ」

 

「もう来たの? 都合はいいけど……」

 

 “神結晶”による回復がなければまだハジメと友奈は疲労困憊したままだっただろう。だから回復する前に仕掛けてくること自体はあり得なくなない。

 だがこれではいかにも「倒して見せろ」と言われているかのようだ。神の後ろにいる誰かの影がチラつき「大迷宮に挑んでるのだから当たり前では?」という疑問が湧く。

 

「んん??? なんで大迷宮? 僕は何を知って―――」

 

「南雲くん、余波に備えて! 勇者パーンチッ!!」

 

 高速で飛来する何かを、光属性魔法を乗せた友奈の飛ぶ打撃が迎え撃つ。

 これまでの経験から咄嗟に光属性魔法を選択したが、それが功を奏した。通常の防御はすり抜けて魂を打つ狙撃魔法は弾き飛ばされあらぬ方へと飛んでいく。

 

「―――神威を阻むなど不遜にもほどがある。ふさわしき罰を与えるとしよう」

 

 狙撃に紛れて、いきなり現れたかのように近づいてきたのは人がイメージする神の姿をした何か。教会で作られている神の絵や像そのままの姿なので、これが一応教会と人間族社会が崇めていた神ということなのだろう。

 暗示が効いていればそのまま受け取れただろうが、解けかけているハジメには違和感が大きい。大迷宮のラスボスなのに、黒幕によって創られた表向きのトップな前座にしか見えなかった。

 

「高嶋さん! 時間を稼いで!」

 

「わかった!」

 

 なので取った戦法は、ここでいるはずの黒幕も倒せるくらいの武器を作ること。前座を出し時間を与えたことを後悔させようと、目の前の敵を戦力を整える起点にすることとした。

 

「させぬ。神の名において命じる―――“殺し合え”」

 

 何かしようとしているが、そんなことには興味もないラスボス。

 魂の格差で強制力を持たせた言葉である“神言”が放たれる。【バーン大迷宮】を攻略し魂魄魔法を習得しようと、魂の格では時間を掛けて信仰を取り込んでいるエヒトには及ばない。ゆえにエヒトと対峙するまでに対策必須なクソ技だ。

 

「ぬ?」

 

 だが対策自体は普通の洗脳と大きな違いはない。つまり防げる防壁を用意し、魂に触れさせない事だ。もちろん光属性魔法や闇属性魔法では防ぎきれないが、そこは出力を跳ね上げることで押し切れる。

 友奈の洗脳を解き、回復用の“神結晶”を作る他にも保険として残した魔力。それで時間を稼いだうちに、再び無尽蔵の魔力に二人は手を出した。

 

「“錬成”ッ!」

 

「勇者は根性ォオオオオオオッ!」

 

 ハジメの核融合が、友奈の星の生命力運用が発動する。

 先ほどと違うのは作業の分担を行っていること。ハジメが星の質量を魔力へと変換し、友奈が解され扱いやすくなった星のエネルギーを身に纏い維持する。ハジメは物質の変換は出来ても維持・運用は専門外だし、友奈だって他者から力を奪うようなことは適性がない。それでもそこ以外の才能があるから単独でも戦闘に使用することが出来るが、二人で協力すれば苦手を潰し得意なことに集中することが出来る。

 ハジメだけが10人いるより、友奈だけが10人いるより、2人で組んだ時の方がずっと強いのだ。

 その圧倒的な出力ゆえに、余力で「全力でラスボスの攻撃をどうにか無効化している」ように見せかけつつ、新たな武器を製造していことを可能とした。

 

「勇者、パンチッ!」

 

 武器の製造が終わったあたりで、友奈の動きにキレが増す。魔力制御に割いていた集中力を戦闘だけに回せるようになったからだ。動きの差で隙を作り、そこを突くことでそのままラスボスを撃破して見せた。

 

「お疲れさま。怪我は?」

 

「ないよ。これからどうするの?」

 

「前座が戦ってる途中での奇襲もなかったし、隠れられたかもしれない。とりあえず敵の本拠地は抑えちゃおう」

 

「オッケー。じゃあ捕まって。一気に神山まで行くよ!」

 

 まだ敵が残っていると思っている二人は神山へと向かう。

 そこに既に敵はおらず、神という指導者を失った民衆がいるだけだった。仕方なしにハジメの発案で偶像としての神は用意し、一時的に権力を握って治安を安定させた。それでも警戒する敵は来ない(そもそもいない)ので、自作自演の敵襲でハジメと友奈は相打ちになったことにして表舞台から姿を消した。

 組織という柵で動きを制限され、敵に備えづらくなるのを危険視したのもある。だが支配者とか面倒だったのが大きかった。支配者とか下に気を遣うなら罰ゲームにしかならなかったのだ。

 二人で旅を続け、好きに生きる。そう決めたところで迷宮攻略のアナウンスが響き、二人は精神世界から解き放たれたのだった。

 

 




この二次創作ではきちんと【バーン大迷宮】に挑んでいれば「神と戦うのに“神言”対策は必須」と教えてくれる親切な解放者。教会爆破して乱暴に攻略するような奴ならエヒトと相打ちがベストと想定していた模様。

なお最後に支配者として居座ることを選択すると、ミレディに通報が行きます。
解放者の目的は神の支配からの脱却であって、神を倒しても次の支配者が現れるんじゃ意味がない。エヒトと争わせ、生き残った方をミレディが始末するという手筈でした。
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