戦姫絶唱BLACK SHADOW 作:ロヒシ&かづ えい子しょうゆ味
今回は執筆担当のえい子氏が考えた番外編になります。
今まで読んでいただいたブラシャドとは雰囲気が違う!と思われるかもしれませんが、ご容赦ください。
番外編の順番でアンケートを取りましたが、えい子氏から「話の流れ決まってるんだから勝手な事するな!」とお叱りを受けてしまいましたf^_^;
というわけで、番外編その1はクリス視点のお話になります。
「クリスちゃん、クリスちゃん!光太郎さんとの同棲生活ってどんな感じ!」
「ブフッ!ば、バカ!突然何言い出しやがんだ!」
今日の訓練が終わり、ミーティングルームで休憩を取っていると、テーブルから身を乗り出しながらバカこと立花 響が目をキラキラ輝かせてとんでもない事を言い出した。
あたしこと雪音 クリスは、思わず口にしていたドリンクを吹き出してしまった。
バカの口から出た『同棲』という単語にドギマギしていると…
「違うぞ立花。南さんは雪音の身元引き受け人として名乗りを上げてくれたのだから、保護者と言った方が正しい。それにふらわーには店主さんもいるのだからこの場合は『同棲』ではなく『同居』だ」
と、剣女こと風鳴 翼が現実を突きつけるような一言を放ってきた。
確かにこいつの言い方の方が正しいが、向かっ腹が立ってしょうがなかった。あたしに恨みでもあるのかよ!……いや、よくよく考えたら恨まれても仕方ない事をしてきたな。
「えぇ〜、だって同棲の方がOTONAな響しません?一つ屋根の下で暮す若い男女…思いもがけないアバンチュールな展開が発生するのがアニメの定番!って弓美ちゃんも言ってましたよ?」
「響ったら、それはアニメの話でしょ?現実にはそういうのって起こらないんじゃない?……それでクリス、実際はどうなの?」
バカの保護者である小日向 未来が、バカを嗜めるどころか追撃してきやがった。
あたし、この子はこの中でまともな人間だと思ってたんだけどなぁ……
「ふむ。それについては私も興味がないと言えば嘘になるな」
「ですよね!ですよね!気になりますよね!だって私達、女の子だもん!」
ニヤニヤと口元を緩めながら3人があたしを見る。
すると、バカが立ち上がって目をうっとりさせながら何か語り出した。
「一つ屋根の下で暮らしてるんだから、きっとこんな事があったりするんですよ!例えば部屋で着替えをしていたら突然扉が開いて……」
ガチャ
ーーく、クリスちゃん⁉︎
ーーあ、アニキ⁉︎わ、悪ぃ、着替え中って気づかなくて……
ーーい、いや、大丈夫だよ。それより何かあった?
ーー…アニキの身体、小さい頃に見てた時より逞しいんだな。ほら、ココなんてこんなにおっきく……
ーーく、クリスちゃん…だ、ダメだ!そ…そこは……
「ちょっと待てコラァァァァ!いきなりなんの妄想してんだよ!」
「そうだぞ立花。私もあまり詳しくはないが、こういう時着替えを覗かれるのは男女逆ではないのか?」
「ツッコむ所はそこじゃねぇ!てか、あたしが痴女みてぇになってんじゃねぇか!」
「へ?光太郎さんの腕触るのが痴女なの?」
「「「………」」」
「言い方が紛らわしいんだよ!」
「痛っ!ひどいよクリスちゃ〜ん!」
バカが涙目になりながら頭を押さえる。
ったく、こいつは余計な事考えやがって。
「どっちかっていうと、こう言う感じの事が起きてるんじゃないかしら?」
と、今度は小日向が妄想を語り出した。
ガチャ
ーーく、クリスちゃん⁉︎
ーーあ、アニキ⁉︎わ、悪ぃ、誰も風呂に入ってなかったと思ったから…
ーーご、ごめん。俺急いで出るからクリスちゃんはゆっくり……ッ⁉︎
《急いで風呂場から出て行こうとする光太郎の手をクリスは顔を赤くしながら掴んだ》
ーーく、クリス…ちゃん?
ーーアニキの身体…小さい頃に見た時よりも逞しくなってるんだな。アニキのサタンサーベル、もうこんなに……
ーークリスちゃん…何を…!
ーーアニキ…アニキのサタンサーベルをアタシのイチイバルの中に入れて、沢山キングストーンフラッシュして…
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!さっきのよりヤバくなってんじゃねぇか!」
「そうだぞ小日向。雪音のイチイバルは長射程広域攻撃が得意だからサタンサーベルを収納できるスペースなどありはしないぞ。それに、サタンサーベルはキングストーンフラッシュは使えないだろう?」
「だから、ツッコむとこはそこじゃねぇんだよ!てか、何で冒頭が同じでアタシがラッキースケベ起こす感じになってんだよ!」
何なんだよコイツは!バカよりもヤベェ妄想を語りやがって!
「ふむ。では真打登場と行こうか」
と、何やら剣女が無い胸を張って鼻息を荒くしている。何だよ真打って。
「……雪音、何やら今私を侮辱するような事を考えなかったか?」
と、もの凄い剣幕でアタシを睨んできたのでブンブンと首を振って否定する。
「ふむ。では語るとしよう」
ガチャ
ーーく、クリスちゃん⁉︎
ーーあ、アニキ⁉︎わ、悪ぃ……
「こんのぉボキャ貧共がぁぁぁぁぁぁ!」
「何故邪魔をする雪音!これからが…」
「うっせぇ!冒頭が丸被りの時点で聞く価値もねぇよ!つか、お前らが妄想してるような事なんて一切起きてねぇよ!」
肩で息をしながらあたしは3人に向かって叫んだ。
そう。アニキと暮らすようになって1週間。本当に何も起きないのだ。
そりゃあ、あたしだってアニキと暮らすってなった時はもの凄いドキドキしてたさ。そういう事も起きるんじゃないかって期待してたさ。
でも……チクショウ…現実はいつもクソッタレだ……
フィーネとの戦いが終わった後、あたしは特異災害機動部二課に預けられる事になったんだけど、その時にアニキが司令のオッサンにあたしを引き取らせて欲しいと頼み込んだ。
オッサンは事件解決の礼って事でそれを認めてくれて、あたしはアニキが住んでいるふらわーに移り住む事になった。
オバさんはいるけど、アニキと一つ屋根の下での生活。あたしは想像しただけで顔が熱くなった。
でも、フタを開けてみたら……アニキはまるであたしの親になったような接し方をしてくる。
オバさんからは、ずっと離れ離れになっていたからクリスちゃんの世話を焼きたくてしょうがないんだよって言われたけど、正直納得できない。
昔は歳の離れた妹みたいな扱いされてたし……アニキは、あたしみたいなガサツな女は嫌いなのかな?
あの友里って人みたいなキリッとした感じの女が好きなのかな?
訓練も終わり、夕陽が差す商店街を一人歩いていた時だった。
「あれ?クリスちゃん?」
買い物帰りのアニキとばったり遭遇した。
買い物袋を片手に一緒に帰ろうかと笑顔で言うアニキの提案に逆らえるはずもなく、あたしはアニキと肩を並べて家路に着く。
その途中でゲームセンターに思わず目がいってしまった。
正確にはそこにあるUFOキャッチャーの景品であるウサギのキーホルダーだ。
ピンク色のそのキーホルダーに目を奪われていると…
「クリスちゃん、コレ欲しいの?」
と、アニキが顔を覗かせた。
息がかかるくらいの近い距離にアタシは思わずたじろぐ。
すると、爽やかな笑みを浮かべたアニキが機械に携帯端末を翳しボタンを操作し始める。
アームは綺麗にウサギのキーホルダーを掴むとそのまま落とす事なく投入口に到達した。
「クリスちゃん、ハイ!」
「あ、ありがと……」
「どういたしまして」
アニキがあたしの為に景品を取ってくれたのが嬉しくて仕方なかった。
でも、同時に思ってしまう。きっとアニキは死んだパパとママの代わりにあたしの保護者を全うしようとしてるんだって。
「えいっ!」
あたしは勢いよくアニキの空いた腕に抱きつく。
「ちょっ、クリスちゃん⁉︎」
「何だよ、昔はよく手ぇ繋いでくれたじゃんか。それとも、アニキはあたしと手を繋いで帰るの嫌か?」
「いや、そんな事はないけど…」
「けど?」
アニキが顔を赤くしながらどこか気まずそうにしてる。
その姿に気づいた。あたしは今、アニキの腕に自分の胸を押し付けてる状態になってる事を。
自慢じゃないが、あたしは二課の中では1番胸がデカいと思ってる。
たまにジロジロとあたしの胸を見てくる気持ち悪い奴がいるけど、アニキは全然そんなことなかったからあたしの事なんて意識してないんだと思ってた。
でも、この様子からするとそうでもないみたいだ。
だとしたら嬉しい。今まで妹のようにしか思われてないと思ってたけど、ちゃんと女として意識されてたって事だから…
「じゃあ、帰ろうぜ!オバさんも待ってるだろうしさ!」
嬉しくなったあたしは、そう言ってアニキの手を引く。
今はまだ子供扱いされてるけど、でもいつか、妹とかじゃなく、一人の女の子としてアニキの隣に立てたらなって……
そんな事を考えながらあたしは再び家路に着いた。
番外編につき、次回予告はございません。