戦姫絶唱BLACK SHADOW 作:ロヒシ&かづ えい子しょうゆ味
前回のコントのような回、受け入れてもらえるか心配でしたが、楽しんでいただけて良かったです!
今回の番外編その2は友里さん視点のお話になります。
「ハイ、お待たせしました!チーズぶた玉です!」
私の目の前にある鉄板からジュージューと美味しそうな音と香ばしい香りを漂わせるお好み焼きが用意される。
両手を合わせ、「いただきます」と言って私が食べやすいようにカットされたお好み焼きを食べると、口の中でチーズがとろけ、肉汁の旨味が口の中いっぱいに広がる。
彼ーー南 光太郎君の作るお好み焼きは本当に美味しい。そんな事を、私こと友里 あおいは改めて感じながら彼の作ったお好み焼きに舌鼓を打っていた。
「今日は他にお客さんいないのね」
店内を見渡し、私以外のお客がいない事を不思議がる。
お好み焼き屋『ふらわー』は小さいお店だけど、彼と経営者であるオバさんの作るお好み焼きは評判で、夕食時はそれなりにお客さんが来るのに、今日は私1人しか店内にはいない。
「そうなんですよ。オバさんも、どこかに出かけちゃって……まぁ、こういう日もありますよね。ハハッ」
と、白い歯を見せながら爽やかに笑う南君。そんな姿に私は思わずドキリとしてしまう。
彼の事を意識するようになったのはいつからだろう。
私が酒によってダル絡みしても嫌な顔一つせずに付き合ってくれて、彼が別の世界から来た人間ーーそれも改造人間だという事実を知っても、私の中での彼の存在は変わらなかった。寧ろ、どんどん大きくなっていってる。
「そう言えばクリスちゃんの様子はどうですか?学校じゃまだ友達ができていないみたいだし、二課の人達とも上手く溶け込めてるかどうか心配なんですよ」
彼の口から彼女ーー雪音 クリスちゃんの名前が出る度に、私の胸はチクリと針が刺さったかのように痛みが走る。
クリスちゃんは、南君がこの世界に来て初めて交流を持った女の子で、彼が大切に想っている人の一人だ。
誤解からすれ違っていたけど、無事に和解して、今は彼と一緒にふらわーに住んでいる。
南君は本当にクリスちゃんの事を大切に想ってる。彼女がフィーネの元にいた頃も、ずっと彼女のを身を案じて探し回っていた。
私は、そんな彼になんて声をかけて良いのか分からず、彼がどんどん遠くに行ってしまうような気がしてならなかった。
南君はクリスちゃんの事を妹のように想っているけど、クリスちゃん自身は違う。彼女は南君を兄としてではなく、一人の男性として意識してる。そこに気づかないのが彼の鈍感な所なんだけど、だからこそ私は焦ってる。
クリスちゃんは可愛くて胸も大きくて、髪もサラサラで綺麗だし、私より若いし、おっぱいも大きいし、何よりツンデレというのは男心をくすぐると同僚の藤尭君も言ってたし、あと私よりも胸が大きい……正直、勝てる気がしなくて焦ってる。
だからこそ、私は少しでも彼との距離を縮めようと覚悟をしてここに来た。
「ねぇ南君」
「何ですか?」
「大事な話があるの」
「大事な話?」
「その、私、私ね……」
ダメだ、いざ言おうと思うと心臓が凄くバクバクと音を立てるし、顔から火が出てるんじゃないかと思うくらい熱くなってる。
でも言わなきゃ、言わなきゃ今の関係から前に進めない。
「私達、今のままの関係じゃダメだと思うの」
「そうですか?臨時ですけど一応二課の所属にはさせて貰ってますし、なにより風鳴さんが『仮面ライダーは決して兵器なんかじゃない』って言ってくれてましたから気にしてなかったんですけど、やっぱり偉い人達からの反対が強かったんですかね?」
「違うの!そんな話じゃないの!」
「あれ?違うんですか?」
「仮面ライダーじゃなくて、私と南君のこれからについての話なんだけど…」
「ちょっ、……ちゃんダメだよ!今良い所なんだから!」
「そうよ……!もう少し我慢して!」
「離せ!このウバスズメ共!早くしねぇと……が!」
「何か外が騒がしいですね。ちょっと見てきます」
「不味い!みんな隠れろ!」
と、南君が外の様子を見に行ってしまった。
ふぅーっと息を吐く。告白なんて今まで何回もしてきたのに……今回に限ってはいつもと全然違う。
それだけ、彼の事が好きなんだなと自覚する。
「あおいちゃん、あおいちゃん」
「え?あ、オバさん!」
「しーっ、大きな声出すんじゃないよ」
何故か奥の部屋からこっそりと顔を覗かせるオバさんの姿があった。
キョロキョロと周りを見回しながら小声で私に話しかける。
「頑張んなよ。みーんな、あおいちゃんと光ちゃんの事を応援してるから」
「え?じゃあ今日他にお客さんがいないのは……」
「私らが貸切にしてるからね。クリスちゃんがごねてるけど、何とか宥めてる最中だから邪魔は入らない筈だよ」
えぇぇぇぇ⁉︎
とんでもない話を聞いてしまった。
どうやら、オバさん達によって意図的に私達は2人っきりにされてるみたい。
「あっ、光ちゃんが戻ってきたみたいだね。じゃあ、頑張んなよ」
そう言ってオバさんは奥に引っ込んでしまった。
「おかしいなぁ。確かに誰か騒いでたみたいなんだけど…」
首を傾げながら南君が戻ってきた。
折角のオバさん達のお膳立て、ここで言わなきゃ女が廃るわ!女は度胸よ!
ハッと息を吐き、私は真っ直ぐに南君を見つめる。
「み、みにゃみ君!」
…噛んでしまった。もう、穴があったら入りたい。
「友里さん、具合でも悪いんですか?」
「だ、大丈夫。気にしないで……」
「そうですか?ところで、大事な話って何ですか?」
「えっとね、その……私、南君の事が……」
「俺が?」
「み、南君とはもう長い付き合いでしょ?だから、いつまでも苗字で呼ぶのは他人行儀かなって思っちゃって」
ガシャーンと外で大きな音が聞こえた。
……ホント、死にたい。
あれだけお膳立てしてもらったのに……
「そう言えばそうですね。いやぁ、俺なんかが友里さんの事気安く名前で呼んで良いのか迷っちゃってて」
後頭部をかきながら照れた表情を見せる南君。
すると、彼の表情が途端に真剣なものへと変わった。
「あ、あおいさん、俺もあおいさんに大事な話があって……」
「え?」
彼から大事な話があると言われ、私の鼓動は跳ね上がった。
外から、キャーッと響ちゃん達の叫び声が漏れてくる。
すると、彼が私の前に小さな箱を差し出してきた。
え?コレって、まさか……!
「誕生日、おめでとうございます!コレ、俺が選んだんですけど、良かったら……」
彼が顔を赤くして小さな箱を差し出す。
もしかして指輪が入ってるんじゃ……なんて思ったけど、中に入っていたのは時計だった。
そう言えば、ビルゲニアに連れ去られた時に壊れてたのすっかり忘れてたわ。
ここ最近凄く忙しかったら、時計が壊れた事も、自分の誕生日の事もすっかり忘れてた。
けど、彼は覚えててくれて、私の為にプレゼントまで用意してくれて……
嬉しさのあまり涙が出そうになる。
でも、私は何とか涙を引っ込め、南君…いや、光太郎君の顔を見つめる。
「こ、光太郎くん。実はね、私、私……」
「ただいまー!あー、つっかれたぁ!アニキー、メシー!」
と、わざとらしい程大きな声をあげてクリスちゃんが帰って来た。
彼女と目が合う。そこには『誕生日だからここまでは譲ってやるけど、そこから先は言わせねぇかんな!』と言っているようだった。
「もー、クリスちゃん、折角良い感じだったのにー!」
「そうよクリス。人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて何とやらって言うんだから」
「いやぁ、絵に描いたような三角関係…まるでアニメよねぇ」
「どちらかと言うと、お昼のドラマのような気がしないでもないですが……」
「まったく、暴れるきねくり先輩を抑えるのも一苦労だったよ」
「まぁ、雪音にしては耐えた方なんじゃないか?」
「ふむ。しかし友里君といい、クリス君といい、青春だなぁ」
「司令、なんかオッサン臭いこと言ってませんか?」
「良いんじゃないですか?あおいさん的には一歩前進したようなものですし」
すると、クリスちゃんの後ろからぞろぞろとみんなが姿を見せる。
もしかして、響ちゃん達だけじゃなくて司令達にも見られてたの⁉︎
顔から火が出るほど恥ずかしい。もういっその事殺して…
「なんか大勢でごめんねあおいちゃん。でも、ゆっくり進んで行けば良いさ。アンタ達はまだ若いんだから。その気持ちをゆっくりと育てていけば良いよ」
俯く私にオバさんがそっと声をかけて来た。
きっと、今日の事はオバさんがみんなに協力をお願いしてくれたんだと思う。
結果はどうであれ、そんなオバさんの心遣いが嬉しかった。
光太郎君への気持ちは焦らずにゆっくりと育てていこう。
そして、いつか彼に私の本当の気持ちを打ち明けよう。
そう思いながら、誕生日パーティーに突入し、悪酔いした私は盛大に光太郎君にダル絡みをするという醜態を晒すのだった。
次回予告
少女は歌を口ずさむ。
その理由は何か?
世界の破滅か?それとも救済か?
謎の歌姫マリア・カデンツァヴナ・イヴは世界に向けて宣戦布告する。
そして、新たなる黒い戦士がその姿を現した。
次回、戦姫絶唱BLACK SHADOW G
第1話 『変身‼︎もう1人の黒い戦士(ブラック)』お楽しみに!